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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
486/1055

486.地味であっても、お出迎えする事も立派な仕事ですよ。





 今回は、陛下達だけで無く、古き血筋の方々など、役職で来られる方以外では各家二名ずつ。

 王都に住まわれている方は良いけど、大半が自らの領地に普段いる方で、王都に集合なのは良いけど、お忙しい方々のために空間移動の魔法を持つ私がお出迎え。

 なら、最初から各地とオルディーネ領を繋げば良いじゃん、と思うかもしれないけど、そこは様式美というか、王都から出立したと言う名目が必要なんだとか。

 なにせ、王族の護衛を兼ねてと言う形になってますからね。


「ふむ、後は辺境伯のところか。

 どれ、儂が付いてゆこう」


 古き血筋の方々が揃った所で、ジル様が名乗りを上げて下さる。

 この国に七家ある辺境伯は、このシンフォニア王国と言う大国の要である国境沿いの土地を守護する役割を担う家。

 この国における辺境伯は、何方かと言うと役職名で、国にとって重要な国境周辺の土地を代々守護する任務を伯爵家に与えられる事から、辺境伯爵と呼ばれているだけであって、間違っても田舎という意味ではない。

 まぁ、王都から遠く離れていると言う意味で、皮肉って言う人はいるけどね。

 ただ、土地の広さは古き血筋の方々よりは狭いとは言え、それ以外の土地持ちの侯爵家よりも広い土地を管理しており、それを財源に強力な領軍を所有し、国軍と共に国防の任に当たっている。

 この国においては、その重要な土地を守護すると言う役割から、伯爵でありながらも、侯爵相当(・・)の地位を認められており、時と場合によっては王族の血を引いている法衣の公爵よりも発言権がある存在。


 そんな重要な土地を、なんで高位貴族である公爵家や侯爵家ではなく、中位貴族である伯爵家なのかと言うと、理由は簡単。

 高位貴族クラスが他国と結び付いたらシャレにならない。

 と言うのもあるけど、伯爵なら他国との衝突があっても、伯爵だからと互いに矛先を収められる余地を残せる。

 公爵や侯爵を相手に喧嘩を売られたら、流石に国も簡単には矛先を収められないと言う理由からだったりする。

 魔物と言う人類の脅威に囲まれたこの世界では、国同士の争いで力を落とした時に魔物の群溢大暴走(スタンピード)が起きて対応出来ずに、人も街も国ごと滅びました、では意味がないからね。

 何時でも、矛先を収められる保険と言う訳です。


 因みに、温暖石や紅炎石で紛争していた地区は、辺境伯の管理していた土地ではなかったりする。

 辺境であるあの土地は例え取られたとしても、国全体で見れば地方産業の一つを失った程度に過ぎず、領民と産業を守る地方領主の奮闘と、国の面子によって長々と続けられてきただけに過ぎないらしい。

 まぁ、当時、紅炎石は王族や高位貴族御用達の暖房器具の一つだったらしいしね。

 手に入らずに、僅かでも寒い思いをするのは嫌だと言う程度で動いていたのかも。……なんて事は、流石にないか。


「ジル様、どうか宜しく願いします」


 案内役を買って出てくださったジル様に、お礼の言葉を告げながら、再び空間移動の魔法で先方と繋げるのだけど、案内をお願いする理由は簡単。

 一部を除き、私が先方と面識がないのがその理由。

 もともと新興貴族で社交界に明るくない私は、辺境伯に会う機会がなく、向こうも守護する土地を留守にして、王都の舞踏会などに参加する事など滅多にないため、王家主催の舞踏会などに参加したとしても、大抵は名代の方。

 辺境伯ともなると、空間移動持ちの魔導士もお抱えでいるらしいけど、どうやら普通の魔導士は、私ほど長距離を移動できないらしい。

 大半が隣の領地までで、運べる人数も少ないみたい。


 そんな訳で、さして親しい間柄でもない私が、辺境伯の屋敷に空間移動のためのマーキングなどしてある訳もなく、この国の主要の土地の一つとして、私が休暇を兼ねて各地を回った際に、街の郊外にマーキングがしてあるだけです。

 前もって連絡はしてあるはずなので、近くの街道で待機されているはず。


「ふむ、意外に森深い場所なのだな」

「街道沿いに見える場所に作って、驚かせてしまうのは問題がありますので」


 空間移動先の光景の様子に呟くジル様には申し訳ないけど、此処からは歩いて移動。

 ほんの数キロではあるけど舗装されている訳でもなく、木の根が這う自然のままの足元が悪い地面を歩いて行く事になる。

 歳を感じさせないと言うジル様と言えども、なかなかに大変だと思うので、今回は乗り物を用意しました。

 無論、背負子ではありません。

 流石に国の重鎮で宰相閣下であられるジル様に、小さな女の子に背負われて登場なんて、恥を掻かせられない。


 どすんっ。

「…こ、これは?」


 収納の魔法から出した乗り物。

 それは、この世界の雰囲気に合わせた物で……。


 魔導具:それゆけ馬太郎、リアルバージョン。


 ネーミングセンスは気にしない、どうせこのためだけに作った物なので、下手に凝っても仕方がないからね。

 分かりやすく言えば馬形のゴーレム。

 もっと適切なのは魔導人形(オートマタ)なのだろうけど、こいつはそこまで上等な物ではなく、単に関節を持った人形に過ぎない。

 発条(バネ)と義足や義手に使われている岩石大蜘蛛(ロック・スパイダー)の糸を材料にし人工筋肉と、制御用の魔法石とを組み合わせた人口関節と骨格で自立はするものの、自ら動く事すらない置物に近い代物。

 とは言え、手綱を通して私が操作してやれば、馬のように(・・・)は動かせるので、今回はこれに乗って移動してもらう予定。


「見た目だけで、自ら走る事も出来ない馬の置物です。

 今回は貴族らしく見た目重視で、これに乗ってゆきましょう」


 手綱を握って操作する事で馬を座らせ、ジル様が後ろで身体の小さい私がお子様シートに鎮座。

 ジル様に手綱は一応は握っては貰うけど、二人乗り用の鞍の前部に飛び出ている持ち手からも、魔導具の馬を操れるので問題なし。

 あまり先方を待たせても失礼なので、とっとと出発しちゃいます。

 最初はゆっくりだけど、慣れたら次第に速度を上げ。


「……足場の悪いのにこんな速度で走らせて、馬が潰れないのかね?」

「生き物ではないですから、故障はしても潰れませんし、この程度で壊れる様な物は作りません」

「……何やら、えらく乗り心地が良い様な気が」

「ヴォルフィード家に提供したの馬車や、ルーシャルド家に提供した義肢の技術を用いています。

 あと、馬の背中には砂漠クラゲを用いたクッションを仕込んでありますから、それも大きいかと」

「……生き物でないからこそか」


 内臓も血管も脂肪もない作り物の馬なので、乗り心地を良くするため、骨の代わりにオイルダンバーとサスペンションが何十機も身体中に仕込んである上、砂漠クラゲを素材にした高分子吸収材のクッション材を、硬度の違う積層構造で背中部分に敷き詰めてある。

 それ以外にも、駆ける魔導具の馬の足元に、弱いながらもブロック魔法を作る機能を蹄の部分に仕込んでいるから、足場が安定していると言うのも大きい。

 此れがなければ、幾ら魔導具の馬でも走る振動は大きくなるだろうし、そこまで速度は出せない。

 足を取られて転けたら危ないですからね。


「売り物としては考えていません。

 魔導士でないと制御は難しいですし、整備を考えるとなると実用的な運用には向きません。

 我が家で従軍経験を持つ魔導士(ルチア)も、普通の馬の方が扱いやすいと言っていました。

 私も今回のような儀礼用にしか使い道が思い浮かびません。

 正直、自分の足で走った方が早いですし、空間移動の魔法もありますから」


 使うのが私で、永続的な物ではなく、一時的な物と言うのもあって、耐久性もそれほど考えていない代物。

 今回は必要性から作ったとは言え、ほぼ趣味で作った代物です。

 外観は市販の馬具の装飾品で誤魔化しているとは言え、剥製ではなく金属製。

 見た目の色と質感を出すのに苦労したけど、一番苦労したのはクリクリとした可愛いお目々を再現する事。

 いやぁ、馬の純粋さを出すのに、本当に大変でしたよ。

 ちゃんと瞬きだってさせられる拘り振り。

 剥製を使えば、もっと簡単だったと言う意見は聞かない。

 前世は研究者、今世は研究者兼技術者である私にとって、挑戦こそが醍醐味なんです。

 同じ苦労するなら楽しまないとね。


「このためだけに、これを作るか。

 はぁ……、いや、なにも言うまい」


 いえいえ、そこは呆れる所ではなく、褒めてくださったり、感心してくださる事では?

 よく、賓客のために一度しか使わない様な物を作る、なんて話は良く聞きますよ。

 趣味の産物である事には、違いないですけどね。

 そうこう言っていると、どうやら目的地に近づいたみたい。


「どうやら既に来ておられる様だな」


 ジル様の言葉通り、前方に騎士と馬車の一団が見える。

 北西の雄、ダルクファクト家。

 ジル様が要する派閥の中で、位の高い家の一つであり、派閥違いとは言えドルク様が懇意にされておられる方だとか。

 頭の上がらない先輩と後輩と言う意味で。


 でも、私が気にすべきところはそこではなく、実家であるシンフェリア家の貴族後見人であるフェルガルド伯爵の貴族後見人だと言う事。

 直接お会いするのは、今回が初めてだけど、……うん、緊張するなぁ。

 もしかすると、私の事を実家経由で聞いているかもしれないと思うとね。

 でも、望みはあるのよ。

 向こうからすればフェルガルド伯爵家は数いる寄子の一つ。

 実家は、その中で更にその下の寄子の話でしかない。

 しかも辺境の男爵家の話なんて、直接耳にする事なんて、そうそうあるはずもない。

 せいぜい新商品だった光石や、硝子を使った特産物で名前を聞く程度だと思う。

 あっ、男爵から子爵に上がった事くらいは、聞いた事があるかも。

 うん、そんな山奥の田舎の次女の話なんて、話題に上がるはずないよね。


「ふむ、君があの(・・)男の娘か。

 色々と逸話は、直接(・・)、聞かせてもらっている。

 こうして顔を合わせれる日が来る事を楽しみにしていた、と言えば信じるかね?」


 はい……、希望的観測でしかありませんでした。

 合流して互いに紹介を済ませた後、早速、此方の希望を打ち砕かれましたよっ!

 お父様の顔の広さを舐めてましたっ!





【宣  伝】


『最弱スキルでドタバタ放浪記』 https://ncode.syosetu.com/n8185gt/

 昨日1/31日に第14話を投稿しました。

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