表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第五章 〜新米辺境伯編〜
604/864

604.正しい暴走と、正しくない暴走。てへっ❤︎





 危うく暴走する所だった。

 ジュリの機転でなんとか冷静さを取り戻したけど、今回の様な事は私にとって陥りやすい条件なのかも知れない。

 とりあえず反省、そして反省したら、それを活かさないと。

 なので、早速港街の方で活かしてみる。


「医療従事者、及び支援と管理をする人間は、今回の件が収束するまで、睡眠時間の確保を義務化します。

 この様な事態の時に、ゆっくりと休む事に抵抗を覚えるかも知れませんが、疲労が回復しきれないままに患者に向き合ったり、指示を出しては大きな過ちを引き起こしかねません。

 我々は多くの民の命を預かっている身。

 自分のためではなく、多くの民のために、迅る気持ちを我慢をして心と身体を休めてください。

 勿論、その分だけ起きている時は容赦なくコキ使うので、御心配は無用です」


 と言う訳で、作り置きしてあった魔導具、試しの砂時計(八時間版)を皆んなに配布。

 追加であと幾つか作らないといけないけど、それは合間を見て作る事にする。

 ああ、仮眠室も用意して貰った方が良いわね。


「領主様がそう仰られると言う事は、何か失敗されましたかな」

「これ以上、忙しくなる様な失敗でない事を祈るばかりだが」

「いや、むしろ失敗された時の方が、俺らは楽かも知れんがな。

 証拠隠滅で、全部やられる可能性の方が高いから」

「「「「賭けようか」」」」


 あんたらね……。

 いえ、今回は否定出来ないけど、自分の失敗をそこまで押し付けた記憶なんてないわよ。

 失敗するほど、こちらで仕事をしていないもの。

 と言うか、仮にも公僕が賭けるなっ!

 まぁ賭博禁止の世界ではないので、問題はないんだけど。

 どうせ賭けるのは昼飯とか、酒代程度だしね。

 これが社交場の男達ともなれば、平気で金貨を賭けているから、賭け事に嵌まるに人間は落ちる所まで落ちてしまうので、そこそこに注意喚起は必要だったりする。


「とりあえず、解熱剤と抗生剤を千四百回分、他医療品を幾つか持ってきたけど、解熱剤と抗生剤は、五日以内にもう三千回分を補充出来る予定よ。

 その後、八日以内に更に三千回分もね」


 製薬の知識のある教会の司教であるディアーナ様と司祭のアイリス様が調合をし、細かな調合は出来ないけど下処理の出来る修道士のサッシャ様とキャロル様が、ゴリゴリと種を砕きすぎて、手や足など身体が痛いのをポーションで癒しながら頑張っている。

 それだけでなく、村の何人かも秋の収穫物の加工で忙しいはずなのに、交代でお手伝いをしてくれており、本当にありがたい。

 私の無理な注文に応えてくれる皆んなに、どう感謝して良いのか。

 だけど、今はそんな事を考えている場合では無い。

 私の屋敷や村の方には、幸いな事に、今の所は感染症が広まっている兆しはないけど、此方は……。


「ここ数日の状況は?」

「……領主様のお薬のおかげで、死者は七名程度で収まっていますが、罹患者と思われる患者が千人を超えました。

 ただ、喜ばしい事もありまして、最初に罹患した者は既に峠を超えて(治って)おり、特別室にて(・・・・・)静養して戴いております。

 少々お話を聞きたい事もありますので」

「そう、死者が出てしまったのは悲しい事だけど、仕方ない事でもあるわね。

 亡くなられた方の御冥福を祈ります。

 なら、そんな悲しい方が出てしまう事を少しでも抑えるために、今後はもっと気を引き締めなければならないわ。

 おそらく、三倍から五倍の患者予備軍がいる可能性が見込まれます。

 今後は、その前提で動くように」

「「ご、、五倍……っ」」

「「いや、三倍でもどうかと」」


 亡くなられた方には申し訳ないけど、そう割り切るしかない。

 それと最初に罹患した患者が回復したのは嬉しいけど、病気を広めたと思われる相手を、そのまま解放する訳にはいかない。

 二食昼寝付きの特別な別荘で、満足するまでお喋りを楽しんで戴く事にする。

 問題は患者予備軍と、その予想人数に慄く人達。


「気を引き締めなさい。

 本当に大変なのは、患者とその患者に対応する医療従事者とそのお手伝いの方達よ。

 私達は安全な所で、踏ん反り返って指示しているだけ。

 なら、少しでも早く事態を収束させる事に全力を尽くしなさい」

「「「「失礼いたしました。ユゥーリィ様の御心の儘に」」」」


 感染するリスクがあるのに、患者をお世話する人達には、本当に頭が下がる。

 事態が無事に終息したら、特別報酬も考えないと。

 ええ、そのためには、まずは無事に終わらせないとね。


「先日も言いましたが、マスク、手洗い、ウガイ、食卓の清掃の徹底を。

 マスクは、全住民に無料配布を。

 ただし、今後半年間の指定店舗以外でのマスクの売買は禁止して、転売を防ぎます。

 使って貰ってこその無料配布よ。

 民生課は大変だけど、治安部と衛生課と領軍と連携して配布に当たりなさい。

 その際に、感染予防の徹底を説明と共にお願いするように。

 配布を終了した翌日より、戸外においてマスクを付けていない者には、罰金と罰則を与えます。

 これは脅しではなく、実行させなさい。

 本日、只今をもって、領主ユゥーリィ・ノベル・シンフェリアの名の下、非常事態宣言を発令しますっ」


 正直、マスクはかなり余裕を持って在庫を用意していたけど、国からの命令による移民によって、急遽三倍に増えたおかげで厳しいと言わざるを得ない。

 配布した以上、使用済みを回収して、洗浄と殺菌をして再利用するなんて事はできないもの。

 だけど、それでも今は感染を止める事の方が重要。

 行政の本気度を見せなければ、領民は真剣には受け止めないからね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【半月後】



「領主様、患者が二千人に達しましたっ!

 ベッドも療養所の建物も足りませんっ!

 商会の幾つか、空け倉庫を提供をしてくれるようですので、そちらを準備させますが、百も入らないと思われます」

「医療従事者達も限界です。

 患者が多くて、休みたくても休めない状況です。

 元気な女達が協力をすると申し出ていますので、必要最低限の事だけ教えて、下働きをしてもらおうと思いますが、どうか許可を」

「移民達が、呪われた地だから追いやられたのだと、騒いでいる者達がいます。

 黙らせました後、飯を与えて一応は説得はしましたが、不安になっているのは確かです」

「現場で汚物が溜まって、匂いと衛生状況が良くありません。

 原因は寝たきり用のトイレの数が足りず、処理と洗浄が間に合わないのが原因だと思われます」


 状況ははっきり言って良くない。

 増える続ける患者に、悲鳴を上げる現場。

 当然、領民は不安を抱えて、いつ爆発してもおかしくはないだろう。

 でも、だからと言って、逃げ出す訳にも自棄になる訳にもいかない。

 こう言う時は、諦めたら負けだもの。

 勝って、困難の山を登り切って、その後に死んだ様に寝てやる。

 活気を取り戻した街の様子を肴に、飲めない酒を片手に一杯やってやるんだ。

 諦めて負けるのは、その後で十分っ!

 我ながら無茶苦茶な事を言っている自覚はあるけど、それが私だもの。

 お父様とお兄様の背中を見て、育った私。


「おう、やってやろうじゃないのっ!

 建物は魔法で更に追加で五つ建てるから、ジュリも手伝いなさい。

 寝台(ベッド)も土を硬化させて据え付けで作るから、細かな所の処理と手配は宜しく。

 お手伝いの方には、お礼と感謝を述べて手伝って戴きなさい。

 当然、それ相応にお給金は出すわ。

 この際、金で解決するなら、私が出してあげるわよっ。

 でもだからと言って、横暴な命令はしない様に厳命しておくのは忘れないように。

 それと手を出して良い事と、出していけない事は明確にすべきだから、その指導原案はエリシィーも一緒にお願いね」


 なんだかんだ言って、エリシィーは教会のディアーネ様と共に最新の医療を学んで身に付けているため、この世界では下手な人間より詳しいし、私のやり方もよく熟知しているから、こう言う時は心強い。

 次の問題は、……住民が不安で、既に一部暴動が出ている?

 誰しも不安の中で生きているって言うのに、文句ばかり言いやがって上等よ。

 ちゃんと効果が出ているって、証拠を提示してやるわ。

 学のない人間でも分かる様にね。

 こちとら研究が本職なのよっ、効果のない事を何時迄もやっている訳がないでしょうが。

 それでもウダウダ言うなら、実力で分からせてあげるだけよ。

 時間と人手がないから、詳しい説明ができていないのは申し訳ないと思うけど、非常事態宣言下で騒動起こす事の意味を分かっていない馬鹿は、騒ぎに巻き込まれて死人が出る前に、自分達だけ騒いで死ねって言うの。

 前世と違って物騒なこの世界では、何処の国だって反逆罪が適用されて【悪・即・斬っ】よ。

 それに比べたら、多少殴られて、その場で略式裁判で罰金刑を食らって、乱暴に家に放り込まれるぐらいなんて事はない。

 恐怖政治上等よっ!

 秩序が保たれるなら、批判なんて幾らでも受けてあげようじゃないのっ。


 あと尿瓶と簡易便座は後で魔法で大量に作るから、そうね陶器製で良ければ、型があるから一刻もあれば男性用と女性用と千個ずつは作れるわ。

 ……そんなにいらないと。余ったら予備在庫にでもしなさい。

 洗濯物は纏めて積んでおいて、そっちも私が魔法で、新品同様に洗浄するわ。

 ……えっ、見知らぬ男性の服と一緒に、洗われるを嫌がっている令嬢がいる?

 言ったでしょう、新品同様に魔法で洗浄するって、こんな時にくだらない事を言っている我が儘娘は、壮年の小父様方の脱ぎたての臭い靴下に埋もれさせてあげなさい。

 これ、領主命令だからね。


 我ながら、ちょ〜〜〜〜と、地が出てお下品になったかもしれないけど、出ちゃったものは仕方がない。

 いくら冷静にあろうとしても、余裕がないのは私も同じ、こんな時にまで馬鹿にまで、真面に相手などしていられない。

 なにか周りがガタガタ震えているけど、そこまで知った事では無い。

 恐怖政治上等っ!

 意気込んでおいて、次の瞬間には、和かに尿瓶はすぐに作れるから安心してねぇと微笑んで見せたのだから、側から見たら、さぞかし凄い早変わりぶりだったと思うわ。

 二重人格ものだもの。

 我ながら、自分の豹変ぶりが怖いわ。

 うん、怖がられたのは自業自得よね……くすん。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ