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ミッション88 兎頭マッチョメンVS新たな戦隊ヒーロー・・・!? 前編

新話が幾つか完成したので投稿します。

宣言通りなんとか2月までに間に合いました。

今回はギャグとかコメディよりもバトル要素が多目です。それでも良い方はどうぞご覧ください。



「ウサウサウサウサァァーーッ!!」


 ピョン太郎は走っていた。

 ディーアルナを見失った後、彼女を探して街中を縦横無尽に走り周っていた。


「ウサッ!ウササッ!」


 そしてようやくディーアルナの居場所に気付いた彼は、ビルの壁を駆け上がり、ビルとビルの間を跳んで渡り、彼女の下へと向かおうとしていた。

 距離的にはまだ遠く離れてはいたが、しかし怪人化した際に手に入れた自身の驚異的とも言える脚力ならば、あと数分程で到着する事だろう。そう判断したピョン太郎は両の足を動かし、出せる限りの全力で駆ける。


「ウサッ!ウササッ、ウサッ!」


 ああ、ようやく自身の飼い主に、ディーアルナに再会できる・・・!!そう思ったピョン太郎は、彼女と再会した際にやりたい事を思い浮かべて、フシューッ!と荒い鼻息を吐いた。

 つまりは◯◯◯(ピー)◯◯◯◯(ピー)◯◯◯(ピー)な事を。


「待てぇいっ!町を破壊するそこの極悪非道な怪人よ!」


「ッ!?」


そんな時だった。ピョン太郎の頭上を三つの影が飛び越えたのは。

三つの影はピョン太郎の目の前に着地すると、クルリと身を翻してそれぞれにポーズを取り始めた。


「渦を巻き、あらゆるモノを吹き飛ばす暴風!『サンハリケーン』!!」


 最初にポーズを取ったのはピョン太郎から見て左側にいる、手足の先から胴体に向かって伸びる吹き荒ぶ風を表している様な柄が付いた緑色のヒーロースーツを着ている人物であった。

 頭部にドレッドヘアーの様な飾りが付いた頭全体を覆うヘルメットのような仮面を被ったその人物は両手をパンパンと擦り合わせる様に叩くと、両腕を上下に構える。


「迸り、瞬きの間に軌跡を刻む雷光!『サンライトニング』!!」


 次にポーズを取ったのはピョン太郎から見て右側にいる、手足の先から胴体に向かって伸びる稲妻の様な柄が付いた黄色のヒーロースーツを着ている人物であった。

 頭部の耳の辺りに横に向かって伸びる突起が付いた頭全体を覆うヘルメットのような仮面を被ったその人物は、大きく広げた両腕を手首をクルクル回しながら下から上へと上げていき、開いた両手の片方を前に、もう片方を腰辺りに構える。


「燃え盛り、この世を明るく照らす輝く日輪!『サンフラッシュ』!!」


 最後にポーズを取ったのは先の二人の真ん中にいた、手首の先から胴体に向かって伸びる橙色の揺らめく炎を表しているような柄が付いた白いヒーロースーツを着ている人物であった。

 頭部に後ろに伸びる様に幾つもの三角状の突起が外側に付いた頭全体を覆うヘルメットのような仮面を被ったその人物は、自身の前で両腕を十字に構えた後に空気を切るように勢いよく横へと払った。


「「「三人揃って、天候戦隊『サンライザー』」」」


 最後にバッ!ババッ!バッバッ!という感じにそれぞれポーズを決める三人。

 同時に、赤、緑、黄色の彩色豊かな爆発が彼等の背後で起こった。








「覚悟しろよ、怪人!これ以上町に被害が出る前に速攻で倒してやるからな!!」


「(ふっ、決まった!久しぶりのヒーローとしての活動だからな、盛大にカッコつけさせてもらったぜ!)」


 仮面の裏でドヤ顔を浮かべながら、ビシィッ!とピョン太郎に指を突きつけるサンフラッシュ。その内心では前回から数えて約数か月ぶりにヒーローとしての活動が出来ることに喜びを覚えていた。

 ・・・・・・まあ、それと同時に前回自分の身に起こった悲劇―――客観的に見れば喜劇に見えるかもしれない―――を思い返して、若干憂鬱な気分にもなっていたが。


「(前回、あの動物園の時は、いざ怪人達と戦おうとした際に突然暴走した動物達に横やりを入れられて、訳も分からない内にやられてしまったわけだが・・・しかし、今回は大丈夫だろう。なにせ今の俺には仲間がいる!例え不意打ちをされようとも、助けてくれるだろう強力な仲間がな!!)」


 サンフラッシュはそう内心で思いながら、顔は前に向けたまま視線だけを左右にいるサンハリケーンとサンライトニングに向ける。

 サンフラッシュが二人と会ったのは、今からほんの数日前の事だった。

 前回の動物園での一件で大怪我を負い、その後数ヵ月の間入院生活を送っていた彼だったが、しかし落ち込むことなく、塞ぎ込むこともなく、退院した後も再びヒーロー活動を再開しようとしていた。・・・・・・のだが、そんな時に突然ヒーロー連合協会から二人を紹介され、チームを組むようにと言われたのだ。

 当然、最初はサンフラッシュも戸惑った。なにせ、事前に何の通達も無く、ヒーロー連合協会の支部に顔を出したその日にいきなり言われたのだから。

 ・・・いやまあ、実を言えばチームを結成させようという計画自体は以前からあるにはあった。・・・あったがしかし、肝心のチームメンバーが集まらなかったがために、初期構想の段階から頓挫していた計画でもあったのだ。

 それ故に、サンフラッシュはこれまで基本一人で―――時に他のヒーローと協力する事もあったが―――ヒーロー活動を行ってきたのだ。なのに、そこへ突然計画に必要なメンバーが集まったなどと言われても、「本当でござるかぁ~?」といった感じに疑って掛かるのは無理もない、むしろ当然のことと言えた。

 だが、そんなサンフラッシュの疑問とは裏腹に、サンハリケーンとサンライトニングの二人はヒーローとして十分な、どころか類い稀なるとすら言えるであろう才能を見せつけてきた。


「(ハッキリ言ってこの二人の実力は、日本支部に所属しているヒーローの中でもかなり上位に食い込める程だ。そんじょそこらの怪人なんざ相手にすらなりはしない!)」


 つい先日の事だが、二人の戦闘能力を確認する為に丁度近場に潜んでいた野良怪人の集団―――規模としては中規模の悪の組織や秘密結社と遜色ないレベル―――と戦闘を行っている。本当はもっと小規模の所と戦わせようと考えていたのだが、偶然にも町中で暴れまくっているところに出くわしたので、実質なし崩し的な感じでの戦闘であった。

 ・・・だがしかし、だがしかしだ。驚くべき事に二人は、その戦闘で暴れていた野良怪人の集団を壊滅させてしまったのである。しかも、なんとたった半日で、だ。

 傍で見ていた―――というか、あまりにも圧倒的過ぎて見ている事しかできなかったサンフラッシュからしても、その戦闘能力の高さは圧巻の一言。むしろ先程彼が呟いたように、その実力は日本支部に所属するヒーローの中でも上位の実力者達と同等か、状況次第ではそれ以上になるのではと思えてならなかった。

 ・・・・・・まあ、だからこそ。なんでそんな二人が自分の所に来たのかが分からないとサンフラッシュは内心で首を傾げていたわけなのだが。

 ハッキリ言ってサンフラッシュはヒーローとしてはあまり活躍できている方ではない。その知名度も底辺に近く、知っている人ぞ知るといった程度でしかない。

 そんな自分のところよりももっと良いところに―――例えば自身の同期であり、自身とは対照的にヒーローとしてかなり活躍して有名となっている『レッドスティンガー』のところとかであれば、ヒーローとして存分に活躍できる筈なのに、とサンフラッシュは思っていた。

 不思議に思っている事と言えばもう一つあった。それは二人のサンフラッシュに対する距離感の近さだ。

 何故かサンハリケーンとサンライトニングの二人は、チームを結成した時から「パーソナルスペース?何それ?」と言わんばかりに結構な頻度でスキンシップをしてくるのだ。

 ボディタッチなんか序の口。腕を組んできたり、後ろから抱きついてきたり等々、ごく自然にそういった事をしてくるのである。二人共が、だ。

 これが異性、つまりは女性であれば自身も悪い気はしない、どころか嬉しいとさえ思うのだがしかし―――残念ながら二人は男だ。

 サンハリケーンの見た目は身長一七◯cmくらいの王子様系のイケメンといった感じで、中性的な容姿と透き通るような水色の瞳、長い銀髪をポニーテールにしている様も相まって男装の麗人を思わせる―――だが男だ。

 サンライトニングの見た目は一般男性の身長に比べれば小柄且つ華奢な体型であり、首辺りまでの短い茶髪に緑色の瞳、幼げな容姿も相まってワンコ、つまりは可愛らしい子犬を思わず連想してしまう―――だが男だ。

 何故そんな頑なに男だと言い張っているのかと言えば、それにはちゃんとした理由があった。

 まず二人には身体の起伏が、つまりは女性の象徴とも言える胸が無い。・・・まあ、それだけなら貧乳―――俗な言い方をすればペッタンコなんじゃないかと思えるかも知れないが、決定的だったのは少し前に事故で二人の胸を触ってしまった時だ。

 その時の二人の胸は固かった。鉄板かと思ってしまうくらいにカッチカチだった。・・・・・・カッチカチだったのだ。

 故に、例えなんか良い匂いを漂わせていても、胸以外の部分がフニフニと柔らかくても、胸の辺りを触ってしまった時に恥ずかしそうに顔を赤らめさせていたとしても、男だと言ったら男なのである・・・!!

 閑話休題(話が脱線したが)

 ともかく、そんな二人がいれば―――いいや、自分達三人が力を合わせれば、怪人の一体や二体なんて軽く一捻りにする事ができるだろうと、そう考えたサンフラッシュは二人に声を掛けた。


「よし!いくぞ二人共!」


「了解ッス、リーダー!先行はウチに行かせてもらうッス!」


 三人の中で一番初めに攻撃を開始したのはサンライトニングであった。頭の左右に付いている突起部分に両手を添えるとその先端が発光と帯電し始め、徐々に、しかし加速度的にそれは大きくなっていく。


「食らえッス!【サンダービーム】!!」」


 ビビビビビビッ!バチバチバチッ!


 そしてサンライトニングが両手を前へと伸ばした瞬間、その突起部分から二本の電撃が放たれた。

 太く、力強ささえ感じさせる二本の電撃は真っ直ぐにピョン太郎の下へと向かい―――そして直撃した。


 ビリビリビリビリバチバチバチバチッ!!!


「ウサササササササッ・・・!?!?」


 サンライト人から放たれた電撃を食らったピョン太郎はガクガクと体を震えさせて感電する様子を見せる。


「今度は私の番だ!・・・食らうがいい、【ハリケーンスライサー】!!」


ヒュォォォオオオッ・・・!ビュォッシャァァァアアアッ!!!


 そこへ休ませる暇は与えないとばかりにサンハリケーンが追撃を行う。

 自身の周囲に存在する大気を両手に収束、高速回転させ、極小規模の竜巻―――しかも鉄板くらいなら容易く両断できるだけの切れ味が伴ったやつ―――となったそれをピョン太郎に向けて放った。

 感電した事により体が若干の強張りを見せていたピョン太郎は、自身に向けて放たれたその攻撃に気付いた瞬間になんとか両手をクロスさせて防御の構えを取る。


ヒュゥゥゥウッ、ザシュザシュザシュザシュッ・・・!!!


「ウサッ!?ウササッ!?」


 そしてピョン太郎のクロスした腕に当たった瞬間、極小規模の竜巻は彼の体を包み込み、風の斬撃によってその全身を切り刻んでいく。

 ・・・だが、大ダメージとは行かなかったらしい。精々体表面に多数の切り傷を付けたのみであり、ピョン太郎の体は五体満足のままであった。


「うっそぉ・・・ハリちゃんの攻撃を受けてあれだけしかダメージを食らってないって、どんだけ頑丈なんッスか、アイツ」


「・・・気を付けるんだ、ライト。どうやらあの野良怪人、以前私達が相手をした連中よりも確実に強いぞ」


「そんなの見れば分かるッスよ!ハリちゃんの攻撃で体がバラバラになってない時点で相当にヤバそうなのはお察しッス!」


「(・・・えっ、そうなの?あの兎頭のマッチョメン、そんなにヤバい奴なの・・・?)」


 自分達の攻撃を受けて倒れない、どころかふらつきもしないピョン太郎に警戒心を強めるサンライトニングとサンハリケーンの二人。

 一方、サンフラッシュだけは「え、マジで?」とビックリしていたが。


「(え、ええ・・・うそだろ・・・コイツ、そんなに強いのかよ。・・・いやまあ、野良怪人の集団を半日で壊滅させた二人の言う事だから間違いはないんだろうけど・・・・・・)」


 この二人が警戒をする程の相手、という事実に若干腰が引けていたサンフラッシュであったが、しかしその後すぐに「いやいや、ここで逃げ腰になってちゃダメだ・・・!」と己の戦意を奮い立たせた。


「(・・・・・・よし。こういう時はリーダーである俺が前に出るべきだよな!なにせリーダーだからな!仲間が足踏みした時こそ率先して前に出て、皆を導くことこそリーダーとしての責務だからな!・・・・・・まあ、戦闘能力的にはこのチームの中で一番弱いんだけどさぁ)」


 サンフラッシュの戦闘能力は二人と比べてそう高いものではない。実力的には中堅どころが精々だろうし、序列的にも下の上から中の下辺りだろう。

 だがそれでも、二人が戦っている様子をただ後ろで見ているだけというのは彼の性に合わなかった。せめて二人が攻撃に専念できるように相手が放って来るであろう攻撃を潰すくらいの援護はしようと考えたサンフラッシュは、上半身を前へと倒し、何時でも飛び出せる体勢となる。


「・・・こうなったら()()をやるよ、ライト。準備はいいかい?」


「アレって・・・もしかして()()のことッスか!?いや確かに練習してたッスけど・・・でもあれ、まだ完成してないッスよ?出来て精々八割くらいッス」


「・・・え?待って、ちょっと待って、アレって何?何なの?ちょっ、二人だけで分かってないで俺にも説明―――」


「八割も出来ていれば十分だ!行くぞっ!!」


「もう、しょうがないッスねぇ!タイミングは任せたッスよ!!」


「お願い聞いて!?アレって何なのか教えてっ!?」


 ・・・が、覚悟を決めたサンフラッシュが前に出るよりも早く、二人が先にピョン太郎に向かって飛び出してしまった。二人の間だけで通じる”アレ”という言葉を連呼しながら。

 当然、「アレって何!?」と叫びながら二人に問い掛けるサンフラッシュであったが、しかしその問いを二人は無視。それぞれ左右に分かれると、攻撃の構えを取った。

 サンハリケーンが全身を横方向へと回転させ、それに合わせる様に周囲から集まった大量の大気が高速回転を始め、その反対ではサンライトニングが頭の左右の突起部分から頭上に向けて電撃を放ち続け、自身の頭上に身の丈ほどの雷球を作り出していた。


「吹けよ旋風!【ビッグハリケーン】!」


「轟け稲妻!【サンダーレイン】!」


「「必殺!【ビッグサンダーストーム】!!!」」


 ビュォオオオオオオッ!!ビリビリビリビリバチバチバチバチッ!!!


「ウサササササササッ!?!?」


「スッゴォッ!?というか、何時の間にそんな合体技練習してたの!?」


 そして放たれる二人の大技。

 巨大竜巻はピョン太郎の体を包み込んでその姿を覆い隠し、さらにそこへ雷球が直撃、同化して、まさに雷の渦とも言うべき姿へと変貌した。

 その攻撃を受けたピョン太郎は驚愕と悲鳴の様な叫び声を上げながら、雷の渦の中で体を反らしたり、横に傾けたり、グルングルン回転する様子を見せていて、それはまるで悶え苦しんでいるかのようにも見えた。

 ちなみに、その様子を見ていたサンフラッシュはと言えば、「何この技・・・俺知らない、何も聞いてないんですけど。―――というか容赦ってもんがないな、オイッ!?」と半ば呆然としつつ驚きの声を上げていた。

 しかし、同時に彼は思った。「とはいえ、これであの兎頭の野良怪人は終わりだろう。あれ程の攻撃を受けて無事で済むわけがない」と。

 もし仮にあんな攻撃を自身が受けようものなら、まず間違いなく己の体は肉片になるまで切り刻まれ、雷撃に焼かれて消し炭になっているであろうと、攻撃の規模や威力から考えてそう簡単に予想出来たからだ。

 サンハリケーンとサンライトニングもまたサンフラッシュと同じくこれで勝ったと思ったのだろう。それぞれ戦闘の構えを解いたり、ガッツポーズをする様子を見せていた。


「・・・ウ・・・ウウゥ・・・!ウゥッサアアアァァァーーーッ!!!」


ブッパアアアァァァンッ!!!


「「「え・・・えぇぇえええっ!?!?」」」


 ―――その瞬間だった。ピョン太郎が気合の籠もった大きな声を上げながら自身の体を包み込んでいた雷の渦を吹き飛ばしたのは。




次回投稿は2/17を予定です。

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