ミッション71 横穴が出来ちゃってた・・・!?
皆様お久しぶりです。kudoです。幾つか話のストックが出来上がったので、今日から数話分を一週間ごとに投稿していく予定です。
なお、今回はギャグ中心です。
前回の海水浴場の一件から数週間が経ったある日の事。
悪の組織『アンビリバブル』という組織の構成員の一人であり、その女幹部でもあるルビーのような赤い瞳と肩辺りで切り揃えられた白髪揺らす少女―――ディーアルナこと渡辺光である俺は、秘密基地の通路の一角で仲間兼部下達でもある戦闘員一号と、二号、猫怪人のアルミィ達と一緒に大きな段ボールを抱えて運んでいた。
「よいしょっ、と・・・・・・ふぅ・・・ブレーバー達に頼まれて運んでいるけど、本当に重いな、これ。怪人化して力が多少上がっている筈の俺が重いって感じるとなると相当だぞ」
「イッ、イーイーイイー。イーイー」(まあ、鉄やら何やら色々と混ぜ込んだ複合建材ですからね。重いのは当然ですって)
段ボールを持ち上げた際に思わず漏らした俺の呟きに応えたのは、同じく段ボールを抱えながら前を歩いていた悪の組織アンビリバブルの構成員の一人である戦闘員一号であった。
全身を黒いタイツの様なスーツで覆い、銀色の胸当てと手袋、靴を身に着け、額に『1』という番号の付いた顔全体を覆う電子的なアイマスクっぽい物を着けた彼は、俺と同じく段ボールを持ってテクテクと通路を歩いていた。
「そうだけどさぁ・・・せめて台車とかに乗せて運べないのか?それがあれば、こうして一々持って運ぶよりも効率的且つ沢山運べると思うんだけど?」
「イイッ、イーイー。イイー、イーイイー。イー」(その意見はご尤もだが、生憎今この秘密基地にはそういった物は置いてないんだ。ディーアルナ様達が来るまではボスと俺達だけだったし、悪の組織としての活動もまともにしていなかったからな。こんな風に大荷物運ぶ必要とかが無かったんだよ)
「マジか・・・!?」
戦闘員一号の言葉に溜め息を吐きつつせめて乗せて運ぶものがあればと愚痴る俺だったが、それに応えたのは俺の隣で同じく段ボールを運んでいる戦闘員二号であった。
額に『2』という番号が付いている以外は一号とほぼ同じ格好をしている彼のその言葉を聞いた俺は思わず瞠目し、驚きの声を上げてしまった。
「大丈夫ですよ、姐さん!ボス達のやっている作業はここ数日で既に半分が終わっているんです。だったらもう半分もアタシ達が力を合わせればすぐに終わらせることが出来ますって!頑張りましょう、姐さん!アタシも頑張りますからっ!!」
そんな俺に声を掛けて元気付けようとしているのは、俺の同僚であり、悪の組織アンビリバブルの猫怪人であるアルミィであった。
俺の後ろで頭の上に生えている毛先が黒く染まった金毛の猫耳をピルピルと動かし、頭髪は前髪に黒いメッシュが入った背中まで伸びた綺麗な金髪を揺らし、首に『ミィちゃん』と刺繍が縫われたピンク色の首輪をしている彼女は、赤褐色に近い肌色の腕で段ボールを抱えながら歩いており、此方に向けらている少し吊り上った勝気そうな印象を受ける目は細められ、血色のいいピンク色の唇はニンマリとした笑みを浮かべていた。
「あはは・・・うん。ありがとう、アルミィ。・・・まあ、無いんならしょうがないよなぁ・・・・・・」
アルミィに声を掛けられた俺は苦笑を浮かべながら彼女にお礼を言い、その後でしょうがないと言いたげに嘆息した。
そう。何故俺達がこんな事をしているのかと言えば、それは悪の組織『アンビリバブル』のボスであるブレーバーとその補佐に就いている戦闘員三号に頼まれ事をされていたからであった。
実は今彼等は、近々行われる『悪の組織、秘密結社合同スーパーロボットコンテスト!』という大会に出場する為に、巨大ロボットを建造中なのである。
なんでもそのコンテストは、世界中の悪の組織と秘密結社が自分達の手で開発したロボットを持ち寄り、どれだけの完成度であるのかを発表する場であるらしいのだ。
評価する点は造形美や機能性、戦闘能力など多岐に渡るが、その中でも点数が高く優秀だと認められたロボットは、後日大量生産されて各組織で運用できる兵器として販売される様になるらしく、言ってしまえばこのコンテストは、自分達が作ったロボットがどれだけ凄いのかのデモンストレーションをする場であり、同時にそのロボットを買ってくれるであろう顧客を探すビジネスの場でもあるという事だ。
ちなみに、出品するロボットのサイズに関しては特に規定とか規制はないらしいのだが、過去に出品された優秀だと認められたロボットのそのほとんどが人間サイズか、それよりも一回り二回り程大きいサイズの物ばかりであるらしい。一応巨大ロボットが認められた事があるにはあったそうだが、それは二例だけであり、そのどちらもが特殊なシチュエーションを求められていた当時のニーズにマッチしていたからであったそうだ。
なので、そこに敢えて巨大ロボットを作って持って行こうとするブレーバー達は、その業界の者達からすると酔狂なと言うか、趣味人的な連中の括りに入るらしい。所謂ロマンを追い求めている的な。
その気持ちは元男として分からないでもないが、だからと言ってそんなものをワザワザ作って持って行こうとするのはどうかと思い、一度考え直す様に声を掛けたのだが・・・・・・
『ええい、何を言うかディーアルナよ!これは金の話ではないのだ!巨大ロボットだぞ、巨大ロボット!少年の憧れでもあり、男のロマン。それが現実に存在し、動く様を想像しただけで・・・こう、滾るものがあるだろう!?』
『イイッ!イイーイーイイー!!イイッ、イイイッ、イーイイー・・・!!』(そうですよ!元男であったディーアルナ様なら俺達の気持ちは分かる筈です!!巨大ロボットに乗り込んで操縦し、相手のロボットと真っ向から戦うという熱く、燃え上がるシチュエーションを・・・!!)
『そう・・・今の我等は悪の組織のボスとその戦闘員ではない。巨大ロボットというロマンを追い求める一科学者であり、同志なのだ!!―――行くぞ、戦闘員三号よ!コンテスト当日までに何としてでもコイツを完成させるのだぁぁーーーッ!!』
『イッイー!イイィィィーーーッ!!』(合点承知です、ボス!!ウオオオォォォーーーッ!!)
・・・と、逆に小一時間ほど熱弁されてしまった。
しかもその時の彼等はランナーズハイと言うか、徹夜明けのナチュラルハイとでも言うべきか、三日も寝ずに長時間の作業を行っていたせいで妙な興奮状態になっていてまともな会話が成立しない状態であった。
そんな状態の彼等を見た俺は、正直言って「こりゃ駄目だ」と匙を投げた。馬の耳に念仏、に近い状態であったからだ。
・・・まあ、だからと言って放っておくのもマズイと思い、早く完成できる様にこうやって資材を運ぶなどして作業を手伝っているわけなのだが。
ちなみに、どうして彼等がそんな状態になっているのかと言えば、それはコンテストが開催される日時まで残り一週間とちょっとという段階で、未だにその建造しているロボットが完成していなかったからだ。
”骨子”となる部分は既に完成しているそうなのだが、問題は外装の取り付け作業であり、まだ下半身の部分しか作成できていないらしいのだ。
コンテスト会場まで輸送する時間を考えると、このまま普通に作っていたのでは間に合わない。なので夜を徹して作業をし、コンテストの開催日までに間に合わせようと奮闘していたというわけである。
・・・ただまあ、そんな風に今も頑張っているであろう二人には悪いと思うのだが、正直現在の建造スピードでは多分開催日までには間に合わないのではないかと俺は思っていた。
なにせ純粋に人手が足りない。いくら二人が数多くの秘密兵器を作れる程の (時々しょうもない物とか、とんでもない物とか作る時はあるけど)天才的な頭脳を持っているとはいえ、たった二人だけで巨大ロボットを作ろうとするのは明らかに無茶である。
かと言って彼等の作業を手伝おうと思っても、そういった事に関する知識を持たない俺達では何をすればいいのかちんぷんかんぷんの状態であり、足手まといにしかならない。
「(せめてあの二人について行ける奴が何人かいれば話は変わるんだけどなぁ・・・)」
内心でそう呟いた俺は、ブレーバーと戦闘員三号の事の体調を心配して思わず溜め息を吐いた。
「・・・・・・・・・イッ?イイッ、イー・・・?」(・・・・・・・・・んん?なんだ、あれ・・・?)
「・・・?どうした、一号?」
そんな中、俺の前にいた戦闘員一号は通路の曲がり角を曲がろうとして、何か変な物を見つけた的な声を上げた。
「イッ・・・イイー、イー。イー?」(いや、その・・・ちょっとアレを見てください、ディーアルナ様。ウチの秘密基地にあんな穴ってありましたっけ?)
「穴・・・?いったいどれの事を言って・・・って、何この穴!?でっか!?」
戦闘員一号の言う穴がなんなのか、彼の視線を追った俺はその先にあった光景を見て驚きに目を剥いた。
そこには秘密基地の壁が壊れ、土肌を覗かせた大きな横穴があったのだ。
「い、いったい何時の間にこんな横穴が出来たんだ?皆は知ってたか?」
「イッ、イイー」(いえ、俺は知らなかったです)
「アタシもです、姐さん」
「イッ。イーイーイイイー」(俺もだ。この道は昨日も通っていたが少なくともその時まではこんな横穴は無かった筈だ)
俺の問いに全員が首を横に振る。
当然俺もこんな穴が出来ていた事を知らなかったので首を傾げるしかない。
「そうか・・・・・・これは一度ブレーバーに報告しておいた方がいいだろうな。戦闘員一号、二号、アルミィはこの場に残って横穴の監視を。俺は一度ブレーバーに指示を仰いでくる」
俺がそう指示を出すと、「了解!」と敬礼をしながら返事をする三人。
それを俺は横目で見つつ、踵を返した俺はブレーバーがいる格納庫へと走って向かうのであった。
秘密基地内に突然出来ていた横穴の事をブレーバーに報告してから十数分後。俺達四人は件の横穴の前で横並びとなって構えていた。
「・・・イッ、イイー、イー?イイイッ・・・イー」(・・・で、ボスはなんて言ってたんですか、ディーアルナ様?なんかすぐに戻ってきましたけど・・・しかも一人で)
「あー・・・それなんだけど、一応横穴の件を報告しに行ったんだが、ダメだった。例の巨大ロボットを作る事に集中し過ぎてまともにこっちの話を聞いてくれなくってさぁ・・・」
「イー・・・イイッイー、イーイイィー。イッ、イイイッイイー」(あー・・・あの二人はマッドサイエンティスト的な気質があるからし、今は追い詰められている状況だからなぁ。具体的には、締切が間近になると妙な極限集中状態になる漫画家や同人誌作家みたいに)
「イッ、イー。イーイーイイイー。イーイイー・・・」(あぁ、確かに。そういったタイプって自分の邪魔をされると怖いくらいに攻撃的になるからなぁ。今回あの二人を当てに出来ないのは痛いなぁ・・・)
納得した様に頷く戦闘員一号と二号。
あの二人と付き合いが長いからこそのわかりみ具合であった。
「メドラディに助っ人を頼みますか、姐さん?確か彼女は医療室で薬品の整理整頓していた筈ですけど?」
「あぁ、いや・・・それは俺も考えたんだけどそれは残念ながら無理だ、アルミィ。彼女は今足りない日用品を買いに出かけちゃっているから、この秘密基地にはいないんだよ」
アルミィの提案に俺は首を横に振った。
そう。彼女は今この秘密基地にはいない。横穴を見つける前の資材を段ボールに詰める作業の時に俺の所にやって来て、買い物に出かける事を伝えて出かけて行ったからだ。戻って来るのは夜になるかもと言っていたので、しばらくの間は帰ってこないだろう。
ただ、それを聞いたアルミィは不思議そうに首を傾げた。
「買い物、ですか?でも確かこの前家具とか色々な物を皆で買いに行きましたよね?他に何か買う物があったんですか?」
「えーと、さ・・・それが分からないんだよね。一応俺も何を買いに行くのか気になって聞いてみたんだけど、『ナ・イ・ショ』って、はぐらかされてさ・・・・・・」
アルミィの問い掛けに俺はそう答える。
いやほんと、彼女はいったい何を買いに行ったのだろうか?頬を赤らめながらスッゴいキラキラした笑顔を浮かべていたけれど。いや、今思い返してみると、何か瞳だけは妙にドロドロしていた様に思えたけど。
その事を思い出した俺は何やら悪寒を感じてブルリと体を震わせたが、その後にそれを振り払う様にブンブンと頭を横に振った。
「ま、まあ、いないのはしょうがない・・・!しょうがないから、俺達だけで調査を開始するとしよう・・・!」
「イッ、イイー。イーイイーイー、イー」(まあ、そう言う事なら仕方がないですね。まあ、ここには戦闘のプロフェッショナルである二号もいるし、何とかなるでしょう)
「イッ・・・イイー。イーイーイイー」(ふっ・・・任せておけ。もしもの時は俺の愛銃が火を噴くぜ・・・!)
「やれやれ」と言いたげに肩を竦める戦闘員一号と、彼のセリフに応える様にジャキリとアサルトライフル―――形状から見るに多分アレはAK47―――を構える戦闘員二号。特に後者は頼もしいやら恐ろしいやら。
「よし、それじゃあ行くぞ、皆!これより横穴の調査ミッションを開始する!」
俺がそう宣言すると三人は「了解!」と返事をする。
そして俺達は目の前の真っ暗闇が広がる横穴の中へと足を踏み入れた。
閑話:その頃のメドラディは・・・
「さあ、らっしゃいらっしゃい!今日もウチの店は生きのいい新鮮な魚を取り揃えているよぉ!今の旬の魚はタイにサンマにカレイ、イワシにカツオ。他にもスルメイカやマダコ、エビやカニ何かも美味しいよぉ!あっと、そこのお嬢さん。今日の夕飯にウチの品を一品使ってみちゃくれないかい!」
「あらあら・・・そうねぇ、とりあえずタイとカツオの切り身と・・・後はイカを頂こうかしら?」
「まいどあり!アンタ別嬪さんだからねぇ、サービスでイカをもう一匹おまけしてあげるよ!!」
「あらあら、ありがとうございます。・・・ならサービスついでに一つお聞きしたいことがあるのだけれど、よろしいかしら?」
「・・・?なんだい?」
「此処にフグって置いてないかしら?養殖物じゃなくて天然物なのだけれど」
「・・・ッ!・・・いや、ウチの店にはそいつは置いてないぜ、お客さん。アレはキチンとした資格がないと取扱い厳禁だからねぇ」
「あら、そうなの?じゃあ、二枚貝で何か良いのはあるかしら?」
「・・・ウチで扱っている二枚貝は色々あるけど、お嬢さんは何がご所望なんだい?」
「そうね、イタリア産の物があればいいのだけれど」
「・・・・・・あー・・・悪いんだけど、お嬢さん。外国産のやつは流石に店先には置いてなくてねぇ。悪いんだけど保存してある所に一緒に来てもらってもいいかい?」
「あらあら、ふふふ・・・―――ええ、よろしくお願いしますね、西のシャチの名前を冠する魚屋さん?」
次回投稿は3/8を予定しております。




