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ミッション68 海の怪人撃退・・・!!

今回はちょっと文章が少ないです。



「ウグッ・・・!ウググググッ・・・!?お、おのれぇぇ・・・!よくもワシの体をぉぉ・・・!」


俺が突如姿が変貌した田中さんを見て驚いたり、メドラディの話を聞いて冷や汗を流していた時、田中の手により触手を細切れにされ、砂浜の上に俯せ?になって倒れていたグランゲドンが、怨嗟の声を上げながら触手を再生させ、その体を起き上がらせた。

さらには、彼の怒りの感情に合わせてか、半透明であった体色が鮮やかな赤色に染め上がり、再生したばかりの触手の先から赤紫色の液体が滴り落ち始めていた。


「覚悟は出来ているんだろうなぁぁぁ・・・貴様等ァァーッ!この手でグッチャグチャにしてくれるぞぉぉーッ!!」


「あらあら、随分と血気盛んな事で。―――だけど、これから先、貴方の相手をするのは私達ではないわよ?」


「何ィィッ!?」


触手を荒れ狂わせながら、怒りの声を上げるクランゲドン。

だが、そんな状態の彼に向けて、メドラディの声が静かに響いた。


「あちらをご覧なさいな」


クランゲドンがどういう事かと問い掛けるよりも早く、メドラディは自身の左側、海の方をスッと指差した。

彼女が指し示したその先には、腕を組み、沖合の海の上でしっかと仁王立ちしているマリンマーマンさんの姿が・・・!


「・・・って、ウエェェェーーッ!?マリンマーマンさん!?なんで・・・!どうやって海の上に立ってんの!?」


「アンタ、そんな能力あったっけ・・・!?」と、俺は目の前の光景にツッコミを入れる。

いや、本当にどうやって立っているんだろうか、あの人は・・・!?一緒に仕事をするのだからと、マリンマーマンさん自身から彼が持っている能力について事前に聞いてはいたが、その時には”手で触れた水をある程度操作できる能力”とだけしか聞いていなかった。

水の上に立つことも出来るのか!?と俺は驚愕したが、しかしその後で、ん?と訝しげに目を細めた。


「アレは・・・背びれ、か・・・?」


良く見ればマリンマーマンさんの足の後ろに大きな背びれが見える。それはどこか見覚えのある形であり、それがブレーバーが身に着けていたシャッチー君の着ぐるみのそれだという事に気付いた俺は、「そう言う事か・・・!」と呟いた。

つまりはあれだ。おそらくマリンマーマンさんは海の上に立っているのではなく、海の中に潜っているブレーバーの上に立っているのだろう。

俺は抱いていた疑問が解決し、スッキリした事でホッと息を吐いた。

まあその後で、「いや、自分達の組織のボスが足蹴にされているんだから、ホッとするのはおかしいんじゃないか?」と首を傾げたりしたが。


「トウッ!ウオオオォォォーーッ!!」


そうやって俺が首を傾げている最中、ブレーバーの背中を蹴って空中へと跳び上がるマリンマーマンさん。

彼はクルクルと前方宙返りを行うと綺麗なフォームで海の中に飛び込み、そして凄まじい勢いで俺達の方へ向かって泳ぎだした。

泳ぎ方自体はクロールという腕を大きく回して水を掻く様にして進むそれであったが、しかしそのスピードが尋常ではない。

沖合から俺達がいる此処まで秒単位で辿り着いているのだから相当だ。


「よくも俺達の海水浴場を荒らしやがって、覚悟しろやオラァァンッ!?」


マリンマーマンさんはそう叫びながら水面に掌を当てると、横にスライドする様に勢いよく動かした。

その途端、海水がその動きに合わせて動きだし、マリンマーマンさんを中心にした横向きの渦潮となった。


「食らえヤァァッ!【アクアスパイラル】ゥゥーーーッ!!」


「ヌゥオオォォォーーーッ・・・!?」


渦を巻いた海水は首を擡げる龍の如き動きをした後、クランゲドンに向かって突撃。かの怪人を押し流した。

マリンマーマンさんスッゲェ!?


「グゥッ・・・!?お、おのれぇぇ、よくもやってくれたな貴様ァァッ・・・!覚悟は出来ているんだろうなァァ・・・!!」


マリンマーマンさんの放った海水によって流され、まるで砂浜に打ち上げられたような状態となったクランゲドン。

彼は、怒りの雄叫びを上げつつ幾つもの触手を持ち上げて反撃をしようとした。


「バカめ!これで終わりと思ったか!―――ブレーバー君!!」


「―――応よ!!」


「な、何ィィーッ・・・!?」


だがその動きよりも先にマリンマーマンさんとブレーバーが先手を打った。

両手を海水に押し付ける様にして勢いよく突っ込むマリンマーマンさん。その瞬間彼の背後で水柱が立ち昇り、そこからブレーバーが飛び出して来た。


「食らえぇぇい!これぞシャッチー君の標準装備!【ヒレブレード】ォォッ!」


技名を叫びつつ両腕のヒレを豪快且つ連続で振り回すブレーバー。そのヒレの上部には輝く様に光を反射する刃が姿を現していた。

というか、それって標準装備だったの!?何その物騒な標準装備!?


ズバズバズバシャーーーッ!!!


「グハアアアァァァーーーッ!?!?」


俺が内心でそうツッコミを入れている間に【ヒレブレード】によって全身を切り刻まれるクランゲドン。

伸縮性と柔軟性のある頑丈なゴムの様だと感じていた触手が、気持ち良いくらいにスパスパ切られていく。

分かっていたけど本当に切れ味抜群だよな、それ・・・!!いやまあ、あの触手に酷い目に遭わされた俺としては痛快だと思うだけどさ・・・!?


「グッフゥゥッ・・・!?お、おのれぇぇ・・・!?本当におのれぇぇ・・・!!?」


散々に切られまくった後に、ズベシャッ!?と砂浜の上に落ちたクランゲドン。

かの怪人は短くなった触手を再生させつつ体を起こそうとしていた。


「ぬ、ヌウゥゥゥッ・・・!?え、エネルギーが、Kエネルギーが足りん・・・!切られた触手の再生が思う様にいかん・・・!?」


だが、先程までと違って触手の再生速度が明らかに遅い。

クランゲドンの言葉から察するに、どうやら再生に必要なエネルギーが足りないらしい。

それでも何とか再生出来た様だが、その体積というか体の大きさは、元の四分の一くらいにまで小さくなってしまった。


「く、クソォォ・・・!?ま、まさか、このワシが此処まで追いつめられるとは・・・!仕方がない、一度撤退して体勢を立て直さねば・・・!?」


「―――させると思ったか?」


「・・・ッ!?」


自身の弱体化に加え相手との戦力差を考えたクランゲドンは、現状では自分の方が不利だと判断したらしく、悪態を吐きながら海に飛び込み、パシャパシャと泳いで逃げようとし始めた。

だがそれを見逃すつもりはないと、コオォォォッ・・・!と呼気を漏らしながらブレーバーが眼光―――着ぐるみであるシャッチー君の目だけれど―――を鋭く輝かせる。


「逃ィがすわけが、なぁいだろぅうがぁぁーーッ!!」


雄叫びを上げると同時にあんぐりと大きくシャッチー君の口を開けるブレーバー。

そしてその中から、ガッコン!と砲塔の様な物が顔を覗かせた。


「【スーパー冷凍光線】発射ァァッ!!」


ズビズババババァァーーーッ!!


「ギャアアアァァァーーーッ!?!?」


顔を覗かせていた砲塔の発射口から放たれる水色の光線。

それが海に当たると瞬く間に海水を凍らせていき、辺り一面を極寒の氷の世界へと変えてしまった。

・・・ってか、寒ッ!マジで寒ッ!?


「ガチガチガチガチ・・・ッ!?さ、寒い・・・!寒いぃぃ・・・!?」


そして凍りついたのはクランゲドンもであり、その体の殆どを氷漬けにされて、寒そうに体を震わせていた。


「これで逃げ場はなくなった。―――ではそろそろ、貴様の罪を数えるとしようじゃないか」


シャッチー君の口から飛び出していた砲塔を仕舞い込み、凍りついた海の上を歩いてクランゲドンへと近づくブレーバー。

その体からは気炎の様な物を立ち昇らせ、その瞳はギンッ!と鋭く尖ってかの怪人を睨みつけていた。

・・・というか、あの目どうやって尖らせてるんだろうか?着ぐるみだよね、あれ?


「つ、罪・・・?罪だと・・・!?一体ワシが何の罪を犯したの言うのだ・・・!!」


そんなブレーバーに対し、寒さで体を震わせながら叫ぶ様に問うクランゲドン。その表情は「何でコイツはこんなにキレているんだ!?」と言いたげであった。

ちなみに、実を言えばその点に関しては俺も疑問に思っていたりする。

普段はとても悪の組織のボスとは思えない程に呑気で陽気だった彼が、何故かこれまで見た事が無い程に怒っている。

一体何が原因でそうなったのか、気になるのは当然だろう。


「何の罪を犯したか、だと?・・・いいだろう。では、敢えて一つずつ教えてやろうじゃないか・・・!」


そう言うとブレーバーは右手をヒョイッと軽く上げ、ズビシィッ!と海水浴場を指し示す。


「まず一つは、我々が働いているこの海水浴場を荒らしたことだ。見ろ!お客さんが一人もいなくなってしまったではないか!これでは店を開いていた所で意味などないわ!!」


続いてブレーバーは左手をヒョイッと軽く上げると、今度は俺達の方へと指し示した。


「二つ目は我が部下達を襲い、辱めた事。見よ、あの姿を!着ていた衣服が全てなくなり、スッポンポンの丸裸となってしまっているではないか!!貴様、彼女達を裸にひん剥いて一体何をする気であったのだ!!!」


「いや、それは唯単に食べる為であって、衣服をひん剥いたというか、溶かしたのは食べるのに邪魔だったからで・・・・・・」


「シャラップ!!貴様に発言権などあるわけなかろう!!このエロ怪人め!!!」


「え、エロ怪人!?て、訂正を・・・!流石に訂正を要求するぞ、それはぁぁ!?」


「というか、わざわざそこを指摘しないで欲しかったんだけど!?ってか、こっちを指差すな指ィ!?現状アンタが言ったように素っ裸の状態なんだから、注目されたくないんだよこっちはぁぁ!?」


普通に恥ずかしいんだからさぁぁ!?と此方を指差す―――いや、この場合はヒレを指す?―――ブレーバーに対して、俺は両腕で体を隠そうとしながら苦情を言う。

しかし、当の本人はといえば、クランゲドンからの訂正要求も俺からの苦情も聞いていないかのようにシュバッ!と両手を上げると、


「そして、そしてだ。よくも、そうよくも・・・!よくもあのステージセットを破壊してくれたなオンドリャァァァーーーッ!?!?」


ビシュッ!とある方向を指し示した。

指し示されたその先にあったのは、建設中であった巨大なステージセット。

完成したら何らかのイベントを行う予定であったであろうその場所は、しかし今現在ではそこらじゅうが穴だらけとなり、唯の瓦礫の山と化していた。


「あそこは、あそこはなぁぁ・・・!今日、アイドルヒーローのシィナちゃんが歌って踊る筈だったステージだったんだよぉぉ・・・!!それをよくも、よくも、あんな瓦礫の山に変えやがってぇぇ・・・!あれじゃあ、シィナちゃんのライブが見れないではないかぁぁぁーーーッ!!?」


「いや、一番怒る所そこぉぉーーッ!?しかも、俺達が被害にあった事を指摘していた時よりめっちゃ怒ってないか!?部下の事よりもアイドルの事で激怒するって、一体どんだけのめり込んでんだよッ!?」


ガアァァァーーーッ!!!と怒りの咆哮を上げるブレーバーに対して、俺は思わず「普通そこは〝おのれ、よくも大事な部下を傷付けてくれたな・・・!〝とか言うところだろオイィィッ・・・!?」とツッコミを入れてしまった。

いやもう本当に、マジでそれでいいのか、悪の組織のボスゥゥッ・・・!?


「この怒り、そして恨みぃ、晴らさでおくべきかぁぁッ・・・!!」


しかし、だがしかし・・・!ブレーバーはそんな俺のツッコミなど聞こえていないかのように怨嗟の籠もった様な雄叫びを上げると、両腕の先をクランゲドンに向けた。


「コイツで粉微塵に砕け散れやぁぁッ!こぉの怨敵めがぁぁーーーッ!!」


シュババババーーッ!・・・チュドーンッ!ドカーンッ!!バッカーンッ!!!


「ギャアアアァァァーーーッ!?!?」


ジャコンッ・・・!という音を立てながら両腕のヒレが左右に開く。

開かれたその中にあったのは人差し指サイズの小型魚雷。左右にそれぞれ十五発ずつ。両腕を合わせると計六十発分のそれがクランゲドン目掛けて連続発射され、凍りついた海水の上にて幾つもの爆炎を引き起こした。

もちろん、それを食らったクランゲドンが唯で済むわけがない。

凍り付いているので体を動かすことが出来ず、避ける事も出来なかったかの怪人は、飛来してくる小型魚雷の直撃を受け、全身を焼かれ、叫び声を上げながら、ポーンッ・・・!と宙を舞った。


「グハッ・・・!?―――お・・・おの、れぇぇ・・・・・・!ま、まさか、このワシが、こんな所で、敗れてしまう、とはぁぁ・・・・・・!?だ、だが、これで終わりと、思うなよ・・・!ここでワシを、倒そうとも、きっと第二、第三のワシが貴様等を倒―――!」


そしてそのまま爆風に煽られ、クルクルと体を回転させながら吹き飛んで行ったクランゲドンは、小型魚雷の爆発に晒されながらも未だ原型を保ち、海の上を漂っていた氷の上にポテリと落ちた。


「そういうお約束なセリフはもう聞き飽きているわぁぁーーーッ!!―――ボス的必殺技ァ!【覇王昇竜撃滅拳】ゥゥッ!!」


ドバッシュゥゥゥーーーッ!!!


「さ、最後まで言わせ・・・グッハアアアァァァーーーッ・・・!?!?」


自身の負ったダメージ具合からこれはもうダメだと判断したのか、体を震わせながらも最後の捨てゼリフを言おうとするクランゲドン。

しかし、怒り狂ったブレーバーがそれを許しはしなかった。

ブレーバーはそんな捨てゼリフなど聞き飽きていると言いながら海の中へダイブ。そしてクランゲドンの近くの海面から飛び出した彼は、体を横方向に回転させて、その勢いのままかの怪人へと右拳を振り上げ、ぶちかました。

そしてクランゲドンは捨てゼリフを最後まで言うことなく、その体は再び天高く飛び上がり、遥か上空にて爆発四散するのであった。






次回は11/15に投稿予定です。

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