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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1024/1052

1024.はぁ……、子供の教育に失敗した余が悪いのか、それとも性根が腐った息子が悪いのか。





 インシュウシンカン国国王

【ズイ・ギョウヨウ・インシュウシンカン】視点:




「─────それで、余に如何しろと言うのだ?」


 既に胸の内では呆れ果てて大きく溜め息を吐いてはいるが、一応は息子の一人故に最後まで話を聞いてやろうと話の続きを促す。


「我が国は、たかが小娘に舐められたのですよっ!

 国の威信を賭けて報復すべきです。

 そうでなければ殺された弟の、サキョウが浮かばれませんっ!」


 聞かぬでも言わんとする事は安易に想像が付いてはいたが、実際にその口から聞かされるのとではやはり違うな。

 いやそれも違うか……、余が想像していた以上に愚かしい言葉に、今すぐに典医に頭痛薬を用意するようにと口にしたくなる。

 だが今は自分の身を案じるよりも、したくはないが先に片付けておくべき事がある。


「ふむ、そうか。

 我が国が舐められたのであれば、確かにその認識を正すべくために動く事は必要ではあるな」

「ではっ!」


 何故そこで期待した目を向けれる?

 余は仮定した話として口にしたのだぞ。

 そうなれば話の続きがあると、子供でも分かりそうなものであろうに。


「ところで、ウキョウよ。

 余は、何時、あの国の船を拿捕しろと命じた?」

「命じられるまでもなく、あのような素晴らしい船は我が国が所有していてこそ価値があるというものです。

 それが小娘が治める領地で、商船として扱っているなど阿呆のする事ではないですか。

 それならば我々が使ってやるのが我が国のためである以上に、あの船のためでもありましょう。

 故に復路でもう一度あの港に寄る事を耳にし、迅速に動いて策を弄せたのは我等兄弟で在ればこそ」

「手出しをせぬように、忠告は出したはずだがな」

「大義の前に些細な事ではありませんか」


 自信げに己が優秀さをひけらかす様は、我が息子ながら滑稽で……哀れよの。

 思惑通りに事を成せたのであればともかく、失敗した策など何の意味もなく、残るのは余の命を無視した上で失態を重ねた事実があるのみだと言うのに、まるで己が失態などなかったの様に口にする。


「策は功を奏し、後は時間の問題出船を手に入れれたと言うのに……、あの小娘が全てを台無しにしたのですっ!

 これは我が国から一方的に略奪したに等しい行いっ!」


 まったく此奴の頭の中はどうなっているのか。

 手に入れもしていない物を自分の物だと口にし、相手が奪われまいと抵抗しきった事を略奪だと断じるなど、恥以外の何ものでもないのに、それを欠片も恥だと思うておらぬ様子。

 此奴の教育を担った家の処分を考えねばな。

 ウキョウが問題を起こす度に忠告はしたのだが、一向に直るどころか悪化の一方を辿っておる。

 その結果がこれだ。


「分からぬな。

 お主が言う小娘に一方的にやられたのはお主であろう?

 何故それが余の、延いては国が舐められた事に繋がる」

「父上、我が国の港で起きた襲撃ですぞっ!」

「余の知らぬ所で、お主が勝手にあの地の県令を巻き込んで行った事であろう。

 しかも余の名を勝手に使ってな」

「それは全てこの国のためであっての事です」

「では聞くが、余が、我が国が、お主の言う小娘一人に舐められたと言うのか?

 小娘一人にいいように遣られる、実に情けない国だと、お主は余に申すのか?」

「そ、それは……」


 ほれみろ、この程度の問答で言い淀み口を噤む。

 己が発した言葉に少しばかし言い返されれば、そこで終わってしまうなど、まったく情けない。

 相手と討論し合う修辞学すら碌に身に付けていない。

 これで余の血を本当に引いているのかと、疑問に思ってしまう。


「そもそもな話、我が国とあの国が争った所で勝てると、お主は本当に思っているのか?」


 シンフォニア王国は我が国より大きい。

 認めるのは癪ではあるが、国土、軍事力、経済力、文化、全てにおいて我が国よりも力を持ち優れている。

 戦った所で潰されるのは我が国の方で、その事は火を見るよりも明らか。


「べ、別にあの国に報復せずとも、あの小娘の地のみに狙いを定めれば良いのです。

 幸いな事にあの小娘の治める地は、あの国より遠く離れた飛び地。

 及び腰のあの国の事、小娘の治め土地如きでは動かぬでしょう。

 女人のために動くなど、恥以外の何ものではありませぬからな。

 上手くすれば、あの小娘の治める土地ごと我が国に併合する事が出来るかと。

 我が国の王族を一方的に殺された、と言う口実が我等にあるのです。

 兵達は我等が王族の仇を討つため、そして新たな土地を手に入れるために、否が応でも士気は高まりましょう」


 言っている事は正しい。

 誇りがあるのかと問われれば、無いとしか言いようがないが、上に立つ者としての言葉としてはそれほど間違えてはいない。

 蛮族の治める国であれば、あり得る選択だろう。

 ただし、それで勝て続ける(・・・・・)のであればだ。


「ふんっ、精強な海軍を持つ事で名を知らしめたトライワイト王国が、大艦隊を率いて攻めに行った挙げ句、一方的に遣られた話を知らぬのか?

 もしも知っていて口にしたのであれば、その首の上にある物は不要だな」

「我が国の海軍とて、何処の国にも負けぬほど精強でありましょう。

 父上は、彼等の力をお認めにならないのですか」

「だとしてもだ。

 お主の言うとおり、事が上手く言ったと仮定しよう。

 だが、一時の財を得る事は出来るかも知れぬが、それだけに過ぎぬ。

 あのような遠方の土地など手に入れた所で、持ち続ける事に旨味などなく、寧ろ我が国の財を圧迫するだけの事」


 だいたい、我が国よりシンフォニア王国の方が近いのだ。

 奪った所で直ぐに取り返される事など目に見えているし、例えウキョウが申すようにシンフォニア王国が動かなかったとしても、他国があの地を欲して動く事など容易に想像が付く。

 その後に残るのは、避ける事の出来るシンフォニア王国との対立。

 今あの国を敵にしても、我が国が弱体化する未来しか待っておらぬわ。


「ウキョウよ、余が一昨年、諸国の王が集まる会議に出た事を覚えておらぬのか?」

「いえ、覚えております。

 それ故に、あの小娘が分相応の物を持つ事を知る事へと繋がりました」


 目の前の利にしか目の行かぬ愚か者が……。

 それだけの者を持ちうる何かがあると、何故考えられぬ。


「では聞くが、あの時、余を始めとする重鎮達がシンフォニア王国に足を運んだ力、その力で以てシンフォニア王国が軍を率いて攻めに来た場合、ウキョウよ、お主はどう対処するつもりだ?」

「あの力は魔導具在っての事のはず。

 あの諸国王会議の後、あの魔導具は破棄される事と、世界平和のための会議を開く時以外は製造と使用を禁ずる事を世界中の王に約束したはず。

 さればのあの魔導具を使う事は、彼の国が世界中から責められる事に繋がります。

 そのような愚行を、あの及び腰の王が行うとは思えません。

 父上はどうか将兵達の力を信じ、英断を下さればよろしいかと」


 何が英断だ、どう考えても蛮勇や無謀でしかないわ。

 国家間の約束など何時でも破棄出来るものだし、会った事もないのに何を根拠に及び腰の王と断ずるのか。

 あの王は余以上の曲者ぞ。

 だいたい前提条件が間違っている。


「あの魔導具、我が国の魔導士達の話では、空間移動の魔法を長期の間、維持するだけの代物だそうだ。

 遙か遠き地と結ぶ術者は別にある。

 それは何を意味するのか、貴様には分からぬのか?

 もしも理解して口にしているのであれば問おう。

 その気になれば我が国の何処にでも、魔法で大軍を送る事はおろか、何時でもその場から撤退さえも出来る国を相手に、対処出来る策があるのであれば申してみよ。

 余に言わせれば、例えあの国の国軍でなく、一地方を治める領軍であっても同じ事よ。

 大軍でない分だけ将兵は迅速さを増す上、大艦隊すら退ける希代な魔導士がいる相手ともなれば、数十万の大軍を相手にするよりも厄介だ。

 その力の一端を、貴様はその眼で見てきたのであろう。

 その上で何も出来ず逃げ帰ってきた事実を前に、対処すべき方法があると言うのであれば申してみよ」

「……ぐぅ、し、しかし、その様な弱腰な考えでは、他国に舐められる事になるばかりです」


 国の事を……、民の事を……、王家の事さえ……、己が誇りばかりで本当に何も考えておらぬ下らぬ答えだ。

 確かにシンフォニア王国には舐められるかもしれん。

 だが、あの国は良くも悪くも大国だ。

 平穏と安定を求めており、国外への野望を見せぬようにしている。

 相手が此度の件で穏便に済まそうとしたのは、その考えを汲んでの事であろう。

 影からの報告では、件の少女は力を持ちながらも、その力を無闇に振るう事を避けている節を感じる。

 だが、それだけだ。

 シンフォニア王国以外が我が国を舐められるなら、存分に舐めて貰おう。

 その判断が過ちだったと思い知らせるだけの事だ。

 今、目の前にいる愚か者を含めてな。


「誰が弱腰の王だと?

 先程から貴様、誰に対して口を利いているつもりだ?

 余の熟慮の上での判断を、例え余の血を引く息子だとは言え、貴様如きが何を持って弱腰な考えだと断言する。

 それこそ余に対して、延いてはインシュウシンカン国の国王を舐めているとしか思えぬ発言よ」


 己が分を踏み越えたのだ。

 幾ら余の息子であろうと、大勢の者の前であまりにも多くの愚行を重ねすぎた。

 此度の件は、最早止めと言っていい。

 息子の口から語られるまでもなく、余に忠実な影から既に詳細を報告されている。

 八番目の息子であるサキョウは、何を考えてか双子の兄であるウキョウに敵に我が国の威厳を見せ付けてやるべきだとの言葉を鵜呑みし、全身鉄鎧で海の上に出るなど無謀とも言える愚行を行った。

 その結果、突風に煽られて落水し、身に着けた鎧の重さで浮かび上がる事なく水死と言う、実に情けない死に方をしている。

 間違ってもウキョウが口にしたように、話し合いの最中に相手が一方的に攻撃魔法を放たれたからではない。

 そのような調べれば直ぐ分かる虚言で以て、余を謀る事が出来ると思っている時点で余を舐めているとしか思えん。

 余から言わせれば、サキョウの死の責任は唆したウキョウにこそある。


「それと、先程から貴様の言う小娘に舐められていると口にしているが、相手を舐めているのは貴様であろう。

 相手が女人だと軽視し、余の名を勝手に使い無謀な策を企んだ挙げ句に失敗。

 民衆に恥を喧伝されて、仕方なしにあの地を治める県令の助言で謝罪の儀に応じたまではまだ我慢できたが、せっかく事態を最小限の傷で収めたと思ったら、それさえも無に帰さんとばかりに配下の者を使って襲撃。

 大方、余に黙って貴様の一存で勝手に約束した事を、相手を始末する事で無かった事にするつもりであったのであろう。

 そうすれば魔導船も手に入れられ、失態をも隠せると考えたか?

 だがその襲撃も相手に近付く事すら出来ず、一瞬で終わらせられたそうだな。

 幸いな事に向こうは事の次第を問う価値すらないと、襲撃その物をなかった事にしてくれたと言うのに、その相手に対して宴の席で嫌がらせ三昧をした挙げ句、相手を怒らせた結果が屋敷にいた者達全員を恐怖に陥れる事態に発展。

 そんな中、貴様は床を濡らす無様な姿を見せたと言うではないか。

 余が知らぬと思うてか、妄言ばかり口にしおって、貴様の口からは何一つ信じるに値する物がないと、自らが証明していると何故気付かん。

 だが、身分を隠して宴に参加した事だけは褒めてやろう。

 そのおかげで我が国の王子は、いい歳をして他国の客人の前で粗相をする恥曝しだと知られずに済んだのだからな」

 ギリリ……。


 己が虚言を暴露されただけでなく、隠しておきたい事まで余に口にされ悔しさで歯ぎしりする音が玉座まで聞こえてくるが、本当に恥ずべきは己の矮小な誇りではなかろうに。


「貴様はシンフォニア王国が出て来る事はないと思っていたようだが、儂はそう思わぬな」


 余は側に控えている者から一枚の紙を取り出し、跪いているウキョウの前に放り投げてやる。

 その紙に書かれている男に見覚えはないかと問えば、案の定、男のくせに彼の少女に仕えているらしい、恥知らずな老人だと口にする。


「己が身分を隠して会っていたのが、貴様だけだと何故思える。

 その策を思いついた時点で、相手も同じ事をしているかも知れないと疑うべきであろうに。

 貴様が、今、恥知らずな老人だと口にしたその男だが、余は彼の国で顔を見ておるし、その名を覚えているぞ。

 教えてやろう、その者の名はジルドニア・ラル・アーカイブ、彼の国を長年支え続けている宰相よ。

 付け加えて言うならば、貴様が襲撃させた船に乗船しており、配下の者を使って襲撃させた現場にもいた」

「う、嘘だっ!

 あんな小娘にそんな大物が付くなど有り得ないっ!」


 顔を青くし虚勢を張る姿は、まことに滑稽よ。

 大国の宰相を己が勝手な判断で襲った愚かさに気付きながらも、その過ちの大きさの前に、現実を受け入れずに塗り潰さんとばかりの大声で否定をする。

 だが幾ら幼子のように駄々を捏ねようが、襲撃した事実は変えられん。

 どう考えても我が国よりも、大義は向こうにある。

 相手が国であれ一県令(りょうしゅ)であれ、戦火が開かれれば非難されるのは我が国の方よ。

 そもそもな話、幾ら稀代の魔導士とは言え、一領主の商船に大国の宰相が偶然にも乗り合わせていたなどと言う事があるはずがない。

 間違いなく空間移動の魔法で以て移動してきた事は間違いない。

 そしてそのために宰相が動いている時点で、件の魔導士を国が目を掛けている証拠に他ならない。

 必用とあれば戦端を開く事も厭わないとな。


「事実だ、そして口を慎め。

 何を根拠に余を嘘つき呼ばわりする。

 幾ら余の息子であっても不敬が過ぎるぞ」

「も、申し訳ございません。

 驚きのあまり口が過ぎた事、深くお詫びします。

 ですが宴の席と言う場で、相手が無法にも魔法を使ったのは事実です。

 そしてその宴の場には私、この国の王族もいた以上・」

「黙らぬかっ!」


 いい加減に下らぬ言葉を聞くのにも、余の忍耐にも限界が来た。

 王として相手の言葉は最後まで聞くものではあるが、あまりにも愚劣すぎて聞くに堪えないとウキョウの言葉を途中に、無理矢理に黙らせる。

 それと同時に横に控えていた衛兵達が、余の意図を汲んでウキョウを跪かせたまま床に押さえ付ける為に動き、余はそれを静観する。

 これ以上、息子の情けない姿を見たくはないが仕方在るまい。


「魔法? それを使った証拠が何処にある?

 例えそうだとしても、その結果は相手に無礼を働き過ぎた貴様等を震え上がらせたに過ぎん。

 どういう手段であれ、相手を威嚇する事など、会談の場において初歩の初歩。

 自分が相手にした所業を恥もせず、その様な事を口にする事自体が恥の上塗りでしかないわ」


 その言が通るなら、目が合っただけで相手を悪いと言う事になる。

 尊き者と目が合う事自体が不敬と取る事もあるが、それはその場その場にあった礼儀を求められている事に反した場合だ。

 此度の件は、宴席という場において数々の無礼を受けながらも、彼の少女は最後まで冷静に言葉を荒げる事なく、おそらく魔法による示威行為のみで終わらせた以上、明らかな無礼を働き続けた愚息にこそ非があるのは、誰の目にも明らか。

 だが息子の……、ウキョウめの愚かしさを考えれば、それも仕方ないかもしれん。


『冗談を口にしただけですよ。

 本気にする方が悪いとは思いませんか?』


 お茶を置く時に音を出してそれが耳障りだと、側仕えに自分が許可を出すまで食事は抜きだと餓死させた事もあれば、基盤遊戯で自分を苛つかせた相手を死んで詫びろと言って相手を死に追いやっておいて、その事について問い質した際に帰ってきた言葉がこれだ。

 相手の家族に責を及ぼすぞと王族の立場で脅しておいて、その無責任さを口にする。

 その話を聞いた時、全ての職務から放ち、何度目かの再教育を命じていたのに今回の騒ぎ。

 そういった事の積み重ねもあるが、今回の件はそれだけではない。


「ウキョウよ、カズイゲツの息子の一人が病に冒されているのは知っていよう?」

「ああ、そう言えばそうでしたね。

 ですがそれが何か?

 とうとうお隠れになりましたか?

 まぁ、カズイゲツの兄上には申し訳ないが、弱く生まれた奴が悪いとは思いますがね」


 王太子であるカズイゲツの息子の一人、ホウヨウは強すぎる魔の力故にその力に身体が耐えられない病気に冒されている。

 確かにウキョウの言う事はある意味正しくは在るが、それは縁も所縁もない者が口にしてこそ許される言葉。


「彼の国はこの病気に対して、治療法を確立したと聞いている。

 ホウヨウを遊学の名目で、あの国に遣るために協議を交わしていたのだ。

 貴様はその芽を摘み取ったかも知れぬのだぞ」

「それは兄上には気の毒な事をしましたな。

 だが、子供なんぞまた作れば良いだけの事でしょう。

 もっと真面な子供を産む腹を父上が用意して差し上げれば、それで済む話ではありませんか」


 そうかウキョウよ、貴様はそう考えるのだな。

 家族としての情は不要だと。

 ならば仕方あるまい。

 貴様が発した言葉、そのまま返そう。

 余は覚悟を決めて言葉を紡ぐ。


「数々の失態に勝手な振る舞い、余は腹を決めた。

 ウキョウ、貴様の名を我が家門の系図から削る。

 今この時より家名は勿論の事、余が与えた名をも使う事は許さぬ。

 汚れた血を残さぬように宮刑に処し、これまで積み重ねた罪を知らしめる墨刑に処した後に、せめてもの情けとして幾ばくかの貨を持たせて放り出せ。

 此奴の妻達は実家に帰し、子供は女児であれば生涯尼として寺へ預け、男児であれば宦官として育てよ」

「なっ、父上っ!

 そのような非道な事を仰られるとは、父上には親としての家族の情はないのですかっ!」

「その痴れ者の口を閉じさせよ。

 何者ですらない者に父呼ばわりされるほど、余の身は卑しくはないわっ!」

「むごごぉっ」


 僅かな間に息子を二人も亡くした。

 忙しさのあまり、子供達の事を気に掛けて来れなかったのは事実だが、優秀で性格の良い子供達もいる以上アレを庇う理由がなく、無理を通して庇うにはアレは罪を犯しすぎた。

 せめて何処かで静かに生きて欲しいと願うばかりではあるが……、おそらく無理であろうな。

 さて、彼の国に謝罪をするための使者の手配と、謝罪と我が国として行った事ではない事を認めた手紙を用意せねばならぬ。

 一日でも遅れれば、それだけ戦火が開かれる可能性が高まる。

 今あの国と戦っても利する事もなく、徒に無辜の民を不幸にするだけにすぎん。

 それだけは王として避けねばならぬ。

 まったく悲しむ暇も与えてくれぬとは、王とは辛いものだな。

 だが、逸れも余が自ら招いた事。

 アレを早々に処分してこなかった余の甘さであり、余の犯した罪だ。






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