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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第二章 〜少女期編〜
130/942

130.早朝鍛錬が厳しくて泣きそうです。





 日が昇り始めた頃から始めている早朝鍛錬。

 流石にこの時間帯から動き出す学院生はごく僅かで、この鍛錬場もこの時間帯は貸し切り状態。

 アドルさん達にも、昨日の内に今日は付き合って貰わなくても良い旨は伝えてある。

 ええ、確かにセレナ経由で伝えましたよ。


「もう身体が、そう慣れて来たしね」

「そうそう、朝は意外と涼しいから、ちょうど良いし。

 毎朝、起きる時に眠いのが欠点ではあるけどね」

「昨日の内に断って来たから、いないと思ったらしっかりといるし」

「まぁ自分達の鍛錬時間が、この時間帯になっただけだしな」


 此方は喋る余裕など無いのに、談笑しながらウォーミングアップで横を走る何時もの四人組。

 もともと彼等は講義後と、暗くなってからの夜の一日二回を基礎鍛錬にしていたのだけど、その内の講義後の分を、早朝に回しているらしい。

 朝起きるのさえなんとかすれば、その方が一日の時間の使い方が効率よく、自由に使えるためそうしたらしく、結果的に私の鍛錬への付き合いは、いい口実と理由だそうだ。

 え? ペース上げるんですか? 無理、無理ですっ。

 気合でやれって、無茶言わないでください。

 あと、無理やり引っ張らないでっ。




「へぇ……、はぁ……、ぜぇ……、はぁ……」


 この人達、鬼です。

 早い速度について行けなくて、体勢を崩しそうになる私を、巧い具合に引っ張ったり支えたり押したりして、速度を落とす事を許さないんですよ。

 体力が限界近くでも姿勢を崩さない訓練も兼ねてるって、……姿勢を崩して転ぶ方が危ないのは分かりますけど。


「あれ? あの人、部外者だよね? 見た事ないし」

「講師の先生じゃねえのか?」

「恰好からしたら魔導士だろ」

「って事は、ユゥーリィの関係者?」


 緑の絨毯と化している地面に寝転がって息を整えているところへ、そんな話声が聞こえて来たので、そちらに寝転がったまま視線を向けると、……ええ、おもいっきり私の関係者です。

 コッフェルさん、なんでこんな所にいるんですか?

 そう思っていると、犬を追いやるように手を払うので、おそらく気にせず鍛錬に励めって事なんだけど。

 もしかして態々見学、……って性格じゃないですね?

 おそらく酒の肴に物見遊山に来たのでしょうが、なにか授業参観に来た親みたいで、物凄く気恥ずかしいのですが。


「今は無視しちゃいましょう」

「それもそうね」

「まぁ見た所お爺ちゃんだし、変な気はないだろうしね」

「あったらヤバイだろ」

「流石に、もう枯れてるだろ」


 ギモルさん……、流石にそれは酷いかと、否定はしませんけどね。

 柔軟運動を始めとした基礎運動を幾つか行った後、何時もの全身運動のダンスを……フルセットでって、無理ですよっ。

 せめて二つに分けて、……甘えるなって、酷い。

 無理して身体を壊したら、……ええ、治癒魔法使えますよ。

 筋肉痛防止にも効果がありますので、よく使ってます。




「ぜぇ……、ぜぇ……、ぜぇ……」

「よぉ~、嬢ちゃん、良い具合に扱かれてるじゃねえか」


 先程以上に、余裕の欠片もなく地面にひっくり返っている私に、聞き覚えのある声で話しかけられるけど、返事をするどころか意識を向ける余裕すらないので、完全に無視です。

 今は少しでも多くの空気を肺の中に送ります。

 そう言えばと思いつつ、力場(フィールド)魔法で大気中の酸素を少しだけ口元に集めて肺の中に取り入れる。

 いわゆる簡易的な酸素スプレー。

 酸素は、あまり濃いと酸素酔いをするらしいので、ほんの一、二パーセント分を増すぐらいで二、三秒の時間、それだけで十分に頭が冴えてくる。

 ん? なにかアドルさん達に、私の知り合いだと言っているようですが、あまり変な事を言わないでくださいね。

 変な事を言ったら、しっかりと覚えておいて報復いたしますからね。


「ひっくり返っているところを悪いが、(やっこ)さん達、来たようだぜ」


 うん、分かりました。

 分かりましたけど、もう少し待ってください。

 今はまだ、身体を起こすのも辛いですから。

 確かに回復魔法は既に唱えましたよ。

 でも呼吸と体力の回復は別です。

 若いからすぐ回復すると言っても、限度がありますから。


「じゃあ体力の回復がてらに、一度部屋に戻って着替えちまいな。

 相手がアレだけやる気になってるんだ、運動着じゃ失礼ってもんだ。

 そう言う訳で、そこの嬢ちゃん達、此奴に手を貸してやってくれや」


 セレナとラキアに身体を起こされて視線を向けた先には、あの日、森の中で見た二人の姿を連想させる姿に、どこまで本気なのかと溜息がでる。

 えーと、私、もしかして本気でヴィーを怒らせているとか?

 そんな心配が伝わったのか、部屋に戻って着替えている私に、何事かと心配げに聞いてくるセレナとラキア。

 私としては大げさに考えてなかったのだけど、ヴィー達の本気の格好とコッフェルさんの様子に心配気にしてくれる。

 事情を知らない四人としては、何時もの体術の訓練の分を含めて、濃い目の練習メニューにしてくれたのだと思うけど、裏目に出てしまったと。


「問題ないですよ。

 向こうに戻る頃には、それなりに回復していますから」


 もともと私の身体強化の魔法は操作型、魔力による強化型と違って、筋力の疲労とかはあまり関係ない。

 その代わり、強化型に比べて魔力消費が若干多めなのと、身体の動きに合わせた高度な操作が必要だって事ぐらいだ。

 

「あの人達、魔導士としての私と、本気で手合わせをしてみたいんですって」


 着替えたのは、何時も着ている魔法少女の軍服を模した白の服ではなく、黒い方。

 私の髪や肌の色的に此方の方が目立つので、予備の服としてあったのだけど、今回はコッフェルさんの顔を立てて此方の方を選ぶ。

 そこに狩猟用の黒皮手袋に、収納の魔法の魔導具の腕輪を保護する革当て、それにブーツ。

 本当は此処に弓矢(ボウガン)や収納の鞄に、小物入れを幾つかをぶら下げるけど、今日は狩猟が目的ではなく模擬戦。

 なら、小回り優先でこんなものかな。

 ついでに髪形を……サイドテールの札か……、子供っぽいツインテールよりはマシと思おう。


「ユゥーリィ、その恰好、凛々しくて可愛いわね」

「普段は運動着姿ばかり見ているけど、白いのに続いて、黒いのも足出しなんだ。

 勇気いるぅ~」


 そう言ってくれるのは嬉恥ずかしいんだけど、私としては、そう似合っていると思っていないので、正直、運動着の方が落ち着く。

 おそらく客観的な意見で言えば、二人の言葉は恐らく正しいと思うし、鏡に映った自分の姿は、美少女の部類だとは思う。

 でも、前世で三十代の男だったためか、その印象が強すぎて、鏡に映る自分の姿の横や脳裏に、同じ服を着たおっさんの姿が浮かぶ訳で。

 ええ、痛すぎます。それが自分だと思うと更に切なくなります。

 そう言う理由もあって、自分の服には積極的では無いのだよね。

 用意されちゃった以上は、勿体無いので着ますけど。

 あとラキア、足出しと言っても極一部だからね。

 ちゃんと長靴下を履いているし、スカートが短いと言ってもその上に重ねて着るから、前からほんの少し肌が覗くだけです。

 エロく言わないでもらいたい。


 ぱんっ!


 気持ちを切り替えるためにも両手を叩いて、気合を入れる。

 さぁ、狩るかなっ! ……訂正、今日は狩っちゃ駄目だった。

 そう言えば生け捕りって、今までした事が無かったなけど、なんとかなるでしょう。






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