ミッション76 クイズ番組に出演しちゃった・・・!? その1
「―――さあさあ、ようやく久しぶりに始まりました。『クイズ・ヘルズパーティー』!舞台の進行を務めますは、司会者兼問題出題者のこのワタクシ、オンパァーでございます!」
地底湖と思われる場所の傍。テレビ番組とかでよく用意される舞台セットが存在するその場所で、シルクハットにタキシードを身に纏った紳士然としたロボット―――オンパァーがマイクを片手に立っていた。
オンパァーは軽く後ろへ仰け反る様な体制となると、舞台の一角をビシッ!と指差した。
「そして今回この舞台にゲストとして出演して頂きますはこの四名!まずご紹介するのは、エントリーナンバー一番!黒き衣を身に纏い、全身に武器を搭載したその身でどんな伝説を築き上げるのか!?―――ブラックグローリィィーッ!!」
「ピッ!?ピポポ!ピポポポポ!?」(え!?いや待って、何その名前!俺そんな名前じゃないんですけどぉ!?)
そこにはボタンが付いた椅子の上に座らされている―――まあ、彼の脚部は現在戦車とかによく見られるキャタピラのそれになっているので、正確に言えば乗せられていると言った方が正しいのだが―――戦闘員一号であった。
オンパァーに指を差された戦闘員一号は「俺はそんな名前じゃないよ!?」と言いたげにブンブンと首を横に振るのだが、しかしオンパァーは「テメェの話なんざ聞くつもりはねぇ!!」といった感じにスルーする。
「続きましてはそのお隣、エントリーナンバー二番!同じ服装をしておりますが、頭の数字が二と異なり、目つきも鋭くて見事に個別化が出来ておられるこのお方!先程の紹介した一番さんの相棒かそっくりさんか、はたまたお笑いコンビの相方なのか!?―――ダッククルーゾォォーッ!!」
「イイィッ!?イイイィ!?イッ、イイッイー!?」(うおぉぉいっ!?何適当な事言ってんだこらぁ!?というか、誰がお笑いコンビだ、誰が!?)
ジャキンッ!バチュンバチュンッ!!
「うおっと危ない!?」
続いて紹介されたのは戦闘員二号であったが、その紹介の仕方が気に入らなかったらしく、ブレスレットの電子ストレージから取り出したまま両手に持っていたマシンガンをオンパァーに向けると引き金を引いて弾丸を撃ち出した。
「まったく・・・司会者への攻撃は禁止ですよ、ダッククルーゾーさん。罰としてコレを被っていただきましょうか。―――はい、アヒルパンツ」
スポッ・・・!ガーガー・・・!
「イイィィィーーーッ!?イーイイィーーーッ!?」(ぬおぉぉぉーーーっ!?なに被せやがんだテメェーーーッ!?こんな物外して・・・外し・・・外れねぇ!?テメェ!コイツを外しやが―――って、マシンガンが無ぇ!?何時の間に!?)
「危ないので没収です」
だがそれをオンパァーは軽々と回避し、ペナルティだと言いたげに戦闘員二号の頭にアヒルの頭と長い首が付いたゴム製のパンツを被せた。
そんな物を被せられた戦闘員二号は外そうと奮闘するがどんなに引っ張っても外れやしない。最終的に両手のマシンガンでオンパァーを脅して外させようと考えたようであったが、しかしその考えは読まれていたらしく、何時の間にかそのマシンガンを取られてしまっていた。
「えー、ちょっとしたアクシデントがありましたが・・・気を取り直して次の方をご紹介したいと思います。続きましてエントリーナンバー三番!黒いメッシュが入った猫耳と尻尾がキュートな元気いっぱいなキャットガール!・・・正直ワタクシ、その両手の肉球を思いっきりプニプニしたい欲求に駆られております。―――ニャンクルナイサァァーッ!!
「誰がアンタなんかにアタシの肉球を触らせるもんか!!アタシに触れていいのは姐さんだけだよ!そしてアタシの名前はアルミィだ!間違えんじゃねぇ!!」
「・・・・・・それはあれですかな?嫌よ嫌よも好きのうち、とか言う・・・」
「断じて違う!」
三番目に紹介されたのはアルミィであり、その彼女の事をオンパァーは指を咥えている様な動作をしながら物欲しそうな視線で見ていた。
その様子から、おそらく先程口にした言葉通りにアルミィの肉球をプニプニしたいのだと思われるのだが、しかしそれを彼女は全力で拒否する。
オンパァーは諦めきれなかったのか「ワンチャンない?」と言いたげに声を掛けたのだが、「あるわけないだろう!」と言いたげなアルミィの様子を見てガックリとした。
「・・・くすん。そうですか。・・・では涙を惜しみつつ、最後のゲストを紹介したいと思います。エントリーナンバー四番!アイマスクで隠しておりながらもなお分かる美貌と、世の男達の視線を釘付けにするであろうボンキュッボンのダイナマイトボディ。数多の男達を魅了し、虜にしてきたその魅惑的な容姿をどう活用して勝利を目指すのか!・・・個人的にはキャバクラとかでやる様な、ソファに並んで座ってお酌をしてもらう、といった事をしてもらいたいと思っております。―――マスクドバストォォーッ!!
「おいこら待て!?何だその誤解を招きそうな紹介の仕方はぁぁっ!?俺が何時・・・その・・・男達を魅了とか虜とかにしたんだよ!?あと名前!何で最後がバスト!?」
四番目に紹介されたのは俺ことディーアルナであったが、しかしそれに対して俺は―――否、俺も他の皆と同じくツッコミを入れた。
容姿に関してはともかくとして、流石に魅了とか虜云々に関しては風評被害だと声を大にして言いたい。
あと名前。マスクドバストって何だよ・・・!?せめてバストはやめろ、バストは・・・!他の名前にしろよ・・・!?
「・・・え?違うんですか?そんなエロい体をしてるんだから、実際多くの男性の方々を虜にしてきたと思ったんですが―――お色気担当として」
「んなわけあるかぁぁっ!?」
「あと、最後の方はノリと勢いと―――私がそう呼びたかったからですが、なにか?」
欲望ダダ漏れじゃねぇか!?ロボットなのに!ロボットなのに!?
「えー・・・それではゲストの方々のご紹介が終わりましたところで、今度は彼等彼女等と勝負をするキャストをご紹介したいと思います!エントリーナンバー五番!その真っ赤な体は燃え上がる魂の色か!決意の表れか!?今こそ雄叫びを上げろぉぉっ!―――レッドボーラァァーッ!!」
「ウオォォォッ!!燃エ上ガレ!俺ノ中ノコ〇モォォーーーッ!!」
そんな俺の文句を無視して、次の紹介を始めたオンパァー。
それに反応したのは俺の左隣にいた全身真っ赤な色合いのロボットであり、そいつは両手を上げて大きく振った後に左腕を真っ直ぐ上に伸ばすと、人差し指をピンと立てて見せた。
ちなみに反対の右腕を見て見たら、手首から先がボウリングの球のそれであったりした。
・・・・・・ボーラーってそう言うこと!?
「お次はエントリナンバー六番!今日もその青い体をキラリと光らさせる海のハンター!その大きな口と鋭い歯は威厳か、それとも見かけ倒しか・・・!―――シャーク・ザ・ファットォォーッ!!」
「ゲッゲッゲッ・・・!有象無象ノ小魚ドモヨ・・・!テメェ等ハコノ俺ガ丸ゴト全部平ラゲテヤルゼェ・・・!」
次に紹介されたのは青い色合いの鮫の形を模したロボットであった。
そのギザギザとした歯はかなり鋭そうであり、良く見れば細かいのこぎり状の刃が付いているのが見えた。あれならどんな硬いモノであったとしても噛み切れそうである。
ただまあ・・・ファットと言う名前の通りまん丸と言うか、ブクブクと言うか、そんな感じにかなり太っている様な見た目をしており、椅子に座っている様もなんだかギュウギュウ詰めみたく無理矢理座っている感じであった。
・・・というか名前、太った鮫ってまんまじゃねぇか。
「エントリーナンバー七番!その頭の中に詰まった大量のデータと高度な演算技術によって瞬時に答えを見出す我等がエース!今日もズバズバ答えを言って大活躍するのか!?―――メガネノハカセェェーッ!!」
「本日ノ私ノ勝率ハ五十四.六%。他ノ者達ヲ蹴落トシテ行ケバ、ソノ確率ハドンドン上ガッテ行ク計算デス。デスノデ、徹底的ニ皆サンノ事ヲ潰サセテイタダキマスヨ」
その次に紹介されたのは全身を緑と黒のまだら模様で塗装されたロボットであった。
その顔と思われる部分には丸ぶちのグルグルメガネが掛けられており、紹介されたロボットはそのメガネをクイッとさせる。
あと、何故か右のわき腹辺りには分厚い辞書の様な本が一冊挟まれてもいて、ロボットはそれを目の前に持ってくると、パラパラと開いて読んでいる様な仕草を見せた。
・・・ってか、ロボットに辞書なんて必要あるのか・・・・・・?
「そして最後がエントリーナンバー八番!その姿はボロボロの見た目の紫色のウサギの着ぐるみ!それを身に纏う者の正体は性別不明、年齢不明、名前も不明の謎、謎、謎だらけの人物!その力量は如何程か・・・!なお、名前は暫定的ですが私が付けさせていただきます。―――ボロットラビットォォーッ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ムック」
最後に紹介されたのは、オンパァーが口にした通りボロボロの見た目をした紫色のウサギの着ぐるみであった。
全身の至る所が様々な糸と布で縫い合わされていて、着ぐるみの紫色の色合いを主軸にどことなくカラフルな色合いとなっており、紹介された後に行った右手を頭の上に乗せる動作はまるで敬礼でもしている様で、その見た目と相まってシュールさを感じさせる。
・・・っていうか、コイツだけなんか他の面子と違くない!?
「―――以上、この八名にて今回の舞台『クイズ・ヘルズパーティー』を進行させていただきたいと思います。皆さん準備は良いですかー?何か聞きたいことはありませんかー?」
マイクを片手にそう言いながらクルクルと回り、俺達に向けてマイクを向けて来るオンパァー。その仕草はまるで質問があるなら受け付けると言いたげなものであった。
そんなかのロボットに対し、俺はふざけるなという気持ちを込めながら声を上げた。
「お前は一体何が目的だ!何で俺達にこんな事をする!?」
「何が目的か、ですか・・・・・・その答えは確か初めてお会いした時にお教えしたと思うのですが?
「・・・・・・なんだって?」
「私の目的はただ一つ。数年前に突如として打ち切りとなってしまった私の舞台を再び復活させ、お茶の間の皆様に見ていただき、両足をバタつかせながら笑い転げて欲しい。ただそれだけなのですよ」
そう答えながらシルクハットの縁を持ちながら目深に被って見せるオンパァー。
そんなかのロボットに対し、俺の次に声を上げたのはアルミィであった。彼女は歯を剥き出しにしながら「グルルッ・・・!」と唸り声を上げる。
「ふざけんな!そんなモンにアタシ達を巻き込むじゃないよ!やるなら自分達だけでやりな!!」
「残念ながら、それは無理なのですよ。・・・確かに舞台のゲストを用意する事は私には出来ます。ですが、それで行えるのは予定調和、あらかじめ決められた台本通りの受け応えのそれでしかない。それではエンターテイメント性が足りません!足りないのです!!だからこそ私には・・・私の舞台には必要なのです!貴女方の様な私とは何ら一切関係のないゲストが・・・!!―――故にこそ・・・長らく待ち望み、そしてようやく此処へと来られたゲストである貴女方を逃がすつもりはワタクシにはありません!ええ、ええ、毛頭ないのですよ・・・!!」
シャン、シャン、シャシャシャン!と右手に持ったタンバリンを振りながら踊る様に回りながらそう答えるオンパァー。
クククッ・・・!と笑う様は怪しげでありながら、しかしどこか嬉しさを感じさせるモノであった。
「まあ、逃げたいと思うのであれば別に構いませんよ?頑張って逃げ出してみるといいでしょう。―――出来る物ならね?」
「くっ・・・!?」
右手でシルクハットを押さえながら体を後ろへ仰け反らせつつ、左手に持ったマイクをこちらに向けながらそう俺達に言うオンパァー。
それに対して俺は、悔しげな声を零すしかなかった。何故なら俺達の体は椅子に座らされた状態のまま動かすことが出来なかったからだ。
別にベルトやら縄やらで椅子に括り付けられているわけではない。ないのだがしかし、俺達の体は全くと言っていい程椅子から離すことが出来ないのだ。まるで接着剤か何かでくっ付いているかのように・・・!
幸いにと言うべきか、両腕と両足はある程度自由に動かす事は出来る。おそらくボタンを押したりなんだりする為なのだろうが。
「クククッ・・・!これが私の能力『強制劇場』!!これが発動している間は、アナタ方はこの舞台から逃げることは出来ないのですよ!・・・貴女方が私のこの能力から解放される方法は二つ。一つはこの舞台を最後まで終わらせるか、もしくは途中退場するかのどちらかなのです。―――理解出来ましたか?」
「なん・・・だと・・・・・・!?」
つまりは何か?最後まで付き合わないと逃げられないという事か!?とオンパァーの能力についての説明を聞いて俺は思わず愕然とした。
しかしそこでふと「あれ?」と思った。
「(そういえばさっき、途中退場する事でも解放されるって言っていたよな?だったら、それを狙えば・・・!)」
オンパァーの舞台に最後まで付き合わなくても抜け出すことが出来るかもしれない。そう考えた俺であったが、
「・・・今、途中退場すれば抜け出せるかもしれないと思いましたか?」
「・・・ッ!?」
しかし、その考えはオンパァーには見透かされていたらしい。
かのロボットは俺の目の前にまで近づくと下からのぞき込む様に顔を近づけてきた。
「確かに、貴女が考えた通り途中退場してしまえば、この場から逃げることは可能です。そしてその方法は凄く簡単です。出題される問題を間違え続けて失格となればいいだけ。―――ただし、失格者には罰ゲームを受けて貰いますがねぇ?」
「ば、罰ゲーム、だって?」
「ええ、そうですよ。罰ゲームの内容は行う舞台ごとに異なっておりまして・・・・・・今回ご用意した罰ゲームはこれです。―――ポチッとな」
ゴゴォォンッ・・・・・・!!
「ッ!?」
オンパァーが何かのボタンを押した瞬間、舞台中央の床の一部が下へと沈み、更には左右にスライドし始めた。
その時だ。開き始めたそこから何やら細長く、ヌメヌメとした黒光りするモノが飛び出して来たのは。
「う、鰻・・・!?」
そう。それは鰻であった。大きく肥えたそれは食材として見ればとても美味しそうに見える。
「・・・ッ!うひぃっ!?」
しかもそれは一匹だけではなかった。中央の床が完全にスライドしきったそこには大量の、数えきれないくらいの鰻が蠢き、ひしめいていた。
最初は「何故鰻が?」と首を傾げていた俺も、この光景を見た時は本気で引いた。数匹程度であれば別にどうという事もないのだが、流石にこれ程の数が一つの場所にひしめいていると嫌悪感が湧いてくる。
「お、おい・・・まさかお前が用意した罰ゲームって・・・・・・」
「そう。まさにこれですよ。この大量の鰻がひしめくプールこそが今回の罰ゲーム。失格者にはこのプールの中へと入っていただきます」
「マジで・・・!?」
「マジです。・・・がしかし、ただの鰻が詰まったプールに入ると言うのも面白みがない。―――そこでちょっと趣向を凝らしてみました」
ドン引きしていた俺達を他所にオンパァーはそう言うと、ポケットから何かを取り出した。
「此処に彼等の餌があります。これをあの中へ入れると・・・・・・」
ポイッ・・・!
・・・バチッ!・・・バチバチッ!!バチバチバチバチッ!!!
「・・・と、このように鰻から電流が走ります」
「うっそだろ、おい!?」
オンパァーがポケットから取り出した団子状の餌をポイッと鰻のプールへと放り込む。
そのすぐ後にバチバチッという音が響き始め、次の瞬間には鰻のプールから凄まじい電流が迸り、周囲に飛び散った。
・・・って、うわっ!?こっちにも飛んできた!?痛っ!イタタタッ!?
「ぐっ・・・!これ、まさか全部デンキウナギなのか!?」
「ピポ・・・ピポポポポ。ピッポポ・・・ピッ、ピポポ。ピポパ・・・!」(い、いや・・・さすがにこれ程の電圧を持つデンキウナギがいる筈がない。一般的に知られているデンキウナギの最高電圧は六〇〇から八〇〇V・・・だが、このデンキウナギが今発したのはそれ以上だ。明らかに普通じゃない・・・!)
「おや、動物に詳しい方がいらっしゃるようですね?―――ええ、その通り。この子達は普通のデンキウナギではありません。遺伝子改造と品種改良を繰り返し行う事で出来上がったデンキウナギ・・・・・・敢えて名付けるとしたら『スーパーデンキウナギ』と言ったところでしょうか。このスーパーデンキウナギが発する電圧は通常個体の数倍から数十倍であり、また数が増えればその分相乗効果で威力が増して行く様になっております」
「ちょ、ちょっと待て・・・!そんなの食らったら・・・!?」
「ええ・・・ただでは済まないのは間違いないでしょうね」
当然だと言わんばかりに頷いてみせるオンパァーに、俺は思わず頬を引き攣らせた。
・・・いや死ぬから。これ間違いなく死ぬから・・・!?
「ふっ・・・どうやらわざと失格になった場合のリスクを理解できたようですねぇ。―――さて・・・それではそろそろ、今回の『クイズ・ヘルズパーティー』のルールを説明するとしましょうか」
そんな俺の様子を見たオンパァーがニヤリと笑うと、片手に持ったマイクを口元へと近づけた。
「ゲスト及びキャストの皆様には今から司会者兼問題出題者であるこの私が出す問題に答えていただきます。そして今回はチーム戦であり、間違った答えを出してしまった場合はその人の椅子が徐々に上がり、傾いていく仕様となっています。・・・が、それだけでなく、相手チームが先に出された問題に正解してしまった場合も答えられなかった方のチームの椅子が一斉に上がる仕様となっております」
「ピッ・・・!?ピポポポ!?」(ちょっ・・・!?一斉にってマジか!?)
「チーム戦なのでマジです。そしてどんどん傾いていき、その傾きに耐えられなくなって鰻プールの中に落ちてしまった場合は失格とさせていただきます」
「イイイッ・・・・・・ゴクリ」(あの中に、か・・・・・・ゴクリ)
「勝敗はどちらかのチームの内誰か一人でも失格とならず、且つ相手チームが全員失格となった場合に決まります。・・・・・・そして負けた方のチームにはもう一つの罰ゲームを受けていただきます」
「はっ!?ちょっ、罰ゲームってこのデンキウナギのやつだけじゃないのか!?」
「デンキウナギの方は飽く迄失格者に対する罰ゲーム。チームが敗北した際に受ける罰ゲームはまた別にご用意しているのは当たり前でしょう?」
もう一つの罰ゲームと言うのを耳にした俺は、ちょっと待てという感じに声を上げたのだが、それに対してオンパァーは「何を言っているのだ」と言う様に首を傾げた。
いらない!そんな当たり前いらないから!!
「さて・・・それでは最初に行うべき説明を終えた所で、そろそろクイズを始めると致しましょうか。・・・・・・カメラ、オーケー。音響マイク、オーケー。各種舞台設備、オールオーケー・・・!―――ゲスト及びキャストの皆さん、準備はオーケー?」
「オーケーじゃない!全然オーケーじゃない!!」
「では皆様、長らくお待たせいたしました。これより『クイズ・ヘルズパーティー』によるクイズバトルを始めたいと思います!」
スルー!?俺の渾身の叫びをスルーしやがった、コイツ!?
「それでは第一問!缶とペットボトルだとペットボトルの方が賞味期限が短いですが、その理由は何?」
「初っ端から難問来たな、オイ!?」
閑話:その頃のメドラディは・・・
ザザッ・・・ザザザッ・・・・・・!
ギッ・・・!ギギッ・・・!!
「ふぅ・・・こんなもんか。トラップとしては足止めぐらいにしか使えないが、無いよりましだな。・・・そっちはどうだ、ドッグツー?」
「ふっ・・・!こちらも設置完了です。残っていた手榴弾とフラッシュグレネードを使った二重のブービートラップを仕掛けました。コイツに引っ掛かれば、スタングレネードが閃光を放ち、それに怯んでいる間に手榴弾でドカンと吹き飛びますよ!・・・・・・まあ、あのスライムみたいな化け物にこれが効くかどうかは分かりませんが」
「いや、アイツには効かなくても対象である彼女には効くだろう。あのスライムに命令を下しているのは彼女なのだから、少なくとも命令の遅延は起こる筈だ」
「だといいですが・・・」
ザッ・・・・・・ザザザッ・・・ザザッ・・・・・・!
『―――ドッグスリーよりドッグワンへ。ドッグフォーと共に一階の廃病院裏口に到着しました。これよりクリアリングを開始します!』
「む・・・!こちらドッグワン。了解した。気を抜くなよ?」
『心配しなくても大丈夫ですよ!これでも俺はこの部隊の古参の一人なんですからね・・・・・・って、ん?』
『ニャー』
『猫ちゃん!?しかも子猫ちゃん様!何でこんな所にいらっしゃるのですか・・・!?』
「・・・おい、ドッグスリー。いきなりどうした。口調がおかしくなっているぞ?・・・・・・というか、今そこに猫がいるのか?」
『ええ、はい、そうなんですよ!それはもう、きゃわゆい子猫ちゃん様がですねぇ・・・!』
「・・・ドッグツーよりドッグスリーへ。お前が猫好きなのは分かっているが、今は脱出に専念しろ。クリアリングはどうした」
『そちらは問題ないですよ。敵影は確認されず。こちらからなら安全に脱出できます』
「そうか・・・・・・では今から私とドッグツーがそちらへ向かう。ドッグテンとイレブンにも連絡してそちらへ向かう様に指示を―――」
『・・・ん?なんだこれ?』
「・・・?どうした、ドッグフォー?」
『いや、なんかこの子猫の足下に小さな緑色の水たまりがありまして・・・いったいなんだろうな、と』
「緑色の、水たまり・・・?―――ッ!?まさか!二人共、今すぐそこから退避しろ!」
『えっ・・・?』
『ニャー!ニャウゴゴゴゴゴゴッ・・・!』
『―――ふぐぉっ!?』
『ドッグスリー!?』
「くそっ!嫌な予感が的中したか・・・!ドッグフォー、何が起こった!?」
『こちらドッグフォー!子猫の姿が緑色のスライムに変身してドッグスリーに取り付きやがった!くそっ・・・!コイツめ、離れろ・・・!!』
『ニャウゴッ、ニャウゴゴゴッ・・・!!』
『―――うぐっ!?な、なに・・・!?もう一体だと!?ぐおおぉぉぉっ・・・!?』
ザザッ・・・ザザザッ・・・ザッ・・・・・・!―――ブツッ!
「ドッグフォー!?どうした、ドッグフォー!・・・くそっ!駄目だ、通信が切れた・・・!」
「どうする、ドッグワン?さっきもドッグスリー達との通信から見るに、裏口からの脱出は無理そうだぞ」
「分かっている・・・!」
「正面入り口もダメ。裏口もダメとなると、もう脱出できる場所なんて・・・・・・」
「分かっている!!・・・いや、すまない、ドッグツー。お前に当たってもどうしようもないというのに・・・・・・」
「ドッグワン・・・・・・」
「・・・これは私の責任だ。彼等に命令を下した私の、な」
ザザザッ・・・・・・!
『こちらドッグテン。さっきのドッグスリー達との通信は聞かせてもらっていた。その上で言うが、ドッグワン。今回の件は完全にドッグスリーのミス。アイツの油断が招いた事だ、アンタの責任じゃない。・・・・・・色々と抱え込もうとするのはアンタの悪い癖だぜ?』
『こちらドッグイレブン。しかし、どうする?ドッグツーの言う通り、もう俺達がこの廃病院から脱出できるルートなんて・・・・・・』
「・・・・・・無いわけではない。あと一つ脱出ルートは存在する」
『えっ!?それは本当か、ドッグワン!』
「ああ・・・地下駐車場だ。あそこからなら、おそらく外に出られると思う」
『こちらドッグテン。地下駐車場、か・・・だが、どうやってそこに行くんだ?一通りこの廃病院の一階を探索したが、それらしい場所に向かうルートは見つけられなかったぞ?』
「ああ、今私達がいる第一病棟には、な。あるのは二階の連絡通路から向かう事ができる第二病棟だ。二階の探索中に見つけた病院内の地図にその記載があった」
『本当かよ!だったら早く行こうぜ!こんな所からはさっさとおさらばしたいからさ!』
『それと本部への報告も、だな。今回の任務は結果的に失敗に終わってしまったからな。その詳細を説明しなければならないだろう』
『ああ・・・まあ、叱責は確実だろうなぁ。けどよ、今回の件は上層部も予想してなかったんじゃねぇか?まさか一般人だと思っていた女が協会の特殊部隊をほぼ壊滅しちまう、なんてことをさ・・・』
『・・・かもしれん。が、それを考えるのは帰ってからにするべきだろう。―――ドッグワン。先程の話にあった連絡通路は二階の何処にあるんだ?』
「東棟にあるナースステーションの近くだ。そこへ行けばすぐに分かる。ドッグテンとイレブンは正面玄関入口に足止め用のトラップを仕掛けた後、急いでそこへ向かえ。私達もすぐに向かう」
『了解!』
「・・・では私達も向かうぞ、ドッグツー。準備は良いか?」
「何時でも・・・ッ!」
―――ドカァァァンッ!!
「・・・どうやら、私達が仕掛けたトラップに対象が引っ掛かった様だな」
「ええ・・・しかも音の響き方からして、おそらく階段近くのやつでしょう。時間がありません・・・急ぎましょう、ドッグワン・・・!」
「ああ・・・!」
ダダダダダダダッ・・・!!
ザザザッ・・・・・・ザザッ・・・・・・!―――ブツッ!
次回は4/22に投稿予定です。




