ミッション60 新メンバーが加入しちゃった・・・!?
ある程度ストック分が出来たので投稿していきます。
とはいえ現状あまり執筆作業が進んでいない状況でもある為、次話の投稿については10日ごとにしていきたいと考えております。
ある日の昼下がり。
悪の組織『アンビリバブル』の秘密基地内、扉に『作戦会議室』という名札が張られているその一室に、組織の構成員の一人である俺―――ディーアルナこと渡辺光は待機していた。
俺がこの部屋にいる理由は、組織のボスであるブレーバー―――本名『ブレバランド・アーユーカウス・レンテイシア』に呼ばれたからであり、重大発表があるので指定の部屋に集まって欲しいと連絡があったからだ。
辺りを見渡せば、俺の同僚達―――同じ怪人であるアルミィや、部下という立ち位置の戦闘員一号、二号、三号―――もいて、彼等彼女等はブレーバーがやって来るまでの時間を思い思いに過ごしていた。
その最中に部屋の入り口辺りからウィーンという音が聞こえてきた。
音が聞こえて来た方へと視線を向ければ、そこには丁度部屋の中に入ろうとするブレーバーの姿があった。
「待たせたな、諸君!これより、本日の悪の組織『アンビリバブル』の作戦会議を始めるぞ!それぞれ席に着け!」
作戦会議室の中へと入ってきたブレーバーは、そう言いながら部屋の奥にあるステージの様な場所に上がる。
彼の指示を受けた俺達は、部屋の隅に置かれていた椅子をそれぞれ運んでブレーバーから見て前側の位置に置き、その席に着席した。
席に座った俺達の姿を目にしたブレーバーは、一度コホンと咳払いをした。
「皆に集まってもらったのは他でもない。我々の今後の活動方針を決め、そしてそれを全員で共有する為だ!」
ステージの上でバッと勢いよく腕を振るうブレーバー。
その姿はまさに悪の組織のボスらしい威厳のあるモノであり、それを目にした俺は「おぉ・・・!」と小さな驚きの声を出して―――しかしその後に出た彼の言葉を耳にして「あれ?」と首を傾げた。
「活動方針って、ウチの目的って世界征服じゃなかったっけ?」
実際にやっているかどうかは別だが、少なくとも俺が所属している悪の組織アンビリバブルの目的はそれであったはずだ。この組織に入った時にブレーバー本人から聞いたし。
「うむ、その通りだ。・・・その通りなのだが、如何せん今の我々は色々なモノが足りなさ過ぎて、組織として掲げている目的に近づくどころか、その足元に到達できるかも怪しい状態なのだ・・・!」
特に人手が、戦力となる怪人や戦闘員等の構成員が圧倒的に足りないとブレーバーは嘆く。
・・・まあ、そりゃそうだよな。なにせ今現在アンビリバブルにいる構成員は組織のボスであるブレーバーと怪人である俺とアルミィ、そして戦闘員一号、二号、三号の六人だけだ。
正直言って組織と呼ぶにはあまりにも人員が少なすぎる。
「我が率いる悪の組織アンビリバブルは、我の手腕によって組織を運営する上で必要な物がほぼ揃ってはいる。―――だがしかし、組織として活動する為に必要な人員が全くと言って良い程足りていない・・・!これでは、精々仲良しクラブ的な集団でしかない・・・!」
拳を握りしめつつ、その声に熱を籠もらせるブレーバー。
その姿を見た俺は、内心で「え?何?そういう認識でいたのか、コイツ?」と思った。
むしろこれまで使ってきた武器や道具や、こんな秘密基地とか用意しておきながらそんな認識でいたってことに驚きを感じる。
「よって今後の我々の活動方針は、組織として活動する為に必要な人員の確保を最優先として行く事だ。・・・君達もその事を念頭に動いてほしい」
ブレーバーはそう言いながら俺達に視線を向けてくる。
そんな彼に対し、俺は軽く手を上げながら質問した。
「・・・えっと、人員の確保を優先するというの分かった。けど、それをどうやって行うんだ?だって俺達は悪の組織なんだぞ?」
悪の組織というのは、世間一般で言えば反社会勢力側に位置する存在だ。そんな所が人員を確保―――つまりは増やそうとする場合は、目を付けた人物に声を掛けてスカウトしたり、または誘拐して強制的に自らの組織に所属させたりすることが一般的で、その場合は大抵怪人にされたり、戦闘員にされる事が多いと、以前ブレーバーから聞いた覚えがある。
それに彼等の扱いに関してもその組織によって異なっているらしく、ブレーバーと交流のある大抵の悪の組織は確保した人員を仲間として快く迎え入れてくれる所が多いらしいのだが、中には使い捨ての駒として奴隷の様にしか扱わない所も少数あるらしい。
更に言えば怪人や戦闘員となった彼等は、敵対しているヒーローや他の組織と戦うといった常に命の危険が伴う仕事に必然的に就く事にもなる。
「そういった色々と危険且つ物騒な所に入ろうとする一般人は、俺の様な借金があって大至急大金が必要といった特殊な事情が無い限りは、まずいないと思うんだけど」
「確かに君の言う通り、大抵の一般人は仕事を選ぶとしたら安全且つ安定的に給料が貰える仕事に就きたいと思うのが普通だ。ワザワザ危険で実りの少ない仕事に就きたいという奴はまずいない。・・・加えて言えば、悪の組織が一般的に行っている人員確保の方法を我等が取ることも難しかったりする。下手をすれば、ヒーロー連合協会がそこから我の存在や所在地を特定しかねんし、そのせいで我々の周囲が荒らされる可能性が高いからな」
「あ~・・・」
元々ブレーバーは異世界からこの世界―――地球にやって来た異世界人だ。
そして、そのやって来た当初に数多くのヒーローや怪人を相手に相当暴れまわってズタボロにした事があるらしいのだが、その時にヒーロー連合協会のブラックリストに要注意人物として登録されてしまったらしい。
以来、彼の組織がブレーバーの存在を認識しようものなら、辺り一面を焼け野原にするくらい全力で倒そうとやって来る様になり、そのせいでブレーバーの活動がかなり制限されてしまったらしい。
そんな以前ブレーバーの話していた身の上話を思い出した俺は、彼が口にした内容が十分に起こりえそうだと思い、つい納得の声を上げてしまった。
「でも、それじゃあどうするんだ、ブレーバー。悪の組織が使う常套手段が使えないのなら、いったいどうやって人員を確保しようと言うんだ?」
「ふっふっふっ・・・!それについては問題ない。我々にはその問題を解決する強力な助っ人がいるからな・・・!」
「強力な助っ人・・・?」
含み笑いをするブレーバーに対して、いったい誰の事だ?と俺は首を傾げる。
「ディーアルナよ、君もよく知っている相手だぞ。ほら、以前我が忘れ物を届けるよう指示を出して行かせた所だぞ」
「忘れ物を届けに・・・・・・って、もしかして強力な助っ人って、ぺスタさんの事か・・・?」
ぺスタさんとは、本名を『ぺスタ・ジョレイヌ』と言い、様々な情報を商品として扱う情報屋であり、ネクロマンサーとしての腕前も一流の女性だ。
そしてブレーバーとは仲の良い酒飲み友達であり、よく一緒に居酒屋等に行ったりする間柄でもある。
「確かにあの人が協力してくれれば、人員の確保も幾分やり易くなるだろうけど・・・・・・」
だが、ぺスタさんは根っからの商売人だ。ブレーバーとの関係を考えれば、友達価格である程度値引はしてくれるだろうが、それでも流石にタダで手伝ってくれるとは思えない。
そんな俺の内心をブレーバーは察した様で、「当然タダではない」と頷いてみせた。
「実は、近々我々に手伝って欲しい仕事があるらしくてな、それを行う事を条件に引き受けてくれたのだよ」
「あ、やっぱり」
そうだよな。いくらなんでもあの人に限ってタダはないよな。
ブレーバーのその言葉を聞いた俺はホッと息を吐こうとして、
「そしてつい昨日に、ウチに入ってくれる人を見つけて、紹介してくれたぞ」
「さっそく!?ぺスタさん、仕事早すぎない・・・!?」
その後に続いたブレーバーのセリフに驚いてツッコミを入れた。
いや、冗談抜きで早すぎない!?
「昨日の内に本人と面接を行ったが、人格面に問題はなく、また本人のやる気もあったので、ウチの組織に入る事を許した。そして今日の朝にバイオニズム液による怪人化を終了して、今あそこの扉の向こうで自分の名前が呼ばれるのを待っておる」
「なんという手際の良さ・・・!?」
いや、アンタも仕事早すぎだろう、ブレーバー・・・!?
「さあ、その扉を開いて姿を現すがいい!!我ら悪の組織『アンビリバブル』の新たなメンバーよ!!」
バッ・・・!と部屋の入り口に向けて大袈裟に腕を振るうブレーバー。
それを合図にするかの様に、ウィーンという音を立てながら作戦会議室の扉がスライドした。
その扉の先にいたのは一人の若い女性。その見た目は二十代前後の大学生くらいの若い見た目で、十人が十人美人と言う程に整った容姿をしており、印象的には大和撫子というモノが近い。
またその体はボン、キュッ、ボンという擬音が付きそうな豊満さがあり、その肉体を各所に機械的なアーマーの様なモノが取り付けられたピンク色のナース服を元にした服が包み込んでいた。
「こんにちわぁ~。お久しぶりですねぇ、皆さん。お元気でしたかぁ?」
その女性は間延びした挨拶をしつつ、手を振りながら作戦会議室へと入って来た。
「イッ?イイーイー・・・?」(あれ?あの人って確か・・・?)
「イーイーイイイーイー・・・?」(ナマハゲ丸さんの所に来ていたバイトの人だよな・・・?)
「イッ・・・イイー?」(えっと・・・なんでここに?)
その容姿に見覚えがあった俺達は思わず驚きの声を上げた。
そう。戦闘員達が口にしていた通り、彼女は以前俺達が仕事として向かったとあるデパートの屋上で、ステージイベントの司会のお姉さんとして働いていた人物だったのだ。
「皆に紹介しよう。今日から新しく我等の仲間となった『メドラディ』だ」
「ご紹介に預かりました、メドラディと言います。皆さんよろしくお願いしますねぇ」
そう言いながら礼儀正しくペコリと頭を下げる元司会のお姉さん改めメドラディ。
頭を上げた時に見せたその表情は、にっこりとした微笑みを浮かべていた。
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。―――じゃなくて・・・!これはどういうことだよ、ブレーバー!?」
礼儀正しいその挨拶に釣られる様にして返してしまうも、その後で何故彼女がここに居るのかとブレーバーに詰め寄った。
「どういうことも何も、言ったであろう?情報屋であるペスタに紹介されたと。我も話を聞いただけだが、何でもナマハゲ丸氏からの推薦があっての事らしい。何よりその推薦が出された理由も、当の本人がウチに入りたいという希望を言ったからなのだそうだ」
今にも襟元を掴もうとする勢いで迫った俺に対し、冷静にそう返すブレーバー。
その言葉を聞いた俺は、思わず「え、えぇ・・・?」と困惑した声を零した。
「えっと・・・確かメドラディさんって、元々は普通の一般人でしたよね?ワザワザ悪の組織に入りたいだなんて・・・・・・」
悪の組織に自ら入ろうとする人間なんてそうはいない。
なのにワザワザ入ろうとするという事は、メドラディというこの女性にも俺と同じように何かしらの事情持ちという事になる。
そんなのっぴきならない事情でもあるのかと思い、メドラディへと視線を向けると、俺のその考えを察したのか彼女はニッコリと微笑みを浮かべて、
「ふふ・・・。私が悪の組織に入ろうとした理由ですかぁ?それはぁ・・・・・・」
「それは・・・?」
「乙女のひ・み・つ、です・・・!」
「え、えぇ・・・」
そう言いながら片目でパチリとウインクをして見せた。
その可愛らしい仕草を見て、「あ、この人言うつもりないな」と俺は察した。
「それとぉ、私の事はメドラディでいいですよぉ。今日から同じ組織の一員になるのですからぁ。ねぇ、ディーアルナ”ちゃん”?」
「ちゃん・・・!?」
まあ、その件に関しては、この後に言われたまさかのちゃん付けに驚いてしまった事で、意識の端へと追いやられてしまったのだが。
「え・・・!?いや、何でちゃん付け・・・!?」
「え?だってディーアルナちゃんは女の子でしょう?それにどう見ても私より年下だし・・・・・・」
「いやいやいや・・・!だからって、ちゃんを付ける必要は無いだろう・・・!普通に呼び捨てでもいいと思うんだけど・・・!?」
「えぇ・・・?そんな酷い事、私には出来ないわぁ」
首を傾げ、左頬に左手を当てながら悩ましげな溜め息を吐くメドラディ。
彼女が浮かべている表情はとても悲しげにも、残念そうにも見え、見ている此方が罪悪感を覚えそうなモノであった。
「なんで呼び捨てにするのが酷い事になるんだよ・・・!?」
それでもちゃん付けに納得のいかなかった俺は、思わずツッコミを入れたのだが、
「だって、貴女はこんなにも可愛いらしいんですもの。こぉんな可愛い子を呼び捨てにするだなんて、私には出来ないわぁ」
「・・・?へっ・・・!?」
そんな俺にメドラディはスッと手を伸ばすと、流れる様に俺の頬を撫で、そしてそのまま俺の頭を自身の胸元に抱き寄せた。
「はぁぁ・・・!本当に可愛い・・・!もう、食べちゃいたいくらい・・・!!」
かいぐりかいぐりと俺の頭を、頬を、首元を優しく撫でるメドラディ。
頬を赤くなるほど上気させ、荒い呼吸を繰り返すその恍惚とした表情は、いっそ官能的とも言える色気があった。
「ちょっ・・・!ななな、なぁ・・・!?」
が、訳も分からぬ間に抱きしめられ、撫でくり回される側である俺にとっては、今の状況は非常に理解に苦しむものであった。
加えて、こうしている間も感じられるゾワリという身の毛が弥立つような感覚。それに嫌な予感を覚えた俺は、必死になって彼女の腕の中から出ようとする。
「くっ・・・!この、いい加減に・・・!?」
「甘いわぁ」
「・・・!?」
だがしかし、メドラディは俺のその動きを読んでいたらしい。
彼女は俺が腕の中から出ようとした瞬間、己が腕を巧みに且つ滑らかに動かして、その腕の中に再び俺の体を捕えた。
「もう、そんなに恥ずかしがらなくたっていいじゃないですかぁ。もっと可愛らしい貴女を撫でさせて頂戴・・・?」
「ヒ、ヒェェェ・・・!?」
「イッ・・・!?イーイイー、イイイー・・・!?」(嘘だろ・・・!?あのディーアルナ様を、ああも容易く捕まえるだなんて・・・!?)
「イー、イイーイー。イイイッ、イー」(どうやら、相手の方が一枚上手の様だな。可愛い物を求める力、恐るべし)
「いや、そんな頷いていないで助けて欲しいんだけど!?」
先程の俺達の攻防を見て、何かに納得するようにうんうんと頷いている戦闘員一号と二号。
ただ、またもやかいぐりかいぐりと撫で回される羽目になったこちらの心境としては、そんなことをしていないで早く助けて欲しかった。
「任せてください、姐さん!アタシが今助けます!」
そんな俺の思いに応えてくれたのはアルミィであった。
彼女は座っていた席から立ち上がると、こちらに向かって飛び掛かってきた。
「姐さんを放しやがれ!このアマァ!!」
「あら、貴女も可愛がられに来たんですかぁ?良いですよぉ、存分に可愛がってあげますねぇ!」
「・・・え?うおわぁっ・・・!?」
だがその強襲は、メドラディの俊敏且つ巧みなその手腕によって意味を成さなくなり、アルミィもまた俺と同様に彼女の腕の中へと捕らえられてしまった。
「あぁん。ディーアルナちゃんも可愛いけれど、貴女も負けないくらい可愛いわぁ・・・!貴女は何処を撫でれば気持ちよく感じるのかしら?耳の後ろ?顎の下?それとも・・・首筋、とかかしらぁ?」
「あ、ちょ、やめっ・・・!?あ、アァーーーッ・・・!?―――あふん」
「あ、アルミィィィーーーッ!?」
俺の目の前でメドラディの右腕に捕らえられたアルミィは、そのまま頭から肩辺りまでをメドラディの右手に撫でくり回され、最後には顔を真っ赤にさせながらボンッと頭から煙を上げて沈黙した。
「イーイイーイーイー!?イイッ、イーイー!?」(あのアルミィを秒で大人しくさせたぁ!?なんだアイツ、マジスゲェ!?)
「イーイイーイーイー、イー。・・・イッ、イイイー?」(まさか彼女をこうも簡単に無力化してしまうとは、なんという腕前だ。・・・いや、この場合はなんという撫で技と言うべきか?)
「イイー、イーイーイイー。・・・イイイー?」(というか僕としては、成人向けな展開になりそうな目の前の光景に戦慄を隠せないんだけど。・・・これ、止めなくていいの?)
「イイッ、イー、イイイー?」(止める、とは言うが、アレを止められると思うか?)
「私、悪の組織に所属しているのってゲテモノ系ばかりだと思っていたんですけど、以外と貴女達みたいな可愛い子達もいたりするんですねぇ。嬉しい誤算でした。なんだか、これからの此処での活動がとっても楽しみになってきちゃいましたぁ。フ、フフフ、フフフフフフ・・・・・・!」
「・・・・・・イッ。イイッ。イー、イイー、イイー。イイイーイー」(・・・・・・うん。無理だね。ごめんね、ディーアルナ様、アルミィ。僕達では二人を助けられそうにないや)
そう言って、俺達に向けて合掌をする戦闘員三号。
さらには一号と二号までも、それに習うかの様に三号の横で手を合わせていた。
いや、そんな事していないで早く助けて欲しいんですけど!?
「っていうか、ブレーバー!お願いだからこの人止めて!!」
俺は最後の手段であり、唯一の希望としてブレーバーに助けを求めた。
彼ならばこの妙に暴走しているメドラディを止められると思ったからだ。
「むっ?何を言っているのだ、ディーアルナよ。これはアレだろう?入ったばかりの新人と仲良くなる為の歓迎会的なモノなのだろう?我、そういうのを昔マンガで見たことあるから知っているぞ!」
だがその希望は、叶うことなく脇道へと逸れてしまった。
「先輩後輩関係なく、皆でどんちゃん騒ぎをするんだよな!」と言うブレーバーに、最初は何をふざけた事を言っているんだと思った俺だったが、しかし此方へと向けられる妙にキラキラとした視線を受けて察してしまった。
あれはマジだ。それなりの付き合いがあるからこそ分かる。アイツ、マジでそう思ってやがる・・・!?
・・・というか、アイツが見たことがあるというマンガっていったい何だ!?今時、そんな色々な意味でユルユルな奴ってそうないだろう・・・!
内心でそう思いながら、タラリと冷や汗を流しつつ頬を引きつらせた俺は、ブレーバーに関しては早々に見切りをつけて別の手段を考えた方が良いと結論付けたのだが、しかし自身に迫って来ていた脅威は、その手段を考える時間を与えはしなかった。
「フフフ・・・。そんなに怖がらなくても大丈夫よ、ディーアルナちゃん。ただただ可愛いと、撫でて撫でて撫でまくるだけなんですから・・・!」
「い、いやだから、そんな事誰も望んでいなっ・・・!ちょ、やめっ・・・!?あ、アァーーーッ・・・!?―――あっ」
ギュピィィン!という擬音が聞こえそうなくらい熱い視線を俺に向けてくるメドラディ。
ロックオンされたのだと理解した瞬間、俺は逃げる事も抵抗する暇さえも与えられず、彼女の手によって盛大に撫で回され、揉みくちゃにされるのであった。
「「・・・・・・・・・」」
「うふふふふっ・・・!」
数分後。
そこにいたのは、それぞれ床に突っ伏した俺とアルミィと、そして恍惚とした笑みを浮かべながら椅子に座るメドラディであった。
「イーイーイー」(死屍累々とはまさにこの事だな)
「イイー」(酷い事件だったね)
「イッ、イーイイー。イイッ、イー」(見ろよ、この真っ赤に染まった顔を。死んでいるんだぜ、これ)
「死んでねぇよ・・・!?くそっ、お前等好き放題言いやがって・・・!後で覚えてろ・・・!」
「う、ぐっ・・・!ひ、酷い目にあった」
遠巻きに俺達の様子を伺っていた戦闘員達は、倒れ伏す俺達に向けてネタ的なセリフを口々に言う。
それに対してツッコミを入れつつ起き上がった俺とアルミィだったが、その顔はまだ全体的に赤く染まっており、全身も若干ガクガクとしていて、全快とは言えない状態であった。
正直ヤバかった。まさか、あそこまで上手いとは思っていなかった。
耐性がない奴であれば、おそらくアレで堕とされていた可能性が高かっただろう。
それを耐える事が出来たのは、俺達が彼女以上の腕前を持つ人物に撫でられた経験があったからだ。
俺の場合は生まれ故郷の島にいた一級撫で師に。アルミィの場合はその一級撫で師の技を会得していた俺に、だ。
だが、あまり油断するわけにはいかない。確かに彼女の腕前は俺達に劣ってはいたが、それでも何か切っ掛けがあれば同等の腕前になりそうな予感があった。
・・・・・・あまり考えたくはないけど。
「ふむ。そろそろ良いかな。・・・お前達、新人のメドラディとの交流はそこまでにしてもらおうか。そろそろメドラディの件とは別の、もう一つの本日の議題―――次の任務について話しをしたいのでな」
そんな俺達の様子をステージの上で見ていたブレーバーは、ある程度状況が落ち着いたのを見て頃合いだと判断したらしく、パンパンと手を叩いて「全員席に座る様に」と指示を出した。
それを耳にした俺達は返事を返しつつ、それぞれが用意していた席に座り直す。
・・・まあ、俺とアルミィだけは先程の出来事からまだ回復しきっていない為に、足がプルプル震えていたけれど。
「よろしい。全員席に座ったようだな。・・・さて、それでは本日の議題である、次の任務についての話を始めるとしよう。―――我々の次なる任務は、これだ!」
ブレーバーはそう言いながら、自身にの背後にある壁をバンッと叩く。
するとその壁が突如として回転し、裏返り、巨大な液晶モニターが出現した。
そして電源が付いたと同時に、その画面に何処かの海岸線の映像が映し出された。
「我々が今回向かう場所。それは―――海だ!!」
次回は8/20に投稿します。




