表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
489/1053

489.私の価値? 白い何かじゃ駄目ですか?





 溜池を含めた水源と、水路の工事の進捗状況の確認は、後日希望者にのみして貰うとして、地表部分の説明は終わり。

 けっして恥ずかしがったポーニャが涙目になってきたからでは……実は、あったりする。

 前世から女の子の涙に弱いんですよね、私。

 後でじっくり話し合って、理解して貰った上で謝っておこう。


 ポーニャ関連の代わりに、水路が完成したら水力昇降機が制限なく使えるようになると説明。

 現状では、湧水が生活用水となっているため、制限なく使える程まで水量には余裕がない。

 設計図にない水力昇降機その物の説明を求められたので、説明したら大変に関心を持たれた。

 定期的な整備や手間がそれなりに掛かるけど、重量物を一気に荷揚げできるのは、身体強化や魔法のあるこの世界でもそれなりに大変なので、使い勝手が良ければ、他でも使いたいとの事。

 軍事施設なので、不安定な魔法ではなく、殆どが通常技術を使っていると言うのが魅力的だとか。

 もちろん、無料(ただ)ではありませんけどね。

 取り敢えず魔法で大量に水を出して、動作を見せて終了。

 一番下の港の部分がまだ出来ていないので、今回は階段を使って普通に降ります。

 施設見学なのに、昇降機を使って階を飛ばしたら意味が無いもの。


「階段が通常の物より緩やかだが、意図は何かね?」

「転落防止もありますが、有事の為にしっかりとした足場の確保が目的です」


 途中幾つか質問が上がったけど、きちんと私が考えた上で作っているかどうかの確認だろうと思う。

 基本的な質問ばかりだったからね。

 知ったかぶりと思われても嫌なので、実際の運用に関しては、専門家に丸投げと言っておく。

 私はあくまで素人ですから、軍事利用しないでねと言うアピールも兼ねてです。


「皆様方、少々失礼いたします。

 魔導士の観点から少々気になる事がありますので、この場にて質問させて戴いて宜しいでしょうか?」


 珍しく丁寧な口調のコッフェルさんだけど、この場では魔導士として護衛で来ている上に、面子が王族を始めとするこの国の支配者達なので、流石に傍若無人を素で行くコッフェルさんも役割に徹しているみたい。

 でも、それなら普通は発言権は無いのだけど、それでもこの場での質問をすると言う事は、コッフェルさんからしたら共有すべき問題だと判断した事があるのだと思う。

 陛下から許可と言うか、不気味だから何時も通りの言葉遣いで良いと言う、配慮と言うか揶揄いを含んだ許可に。


「ではお言葉に甘えまして。

 嬢ちゃんや、此処、どうやって掘ったんだ?

 どうにも見た事もねえ岩質だから、少し魔法で掘ってみようと思ったら、これっぽっちも掘れねえ。

 見た感じ、力尽くで掘ろうとしてもビクともしない代物だぞ」

「ええ、此処等の海岸沿いの岩質は特殊みたいで、ジュリはもちろん、【土】属性に特化したポーニャでも無理で、私も【土】属性魔法では殆ど掘れませんでしたので、【時空】属性で空間ごと裁断して掘り進めました」


 この空間の裁断の魔法って、集中力と少しの溜めがいるけど、金剛不壊鉱石(アダマンタイト)ですら簡単に切断できるのに、此処の岩盤は時間は疎か、魔力をかなり必要するんですよね。

 何方にしろ、攻撃魔法に使うには集中力と時間が掛かるので実戦向きではなく、もはや穴掘り魔法です。

 いやぁ、港街の坂道で慣れたとは言え、モグラの様な気分で掘り進めるのは苦労しました。

 地中探査と空間探査、そして時空探知の三種類の探知魔法の併用使用してなければ、此処まで正確に掘れなかったと思う。

 私、基本的に職人的な技術はないですから、前世の知識と魔法の力技です。

 前世どうこうと言う話は出来ないので脇に置いておいて、そんな感じの説明に、何故か顔を片手で覆ったコッフェルさんは、疲れた顔で。


「……はぁ。

 おめえは、前々から言っているが、ちったぁ自重しやがれっ!

 このヘンテコ娘っ!」

「ぐぁ〜〜んっ!

 公式視察中にまさかのヘンテコ発言っ!

 コッフェルさん酷いですっ! 少しは私の立場も考えてくださいっ!」

「うるせぇ! ヘンテコをヘンテコと言って何が悪いっ!

 テメエが、如何に常識外れの無茶を言っているか少しは自覚しやがれ、このヘンテコ娘っ!」


 もうヘンテコの連発、ヘンテコのバーゲンセールです。

 ちっとも嬉しくないですけどねっ!


「少々騒がせて戴きましたが、元魔法使いの立場、そして魔導具師ギルドの長の立場から言わせて戴きますと、おそらくこの岩質の掘削は実質この娘以外は不可能とお考えください。

 そこで出来ましたら、もし追加の工事があるのであれば、不幸な事故が起こり得てしまわぬよう、此処が引き渡される前の方が宜しいかと進言させて戴きます」


 許可があるにも関わらず、言葉遣いを改めたコッフェルさんの表情は凄く堅く、陛下やカイル殿下を強い眼差しを向けている。

 そんなコッフェルさんに、陛下も雰囲気と口調を変え。


「案ずるが良い、子爵を徒に国や軍の機密に関わらせ、その命を危険に晒す気はない」


 つまり、コッフェルさんは私を心配したと。

 地下にある部屋と言うのは察しにくいため、機密を隠す部屋を作るのに最適。

 そして昔からその手の部屋の工事に関わる人間は、工事終了後に処分される事も珍しくはないと聞く。

 特に後でこっそり作った部屋であればあるほどね。

 コッフェルさんも、本気でそんな心配した訳ではないだろうけど、万が一という事もあるし、世の中にはその場の考えだけで勝手に動く人もいる。

 だから敢えて皆様方の前で一騒動を起こし、陛下からの言質を引き出そうとしたと言う事なのかな?

 私に関わらせないために。

 全く相変わらず口も態度も性格も悪いのに、妙な所で面倒見が良いんですよね、この人。

 呆れ半分、感謝の気持ち半分で感動している私に、陛下が更に爆弾を落としてくれる。


「この地に軍港を作らせたのは、この地を各国が無視できぬ中継交易都市とする事で、我が国の力を世に示すためである。

 ……が、そもそもの目的は、我が国の宝たるその娘を守らせるためだ。

 故にその様な愚は、余の名において犯させはせぬ。

 貴様がその娘を案ずる想いは理解するが、それは我も、そして次なる王たる王太子も同じ想い。

 必要以上の心配は、我等王族に対する不敬になると思え」


 はい?

 今、なんて仰いました?

 力を世に示すと言うのは、真意によっては不穏に聞こえるけど、そんな事よりも問題なのはその後。

 国の宝?

 軍港が私のため?

 この世界って、エイプリルフールとかありましたっけ?

 うん、あろうがなかろうが関係ない、これは何時もの陛下流の冗談に違いない。

 王太子であるカイル殿下や、国内に残っている王女たるフィニシア様を指すなら分かるけど、今は爵位を戴いているとはいえ、元は男爵家の次女でしかない私が国の宝呼ばわりはおかしすぎる。

 でも陛下、此処は陛下の執務室ではないですよ。


「あのう……陛下、流石にこの様な場で私を揶揄うのは」


 流石にどうかと思うので、陛下に苦言。

 陛下の行き過ぎた戯れをお止めするのも、臣下の役目の一つ。

 幸いな事に、陛下の立場を軽んじるのであればともかく、真摯な言葉はきちんと受け止めてくださる方なんですよね。

 あれ? どうしたんです、此方に向かって来て。


 ペシッ!

「あいたっ」


 あろう事か頭を手の平で叩かれました。

 まさか問答無用に叩かれるとは思わなかった私は、結構、力が強かった事もあり、前のめりになって、よろけそうになる。

 陛下いきなり酷いですっ、と私が口にするよりも前に。


「君は、いい加減に自分が齎らして来た事を理解したまえ。

 それと、軍の港を此処に置く理由は先程も言った通りだが、君が勝手に魔物領域で死のうが知った事ではない。

 国が憂慮すべきなのは、国の不手際で君を失う事だ。

 君に借りがあると思っている連中の目もあるが、世界中の国と繋がっている教会は厄介だ。

 我が国としては、やる事はやっていると言う事実が必要なのだよ。

 だと言うのに、肝心の君が相変わらずその調子だから、いい加減、頭の一つも叩きたくなっても仕方ないと思わないか?」


 あぁ…納得。

 いつも通りの口調に戻った陛下の説明に、先程の陛下の言葉の真意に気がつく。

 要は、教会に提供しているポーションの魔導具を作るための魔導具を始めとした幾つかの魔導具。

 作るのに必要な理屈や、物理的な製法などを細かく記した本は、魔導具師ギルドに提出し、私以外にも作れる様にお願いしてはあるのだけど、幾ら私が製法をギルドに公開しているからと言って、それが本当に他の魔導具師でも作れる様になるのかを保証したものではない。

 ただ言えるのは、現状では私しか作れない、と言う事。


 そしてポーションのための魔導具は命を救うだけでなく、悪用すればより多くの命を奪うものにもなる。

 以前にコッフェルさんにも言われたけど、例えば大量に確保する事で死に難い軍隊を作る事が出来る訳で、まだ世界中に出回っていない状態で、私を手にして魔導具を独占すれば、私を攫った国にとって有利な事態を齎せる。

 その逆に、現状では一番この魔導具を保有しているシンフォニア王国を恐れて、私を亡き者にすると言う手段を取る事も考えられる。

 何方にしろ世界中の教会に魔導具を保有させたい教会にとっては、私を失ったり、今の協力的な関係を崩したくたいだろう事は、子供である私にも容易に想像はつく訳でして。

 シンフォニア王国も、教会に対してはそれなりにアドバンテージを握ってはいるものの、それは国内の教会に限っての事。


 そこで先程の陛下の言葉に繋がる。

 この世界は、教会と言えば聖オルミリアナ教を指すくらい聖オルミリアナ教の一強状態で、教会という存在は何処の国も政治の中枢と少なからず関わっている事が多い。

 神の教えと人々の拠り所という、絶対的な数の信徒を背景にと言うのもあるし、治癒魔法や医療技術をほぼ(・・)独占していると言う、国にとって無視する事が出来ない力があるため。

 そんな教会からしたら、唯一ポーションのための魔導具を作れる私が、『何処かの国に攫われました〜』『何処かの国に暗殺されました〜』なんて事は避けたい。

 幸いな事に私が僻地に引き籠っている事が多いため、今までは問題がなかったのだけど、港街を作った事で『この地の港街を欲して、他国が攻め込んで来たため。領主である私は殺されました〜』なんて心配が増える。

 当然ながら世界中の教会は、シンフォニア王国を責め立てるだろう。

 あわよくば、それを口実に私が持っていた技術を全てを公開しろとね。


「つまり、国の体裁と面子のためですか。

 そう聞くと、私、物凄い金を食う女に見えますね」

「……前半はともかく、後半は一体どう考えを巡らせたらそうなるのかね?」

「必要とはいえ、軍なんて大変な金食い虫じゃないですか」


 騎士や兵士なんて非生産職の上、装備や備品は膨大な数があり、その上に糧食の備蓄など必要とする。

 しかも永続的にね。

 他にも倉庫に兵舎、訓練場など、挙げだしたらキリがないくらい施設が必要な訳で、それらを建てるには物凄いお金が掛かる。

 前世で住んでいた日本は国家予算の数パーセントで、世界的にも国家予算の一割ぐらいを軍事予算に回していたと記憶がある。

 確か昔は二割ぐらいで、戦争時には五割以上も国家予算を割いていたとか。

 当然この世界も軍事費には国家予算の多くを割いており、魔物に対する備えとして、更には領主の采配で領軍を持っているのだから、全体で見れば相当な割合になると思う。


 まぁ……、中にはその領軍すら持てない貧乏な領地もありますけどね。

 いえ、色々あるんですよ。

 山奥で人口が少ないと、どうしても非生産職を増やせないとか。

 それを補うために、問題が起きたら大金を払って傭兵を頼むのだけど、そのために益々領軍を興すだけの予算が無くなるとか。

 そう言う意味では、ウチも人の事は言えないですけどね。

 とにかく軍と言うのは、唯でさえ金食い虫なのに、海軍となれば尚更の事。


「君が言いたい事は分かったが、そう言う捉え方は人聞きが悪いから止めなさい。

 まるで(くに)が個人的に君のためだけに、国の予算を割いている様に思われる。

 この地に港街が出来るだけでも、国としては海軍を置くだけの理由と価値は存在する以上、無駄金ではない事は理解したまえ」

「それを聞いて、少し安心しました」


 陛下達の事情は分かったけど、私の為に海軍を置くだなんて、どれだけ重い女なのよと思われかねない。

 いえ、以前に似た様な事で揶揄われた事はあるけど、あれはあくまで冗談だし、個人での場での出来事。

 公に国家予算を動かすだなんて、悪女どころの騒ぎじゃない。

 どんな噂をされようと知った事ではないけど、流石にこの手の内容の噂はね。

 陛下はもちろんの事、国の予算を担っている人達に失礼すぎる。


「それと、他にも色々と(・・・)理由が存在する事を、知っておきたまえ」


 はて?

 他にも理由?

 う〜〜ん、何かしらの形で私を利用したい、と言うのは当然として、他にも?

 首をやや傾げながら考える私に、何故か深い溜息を吐かれる陛下と皆様(・・)

 何故っ!?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ