ミッション79 怒れる雷虎、爆誕・・・!
アルミィは目の前にいるオンパァーに対して激怒していた。
なにせこの紳士服を身に纏ったロボットは、その格好とは裏腹に自身が姐さんと呼んで敬愛するディーアルナに下ネタ全開のセクハラ問題を出題し、それを答えさせようとしたからだ。
まあ、幸い・・・と言うのもおかしいが、当のディーアルナはそうとは知らずに―――というか理解していないままに、ド天然な答えを返して問題の出題者であるオンパァーを困惑させていたのだが。
しかし、だがしかし!だからと言ってそんなオンパァーの所業を見過ごすなんて事をアルミィはするつもりはなかった。
「テメェ、何アタシの姐さんに卑猥な質問をしてやがんだ、あ゛ぁん!?」
ギンッ!!という音が聞こえそうな程の鋭い視線をオンパァーへと向けるアルミィ。その鋭い目と歯を剥き出しにして唸る様は怒っていると誰が見ても分かるものだ。
彼女はドスの利いた様な声を発しながらオンパァーの下へ向かおうと、周囲に漂う水煙の中を切る様にして前へと進み出る。
「ば、バカな!?貴女はスーパーデンキウナギの電撃を食らって倒れた筈!なのに、何故そんなにも平気そうに動けているのですか!」
アルミィのそんな姿を目にしたオンパァーは、困惑しつつ一歩後退りながらそう叫ぶ。
その際に視線を横へと向ければ、そこにはスーパーデンキウナギの電撃によって今も黒焦げ状態のまま床に倒れ伏している戦闘員一号の姿がある。
オンパァーのその仕草は暗に彼の様になっていなければおかしいと、そう語っている様に見える。・・・というか、実際その内心では機械の体では流れる筈のない冷や汗が盛大に流れていたのだが。
戸惑っている。驚愕している。そんな様子のオンパァーを目にしたアルミィは、フンッ!といった感じに鼻息荒く次の言葉を口にした。
「アタシに電気系の攻撃は効きゃしねぇんだよ!」
「なん・・・だと・・・・・・!?」
そう。アルミィに電気系の攻撃は効かない。効きはしない。
何故なら彼女は電気を操る能力を持っているからであり、例え食らったとしても自身のエネルギーとして吸収できてしまえるからだ。
・・・では、何故先程はスーパーデンキウナギの入っているプールの中でブクブクと沈みかけていたのか?と疑問に思ったりもするだろう。
その答えは簡単だ。ただ単に吸収したエネルギーの量が、彼女が許容できる限界量を越えてしてしまったからである。
例えるなら、腹十分目以上にご飯を食べて過ぎてしまって動けなくなった様な感じであり、そんな状態になってしまえば動けなくなってしまうのも当然の事だろう。
そんな彼女の言葉を耳にしたオンパァーは先程まで以上に愕然とし、しかし同時になるほどと納得する様子も見せていた。
「なる、ほど・・・怪人の中には特定の攻撃が効かないどころか自分の力に変えてしまえる者がいると聞いた事があります。まさかその怪人が私の舞台にいるなんて、思いもよりませんでしたよ」
そう言いながらオンパァーがアルミィの周りへと視線を向ければ、そこには大量のスーパーデンキウナギが、床の上に散らばる様に落ちていた。
おそらく先程アルミィが上げたと思われる大きな水飛沫と共に打ち上げられたのだろうと思われるが、しかしその姿は元のそれと比べると一種異様な感じに変貌していた。
なにせ瑞々しかった元の姿から一変して、まるで干からびた様に皺くちゃの状態となっていたからだ。
ピクピクと動いている様子からまだ生きてはいる様だが、しかし傍から見ても分かる通り元気がない。まるで何かに精気を吸い取られた様な感じであった。
「(スーパーデンキウナギ達は強力な電撃を放つ為に自身の生体エネルギーの一部を変換している。そういう仕様になる様に私が弄りましたが、今回の場合はそれが裏目に出てしまったという事ですか)」
オンパァーはスーパーデンキウナギ達に、”電撃を放った後にプールの中にある自分たち以外の異物を外に放り投げる様にする”調教をしていた。
そんなことが出来るのか?可能なのか?という疑問に思うのはもっともだろうが、しかしそれは一番最初にプールへと落ちた戦闘員一号の様子を思い返せば疑いようがないだろう。実際あの時のスーパーデンキウナギ達は、戦闘員一号に対して電撃を放った後に彼をプールの外に放り投げているのだから。
だがしかし、アルミィの時にはそれが起こらなかった。その時は何故なのかと不思議に思っていたのだが、その答えは今のスーパーデンキウナギ達の姿が示していた。
つまり、アルミィに文字通りの意味でスーパーデンキウナギ達の電気が―――生体エネルギーが限界まで吸収されてしまった事で、この様な干からびる一歩手前の状態となってしまったが為にかの鰻達は彼女をプールの外に放り投げる力を失ってしまったのだろう。
彼女が沈んでいく様子を見て気付けばよかったと、そう内心で思ったオンパァーであったが、しかしそこでふと嫌な想像が彼の頭の中を過ぎった。
全てのスーパーデンキウナギ達がこうなる程にエネルギーを吸われたという事は、それを吸収したアルミィはいったいどれだけのパワーアップをしたのだろうか?・・・と。
その事に思い至り、己の背筋にゾッと怖気が走るのを感じたオンパァーはアルミィへと振り返る。
内心で再び大量の冷や汗をダラダラと流していたかのロボットは、そこで胸の辺りまで掲げられた左腕に膨大な電気を溜めているアルミィの姿を目にして思わず頬を引き攣りたくなった。・・・まあ、ロボットフェイスなので表情は動かないのだが。
「よくも姐さんに卑猥な事を言わせようとしやがって・・・!覚悟は出来てんだろうなぁ・・・!!アタシの電撃で黒焦げになるまで焼いてやんぞ、コラァ!お゛ぉ゛!?」
「いや、その・・・それは舞台を盛り上げるためでして・・・・・・!」
メンチを切りつつズンズンと歩みを進ませるアルミィ。
それに比例する様に「まあまあ」と言うかの様に両手を前に出しているオンパァーが一歩、二歩と後ろへ下がる。
「よくも姐さんを辱めようとしやがって・・・!!その報いを受けやがれ、この変態がぁぁっ!!―――【キャットサンダー】ッ!!」
そして十分に距離を詰めたと思ったのだろう。アルミィは全身に纏わせていた静電気を左手に集めると、オンパァーに向けて高出力の電撃を放った。
「・・・ヌオッ!?―――なんのこれしき!【司ー会ー者ーバリア】ァァーーッ!!」
その攻撃に対抗するかの様に緑色に輝く球状の障壁を展開するオンパァー。
かのロボットが叫びながら展開したソレはアルミィの放った電撃を受け止めると、まるで纏まった糸を解いてバラけさせる様に周囲へと拡散させ、掻き散らしていく。
「ハァーハッハッハッハッ!!この程度の攻撃で私を倒せると思って―――」
「―――いるわけないだろうが、こんにゃろう!【キャットサンダークロウ】!!」
アルミィの攻撃を防ぐ事に成功した事に気分を良くしてか高笑いをするオンパァーであったが、しかしその瞬間、右手に高出力の電撃を集中させたアルミィがオンパァーのすぐ傍に出現し、かのロボットが展開している緑色の障壁に向けてその手の爪による斬撃を叩き込んだ。
パリィィィンッ・・・!!!
「なんとぉー!?」
その一撃を受けて、まるで薄いガラスが割れた時に出る様な音を響かせながら粉々に砕け散る緑色の障壁。
その光景を目にしたオンパァーは、まさか自身が展開した障壁が壊されると思ってもいなかったのか驚きの声を上げる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
だが、かのロボットには何時までも驚いている暇など無かった。
何故ならば、緑色の障壁を破壊した瞬間にアルミィがオンパァーの懐へと潜り込み、頭にジョが付く某奇妙な冒険の主人公が使う某傍に立つ者が放つ様な、両拳による―――しかもバチバチと高出力の電撃が纏われている―――高速ラッシュを叩き込んで来たからだ。
「アベシッ!?アベシッ!?アベシッ!?アベシッ!?ブラァァァーーッ!!?」
ドガガガガガガガガッ!!と、まさに拳の嵐とでも言うべき連続殴打攻撃。
それを受けたオンパァーの体は、その拳の圧に押される様にして空中へと浮かびあがって行き、そして最後の一撃を顔面に受けた瞬間、かのロボットの体はギュルギュルと高速回転をしながら勢いよく吹き飛んで行った。
「~~~!?ええい、調子に乗っているのもそこまでです!この技を食らって沈みなさい!!―――【司ー会ー者ースターダスト】ォォーーッ!!!」
プッパァーッ!!
だがしかし、オンパァーの方も何時までもやられているばかりではなかった。
吹き飛んでいる最中に体勢を整え直したかのロボットは、地面に両足を着いて着地すると懐からラッパを取り出すと、それをアルミィに向けて吹き鳴らしたのだ。
その瞬間、ラッパの先口から拳大の星形の弾が数えるのも億劫になるくらいに大量に出現し、その半分は真っ直ぐ直進する軌道を描き、もう半分は緩やかな弧を描く軌道でもってアルミィに向かって飛んで行った。
もはや数の暴力と言ってもいいその攻撃。しかもそのスピードも相当なものであり、時速に換算して約百km近くもあった。
「フゥハハハハハハッ!血気盛んで愚かな猫娘よ!司会者である私に逆らった事を悔いながら、我が星屑の前に沈むが良い!!」
自身の勝利を確信して笑い声を上げるオンパァー。
アルミィにはこの攻撃を防ぐことも避ける事も出来まいと、そう確信を持っていたからこその高笑いであった。
「―――奥義!【乱猿総手拳】!!」
ドガガガガガガッ!!
「なんとぉぉーーっ!!?」
・・・が、その抱いていた確信は第三者の乱入によってあっさりと覆されてしまった。
どこからともなく上空から飛んで現れたディーアルナが、目にも止まらぬ速さで両腕を振るってオンパァーの放った大量の星型の弾を全て打ち落としてしまったのだ。
正拳によって殴り砕き、裏拳によって弾き壊し、掌底によって叩き落とし、指突によって穿ち止め、五指の爪によって引き裂き、手刀によって真っ二つに割る。
そんな様々な手の型から放たれるディーアルナの攻撃によって自身が放った大量の星形の弾が次々と迎撃されていく光景を目にしたオンパァーは思わず絶句した。言葉が出なかった。開いた口が塞がらなかった。・・・まあ、最後のはそもそも開く口がないので飽く迄比喩だが。
「無事か、アルミィ!」
「姐さん!はい、ありがとうございます!おかげで助かりました!」
「いや、お礼を言うのはこっちの方だ。アルミィのお陰であの椅子から脱出できたんだからな」
ついでに言えば、自身の【強制劇場】の能力によってゲスト席から離れられない筈のディーアルナがアルミィとお互いに安否確認を行っているのも、オンパァーの混乱具合に拍車をかけていた。
いったいどうやって自身の能力の影響下から抜け出せたのか。内心でそう頭を悩ませていたオンパァーであったが、その答えは当の本人の口から語られた事で判明した。
「えっと、アタシのおかげって・・・?」
「ああ。アルミィがアイツの事をボコボコにしてくれただろう?どうやらそのダメージによって俺達を縛り付けていたアイツの能力による拘束が無くなったみたいでさ。おかげでこうして自由の身さ!」
よくやった、とでも言うかのようにアルミィに向けて親指を立てて見せるディーアルナ。彼女の話を聞いたアルミィは、最初は「そうだったのか・・・!?」と驚いたような様子を見せたが、そのすぐ後で「姐さんのお役に立てたなら何よりです!」と嬉しそうな笑みを浮かべた。
・・・そしてその話は当然オンパァーにも聞こえていた。
「(くっ・・・!なるほど、彼女達の話を聞くに、どうやら能力が強制解除されたのはダメージの過負荷によるものなのでしょうね。特にあの量の拳に纏われていた電撃。おそらく打撃を受けたことによって出来た装甲の隙間に入り込んだそれが、ワタクシの体の内部機器を部分的にショートさせたのでしょう)」
自身の体の隙間から立ち昇る細い黒煙を目にし、プスプスといった小さな音も聞こえて来るのを耳にしたオンパァーはそう思う。
一応オンパァーの体の表面には幾つかの耐性処理が施されており、その中には当然耐電のそれもあったのだが、しかし生憎とその処理は流石に内部機器にまでは施されていなかった。
その為、オンパァーの体は見た目以上のダメージを受けてしまい、結果として【強制劇場】が解除されてしまったのだろう。
その事に思い至ったオンパァーはチッ・・・!と舌打ちをして、しかしその頭の中では、上手くやればまだこの不利となってしまった状況を覆す事が出来ると考えていた。
「(幸いにして、その他の能力に関してはまだ使う事が出来る。であれば、それらを駆使して彼女達を鎮圧し、事態の収拾を図る事も出来るでしょう)」
せっかく数年ぶりに開催する事が出来た舞台。それを中断させるなんてことをしたくはなかったオンパァーは、舞台の反逆者と化した元ゲストである彼女達を鎮圧しようと自身が未だ使える能力を行使しようとする。
「・・・さて、それじゃあ、アルミィ。そろそろ、このバカげた催しを終わらせるとしようか。―――あそこにいる諦めの悪い司会者をブッ飛ばしてさ!」
「了解です、姐さん!アタシもアイツに対しては腸煮えくり返っていたんです。その怒りの分、ここで一気に清算してやります!」
だが、相手を倒そうという考えはディーアルナ達も同じであったらしい。オンパァーへと視線を向けたディーアルナとアルミィの二人はそれぞれ構えを取ると、かのロボットに向かって駆け出した。
「行くぞ、アルミィ!!」
「はい、姐さん!―――覚悟しな、そこの紳士の皮を被ったクソロボットがぁ!ボロッボロのスクラップに変えてやんよぉぉ!!」
「くっ・・・おのれぇ、ワタクシの舞台を壊そうとする反逆者共め・・・!返り討ちにしてくれるわぁぁ!!【司会者スターダスト】ォ!!」
「その技はもう見た!」
「はっ!当たってやるかってんだ!」
俺達が接近してくるのを目にして迎撃しようとしたのだろう。オンパァーは再びラッパを吹き鳴らして大量の星形の弾を撃ち出して来た。
しかし、その攻撃は俺達には当たらない。走りながら横にステップやスピンをして回避したり、先程の様に拳や蹴りでもって接近してくる星形の弾を撃ち落とすなどしていたからだ。
「ヌゥゥッ・・・!?ならばこれはどうだ!【司会者ビッグスター】!!」
その光景を見て、何時までも自身の放った技が当たらない事に業を煮やしたのだろう。悔しげな唸り声を零したオンパァーは新たな技を繰り出して来た。
ラッパを吹くところまでは先程放った【司会者スターダスト】と同じであったが、しかしプパァー!と音を鳴らした瞬間出現したのは、大きな、それはもう大きな星形の弾であった。
全長は大体四、五mくらいだろうか。キラキラと眩しいくらいに発光していたそれは、ピコンピコンと数度点滅を繰り返した後に一際輝きを強め、そして物凄い勢いで俺達に向かって飛んで来た。
「フゥハハハハハーッ!!これぞワタクシの奥の手【司会者ビッグスター】です!さあ、反逆者共よ!この技を食らってワタクシに楯突いた事を反省するがいい!!そしてこの先ずっとワタクシの舞台専用の特別ゲストとなりなさい!!」
「誰がなるか、そんなもの!―――アルミィ!!」
「任せてください、姐さん!あのデンキウナギ達から電気を吸収してパワーアップしたアタシの力、今こそ見せてやります!―――行くぞぉ!【キャットサンダーウォール】!!」
その巨大な星形の弾に対応したのはアルミィであった。
彼女は左手に自身のエネルギーを集中しつつ、それを強力な電力へと変換。そして、まるで「ストップ!」とでも言うかのように開いた左手を突き出した瞬間、電気で形作られた巨大な猫の手が出現した。
見ただけでも分かるくらいにプニプニとした、とても柔らかそうな肉球の付いたそれが。
「うおりゃぁぁぁーーーっ!!!」
「な、なにぃぃぃ!?」
巨大な星型の弾を受け止める猫の手。
受け止めた瞬間バチバチという帯電音と共にプニッという音が聞こえた気がしたが、おそらく気のせいだろう。
ともあれ、アルミィが出現させた猫の手によって巨大な星形の弾は止められ、それを目にしたオンパァーは「そんなのでワタクシの奥の手がぁぁ!?」と両頬に手を当ててモンクの叫びの様な声を上げた。
「よくやったアルミィ!―――そして隙ありだ!このキチガイロボットォォッ!!」
「ッ!?」
驚愕し、動きが止まって隙だらけとなったオンパァーの下と飛び込んだ俺は、かのロボットのすぐ傍に着地しつつ逆立ちとなり、その状態のまま連続して回転蹴りを放った。
「奥義!【炎馬旗刃脚】!!」
ドドドドガガガガギャリギャリギャリギャリッ!!
「グオォォォーーーッ!!?」
両足に集中させたエネルギーを炎の様にはためかせつつ逆立ちの状態から連続蹴りを繰り出すその動きは、有名な体術の一つであるカポエラのそれと似通ってはいたが、しかしその威力は常人のそれを遥かに上回る。
加えて、俺の両足に炎の様にはためきながら纏わりつくエネルギーが追加攻撃を放っており、それがオンパァーの体に触れた瞬間、その体の表面には金属が削られる際に発せられる嫌な音を発しながら無数の傷が付けられていく。
それはあたかも鉄を切り刻もうとする回転刃の如く。
「まだまだぁ!これで終わりじゃないぞ!」
「ヌハァッ!?」
俺はそこから更に追撃を放っていく。
オンパァーが【炎馬旗刃脚】によって怯んで体勢を崩した瞬間に、俺は両足を下ろして地面に横倒れの体勢になり、そのままスライドする様に体を回転させながらオンパァーの両足を自身の足で刈った。
「コイツも食らえ!【炎柱馬脚】!!」
「グッホォッ・・・!?」
俺の足払いを受けたことにより、完全に体勢を崩して宙に浮くオンパァーの体。
俺はその瞬間を狙って体を回転させる勢いそのままに体を起き上がらせ、立ち上がりながら右足を振り上げる。
突き上げる様な、打ち上げる様な蹴り。
傍から見る者にとってその動きは、名前の通りに地面から一本の炎の柱が噴き上がる様に見えた事だろう。
そしてその一撃を受けたオンパァーの体は一瞬九の字に折れ曲がり、物凄い勢いで天井に向かって吹き飛んで行った。
「今だ、アルミィ!」
「任せてください、姐さん!いくぞぉぉ!ウオオォォォーーーッ!!」
その瞬間に俺はアルミィへと声を掛けた。
「追撃を」という意味合いを察したのだろう。俺の声を耳にしたアルミィはコクリと一つ頷くと、巨大な星形の弾を【キャットサンダーウォール】で受け止めている状態のまま咆哮を上げた。
その瞬間、彼女の全身から大量の静電気が放出され、同時に強く発光し始める。
その光は徐々に大きくなっていき、最終的に彼女の姿は体長約五m以上もの巨大な雷の虎へと変貌していた。
・・・って、あれぇ!?何それぇ!?流石にそうなるなんて予想外だったんですけどぉ!?
「グルルルルッ・・・!!グアッ・・・!」
巨大な雷の虎へとその姿を変えたアルミィは、自身の目の前にある巨大な星形の弾をその大きな口で咥え、そこに体中からバチバチと放出している静電気―――いや、大きさ的にはもう雷と呼んでもいいだろうそれ―――を集め始める。
集められた雷は巨大な星形の弾を包み込んでいき、次第にその姿は電気で形作られた球体へと変わっていく。
「これで終わりにしてやんよぉ!【ライトニングタイガーロア】ァァーーーッ!!」
そして巨大な星形の弾が完全に電気の球体に包まれたその瞬間、アルミィが咆哮を放った。
数多の雷が束ねられ、電気の球体を弾として発射されたそれは、最早咆哮と言うよりはおとぎ話に出て来るドラゴンとかが出すような息吹のそれだ。それも直進するレーザーとかビームの類の。もう一つ言えば、めっちゃごん太の。
それは地面と天井の中間で宙に浮かぶオンパァーの下へと真っ直ぐに突き進み、今にもかのロボットを飲み込まんとしていた。
「ヌ、ヌオオオォォォーーーッ!?く、食らって堪るかぁぁーーーッ!!」
そんな、如何にも食らったら不味いだろうと分かる代物が自身へ迫って来ようとしている光景を目にしたオンパァーは、叫び声を上げつつ懐からタンバリンを取り出した。
・・・・・・タンバリン?なんでそんな物を?
「【司会者シールド】ォォ!!」
懐から取り出したタンバリンを両手で持ち、まるで盾にするように自身の前面へと押し出すオンパァー。
その瞬間、タンバリンの表面になにやら魔方陣の様なものが現れたと思ったら、一瞬の内に六角形の薄い板が集まって出来た様な壁が形成され、アルミィの放った【ライトニングタイガーロア】をギィィン!!と大きな音を立てながら受け止めてしまった。
っていうか、えっ!?それ、そんな機能があったの!?
「ふ、フハハハハハハッ・・・!こいつの防御力は相当なモノです!そん所其処らの生半可な攻撃じゃあ、コレに罅を入れる事すら―――」
まさか取り出したタンバリンにそんな機能があるなんて、と内心で驚きの声を上げる俺を尻目にどことなく勝ち誇った様な笑い声を上げるオンパァー。
だが、その笑みは何時までも続かなかった。
ビキッ・・・
「・・・・・・ビキッ?」
唐突に鳴り響く謎の異音。それを耳にしたオンパァーが音の発生源と思われる場所に目を向けてみれば、そこには大きな罅が入った六角形の壁の姿があった。
「・・・って、罅ィィ!?罅入ってるぅぅ!?うっそでしょう、おい!!?」
驚愕し、焦った声を出すオンパァー。
まさか絶対の自信を持って展開したそれに罅が入るとは思っていなかったのだろう。その声音は真に迫るものがあった。
ビキビキビキッ・・・!―――パリィィンッ・・・!!
「グボホォォォーーーッ!?!?」
オンパァーの目の前に展開されている【司会者シールド】に出来た罅は、アルミィの放った【ライトニングタイガーロア】を受け続けている間もどんどんと大きくなっていき、それから十数秒もしないうちにガラスが割れた様な音を発しながら粉々に砕け散ってしまった。
その事に驚愕したオンパァーは、「そんなバカな!?」と叫ぼうとするも、しかしそれを声に出す前に電気の球体がオンパァーに直撃し、そのまま押されるようにして洞窟の壁へと向かって吹き飛んで行った。
「ヌ・・・ッ!ヌググググ・・・ッ!?」
洞窟の壁と電気の球体に挟まれて今にも潰されそうな状態となるオンパァー。
かのロボットの背後の壁に徐々に出来上がっていく大きな罅が、かのロボットに今現在掛かっている圧力がどのくらいなのかを如実に表している。
しかし、オンパァーは未だ諦める様子を見せていなかった。
かのロボットは押し潰されまいと必死になって電気の球体を押し返そうとしていたのだ。
「・・・ッ!?」
だがしかし、残念ながらその状況を打破できるだけの力をオンパァーは持ち合わせてはいなかったらしい。電気の球体を僅かにも押し返す事が出来ず、逆にオンパァーの体は更に洞窟の壁へと減り込んでいく。
「ぐっ・・・!?い、いいでしょう、今回は負けを認めましょう・・・!!ですが・・・!次回は・・・次回の舞台の時には絶対に貴女方に勝って見せますよぉぉ・・・!!く、首を洗って待っているのですねぇぇ・・・!!フハ、フハハ、フハハハハハハハハ・・・!!!―――フギョッ!?あ、アアァァァーーーッ!?!?」
自身の状況を鑑みて最早勝ち目はないと判断したのだろうか。洞窟の壁と電気の球体に挟まれながらもそんな捨て台詞のようなものを吐くオンパァー。
その最中にも背後にある洞窟の壁の罅は瞬く間に広がって行き、そして最後の高笑いをしようとした瞬間にその壁は崩壊。オンパァーは悲鳴を上げながら崩壊した洞窟の壁の向こうに広がる真っ暗な空間へと電気の球体に押されるようにして吹き飛んで行くのであった。
閑話:その頃のメドラディは・・・
ザッ・・・ザザザッ・・・ザッザザッ・・・・・・!
「ハァァァーーーッ!!」
ズガガガガガッ!ズガガッ!ズガガガガガガガガガッ!
「あらあら・・・うふふ・・・!狙いは良い。でも、ざぁんねん。私には当たらないわぁ。―――そぉれ!」
カカカッ!カチュンカチュンッ・・・!カキンッ・・・!!
「くっ・・・!このぉ・・・!―――これならどうだ!!」
「あら・・・?」
ヒュンッ!ズガガガッ・・・!―――ドオォーンッ!!!
「・・・・・・あらあら、危ないわねぇ。まさか、まだ手榴弾を隠し持っていたなんて。しかもそれを放り投げた後に撃ち抜いて爆発を起こすなんて、ね。・・・でも、残念。それも私には当たらないわぁ」
「チッ・・・!まさか、これも躱すとは・・・・・・その常人を超えた身体能力。高梨悠里。貴様、まさか怪人にでもなったのか!?」
「あらあら、察しの良い事。―――ええ、その通りよぉ。とある人にお願いして怪人にしてもらったの。私の目的の為には、その方が都合が良いから」
「・・・目的だと?いったい何だそれは」
「うふふ・・・そんな事、アナタ達に―――私の恩人を長年苦しめて来たヒーロー連合協会の人間に教えるわけないじゃない」
「・・・なるほど、ヒーロー連合協会に対する恨みってわけか」
「それもある。けれど、それだけじゃないわぁ。・・・私が怪人に成ったのは、ヒーロー連合協会に対する恨みや憎しみだけじゃない。あの人が残したモノを、あの人が守ろうとしていたモノを守る力を手に入れる為。その為に私は人間であることを止めたのよ・・・!」
スチャッ・・・シュカカカカンッ・・・!
「くっ・・・!?」
「私はあの人が守ろうとしていたモノを消そうとするアナタ達を―――いいえ、初めからなかった事にしようとしているアナタ達を許さない。許しはしない」
スチャッ・・・シュカンッ・・・!シュカカンッ・・・!!
「うぐぅっ・・・!?」
「―――だからこそ、それに手を出される前に今ここで、私の手によってアナタ達全員を堕とさせてもらうわぁ」
スチャッ・・・!
「はっ・・・!そう易々とやられてやるものか!最後の最後まで抗わせてもらうぞ!」
「あらあら、随分と元気な事。・・・でも、いったいどうやって抗おうと言うのかしらぁ?見た感じ、持っていた手榴弾は全部使い切ったようだし、それにアナタの持っている銃。アサルトライフルかしら?その残弾も残り少ないんじゃないの?そんな追い詰められた状態で、どう戦おうと言うのかしらぁ?」
「・・・確かに、お前の言う通り私の持っているアサルトライフルの残弾はもう残り少ない。だが、私の武器はコイツだけじゃない。―――今だ!ドッグテン、イレブン!」
ザザッ・・・ザザザッ・・・!
『こちら、ドッグイレブン。待ってました!』
『ドッグテン、了解!行くぜ行くぜ突っ込むぜぇぇ!!』
ドッガァァァアアンッ!!!
「―――ッ!?」
『ハッハァー!騎兵隊の到着だぁ!』
『ドッグワン、ここは俺達に任せて、皆を!』
「ここは任せたぞ!ドッグテン、イレブン!―――行くぞ、ドッグツー!」
「ぐっ・・・!ドッグ、ワン・・・!」
「―――あらあら、まだあの人達以外に生き残りがいたのねぇ。なら、アナタ達も堕としてあげ・・・る・・・・・・・」
『あん?どうしたよ?突然言い淀んで』
「・・・・・・えぇっと・・・その・・・アナタ達が乗っているそのマシンは、いったい何なのかしら?私には・・・なんというか・・・やかんに手足をくっ付けたような、そんな形のモノにしか見えないのだけれど」
『・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・」
『言うなよ!指摘してくれるなよ、そこはよぉ!?俺達も気にしてるんだからさぁ!!』
「ご、ごめんなさい・・・!」
『見てくれは悪いが、一応これでも対怪人怪物用に開発された最新鋭機の一つなんだよ。・・・見てくれは悪いがな』
「そ、そうなの?でも、どうしてそんな形に・・・」
『元々はキチンとした人型のフォルムで建造される予定だったそうなんだが、何でも内臓システムや装備される武装のコストやらが予想以上にかさんでしまったらしく、予算の都合でどんどん不要だと思われる部分を削られていった結果、こんな形になってしまったんだそうだ。・・・だから、なんだ。ここはあえて見て見ぬふりをしてくれるとありがたい』
「そ、そうだったの。・・・・・・その・・・敵である私が言うのも何だけど、アナタ達も大変な思いをしているのねぇ?」
『言うなよ!言ってくれるなよ!くそぅ、涙が出てきやがった』
『敵に同情されるのが、ここまで心にクルとは・・・・・・』
「・・・ん・・・んんぅ・・・!まあ、とりあえずそれに関しては脇に置いておくとして、一旦仕切り直すとしましょうか」
『そうだな』
『ええ』
「―――さあ、行くわよぉ。ヒーロー連合協会に尻尾を振る狼さん達ぃ。此処で全員きっちりと堕としてあげるわぁ・・・!」
『へっ!やれるもんならやってみな!返り討ちにしてやんよぉ!!』
『駆動システム、火器管制システム、共にオールグリーン。対怪人怪物用機動兵器『叢雲参式』―――出る!!』
キュゥゥゥウンッ!ゴォォォオオオーーーッ!!
ザッ・・・ザザザッ・・・ザザザザザザザッ・・・・・・!
次回の投稿についてですが、1週空けて5/22にする予定です。
というのも、ちょっとリアル事情が忙しくて中々執筆作業が進まない為です。
こう、話の内容や道筋は大体出来ているのに執筆する気力が湧かなくて書けないという、そんな感じです。
折を見てちょこちょこ書いてはおりますが、もしかしたら5/22の予定も延びるかもしれません。その時は申し訳ありません。
ただ、一区切りつくまでは書くつもりなので、この小説を読んで頂いている読者の皆様には気長に待ってもらえたらありがたいと思います。




