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ミッション80 一段落したその後で・・・・・・?

なんとか予定通りに投稿できました。今回はちょっと文章長めです。



「ふぅ・・・よかったぁ、なんとかなってぇ・・・」


破壊された洞窟の壁の向こう。真っ暗闇の世界へとオンパァーの姿が消えていくのを目にした俺は、肩から力を抜いてホッと息を吐き出した。

いや、本当に良かった。もしアイツが始めたクイズゲームに負けていたら、いったいどうなっていたことやら。


「アルミィもありがとう。お前のお陰で本当に助かったよ」


それから俺は、巨大虎化を解除し、半獣半人の形態にその姿を戻しながら俺の近くにやって来たアルミィにもお礼を言う。

彼女の活躍がなければこの状況は打破出来なかっただろう。改めて感謝しかない。


「そんな・・・!お礼なんていいんですよ、姐さん!姐さんの役に立つ事をするのは、舎弟として当然の事ですから!」


アルミィは俺の言葉を耳にすると、開いた両手を左右に振って、「まるで気にしないでほしい」と言いたげな反応を見せた。

というか、舎弟て。そこは同僚じゃダメなのだろうか?いやまあ、立場上では俺の方が上司に当たるんだけどさ。


「それに、姐さんに卑猥な事を言わせて辱めようとしていたあの似非紳士野郎の事を、思う存分ブッ飛ばしたかったですし!」


そう言いながらニッコリと笑みを浮かべるアルミィ。

だがよくよく耳を澄ませてみれば、彼女の喉元からは「グルル・・・!」といった感じの唸り声が聞こえてくる。

どうやら内心ではあのオンパァーには相当腹を立てていたらしい。その所業を思い出したからなのか、ニッコリ笑顔の裏に凄味が感じられる。

・・・どうしよう。今のこの娘マジで怖い。いや、俺の為に怒ってくれているって事は分かっているんだけど。というか、卑猥な事とはいったい・・・?


「イー、イーイイー、イーイー。イイッイー、イー?イッ、イイイー」(おーい、ディーアルナ様ー、アルミィー。二人とも話している所悪いんだけどさー、俺の事を忘れないでほしいんだがー?あと、出来るなら下ろしてくれるとありがたいんだけどさー)


ゴゴゴッ・・・!といった感じの擬音が聞こえそうな雰囲気を背負うアルミィの前にして、思わず頬に一筋の冷や汗を流しながら足を一歩後ろに下げてしまう俺であったが、しかしそこでふと、誰かが俺達に向かって声を掛けてきている事に気付いた。

その声の主は戦闘員二号であった。

俺達がいる所よりもだいぶ高い位置で、且つ結構な角度で傾いてしまっている椅子に座っている彼は、どうやらそこから降りる事が出来ないでいるらしかった。

彼に備わっている身体能力を考えればあれくらいの高さは怪我なく降りられそうなものだが、おそらく今現在座っている椅子の傾き具合が酷いせいで、体勢的にキツくて体を上手く動かす事が出来ないのだろう。現に今も椅子から落ちない様にプルプルと踏ん張っているようだし。

だからこそ、自身を椅子ごと下ろして欲しいと叫んでいたようだ。


「あっと・・・すまない、二号ー!今から下ろすからちょっと待っていてくれー!・・・ええと、確かこの辺にアイツが操作していたリモコンがあった筈・・・・・・」


戦闘員二号の声を聞いた俺はそう返事をすると、オンパァーが座っていた司会者席へと向かい、ガサゴソと物色していく。


「お、あったあった。これだこれ。ええと・・・たぶん、これがあの椅子を下ろすボタンかな?」


そして目的の物であるオンパァーが操作していたであろうリモコンを見つけた俺は、それに付いていた椅子を下ろすボタンと思われるモノをポチッと押した。

すると舞台に設置されていて、上昇し、傾いていた椅子がヴィーンと音を立てながらゆっくりと降り始めた。


「イィ・・・イー、イイー。イー、イーイーイイー、イーイー」(ふぅ・・・ありがとよ、ディーアルナ様。いやぁ、流石にあの高さをあんな不安定な体勢で落ちるとなると、上手く着地出来る自信が無かったからな)


「いや、本当に助かった」と呟きながら俺にお礼を言う戦闘員二号。

まあ、確かにあの高さから降りるというのは、幾らサイボーグ化していて身体能力が常人よりも上となっているとしてもそれなりの覚悟がいるだろう。普通の人間であれば落ちればまず間違いなく大怪我を負うであろうし。

実際、俺もオンパァーと戦うアルミィを助けるために飛び降りた―――いや、あれはどっちかと言うと跳び上がったと言った方が正しいのかもしれないが―――時も相当な勇気が必要だった。

高所から落ちるという事に本能的な恐怖を覚えていたからだ。

・・・まあ、最終的にその湧き上がって来た恐怖は気合で無理矢理捻じ伏せたのだけれど。


「イイイッ・・・イッ、イイッ。イー?イーイー?」(それはそれとして・・・おい、一号。大丈夫か?自力で動けるか?)


戦闘員二号の話を聞いてあの時の自身の状況を思い返していた俺であったが、そんな俺を尻目に戦闘員二号が司会者席の近くに置かれていた大きな籠へと近づき、そこに入っていた戦闘員一号へと声を掛けていた。


「・・・ピポ、ピポポ。ピポポポポポ・・・・・・ピポポ、ピポパポ」(・・・すまん、ちょっと無理。あのデンキウナギから受けた電撃のダメージが思ったより大きくて・・・・・・動けるくらいに回復するには、あともうちょっと時間が欲しい)


戦闘員二号に声を掛けられた戦闘員一号はそう言葉を返す。

外見は未だに全身真っ黒の煤けている状態ではあるが、しかしどうやらその中身は自動修復機能で徐々に治って来ているらしい。

それを聞いた戦闘員二号は「そうか」と頷くと、戦闘員一号の体を大きな籠の中からスポッと引き抜くと舞台セットの壁に寄りかからせた。


「イッ・・・イイイッ、イーイー?イー?イイーイー?」(さてと・・・全員の無事が確認できたところで、この後はどうする?探索を続けるか?それとも一度基地に戻るか?)


その後、俺達の下へと近づいて来た戦闘員二号は今後の方針をどうするかと聞いて来た。

進むにしても戻るにしても此処らが分水嶺―――別の言い方をすればターニングポイントだと言いたいのだろう。

・・・が、俺はその問いに対して困ったように眉尻を下げて見せた。


「うーん、それなんだけどさ・・・正直な所本音を言えば、一度体勢を建て直す為に基地に戻りたいとは思ってる・・・んだけど、その前にまず、どうやってこの地底湖っぽい所から出ればいいのか悩んでいるんだよ」


「・・・?どうやって出ればって、おかしな事を言いますね、姐さん?さっきアタシ達があの紳士面した変態ロボットをブッ飛ばした時に出来た、大きな穴があるじゃないですか。そこから出ていけばいいのでは?」


俺の隣で話を聞いていたアルミィは首を傾げ、「出入り口の扉の方は固く閉じられていて全然開けられないんだし」と呟きながら洞窟の壁に出来た穴を指差す。

その浮かべている表情はどういう事だろう?と言いたげな不思議そうなそれだ。

それに対して俺は、「これまでの事を思い出してみろ」と溜め息を吐きながら言った。


「俺達は此処に来るまでに数多くのトラップに引っ掛かってきただろうが。この壁の向こうに広がる真っ暗闇の先にもそれが無いと、どうして言い切れる」


「イ~・・・」(あ~・・・)


「確かに、ありそうですねぇ・・・」


俺の話を聞いた戦闘員二号とアルミィは、確かにありえそうだとそれぞれに頷く様子を見せた。

そう。俺が懸念しているのはそこなのだ。

先程口にした通り、俺達はこれまで数多くのトラップに引っ掛かって来た。この地底湖に着いたのだって、大量の水が流れてくるトラップに引っ掛かったが故だ。

だからこそ、この真っ暗闇の向こう側にそれが無いとは言い切れない。どころか、正規の道ではないのだからこそより多くの、そしてより悪質なトラップが仕掛けられていてもおかしくないのだ。

もしあの真っ暗闇の世界に行くのであればそれ相応の覚悟を決めなくてはいけないだろう。・・・と、そう俺達が思っていた時、ふと横合いから誰かが声を掛けて来た。


「―――ソコラ辺ニ関シテハ心配シナクテモイイと思ウゼ」


「・・・うん?」


一体誰だと思いつつ声が聞こえた方へと振り向けば、そこには先程まで『クイズ・ヘルズパーティー』でキャスト側として相対していた二体のロボット―――レッドボーラーとミドリノハカセの姿があった。

二体の内、前に出て来たのはレッドボーラーであり、かのロボットは片手をフリフリと横に振りながら話を続ける。


「アノ真ッ暗闇ノ向コウ側ハデッドスペース―――ツマリハ使ワレテイナイ空間デナ。元々ハ地底湖ガアルコノ場所ヲ拡張シヨウトシテ用意シテイタ場所ダッタラシインダ。ダカラ罠ノ類ハオソラク無イ筈ダ」


「・・・本当か?嘘だったらボコボコになるまで殴るぞ?」


「嘘ジャネェッテ。・・・ソレニ此処ガ閉鎖サレチマッテカラハ、タブンマトモニ手モ加エラレテイナイト思ウゼ?」


「・・・?閉鎖?手も加えられていない?どういうことだ?」


俺が首を傾げながらそう問い掛けると、レッドボーラーは一拍置いた後に「ハァ・・・」と溜め息を吐いた。


「此処ガ閉鎖サレテシマッタ理由ハアイツ―――アンタ等ガブッ飛バシタ、アノ”オンパァー”ノセイサ。アイツハ元々、俺達ト同ジコノ地下秘密基地ヲ建設スル為ニ怪人達ノ手ニヨッテ作ラレタ作業用ロボットノ一体ダッタンダガ、ソレガアル日突然暴走ヲ始メテナ・・・」


レッドボーラーから語られる話。それを耳にした俺達は、そこでようやく俺達がいるこの場所がどういう所で、そこにいた彼等はいったい何者なのかという事を知ることが出来た。

なんでもレッドボーラーの話によると、今俺達がいるこの地底湖を含めた洞窟はとある悪の組織に所属する怪人達の手によって建設中の地下秘密基地であるらしく、さらに言えばレッドボーラー達はその怪人達によって作られた作業用ロボットであったらしい。

その中でもオンパァーというロボットは、元々は様々な建築資材を作る機能を持った真面目な性格のロボットだったそうなのだが、それが今から六、七年くらい前に突如として人が変わったように性格も格好も劇的に変貌し、俺達が見た様なヤバい感じの奴になってしまったそうだ。


「何ガ原因デソウナッタノカハ分カラナイ。・・・ダガ、ソノ暴走ニヨッテ周リヘノ被害ガ―――特ニ俺達ヲ作ッタ怪人達ヘノ被害ガ馬鹿ニナラナクナッチマッテナ。最終的ニコノ地底湖ヲ中心トシタ周辺ノ”ブロック”ヲ全テ閉鎖、隔離サレルコトニナッチマッタンダヨ」


「ソノ際ニ〝レッドボーラー〝、〝シャーク・ザ・ファット〝、ソシテコノ私、〝ミドリノハカセ〝ノ三体ガ逃ゲ遅レテシマイ、奴ト一緒ニ閉ジ込メラレテシマッタノデス。・・・ソレカラ先ハ、ソレハモウ辛イ日々ヲ送リマシタヨ。ナニセ、劇的ニ変貌シタ彼ニ命令サレテ無理矢理コノ舞台セットヤソレニ関連スル様々ナ小道具ヲ作ラサレタリ、今回ノ様ニ舞台ヲ盛リ上ゲル”キャスト”トシテ参加サセラレテイタノデスカラ」


「それはまた・・・・・・」


背中にどんよりとした影を背負いながらフッと笑みを零すミドリノハカセ。それに釣られるようにレッドボーラーも両肩を落としており、そんな二体の姿を目にした俺は「本当に辛い思いをしてきたんだな」と呟きながら同情の眼差しを向けた。

自分達もまた巻き込まれた側なので、共感できてしまえる分尚更に。


「でも、そんなにつらかったのなら戦って倒してしまおうとは思わなかったのか?お前等の体を見た感じ、どうにも作業用ロボットにしては戦闘も出来そうな装備が付いているようだけど」


だからこそ俺は不思議に思った。

どうして彼等はそんな境遇から脱するために戦おうとはしなかったのか?と。

俺の見た感じでは、彼等の装備は建設作業用としてだけでなく戦闘行為にも問題なく使えるであろう代物だ。であれば、オンパァーと戦う事も出来た筈なのだ。

だが、俺のその指摘に対してかのロボット達は、フルフルと首を横に振った。


「ハッ、俺等ガソレヲ考エナカッタト思ウカ?ヤラナカッタト思ウカ?―――当然ヤッタサ。自由ヲ得ヨウトアイツニ戦イヲ挑ンダサ!・・・ダガ、勝テナカッタ。・・・イヤ、違ウナ。正確ニハ()()()()()()()()()()()()。アイツノ能力ノセイデナ」


「アイツの能力?」


「ホラ、オ前達モ体感シテイタダロウ?アノ体ノ動キヲ制限サレル奴ダヨ」


「ああ・・・!」


レッドボーラーに言われた事で思い出した。

そう。確かに俺達はアイツの、オンパァーの能力によって動きを制限させられていた。

確か、『強制劇場』だっただろうか。それのせいで椅子に座った状態から身動きを取れなくさせられていたのだ。


「アイツノ”アレ”は、自分ガ用意シタ舞台ノ上デアレバ他者ヲ自分ノ思イ通リニ操ル事ガ出来ルトイウ能力ラシクテナ。ソレノセイデ、俺達ハ戦ウトイウ行為自体ヲサセテモラエナカッタンダヨ」


うわぁ・・・舞台の上であれば他の人を思い通りに操れるって、なにそれ。無敵じゃん。冗談抜きに無敵じゃん、それ。


「トハイエ、欠点モ無カッタ訳デハナイヨウデス。飽ク迄ソノ能力ノ効果範囲ハ舞台ノ上ニイル時ノミデアリ、ソコカラ降リテシマエバ能力ニヨル強制力ハ発揮サレナイヨウデシタカラ」


「いや、それでも十分に強力な能力じゃんか。・・・・・・まてよ?という事は、だ。もしかしてアンタ達もオンパァーのように何か特殊な能力を持ってたりするのか?」


あのキチガイロボットが強力な能力を持っていたのだ。同じ怪人の手によって作られたレッドボーラーとミドリノハカセも何かしらの能力を持っていたとしてもおかしくはない。

そう思って言ったのだが、しかし返されたかのロボット達の反応は困ったと言いたげな微妙なそれであった。


「ア~・・・ソノ、ダナ・・・期待シテイル所悪インダガ・・・・・・・・・無インダ」


「・・・・・・はい?」


「ダカラサ。無インダヨ、俺達ニハ。アイツノ、オンパァーノ様ニ何カシラノ能力ヲ持ッテイル、ナンテ事ハサ」


「・・・・・・は?」


能力なんて持っていない。そんなレッドボーラーの言葉を耳にした俺は目が点になった。


「・・・え?いや、だって、アンタ達を作った怪人は同じ奴なんだろ?だったら・・・・・・」


「何カシラノ能力ヲ与エラレテイルノダロウ・・・ト、ソウ言イタイノデスヨネ?ソウ考エルノハ分カラナクモナイデスガ、残念ナガラ本当ニ持ッテイナイノデスヨ。私達ハネ」


・・・・・・いや、マジでどういう事?


「ドウヤラオ忘レノ様デスガ、私達ハ飽ク迄建設作業用ノロボットトシテ作ラレタノデスヨ?ソンナ私達ガ何カシラノ能力ヲ、ソレモ私達ヲ作ッタ怪人達ニ被害ヲ与エル様ナ能力ヲ与エラレルワケガナイデショウ。・・・ソレニ、モシ与エルニシテモ何ラカノ安全措置ヲ講ジラレテイル筈デス」


「む、むぅ・・・た、確かに・・・・・・」


ミドリノハカセの言葉に、俺は思わず頷いてしまった。

ミドリノハカセの言う通り、もし自分達が作ったロボットに何かしらの能力を与えるにしても、自分達に被害が及ばない様にするのは当然だ。

だが、それならばどうしてあの紳士服を来たロボットはあれ程に強力な能力を持っていたのだろうか?


「むむむ・・・」


「―――ピポ・・・ピポポポ、ピポ、ピポポ?」(―――もしかして・・・ディーアルナ様、もしかしてなんですがあのオンパァーというロボット、野良怪人化したんじゃないですかね?)


「・・・む?」


オンパァーは一体どうやって能力を得たのか?その事が気になって頭を悩ませていた俺であったが、そこへ誰かが声を掛けて来た。

それは先程まで壁に体を寄りかからせていた筈の戦闘員一号であった。

どうやら動ける程度まで自己修復が完了した様で、彼はキュラキュラキュラと脚部のキャタピラを回転させながら俺達の近くへとやって来た。


「野良怪人化って、あれか?生物非生物問わずある日突然怪人になるっていう、あの?」


「ピポポ」(ええ、その野良怪人化です)


俺が聞き返すと、戦闘員一号は「そう、それです」と言いたげに頷いた。

野良怪人化とは、先程俺が口にした通りある日突然怪人と成ってしまう現象の事だ。

それは人間も含めた生物だけでなく、無機物の物にすらも起こる現象であり、そうなる理由や原因は世間一般では未だキチンと判明してはいないのだが、しかしその現象があのオンパァーと言うロボットに起こったとすれば、ある日突然強力な能力を得て人が変わったように豹変したというのにも納得出来てしまえる。

というのも、これもまた何故かは不明なのだが、どうも野良怪人は怪人化した際に何かしらの能力を得るらしいのだ。・・・まあ、どんな能力を得るかは個体によって様々らしいのだが。

加えて、ある日突然人が変わったように性格が豹変すると言うのも野良怪人の特徴だ。

元は心優しくて人々に分け隔てなく接するような人物が、野良怪人化した途端に粗暴で周囲にある物を無闇矢鱈と壊したがるようになる、といった具合に本当にびっくりするくらいに変わるのである。


「そっか、野良怪人化か。確かに、ある日突然真面目だった性格が豹変するというのは野良怪人化の症状とも一致しているな」


「ピポポ、ピポ」(何かしらの能力も得る、という点もですね)


「そうだな。これでどうしてあのキチガイロボットが能力を持っていて、コイツ等三体のロボットが能力を持っていないのかの説明がつくな。・・・・・・・・・ん?()()?」


ウンウンと頷きながらそう呟いていた俺であったが、そこでふと何かがおかしいという事に気付いた。


「あれ?確か、今回俺達が参加させられていた舞台にはキャスト側が四人、というか四体いたよな?三体って、数が合わなくないか?」


そう、どうしても数が合わないのだ。

今回オンパァーが用意した舞台に参加していたキャストはレッドボーラー、ミドリノハカセ、シャーク・ザ・ファットの三体に加えてもう一体。

全身の至る所が様々な糸と布で縫い合わされた紫色のウサギの着ぐるみを着た人物―――ボロットラビットの分が。


「アア、アイツカ・・・・・・スマンガ、アイツニ関シテハ俺達ハ何モ知ラネェンダヨ。何セ、オンパァーノ奴ガ今日突然、シカモ今回ノ舞台ガ始マル前ニ何処カラカ連レテ来タカラナ」


「・・・どういうことだ?アイツは初めから此処にいたんじゃないのか?」


「イイエ、違イマス。”ボロットラビット”トイウ名前ヲ私達ガ聞イタノモ、舞台ガ始マッテカラ行ワレタ、キャスト紹介ノ時ガ初メテデシタ。・・・全ク、オンパァーハイッタイ何処カラアンナノヲ連レテ来タノヤラ・・・」


だが、その疑問に対して返されたレッドボーラーとミドリノハカセの答えは”分からない”というものであった。

むしろ、かの人物が一体何処から現れたのか、それこそ自分達の方が知りたいと言たげな様子だ。

だがそうなると、あの人物はいったい何者であったのか?と、そういう疑問が出て来るし、なによりそんな突如として現れた怪しいと思える人物をキャストの一人として迎えたオンパァーの行動も疑問に思えてならない。


「まさか、催眠術とか洗脳とかでも掛けられていたとか?・・・・・・・・・いや、ないか。だってアイツ、ロボットだし」


一瞬俺は、オンパァーの奴が操られていたんじゃないかと考えたりした。・・・のだが、すぐにないなと頭を横に振った。

だってオンパァーはロボットなのだ。そんなのが効く筈がない。

では、どうやってあのボロットラビットという人物はこの場所へ現れ、そしてキャストとして登場する事ができたのか。

そんな理由が分からない、答えも出せない疑問に、俺は頭を悩ませるのであった。








ディーアルナがキャストであったロボット達と話をしていた時、その様子を物陰から伺う一つの怪しい影があった。

その影の正体は『クイズ・ヘルズパーティー』が行われていた最中に爆発の中へと消えた筈のボロットラビットであった。

かの人物はディーアルナ達からは見えづらい位置にある舞台セットの壁に身を潜め、そこから顔を半分出す形で、ジーッとディーアルナ達の様子を見ていた。


「・・・・・・ふむ、なるほどな。どうやらあの子は新しい環境でも上手くやれているらしいな」


舞台セットの物陰からディーアルナ達の様子を見ていたボロットラビットは、そうボソッと呟く。

その声は野太い男のそれであり、加えてキャストとして舞台にいた時とは違って流暢に喋っている。

もう一つ付け加えれば、その声音は何処か安堵している様にも聞こえた。


「最初はいきなり姿が消えてしまった事に焦ったものだが、しかしあの様子を見る限りでは心配する必要はないみたいだ」


「仲間と思われる者達との関係も良好の様だし」と言葉の端で呟いたボロットラビットは、安堵のそれと思われる息を吐くと、ディーアルナ達の様子を伺うのを止めて舞台セットの壁に背中を付けて寄り掛かる。


「・・・だが、まさか彼の下にいるとは思ってもみなかったな。いや、彼がこの世界に来ていることは知ってはいた。知ってはいたがしかし、それでも彼が立ち上げた組織にあの子が入るだなんて・・・いったいどんな奇妙な巡り合わせがあればそんなことが起こるのやら」


「ほんっと、偶然って怖いわぁ」と溜息を吐くボロットラビット。

同時に首も左右に振っており、その様子はまるで「やれやれ」と言いたげな様子にも見えた。


「まあでも、あの子の所在がハッキリしたのは良かった。これまでは生きている事や、その姿が確認できてはいても、今住んでいる場所までは判明していなかったからな」


「いやぁ、良かった良かった」と零すボロットラビット。

その口振りから、どうやらこの人物はディーアルナの事を知っているらしい。それどころか彼女の事を詳しく調べてもいた様だ。


「それにあのオンパァーとかいうロボットと繰り広げた戦いっぷりを見る限り、その戦闘力も間違いなく以前より強くなっている。これなら、()()に良い報告ができそうだな」


顎に片手を当てながらウンウンと頷くボロットラビット。

その表情は着ぐるみによって隠されてはいたが、しかしそれでも、傍から見ればどこか嬉しそうだと分かるものだ。

だが、その仕草の途中でふと不思議そうに首を傾げる様子も見せた。


「・・・・・・ただ、一つだけ疑問に思う事があるとすれば、だ。どうしてあの子は女の子になっているんだろうか?『Kエネルギー』を使えている様子から『バイオニズム液』を使用して怪人に成った事は分かるんだが、でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()筈なんだが・・・もしかして『バイオカプセル』の設定をミスってそうなっちまったとか?・・・いやでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しなぁ」


悩ましそうにサスサスと後ろ頭を掻くボロットラビット。

その様子はまさしく「あれぇ?」と言っているかの様だ。


「う~ん・・・他に考えられるとすれば、後は彼女の血筋だから、とかか?・・・・・・うん、なんだかそっちの方が可能性がありそうな気がするな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、なんか辻褄が合いそうな気がする。彼女の一族の中には、時折そういう事があるって聞いた事があるし」


自分の中で一先ずの答えが出たのだろう。ボロットラビットは納得したかのようにウンと頷いた。


「・・・っと、どうやら考え込んでいる間に状況が動いたみたいだな」


ふと、そこでディーアルナ達の話し声が耳に入ってきた。

ディーアルナ達のいる場所とボロットラビットのいる場所はそこそこ遠いので話の内容まではキチンと聞き取れはしなかったが、彼女達の様子を見るに、どうやらレッドボーラー達と互いにするべき話しが終わったので、そろそろ洞窟の壁に空いた穴の向こうへと仲間達と共に進む事に決めたらしい。

その事を察したボロットラビットは「ふむ・・・」と少しの間何かを考え、それから「よし」と呟いた。


「あの子の事が気にならないと言えば嘘になるが・・・まあ大丈夫だろう。今のあの子の実力なら、此処の連中程度は簡単に倒す事が出来るだろうし。・・・それに、彼女もあの子の今を知りたくて首を長くして待っているだろうからな。一度彼女の下へ報告に戻るとしようか」


レッドボーラーとミドリノハカセに別れを告げ、穴の向こうに広がる真っ暗闇の世界へと足を踏み入れるディーアルナ達。

その後ろ姿を見送ったボロットラビットは身を翻すとポテポテと歩きだし、ディーアルナ達が進んだ方とは違う闇の中へとその姿を消していくのであった。








閑話:その頃のメドラディは・・・


ザッ・・・ザザザッ・・・!


キュゥゥゥウンッ!ゴォォォオオオーーーッ!!


『小型ミサイル、ガトリング砲、一斉発射!』


『オラオラオラァ!!食らえ食らえ食らえぇ!!』


キュゥゥンッ!ガシャガシャガシャッ!ドドドドゴゴゴゴガガガガァンッ!!


「くっ・・・!このっ・・・!」


スチャッ、ヒュンヒュンヒュンッ!・・・カカキンッ!


『ふん!そんなもんがコイツに効くかってぇの!』


『この『叢雲三式』の装甲は頑丈さを優先してかなり分厚く出来ている。注射器程度じゃ刺さるわけがない!』


「そう・・・!なら、これならどうかしらぁ!!」


ヒュンッ!―――パキャンッ!


『ああん?ガラス瓶だと?これがどうしたって・・・・・・』


『・・・ッ!?ど、ドッグテン!腕が・・・!叢雲三式の腕が溶けてるぞ!?』


ジュウゥゥゥッ・・・!!


『な、なにっ!?う、うおぉぉぉーーー!?』


「どうかしら、私が調合した特製溶解液の味はぁ?安心していいわよ。お代わりはまだまだこんなにあるんだからぁ!」


ヒュンヒュンヒュンッ!パキャキャンッ・・・!ジュウゥゥゥッ・・・!!


『う、うおぉぉぉーーー!?』


『くぅっ・・・!?』


「そらそらそらぁ!まだまだ行くわよぉ!」


スチャッ・・・!


『くっ・・・!これ以上やらせるかぁぁ!!』


キュゥゥンッ・・・!ドガガガガガッ!!


「―――ッ!?フッ・・・!せいっ!」


ヒュンッ!パキャンッ・・・!ジュウゥゥゥッ・・・!―――ボンッ!!


『ぐっ・・・!ガトリング砲が・・・!?』


『下がれ、ドッグイレブン!―――アームブレード展開!オラァ!コイツを食らえぇぇ!!』


キュゥゥン!ブオンブオンブオンッ・・・!!


「よっ・・・!は・・・!たあっ!!」


ガガキィンッ!!


『なっ・・・!嘘だろ!?手術とかで使われるようなメス一本で叢雲三式のアームブレードを受け止めた、だとぉ!?」


「よっと・・・!」


ヒュンッ!―――パキャンッ・・・!ジュウゥゥゥッ・・・!


『ぬおっ!じょ、冗談だろ!?アームブレードまで溶かしやがったぞ、この液体!叢雲三式の装備の中でも一番頑強なコイツを溶かすって、どんだけ強力なんだよ!?』


『後退しろ、ドッグテン!ミサイルで吹き飛ばす!食らえぇぇーーっ!!』


ガシャッ・・・!シュボボボボボッ・・・!!


『う、うおぉぉい!?ちょっと待て、ドッグテンゥゥッ!?俺、まだ退避してなっ・・・!?』


キュゥンッ、キュゥゥンッ・・・!ギギッ、ギギギギギギッ・・・!!


『き、機体が動かない・・・!?これは、糸!?糸が絡まってやがる!!』


「特殊強化された縫合糸(ほうごうし)よ。そう簡単に切れはしないわぁ。悪いけど、そのままミサイルの盾になってもらうわよぉ」


『いや、お前、ふざける―――』


ドドドドガガガガガァンッ!!!


『―――なぁぁぁーーーっ!?!?』


『ど、ドッグテンゥゥーーーッ!?』


キュゥゥゥン・・・・・・!―――ガシャンッ・・・・・・!


「ふぅ・・・危ない危ない。確かこれ、叢雲三式と言ったかしら?これを盾にしておかなかったら危うく爆発の炎に焼かれちゃうところだったわぁ。・・・・・・いや、本当に頑丈ねぇ、これ。まさか、アレだけのミサイル攻撃を受けて未だに原型を保っていられるだなんて想像以上だわ。―――でもまあ、流石に内部機器までは頑丈じゃなかったようねぇ?今の爆発の衝撃でシステムが完全にダウンしてしまったみたいよぉ?」


『なに・・・!?くそっ、経理課の連中め!俺達の要望通りに衝撃緩和装置を取り付けなかったなぁ!?どんなに機体が頑丈だったとしても、強い衝撃を受けてシステムがダウンしたら意味がないってあれほど、口酸っぱくなるくらいに言ったってのにぃ・・・!』


「・・・なるほど、経費削減の弊害というやつのせいだったのねぇ。なんというか、味方に足を引っ張られるだなんて、貴方達も本当に大変ねぇ」


『ぐぅぅぅっ・・・!?だ、だが、武装に関しては一切妥協していないぞ!この叢雲三式には最終兵器があるんだからな!」


「最終兵器、ですって?」


『そうだ!これがその最終兵器!『ハイパー叢雲ランチャー』だ!!』


ガシャガシャンッ!バッ・・・!ジャキッ・・・!


『さあ、コイツを食らって吹き飛ぶがいい!!』


「・・・・・・・・・え、え~と」


『なんだ!どうした!この最終兵器に恐れ慄いてブルッちまったのかぁ!?今泣いて謝るってんなら、許してやらんこともないぞ!』


「・・・あの、あのね?ちょっと聞きたいのだけれど・・・・・・その、〝鉄の板と棒を重ね合わせて塗装した様な物〝のどこが最終兵器なの?」


『・・・はっ?鉄の板?棒?いったい何を言って・・・・・・って、あれ?』


ガシャガシャガシャンッ・・・!カランカラン、カラカラカラ・・・・・・。


『・・・・・・・・・』


「・・・・・・・・・」


『・・・・・・・・・』


「・・・・・・・・・」


『な、なんじゃこりゃぁぁーーーっ!?は、ハイパー叢雲ランチャーがばら、バラバラに・・・!?というか、そもそもまともな武器ですらなかったとか・・・!?く、くっそぅ、経理課の連中!アイツ等、一番大事な所をすっぽかして手抜き工事しやがったなぁーーーっ!?!?』


「えっと、その・・・敵である私が言うのもなんだけど、貴方達、本当の本当に大変な思いをしているのねぇ。あまりにも可哀想過ぎて、思わず涙が出てきちゃいそうになったわ・・・・・・まあでも、それはそれとして頼れる兵器がもう無いというのはこちらにとっても好都合ね。―――ふふっ・・・このまま一気に堕としてあげましょうか?」


『くっ・・・!舐めるなよ!ハイパー叢雲ランチャーが使い物にならなくたって、この叢雲三式にはまだ武器が、ミサイルがある!コイツを全弾ブッ放して・・・!』


「あらあら・・・そういえばまだそれが残っていたわねぇ。―――でも、ざぁんねん。実はそれ、もう使えないのよねぇ」


『はっ?いったい何を言って・・・・・・』


ウジュルウジュル・・・・・・!


「ウゴゴゴゴゴッ・・・・・・!」


『―――って、何時の間にか発射台にスライムが取り付いてるぅぅーーっ!!?しかも発射口も全部埋められてるぅぅーーっ!!?えっ、嘘だろ?冗談だろ、オイィィッ!?くそっ・・・!?こうなったら、一度脱出するしか・・・・・・』


キュゥゥンッ・・・!ギギギギギギッ・・・・・・!


「・・・ッ!?そんなっ・・・!脱出装置が動かない!?いや、それだけじゃない!機体そのものも動かない!いったいどうして・・・!?」


ウジュルウジュル・・・・・・!


「ウゴゴゴゴゴゴゴッ・・・!!」


『・・・げぇ!?このスライム、胴体にまで巻き付いていやがる!う、うおおぉぉぉっ!?離れ、離れろぉぉっ!?』


「うふふ・・・!それじゃあ、トドメと行きましょうか?」


カチャカチャカチャ。


『え、ちょ、いったい何してんの!?!?何このカチャカチャ音!?』


「あらあら、別に心配しなくていいわよぉ。ただ、爆弾を取り付けているだけだから」


『ば、爆弾ぅぅーーーっ!?!?ちょ、いったいどこから持って来たそんなもん!?』


「貴方達のお仲間が持っていた手榴弾から作ったわ」


『まさかの身内だったぁぁーーーっ!?』


「ちなみに、ニトログリセリンを使って多少爆発力を強化しているわよ?」


『・・・・・・あの、ニトログリセリンって確か、ダイナマイトとかにも使われる爆薬の材料の筈じゃ・・・?』


カチャカチャ、カチャ・・・!


「よし、取り付け作業完了!それじゃあ、行くわよぉ」


『やめて!?行かないで!?』


「・・・あ、グリーンちゃんは爆弾が爆発する直前になったら離れてね?危ないから」


「ウゴウゴ・・・!」


『そうだね、爆発物を扱うんだから注意喚起は大事だよね―――って、だからそうじゃなくってぇ!?」


「三、二、一、ゼロ!」


カチッ!―――ドッカアアァァァーーーンッ!!!


『ウボアアアァァァーーーッ!?!?』


ヒュゥゥウウン、ズドォンッ!!!


ザザッ・・・ザザザザザザッ・・・・・・ザーザーッ・・・!―――ブツッ・・・!






次回の投稿の予定ですが、一応来月半ば頃になるかと思います。

実は今もなお執筆作業中で、まだ話が完成していなかったり。

一応予定通りになる様に頑張りますが、もしかしたら遅れるかもしれません。その際には申し訳ありませんが、読者の皆様にはお待ちいただけるとありがたいです。

それではまた。

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