お手伝いさん・前
女神様の後任になる、なんて大言を吐いてみたものの、何をすればいいのかが何一つとしてわからない。
私の宣言を聞いた途端女神様は早々に退散しので現状白い空間に一人。
此処でどうすればいいのかも分からないし、下手に動くわけにもいかないし……
本当どうすればよいのかがわからないものです。
横になってお手伝いさんとやらを待てばいいのだろうか?
いやというか私後任になるとは言ったけど人のままなの? 魂のままなの? それとも女神に格上げ……格上げ? 女神に成る?
別段と私が何か変わったとかそういう感覚は無いので私は私のままなのだと思うけれども、実際どうなのだろうか。
自己について考察を始めるも、答えが出るはずもないので即座に棚に上げる。
わからないものはわからないままでいいのだ。何せ結論が出るはずもないのだし。
――ジジジ
空間が震えた気がした。
例えるなら画面が乱れるような歪むような、そんな感覚が継続して視界と聴覚を乱す。
一際大きく前方が歪み――
淡く明滅する白い球体が出現した。
『移動――完了。状態確認――無問題。対話能力更新――実行中。空間スキャン――実行、深度理解不能、周辺のみ完了』
なにこれ。もしかしなくてもこの一昔前の映画に出てきそうなロボット反応を示してるのがお手伝いさん? 友好的に見せかけて最終的に実はラスボスでした、みたいな感じの? 正気ですか前任者。
『肯定、当方が後任に派遣されたL型サポート用端末球体版。貴女が後任か?』
「あっ、貴方も心読むタイプね把握しました。はい、私が後任になってしまった元ただの一般人です」
『了承、当方は先ほど作成された後任のお手伝いさん。問題児の後任、把握した。問いは?』
「寧ろ問いだらけなんですけどそれは」
何で初心者の私に問いがないと思うの。私という存在も分からないし、お手伝いさんが何を手伝えるのかも分からないし、業務関連知識皆無ですし、前任女神様やっぱり問題児なんですねとも思うし、何故君も心を読むのかも疑問だし、これからどうすればいいのかもわからないわけなのだけど。
私は何処からわからない事を解消するべきだと思う?
『当方は後任たる貴女の為カスタマイズされた。前任者より後任は語るより悟られたいと断定された。故に読心可能』
「私は余計なお世話と思うべきかな、感謝するべきかな、それとも他の反応を示すべきかな?」
『笑えばよいと判断します』
「うん? 今なんか」
『貴女についての疑問を返答。元は人間、現在は女神に変化中』
「変化中、というのは?」
『この空間は後任を創る空間。長時間此処に滞在、結果女神となる』
「此処にいると女神に代わっていくってことなのかな? 実感わかないのだけど」
『疑問、実感とは?』
「女神になっていく実感? 特別変わった感じはしないというか、新しく何かができるようになった気がしないというか」
『問い、業務進行と伴っていくモノでは?』
なるほど。なるほど?
そもそも女神じゃないと業務できないのでは?
いえ、でも確かにやってれば覚えていくので実感は伴っていく、けど。
あと今更だけど業務扱いでいいの、仮にも神の御業だよね。
『当方は問題無いと判断』
「まぁ、君が良いと思うのであればいいか。どれぐらい経てば完全に女神になれるのかな?」
『推測、業務を続けていけば必ず』
「いや、それはそうなのだけれども。恐らく何回転生及び転移したら、もしくはどれぐらいの期間を此処で過ごせばいいのか、とか」
『多分おそらくきっと五回』
「そんな曖昧で大丈夫なの?」
『大丈夫だ、問題ない。前任及び蓄積された記録によりサポートは万全だと判断する』
「君さてはオタク文化もガッツリと入れられてるね?」
『否定。何を言っているのか理解不能。当方は完璧で幸福なお手伝いさんである』
「語るに落ちているのですがそれは」
このお手伝いさん大丈夫なのかな、結構ポンコツな気がしてきたのだけれども。
というか此処まで来て業務説明皆無とかそういう事ある?
記念すべき初めてのお仕事以前に業務説明をまだ聞いてないのだけど?
これで実は私はただの物置だから何も知らなくても問題ない、だったらまだいいけど、女神見習いとしてやるべき事を把握しないまま初業務に叩き込まれたら困るよ?
お手伝いさんだよね? ちゃんと説明して。
『そう、私がお手伝いさんだ』
「違うそうじゃない。今はそういう反応を求めてないです」
『……了承、業務説明を開始する』
一度にアップしようと思ったけれどもそんな事はなかったのであった……