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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
487/1054

487.出立前から、なにやら疲れました。

短めだけど、投稿。





色々と(・・・)見定めさせてもらうが、今は陛下達を待たせている故、案内の方を頼む」

「は、はい」


 空間転移の魔法を展開するのだけど、ダルクファクト様は奥様か御子息を連れて来られていない様で、その代わり従者の方が付いている事に、私は僅かに眉を顰め。


「申し訳ありません。

 今回は当主当人かその名代、そして御家族の方のみの参加となっております」

「ほう、君は私に従者一人つける事を許さぬと言うのかね?」

「そちらの方が、ダルクファクト様にとって信頼のおける方だとは思いますが、決まりは決まりでございます。

 お集まりになった皆様が赴くのは、今はまだ責任が持てる者以外の出入りは禁止されている地。

 申し訳ありませんが、そちらの方にはその資格がありません」

「君は誰にものを言っているのか分かって、その口を開いているのか?」


 真っ直ぐと、冷たく硬い目で見下ろすダルクファクト様から放たれる圧力。

 立場が圧倒的に上の者からの睥睨に、心が震える。

 基本、私はビビリなので、こう言うのは苦手です。


「勿論、我が国において北からの猛威を退け、魔物すらも打ち払い続けておられるダルクファクト家の御当主様、でありましょう。

 ですが、それでもです。

 どうしても連れて行かれると仰いますのであれば、今回は外せない急を要する要件があったとさせて戴きます」


 だって、力づくと言う訳にはいかないんですもの。

 私は何の圧力も放たない。

 ただ真っ直ぐと目を向けそう告げるだけ。

 【威 圧】(まほう)なんて物は必要ない、と言うかしちゃ駄目。

 上からの無茶な要求を払うのは、暴力でも脅しでもなく、確固たる意思。

 そうでなければ、向こう側は益々引けなくなる。

 立場が下の者に脅しに屈したなどと、言われる訳にはいかないのが貴族社会故にね。


「いい度胸だ」


 足を踏み出し、やや屈み込む事で、私の顔のすぐ前で睨みつけてくる。

 唯でさえ身体の大きなダルクファクト様は迫力があると言うのに、更に圧力を掛け、私から自分に有利な言葉を引き出そうしてくる。


「お褒め戴き、ありがとうございます」


 勿論、皮肉で持って満面の笑みで持って返しますけど。

 暴力不可、脅し不可、屈服も撤退も不可、なに、この無理ゲーな対応要求。

 前世ではよく、営業や苦情係の同期が、酒の席で愚痴っていたけど、私は気楽な研究員と思って適当に流していたけど、今思えば彼奴らマジで尊敬できるわ。

 対応を一歩間違えれば取引停止の上、クレームと合わせて査定や社内の評価に直結する可能性がある。

 おまけに家族持ちは、更にそこに安息の地である家族内での地位にも直結ですよ。

 賞与や昇進に影響していたら、マジ洒落にならないとボヤく気持ちがよく分かる。


「ふむ。

 だが考えてみれば、其方に理はある故、今回は此方が引こう。

 陛下の名を出さず、ジルドニア様にも助けを求めぬ姿勢は評価しよう。

 おい、妻を呼んで来てくれ」


 アッサリと圧を掛けてくるのは止めるだけでなく、面白そうに笑みを浮かべるダルクファクト様の目に浮かぶのは、陛下が私を揶揄う時と同じ物。

 舌の根も乾かない内に、前言を覆して人を試すダルクファクト様の言動に、怒りが沸く以前に頭が痛くなる。

 なんと言うか、陛下やドルク様と同じ匂いがすると言うか。

 それよりも、陛下達を待たせる訳にはいかなかったのではないのですか?

 ……最初が肝心と。

 いえ、意味が分かりません。




 結局、顔見知りであり最後に回された、海に接した南東のポンパドール港周辺を治めるファーガソン様を除く、南西のルシード港周辺を治めるネルソン様、同じく北方中域を守護するアックスフルド家とカーレン家、東北部のジークフリード家、東部中域のミシュラン家でも、まるで申し合わせたかの様に似たような遣り取りが待っていて、集合するだけで精神的にヘトヘトです。

 皆さん辺境伯なだけあって、時と場合によっては陣頭指揮を取られるからか、体格が良く、顔つきも精悍。

 誰が誰とは言わないけど、辺境伯の方々を動物に例えるなら、熊に虎に狼に鷹に蛇、それと鯱に鮫です。

 全てに、その前に『大』とか『猛』と言う物騒な文字が付く類のね。

 貴族は綺麗な奥さんを娶る事が多いから、血統的に美男美女になりやすいはずなのに不思議です。

 いえ、顔は整っているのに、纏っている空気がね。

 とにかく、出かけていた私とジル様以外は歓談を楽しんでいたようだけど、ようやく全員揃い、王族の方々が待つ部屋に移動。

 その後ご挨拶をした後に、空間移動の魔法でオルディーネ領と繋ぐ。

 これでやっと始まりでしかないのが頭の痛いところ。

 こんな調子で、私、最後まで保つかなぁ……。


「サリュード王子、随分と機嫌が悪いようですが、やはりラード王子達を置いてゆくのが心配ですか?」


 おまけに変態残念M王子こと、サリュード王子は不機嫌さを隠そうともしない雰囲気を出しており、残念さに磨きがかかっている状態。

 流石に青年男性、しかも王族としてどうかと思って声をお掛けしたのだけど、無視されてしまいました。

 なにか怒らせるような事したっけ?

 首を捻って思い当たる節を探すのだけど、生憎と思い当たる節がない。

 ゾロゾロとオルディーネ領に移動を終えた後、理由が判明。


「ユゥーリィ、王都の君の街屋敷に繋いでくれたまえ。

 サリュード、予定通りで済めば良いが、できるだけ捕縛と命じてはいても、無理だと(・・・)判断したのなら遠慮は不要だ。

 あの子達とお前が無事である事が最優先だ」


 どうやらサリュード王子は、此方に視察に来る振りして、影ながらラード王子達を護衛も含め、事の対応の責に当たる任務を受けているらしい。

 視察に出ている事になっているから、何日も隠れて過ごさないといけない上、モソモソと味気の無い携帯食が続くとなれば、不機嫌になるのも分かる話。

 ……違うと。

 うーん、なら、なんで不機嫌なのかと思ってしまうけど。

 とにかくお仕事頑張ってくださいと、笑顔で御見送り。

 せめてもの餞別として、作り置きのオニギリに多種多様の携帯食(シリアルバー)、冷めても美味しいお茶とスープをそれぞれ水筒に容れ、更にお蔵入りしていた役に立ちそうな魔導具を持たせてあげましたけどね。


 魔導具:孤独なる人生(インビジブル・マント)


 魔導具と魔導回路のハイブリット型の魔導具で、妖精(フェアリー)の使っていた光学式幻術の魔法を応用した試作品。

 装着者を背景に溶け込ます魔導具なんだけど、逆に言うとそれだけ。

 気配を消さないと意味が無い上、匂いや音は当然消せないし、気配を消しても分かる人には分かる。

 ウチの警備の人達は全員、これを纏ったアドル達を見破ったからね。

 使用者の魔力の隠蔽処理もしてあるけど、未完成なため、魔力感知に長けた者なら見つけられてしまう様な無様な代物。

 魔物の領域では、なんの役にも立たない失敗品だけど、それでも今回は無いよりはマシだと思い、サリュード王子に貸し出し。

 必ずサリュード王子本人の手で、直接私に返す様にと押し付けちゃいました。

 いえいえ、死亡フラグじゃないですよ。

 死亡回避フラグです。






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