ミッション64 海の家三日目・・・!
ストックが数話分完成したので投稿していきます。
今日から10日ごとに投稿していく予定です。
海水浴場に来てから三日目。俺達が手伝いに来ている海の家『Mermans』は繁盛していた。
―――否、繁盛し過ぎていた
「ディーアルナ君、この焼きそばとイカ焼きを三番テーブルに持って行ってくれ!それが終わったら次はこっちのお好み焼きを一番テーブルへ頼む!」
「分かりました!」
「イイイーイー!イーイイーイー!」(アルミィは二番テーブルへイカスミパスタを!メドラディはビールジョッキ四つを五番と六番テーブルにお願いします!)
「任せな!」
「はーい」
「すみませーん!会計をお願いしまーす!」
「はーい!今行きまーす!」
現在の『Mermans』はこれまでにないくらいの好景気に見舞われていて、そしてその対応に俺達は追われていた。
それぞれの役割をこなしつつ協力して対応をする事で、淀みなく流れる様に店にやって来るお客を捌いていた俺達ではあったが、しかしその捌いていく端から「次の団体さんのご到着でーす!」と言わんばかりに大量の追加人員ならぬお客がやってくるというループがかれこれ五回ほど続いていたのだ。
そんな現状に、俺達と同じく店の手伝いに来ていたぺスタさんが思わずといった風に悲鳴を上げた。
「・・・っていうか、何なんやこの忙しさは!?海水浴場に来とる人の数が何時もの二倍三倍どころの話しやない・・・!明らかに昨日よりも仰山おるやないか!うぅ・・・!?確かに綺麗どころであるディーアルナさん達を使えばいい客引きになるとは考えとった・・・!考えとったけど・・・!?流石にこの数は想定以上やし、情報が広まって集まるにしても早すぎる・・・!一体どうなってんのや、これは・・・!?」
店内に残っていた最後の客の会計を終え、その後ろ姿を見送ったぺスタさんは、その頬を盛大に引きつらせながら内心を吐露するかのように荒げた声を出す。
そんな彼女の疑問に答えたのは、『Mermans』のオーナーであるマリンマーマンさんであった。
「海水浴場にいる人の数が増えている原因はおそらくあれだよ。ほら、あそこに見える特設ステージ。今日の午後にあそこでイベントをやる予定だって話しだから、今来ている人の大半はそのイベントを見る為に集まったんじゃないか?」
「おそらく他の店で収まりきらなかった分のお客がウチの店に流れてきているんだろう」と言うマリンマーマンさん。
「イベントって、何をやる予定なんですか?」
店内からお客がいなくなったのを見計らって、冷蔵庫に仕舞われてある飲み物を飲もうとカウンターへ戻って来た俺は、マリンマーマンさんの言うイベントが何なのか気になり、彼に問い掛けてみた。
「確か・・・誰が一番水着が似合う女性なのかを決めるコンテスト、というのだった筈だ」
「・・・・・・はい?今なんて?」
その問いに、マリンマーリンさんは顎に手を当てながら思い出す様に教えてくれたのだが、その言葉を耳にした俺は、聞き間違いかと思って思わず聞き返してしまった。
「えぇっと、正式なイベントの名前は確か、『水着美女コンテスト!浜辺で水着が一番似合う女性は誰だ!・・・・・・ポロリもあるかも?』だったっけか?」
「え、えぇ・・・」
再度聞き直すも、耳にした内容が間違っていないという事が判明しただけだった。
・・・というか、最後のポロリは絶対やっちゃ駄目なやつじゃないのか・・・!?そんな事が起こったら放送事故は間違いないぞ!・・・・・・いやまあ、元男である俺としては彼等の気持ちが分からなくもないけどさ・・・!
「どうりで男性客が昨日に比べて妙に多かったわけだ。海とかでやるイベントとしては、ありきたりと言えばそうだけどさ・・・!」
「そやけど、そのイベントだけでこれだけの数の人がこの海水浴場に来るだなんて流石に考え辛いで?何か他に目玉になるモノがあるんやないか?」
「ぺスタさん、それ正解。実は今回のイベントには、あの巷で有名なアイドルヒーローである〝シィナ〝が審査員として出演してくれることになっているんだよ」
ぺスタさんが呟いたその言葉に、マリンマーリンさんがその通りだと頷いた。
アイドルヒーロー〝シィナ〝。
彼女は元々悪の秘密結社『ベジタリアー』と戦う魔法少女系ヒーローであり、かの秘密結社との決着を付けた今では、アイドル活動に勤しむ少女である。
ヒーローとして活動していた時もかなりの人気があった人物だが、アイドル活動を始めて以降はそれに拍車が掛かり、今では歌に踊りにグラビア撮影にと引っ張りだこな、売れっ子アイドルとなっている。
・・・・・・と言う話を、以前俺はブレーバーから聞いていた。
「(ブレーバーってば、あのシィナってアイドルヒーローの熱狂的なファンだからなぁ・・・。ちょっと前に軽い気持ちで質問してみたら、軽く三時間は話を聞く羽目になったし・・・・・・)」
彼女がどんな活躍をしてきたのか、彼女が行ってきたアイドル活動がどういった物だったのかを熱く語る様は、いっそどこぞの信者の様にも見える程であった。
ちなみに彼女の容姿についてだが、その話の流れの中でシィナが出演していた番組を見せられたりもしていたので、一応把握はしていた。
明るい色合いのピンク色の髪に、天真爛漫といった表現が似合いそうな可愛らしい容姿。ピンクと黄色を基調にした、所々ふんわりとした部分のあるフリルの付いたミニスカドレスを身に着けており、その低身長も相まって、見た目は十歳から十四歳くらいの少女にしか見えない人物であった。
最初、ブレーバーがあのシィナというアイドルヒーローのファンだと知った時には、「え、ウチのボスってロリコンだったの・・・!?」と戦慄したものだ。
・・・まあその後で彼女が十九歳の女性であるという事を知って、別の意味で戦慄したのだが。
そう以前あった出来事を思い返しつつ、ホゥ・・・と溜め息を吐いた俺であったが、そこでふとある事が気になった。
「・・・って、そう言えばブレーバーって、シィナがイベントに来る事を知ってるんだろうか?あのアイドルヒーローの熱狂的なファンであるブレーバーの事だから、彼女がイベントに来ると知っていれば、大興奮しながらその手にポンポンやら手持ちライトでも持って、応援と言う名目の下にイベント会場に突撃してもおかしくはない筈なんだけど・・・」
「それをしないという事は、彼はその事を知らないのだろうか?」と首を傾げていると、そんな俺の疑問に答えてくれるようにぺスタさんが、「いや、多分やけどブレちゃんはその事を知ってると思うで」と言った。
「なにせブレちゃんはシィナに、彼女の関連グッズを限定品含めて全て買い揃えるくらいにはのめり込んどるからなぁ。彼女に関連する情報は逐一確認しとる筈や。・・・っていうか、そもそも一般人でも手に入れられる情報を一組織のボスであるブレちゃんが掴めない筈がないし。ブレちゃんの事やから多分、今は仕事中だからって事で行きたい気持ちを我慢しとるんやないかな?ディーアルナさん、ブレちゃんの今日のシフトってどないなっとるんやったっけ?」
「あ、はい。確かブレーバーは今日の午後から休みになっている筈ですけど」
「なら、仕事が終わったらそのまま直でイベント会場に向かうつもりなんやろ。ここにその証拠が置いてあるし」
「・・・?証拠って・・・ああ、なるほど・・・・・・」
ツイッ、と視線をカウンター裏へと向けるペスタさん。
彼女が向けた視線の先に目を向けてみれば、そこには段ボール箱が一つ置かれており、中にはポンポンや手持ちライト、「I LOVE シィナ」と書かれたのぼり旗等といった様々な応援グッズの数々が納められていた。
ここまで準備万端ということは、ぺスタさんの言う通りに仕事が終わったらこれ等の道具を持ってアイドルヒーローシィナの応援に行くつもりなのだろう。
嬉々としてステージ会場に向かうブレーバーの姿が容易に想像でき、思わず幻視してしまった俺達であったが、そこに戦闘員達の切羽詰まったような声が響いた。
「イッ、イイイー!イーイイー!!」(そこの人達、何時までもお喋りしてないで仕事してください!向こうから新しい団体客が押し寄せて来てるんで!!)
「イーイーイー!イイーイー!」(ぺスタさんはお客の対応と料理の配膳を!ディーアルナ様は足りなくなってきた食材の買い出しをお願いします!)
「イイーイーイイー!イー!!」(店長はあっちで宣伝活動を行っているボスを連れ帰ってきてください!人手が足りないので!!)
『は、はい・・・!?』
戦闘員達の叫ぶように出したその言葉と、そして店の外から土煙を上げながらやって来る新たな団体客の姿。
それ等を耳にし、目にした俺達は、彼等の圧に押される様に返事をして、ワタワタと急ぎ対応する為に動き始めた。
いやもうホントに忙しいな・・・!?
「・・・・・・・・・暑い」
千葉県に存在する守谷海水浴場。その一角に、頭上からジリジリと照りつけてくる太陽の光を一身に受けながら、ダラダラと大量の汗をかいている一人の男がいた。
麦わら帽子を被り、サングラスを掛けたその人物の名は『御城輝幸』。
彼は現在ヒーロー連合協会日本支部に所属しているヒーローの一人であり、更には数あるヒーロー達の中でも最上位の序列一位の地位に立つ人物で、またそのヒーロー名も有名で、知らない人がいないくらいだと言われる程だ。
そんな色々な意味で有名人である御城ではあったが、現在の彼はこの海水浴場にヒーローとしてではなく、唯の休暇を楽しむ一般人としてやって来ていた。
今の彼の服装はアロハシャツに丈の短い薄手のズボンといった物であり、休暇を満喫していると言わんばかりのそれだ。
だがしかし、実はこの服装は彼が自分の意思で選んだ物ではなかった。
選んだのは彼の友人である『ラッセル・バレンスタジー』―――『メタルブレード』というヒーロー名を持つ男であった。
御城がその服を着るに至った事の始まりは―――というかそもそも、彼がこの海水浴場に来るに至った理由はその友人に「仕事ばっかしてないで海に遊びに行かないか!」と誘われたからであった。
確かに御城はラッセルの言う通り、ここ数ヶ月の間休むことなくヒーローとして活動を続けていた。
その主目的は行方不明となった親友の子供―――渡辺光を探す為だった。
地元に存在していた悪の組織や秘密結社等を壊滅し尽くしても渡辺光の手がかりを掴むことが出来なかった彼は、今度は日本全国に存在する組織に襲撃を掛けて行った。
数にして五十くらいは壊滅し尽くしただろうか、その組織の規模も大中小と様々であったが、どいつもこいつも悪党と呼ぶにふさわしく、様々な悪事やテロ活動に手を出していた連中であり、中には人身売買にまで手を染めていた連中もいた。
その組織のボスや配下の構成員ならば渡辺光に関する情報を持っている筈だと考えていた御城ではあったが、しかしどれだけ問い詰めても「そんな子供は知らない」と誰もかれも首を横に振るばかり。彼等が基地として使っていた施設のデータベースなども調べもしたが、その何処にも彼に関する情報は存在していなかった
目ぼしい情報を手に入れることが出来なかった御城は、「もうこうなったら日本国外に存在する悪の組織や秘密結社を潰しに行くしかないか?」と考え、海外へ跳ぼうと準備を行い始めた。
ラッセルに声を掛けられたのはその最中で、最初彼は「遊びに行こうぜ!」的な軽いノリで誘って来たのだ。
だが、遊んでいる暇があるのなら一刻も早く渡辺光を探し出したかった御城はその誘いを断った。
「(そう。断った筈だったんだが、まさか労働法を盾に無理矢理休暇を取らされることになるなんて思ってもみなかったなぁ・・・!)」
しかし、御城のそんな頑なな様子に業を煮やしたのか、なんとラッセルは「お前、幾らなんでも働き過ぎだ!」という言葉と共にヒーロー連合協会へと御城の休暇申請を提出したのだ。
今の時代のヒーロー活動は分類上は仕事に該当する。故に長期間休みなく活動を続けると法律的にはアウト判定されてしまい、場合によっては今回の様にその長期活動に見合った日数の活動休止をヒーロー連合協会に強制されてしまうのだ。
勿論特別な理由があればまた別だが、ある意味命を賭けている仕事であるため、そこら辺の判定は意外と厳しいのである。
「(だったらヒーローとしてでなく、御城輝幸という個人で調査に赴こうと思ったりもしたけど、それもヒーロー連合協会から止められたしなぁ・・・)」
もしもの事態に備える為、序列一位の地位にいる御城は海外への渡航はしないで国内に留まっていてほしいというヒーロー連合協会の上層部からの指示が出されたのだ。
「(言う事を聞かなれば活動休止期間を延ばすとまで言われてしまったからなぁ。まさか序列一位という地位が足かせになるとは・・・)」
今回の件以外でも御城は長期間の活動を行っていた時があった。現時点でもニ週間の休みを強制されているのに、その分までを加算されると休止期間が一ヶ月以上、下手したら三ヶ月くらいになってしまう。
渡辺光を探し、見つけたい御城としては、それほどの長期の休みは流石に遠慮したかった。
「・・・そうして仕方なくラッセルの誘いに乗って、こうして海水浴場にやって来た訳だが・・・・・・まさか、その当の本人が突然いなくなるなんて、誰が予想できるか・・・!」
ラッセルの案内でこの海水浴場へ来た御城であったが、到着してすぐに誘った当人であるラッセルが『ワリィ!急用が入っちまって、今すぐ行かなくちゃいけなくなっちまった!』と言って突然姿を消してしまったのだ。
それに対して思わず「ちょっ、待っ・・・!?」と言おうとした御城ではあったが、しかし言葉にするよりも早くいなくなってしまうとなると、もうどうしようもなかった。
「ハァ・・・たくっ、ラッセルの奴、人の事を誘っておきながら勝手にいなくなりやがって・・・!―――ん?」
御城は顎先から滴る汗を腕で拭いつつ溜め息を吐く。
暑いわ、眩しいわ、汗で体がベタベタするわで気分が最悪であった御城が、もうホテルに戻って休んでしまおうかと考えていた時、ふと誰かが言い争っている声が聞こえて来た。
「あの、用事があって急いでいるんで放してください・・・!!」
「まあまあ、そう言わずにさぁ。ちょっとあっちで俺達と一緒に良い事をしようぜ?」
「サーフボードとか、ビーチボールとか、他にも色々遊べる物があるんだぜ?―――十八歳以上推奨な物もあるから、お望みならそっちでも構わないけどな。というか、俺達的にはそっちの方が良かったり・・・!」
「そうそう。一緒に気持ち良くなろうぜぇ?」
「欲望丸出し!?一切隠す気ないなコイツ等ッ!?」
声の出所は御城がいる砂浜の場所から見て右斜め前あたり。そこには二人の男性と一人の女性がいるのが見えた。
その三人の会話の内容を聞く限りでは、どうやら二人の男性が一人の女性に言い寄っているようだ。所謂ナンパと言う奴だろう。お盛んな事だ。
「見た感じ、どうやら女性の方は嫌がっているみたいだな。どれ、ヒーローらしく困っている人を助けるとしますか」
男達が女性の腕を掴んで無理矢理どこかへ連れて行こうとする光景を目にした御城は、「やれやれ」と息を吐きつつ砂浜の上を歩きだし、女性に言い寄っている男二人に向けて声を掛けた。
「おぉい、そこの男性諸君。それ以上のナンパはやめておいた方が良いぞぉ」
「あん?なんだよ、おっさん。ナンパの邪魔すんじゃねぇよ!」
「そうだぜぇ。痛い目を見たくなければとっととどっか行けよ、おっさん!」
「お、おっさん・・・!?た、確かに俺は三十二で、オッサンと呼ばれてもおかしくない歳だが・・・って、そうじゃなくって・・・!・・・あのな?それだけその女性に声を掛けておきながら一切靡かないのなら、それは脈が無いってことなんだから諦めた方が良いぞ。ナンパってのは時には引き際も肝心だって、俺の知り合いも前に言っていたしな」
二人の男達―――見た目からして二十代くらい―――におっさんと言われたことにちょっとだけ心にダメージを負った御城であったが、気を取り直してナンパを諦めさせようと説得する
しかし男達は御城の説得を聞き入れる事はなく、どころか邪魔するなと言いたげに声を荒げる。
「ちっ、本当にウゼェなこのおっさん。・・・やっちまうか?」
「だな。恨むなら、痛い目を見るっつったのにどこかに行こうとしなかった自分を恨むんだな、おっさん!」
舌打ちをし、そうセリフを言いつつ御城へと近づいた男達は、ブンッ!と片手を振り上げ、拳を握った。
「はぁ、やれやれ。どうにも喧嘩ッ早い連中だな」
それを目にした御城は、「仕方がないなぁ」と溜め息を零す。
その様は、これから殴られるというのに全くと言っていい程慌ててはおらず、どちらかと言えば、「仕様もないやんちゃ坊主達だな」と言いたげなモノであった。
「おらぁっ!」
「寝ろや、おっさん!」
ブンッ!!
「はいはい」
パシィ・・・!
「「・・・ッ!?」」
後ろへと一旦引かれ、御城に向かって放たれる男達の拳。当たれば痛いであろうその大振りな一撃を、御城は苦も無くその両手で受け止め、掴み取った。
「こんな大振りの動き、避けてくださいと言っている様なものだぞ?さては君達、あんまり喧嘩慣れしていないな?」
「ぐぬっ・・・!くそっ・・・!?」
「腕が、動かねぇ・・・!?」
「たぶん自分より弱い相手にばかりに暴力を振るっていたんじゃないか?駄目だぞ、それは」
「うるっせえんだよ・・・!それのどこが悪いんだよ・・・!あれか?テメェも暴力はいけません、なんて言う口か?あぁ・・・!?」
「いやいや。時として暴力というのも必要になる時はあるから、別に悪いと言うつもりはないさ。俺が言いたいのはそんな事じゃなくてな?要はその力をどこに向けるかって話なんだよ。弱い相手に拳を振るったところで、それは弱い者虐めであって喧嘩じゃない。本当の喧嘩と言うのは、自分と実力が拮抗しているか、もしくは自分より強い相手に対してやる物さ」
男達の拳を握りつつ、目を瞑りながら説教の様な事を語る御城。
彼がそんな風に語っている間も、男達は御城に掴まれている自分達の拳を外そうと奮闘してはいたが、しかしその拳は一向に外れる気配を見せず、それどころか徐々に圧力を加えられていく感覚を覚え始めていた。
驚異的な力によって自分達の拳が握りつぶされかねないと感じた男達は、何とかしようと御城に向けて掴まれている方とは反対の拳で殴り掛かったり、足で蹴り掛かったりする。
だがそれ等の攻撃を、御城は目を瞑りながらだというのにまるで見えているかのように軽々と回避していく。しかもその動きに合わせて御城の手も動くものだから、掴まれている方の男達の腕も右に左にと動いていき、最終的にはギリギリギリと捻じられて行くこととなった。
「アダッ・・・!アダダダダダッ・・・!?放せっ!放せって・・・!?」
「ギブッ!ギブギブギブギブギブッ・・・!?」
「俺も中学生の頃は親友と一緒に他校の生徒と喧嘩に明け暮れたものさ。・・・まあ、喧嘩吹っ掛けて来るのはいっつも向こうからだったし、大抵十人二十人で徒党を組んで来ていたしな。一番ヤバいと思ったのは一つの学校の全校生徒が襲って来た時だったっけか。まさか数百人規模で来るとは思っていなかったから、あの時は親友と一緒に思いっきりドン引きしたよ」
「分かった・・・!?分かったから・・・!?」
「もう、もう放してくれって・・・!?」
「まあ、全員叩きのめして地面に這いつくばらせて土の味を舐めさせたけどな!いやぁ、あの時はほんっとうに大変だったわぁ」
「「聞けよっ!?」」
もう限界だから放して欲しいと男達が訴えても、御城は説教―――というか昔語りをする事に夢中になっていて男達の声が聞こえていないらしく、ギリギリと彼等の腕を捻じったまま話を止めようとしない。
・・・というか、そろそろ男達の腕がヤバい角度に入ってきているので、これ以上捻じったら腕の骨が折れかねない。その事を腕から発せられる痛みから感じ取っていた男達は顔を真っ青にさせ、「折れる・・・!折れちゃうからぁ・・・!!」と涙目となっていた。
「・・・あの、その辺でもういいと思いますよ?それ以上やったら、その人達の腕が折れてしまいますから・・・!」
「・・・うん?」
「「・・・ッ!?」」
そこへ男達にとって救いの手であり、状況を変えるであろう声が発せられた。
声の主は先程まで男達にナンパをされていた女性だった。
『Mermans』というロゴが付いたTシャツと、薄青色のデニムショートパンツを履いていた彼女は、今現在起こっている暴力を振るおうとした男達が逆に返り討ちにされて、説教されながら今にも腕の骨を捻じり折られそうになっている状況を目にして、コレは流石に止めないとマズイと判断したのだろう。ちょっと慌てた様子で御城へと声を掛けていた。
「む?しかし、君はこの男達にしつこく言い寄られていただろう?しかも腕を掴まれてどこかに連れていかれようとしていたし・・・・・・」
「ええ、まあ、そうなんですけど。そこについては貴方に助けられたので・・・・・・それに、それ以上その人達の腕を捻じると確実に折れてしまいますから、いい加減止めないとって思いまして」
「え?・・・おぉっ!?」
女性の指摘に今気付いたと言わんばかりの反応を見せる御城。
その後、彼が掴んでいた男達の拳を放すと、拘束と痛みから解放されたからであろうか、彼等の体はまるで空気が抜けていく風船の様に脱力していき、ドウッっと砂浜の上に倒れた。
「く、クソッタレェ!覚えてろよぉ!」
「月夜が無い夜道には気を付けるんだなー!」
「もうナンパで女性に無理強いをするんじゃねえぞー!海辺に来たことで解放感を感じているからといって羽目を外し過ぎたら、後で家に帰って絶対頭を抱えることになるんだからなぁー!あと言い方間違っているぞー。それを言うなら月夜ばかりと思うなよ、だぞー!」
「「ウルセェッ!余計なお世話だッ!?」」
そしてすぐさま体を起き上がらせると、男達はそんな負け犬の遠吠え的なセリフを吐きだしながら、猛スピードで逃げ出して行った。
そんな彼等の後姿を見送った御城は、「やれやれ」と溜息を吐いた後で女性の方へと振り返った。
「さて、言うのが遅れたけれど大丈夫でしたか?」
「あ、はい。大丈夫です。助けてくれてありがとうございました」
怪我とかないか?と御城が聞くと、大丈夫と答える女性。
そこでふと目の前の女性があれ?という感じで首を傾げた。
「あの、もしかして御城さんですか?」
「・・・ん?あっ、まさかディーナさん!?」
自身の名前が呼ばれた御城は彼女の顔を凝視する。
そしてその顔に見覚えがあった御城は、彼女が以前東京で出会った事のあるディーナであると気付いて、驚きの声を上げるのであった。
次回投稿は10/5を予定しています。




