ミッション57 激闘!怪人ドッジボール・・・!
「くそっ・・・!まさか初っ端で四人もやられてしまうなんて・・・!?」
悪態を吐きつつ担架で運ばれていくチームの仲間達を見送る俺。
そんな俺の下へアルミィの声が掛けられた。
「大丈夫ですよ、姐さん。こっからアタシが巻き返して見せますから!行くぞ、筋肉ダルマ共ぉ!!」
こちら側のコートの床を転がっているボールを拾ったアルミィは、正面を睨みながら手に持つボールをサイドスローの要領で投げた。
「食らえ必殺!【感電シュート】ォォォッ!!」
勢いよく投げられたボールは相手コートの最前列にいたトビウオマスクに向けて飛ぶ。
「ふん!その程度の弾速のボール、簡単に掴め―――ッ!?」
『アルミィ選手のボールをトビウオマスクがキャッチ―――っておや?』
バチバチバチバチッ!!
「―――アバババババッ!?」
『おおおっ!?なんだ・・・!?』
その弾速を見たトビウオマスクは十分に掴める玉だと判断してキャッチしようとしたのだが、しかしボールを掴んだ瞬間、その体はバチバチバチ!という音を立て、全身から大量の静電気を迸らせた。
「カハッ・・・!?ば、バカ、なぁ・・・・・・!―――グフッ!?」
「ピピィー!トビウオマスク選手、アウトォ!」
『トビウオマスクーーーッ!?』
静電気が治まった後、全身から黒い煙を上げるトビウオマスクは、その言葉を最後にコートに倒れた。
「へへっ!どうだい、アタシの必殺技は?痺れただろう?」
コートに倒れるトビウオマスクを見て、ドヤ顔を浮かべるアルミィ。
その口元はワイルドそうな笑みを描いていた。
『いやあ、まさかボールで電撃を付与するとは・・・!』
『というか、あれってルール的に良いのか?』
『怪人達が行うゲームなので、問題ないワン!』
「くっ・・・!思ったよりもやるではないか・・・!ならばこちらも多少の小細工をさせていただこうではないか!!」
アルミィのドヤ顔を見た牛丼マスクは一時悔しそうな様子を見せたが、そのすぐ後に自身の傍にいた仲間に声を掛ける。
「行くぞ、『馬面マスク』よ!」
「ヒヒーン!了解したぜ、牛丼マスク!」
牛丼マスクの声掛けに返事を返した馬頭のマスクを被ったマッスルは、体の正面を牛丼マスクの方へ向けると、ボディビルで言うフロントリラックスと呼ばれる体勢となった。
「はあぁぁぁっ・・・!フンッ!」
ブンッ!
そしてその馬面マスクに向けて、牛丼マスクがボールを勢いよく投げた。
・・・いや何で!?
「ゼアッ!」
バンッ!
目の前にまで飛んで来たボール。
それを馬面マスクは、サイドチェストのポーズとなってボールを跳ね返す。
「トゥアッ!」
バンッ!
その跳ね返されたボールを、バックダブルバイセップスと呼ばれる体勢となった牛丼マスクが背中の筋肉でさらに跳ね返す。
「ムゥンッ!」
「カアァァッ!」
「ホォォンッ!」
「ダァァァーッ!」
バンバンバンバンッ!!
様々なボディビルのポーズをしつつ自らの筋肉によってボールを跳ね返し続ける二人のマッスル。
その体からはキラキラと光を反射して輝く汗が飛び散っていた。
というか、めっちゃ暑苦しいんですけど・・・!?
「・・・・・・な、何やってんだ、アイツ等・・・!?」
その光景を見た俺は思わずそう呟いたのだが、そこでふと何かがおかしいと、違和感を覚えた。
「あれ・・・?なんか、ボールが跳ね返る速度が上がってきているような・・・?」
良く見れば、マッスル達の筋肉によって跳ね返り続けているボールの弾速が、最初の頃とは比べ物にならない程上がっている。
その事に気付いた俺は、内心で「まさか・・・」と呟く。
「コォォォッ!―――速度が乗って来たぁ・・・!そろそろ良い頃合いだな、馬面マスクよぉ!!」
「フン!ハッ!―――ヒヒーン!そうだな、牛丼マスクよぉ!!そろそろ俺達の連携技を決めてやろうぜぇ!」
最早一般人には視認する事すら難しい速度で動くボール。
それに合わせて高速連続ポージングを行っていたマッスル達は、「フンッ、ハッ!フンッ、ハッ!」と息を合わせる様に声を出し、そして何度目かの跳ね返しの際に、ボールを天井のバリアに向けて放った。
「「締めは任せたぞ、アザラシマスクよぉぉっ!!」」
「―――合点承知ぃぃっ!!」
天井のバリアに当たり、真下に向かって勢いよく落ちるボール。そのままでは地面に落ちて跳ね返るだろうが、その前に一人のマッスルが飛び出して来た。
「食らえぇぇぇっ!これが我等の連携奥義!【マッスルチャージバスター】だぁぁぁーーーっ!!!」
ドバッシュゥゥゥーーーッ!!!
アザラシ頭のマスクを被ったそのマッスルは、技名を叫びつつ落ちて来たボールに向かってラリアットを放つ。
アザラシマスクの腕と接触したボールはその形を歪ませ、次の瞬間には物凄い速さで俺達がいるコートに向かって飛んで来た。
その弾速は怪人化によって強化された俺の目ですら、ようやっとその影を追う事が出来るくらいの速さ。
だがその弾道は、何故か俺達から見て右側に逸れており、そして勢いよくコートを囲んでいるバリアに当たった。
「何だ・・・?いったい何処を狙って・・・・・・」
相手の狙いが分からず困惑する俺。
だがしかし、次の瞬間に起こった光景を―――ボールがバリアに当たって跳ね返る光景を目にした途端、ゾワリと己の身の毛が総毛立つのを感じた。
「ちょっ・・・!?う、うおぉぉぉっ・・・!?」
「「イィッ・・・!?」」(げぇっ・・・!?)
「うみゃあぁぁっ・・・!?」
バシュンバシュンバシュンバシュンッ!!
『うおおっ!?コートの中を縦横無尽にボールが跳ね回る!跳ね回り続ける!!これは凄い、凄いぞぉ!?』
コートを囲んでいるバリアに当たり、跳ね返り、左右から物凄い速さで襲い掛かって来るボール。
その速度は一般人では最早視認する事など出来ないものであり、普通であればまず間違いなく当たるもの。
そしてその威力もまた強力だと思えるモノであり、体の傍を通るだけで物凄い風圧が吹き荒れるのを感じた。
『うひゃあぁぁぁーーーっ!?』
それを俺達は、何とか紙一重で躱す事が出来ていた。
一般人では回避することは不可能だと言える程の物凄い速さで動いているボールを、どうして俺達が回避できているのか?
その理由は、半分は視界の端に掠るボールの影を追って何とかその軌道を予想しているからであり、そしてもう半分が己の危機回避能力―――所謂勘に頼っていたからであった。
とはいえ、それも結構ギリギリであり、一瞬でも気を抜いたら即当たってもおかしくない。
そう思った俺は、飛び交うボールに意識を集中する。
「よし、通り過ぎた・・・!これで・・・―――」
バリアによって跳ね返り、何往復も左右を行ったり来たりしていたボールが、こちら側のコートの奥へ行った後に、再び左右を行き来しながら相手側のコートへと移動していく。
回避しつつそれを見ていた俺は、安堵の息を吐こうとして、
『【マッスルボディウォール】!』
「―――って、何ぃ~~!?」
相手側のコートの最前列にズラッと並んだマッスル達の姿を見て、思わず叫んだ。
『これは筋肉の壁!?バリアの反射に加えてマッスル達の筋肉によってボールが跳ね返る!跳ね返り続ける!!』
「フハハハハハッ!!まさか一周しただけで終わりだと思ったのかね!?まだだ!まだ終わらんよ!!・・・フンハッ!」
バシュンッ!
「その通り!我等の連携技の真骨頂は此処からヒヒーン!・・・ヒンッ!」
バシュンッ!
「キュキュー!存分に味わうが良い!」
バシュンッ!
『ちょっ、待っ、ギャアアアァァァーーーッ!?』
先程までは基本左右からだけだったボールの軌道が、マッスル達の筋肉の壁による反射が加わった事によって前後の軌道が追加された。
終わると思っていた所でまさかのお代わりに、俺達は悲鳴を上げる。
いやほんとに勘弁してくれないかなっ!?
「ヒェッ!?」
ブォンッ!って、今ブォンッ!って耳元を掠った・・・!?ヤバい。このままだとそう遠くない内に当たるぞ、コレ!?
「イ、イイィィィ~~~ッ・・・!」(お、おおおぉぉぉ~~~っ・・・!)
「イ、イイィィィ~~~ッ・・・!」(は、はあああぁぁぁ~~~っ・・・!)
「イッ!イッイッイッイッ!」(はい!はいはいはいはいっ!)
「イッ・・・!イッ・・・!イイッ・・・!!」(よっ・・・!ほっ・・・!そいやっ・・・!!)
「「イイッイイッイイッ、イッ!!」」(そいやそいやそいやっ、はっ!!)
バッ・・・!ババッ・・・!バッバッバッバッ・・・!
「スゲェなお前等・・・!?」
そんな中で、戦闘員一号と二号が迫り来るボールをなんか踊りを踊りつつ回避していた。
最初は舞踏会で踊る様なワルツのそれで、次第にそれは激しくなっていって、最後にはどこぞの伝統祭りでする様な踊りを決めていた。
マジで凄いなお前等!?
「くっ・・・!この・・・!ふっ、ほっと・・・!うにゃっ!?」
ヒョイヒョイヒョイヒョイ・・・!
「おぉっ・・・!?アルミィも凄い!?」
別な所でアルミィもまた華麗に回避していた。
後ろに体を仰け反ってからのバク転や、更には側転からの捻り宙返りなど、新体操などで見られるようなアクロバティックな動きであった。
「イイッ、イーッ・・・!!」(ディーアルナ様、危ない・・・!!)
「え・・・?―――ッ!?」
その動きに目を奪われていた俺は、横合いから放たれた戦闘員一号の声に気付く。
そしてそれが跳ね返ったボールが自身に向かって高速で飛んで来ているからだと気付いて息を飲んだ。
彼等彼女等の動きに見とれていたせいだろう。完全にボールの事を意識から外してしまっていた。
反射的に回避しようとするも完全に出遅れている。
顔面直撃は避けられるだろうが、それでもその弾道軌道は上半身に当たるコースだ。
また、飛んで来るボールを受け止めようにも、体勢が悪すぎる。今の自分の体勢は片膝を着いてしゃがんだ状態であり、ボールを掴んだとしてもその勢いに引き摺られて倒れるのがオチだろう。
「くっ・・・!?」
そう察した俺は、ここで脱落する事を悔しく思いながら目を瞑ろうとして、
バシィン・・・!
「・・・フシューッ・・・・・・!」
「・・・え!?」
突如、自身の目の前に現れたガッシリとした野太い腕。
そしてその腕が高速で迫っていたボールをキャッチした事に俺は驚きに目を見開いた。
ディーアルナへと向かって飛んで来ていたボールをキャッチした人物。
黒い髪を角刈りに整え、暑苦しいほどの男らしさが感じられる彫りの深い顔立ちであり、目元は影となって見えないが、その形はとても鋭そうな様相に見える。
また首から下の肉体は、はっきりくっきり見えるほどに全体的にムキムキとしていて、その見た目はまるでボディービルダーのような体付きであり今着ているワイシャツやジーパンが破れそうになるくらいに服の下から自己主張していた。
「・・・・・・!」
そんな色々な意味で濃い人物の名は『山田』と言い、以前とある動物園にてディーアルナ達と激闘を繰り広げた男であった。
そんな彼がどうして此処にいて、そして何故怪人ドッジボールに参加しているのか?
その理由は、彼の家族が関係していた。
「兄ちゃーん!」
「頑張れ、兄ちゃー!」
観客席で山田に向かって元気に手を振る二人の少年少女。
少年の年齢は十二、三歳程であり、その容姿は非常に整えられていて、年上のお姉さん方からはキャアキャア言われながら可愛がられてもおかしくないくらいの美少年っぷりだ。
少女の方もまた、見た目十歳前後でありながらその容姿は完成されていると言いたくなる程に整っていて、フワフワとしている様な感じが、見ている側の保護欲を掻き立てさせる。
そんな彼等は、その呼び方から分かる通り山田の弟妹達だ。
モリモリのゴリゴリなマッスルである山田とは、全くと言っていい程に似ていないが、正真正銘の血の繋がった兄妹である。
・・・・・・生命の神秘とは、本当に素晴らしく思える。
さて、それでは話を戻して、山田が怪人ドッジボールに参加した理由だが、それは弟妹達の為であった。
本日の山田は動物園の仕事がない日―――所謂休日であった。
そしてその休日にこのデパートに来たのは、前々から弟妹達と約束していたヒーローショーを見る為であった。
山田の弟妹達はヒーローが大好きだ。
具体的に誰か特定のヒーローをというわけではなく、大小様々に活躍しているヒーローそのものが大好きであった。
故にこのデパートで開かれている、実際に活躍しているヒーローを近くで見ることが出来るヒーローショーを、とても楽しみにしていたのだ。
だがしかし、その期待は『筋肉愛好団』の登場によって、泡と消えようとしていた。
下手をしたら、今後このデパートでヒーローショーを見る事が出来なくなるかもしれない。そう思い至った山田は、故にこそ丁度臨時の助っ人を募集していたナマハゲ丸達の下へと突撃した。
弟妹達を望みを叶える為に、そして喜ばせる為に、彼は立ち上がったのである。
頑張れ兄貴!負けるなお兄ちゃん!観客席で弟妹達が元気に応援しているぞ!
・・・まあ参加が決まったその後で、自分が所属しているチームメンバーの中に、以前自身が働いている動物園で狼藉を働いた人物が混じっている事に気付いたりもしたのだが、
「行っけー!兄ちゃーん!」
「負けないでね、兄ちゃー!」
「・・・・・・!」
だがそれも可愛い弟妹達の為ならば二の次三の次だと内心でそう思った山田は、フシュー・・・!と息を吐き出し、ボールを投げる構えを取る。
「ハアァァァ・・・!ハアッ!」
山田はボールを持った片手を後ろに回す。そして
足を一歩前に踏み出すと、その手に持つボールを地面スレスレのアンダースローでもって投げた。
「フッ!その程度、我が筋肉でしかと受け止めて・・・・・・え?」
自身に向けて、下から突き上げて来る様に飛んで来るそのボールを目にしたアザラシマスクは、両手を下腹部辺りに添えると、左手を上向きに、右手を下向きにした、まるで口の様な形の手の構えを取る。
そしていざキャッチしようとしたアザラシマスクであったが、しかし飛んで来たそのボールの勢いは彼が想像していた以上の威力があった。
ドッゴンッ・・・!!!
「グブフゥッ!?」
「なっ!?アザラシマスクゥゥーーーッ!?」
掴もうとして触れた瞬間にアザラシマスクの両腕は弾かれ、ボールは彼の土手っ腹にクリティカルヒットし、その体を浮き上がらせた。
「グ・・・ホッ・・・・・・!?」
バタリとコートの上に倒れ、ビクンビクンと体を痙攣させるアザラシマスク。
その目は白目を剥いており、気絶しているのが傍から見ても分かった。
「ピピィー!アザラシマスク選手、アウトォ!」
『山田選手の放ったボールがアザラシマスク選手にクリーンヒットォ!っていうか、なぁにあの威力!?』
『あれ?あの人って怪人でしたっけ?』
『えーと、書類を確認してみたのですが、どうやらあの山田という選手は怪人ではなく、普通の人間みたいですね』
『普通の人間があの威力を出したのか!?え?マジでアイツ人間なの・・・?』
実況席にいるデパワン君達も驚きの声を上げる。
まさか唯の一般人が怪人をノックアウトさせるだなんて誰も予想だにしていなかったからだ。
「おのれよくも・・・!お返しじゃゴラァァーーーッ!!」
ブオォンッ!
倒れ伏した仲間の姿を見て怒り猛る馬面マスク。
彼はコートの上を転がっているボールを鷲掴むと、山田に向けて力いっぱいに投げた。
「・・・ッ!フンヌッ!」
バシィィンッ・・・!シュッ、バァァン!!
「な、何だとぉ・・・!?―――グハァッ!?」
「う、馬面マスクゥゥーーーッ!?」
だがそのボールの勢いは、山田の片手によって鷲掴まれることで止められた。
そしてその後で、山田はキャッチしたボールを馬面マスクに向けてリリースし、その顔面にボールがヒットし馬面マスクは白目を剥いて、バタリと後ろ向きに倒れた。
「ピピィー!馬面マスク選手、アウトォ!」
『なんとぉー!?、山田選手『筋肉愛好団』の二人を立て続けにアウトにして見せたぞぉ!?』
『いやアイツ、ホントに人間か?一撃で怪人を気絶させるとか、普通の人間には無理だぞ』
『凄まじいですねぇ』
解説席にいるデパワン君達もボールでとは言え一撃で怪人を気絶させた山田に、戦慄の表情を向けていた。
「くっ、おのれぇ・・・!仲間の仇だ!ジンギスカンマスクよ!」
「任せてくれ!これでも食らえぇぇい!【バックラットスプレッド】!ヌゥハッ・・・!」
ドバンッ!バシンッ!!
「イーッ!?」(ギャフンッ!?)
ジンギスカンマスクの反撃。
その見事な背筋によって発射されたボールが戦闘員一号に直撃した。
「一号!?」
「アタシに任せて下さい、姐さん!―――はぁっ!」
戦闘員一号に当たり、反動で高々と宙を舞うボール。
それを追いかける様にアルミィが跳び上がり、空中でキャッチした。
「ナイス、アルミィ!」
「へへっ・・・!―――そらっ!お返しだ!【感電シュート】!」
ビュンッ!バチバチバチッ!
ディーアルナが上げた称賛の声に照れ臭そうな笑みを浮かべるアルミィ。
そして彼女はそのまま、自身の能力によって付与された静電気が激しく迸るボールを、マッスル達に向けて力強く投げる。
「ふん、同じ手は二度も食わん!―――ウナギマスクよ!」
「応ッ!」
当たれば感電間違いなしなそのボールを牛丼マスクは受け止める―――なんてことはせず、自身の後ろにいたウナギのマスクを被ったマッスルに受け止めるよう指示を出した。
「どっせい・・・!!」
バシンッ!バチバチバチッ!!
「ヌフゥゥゥ・・・!!」
ウナギマスクがアルミィの投げたボールをキャッチした瞬間、放電現象が発生して激しい音が鳴り響く。
だがしかし、その放電現象の中心にいるウナギマスクは全く堪えてはいなかった。
彼が上げるその声は、まるでマッサージチェアに座ったオッサンがマッサージを受けた時に出す様なそれであり、誰がどう見ても気持ち良さそうにしている風にしか見えなかった。
「なっ・・・!?あ、アタシのボールを受け止めた・・・!?しかも何か気持ち良さそうにしているし・・・!?」
「ナハハハハハッ!ウナギマスクは電気風呂や、電気治療などを好んで入ったり受けるなどしていてな。そうしている内に電撃に対する耐性を得たらしいのだ!」
アルミィの疑問に対して応えたのは牛丼マスクであり、
彼は高笑いをしながらウナギマスクの代わりに、どうしてアルミィの放った【感電シュート】が効かなかったのかを語った。
なお、その話を聞いたアルミィの表情は「嘘だろお前・・・!?」と言いたげなモノであった。
『いやぁ、まさかアルミィ選手の技が効かないとは思いもしませんでしたねぇ』
『というか、そんなんでよく電撃の耐性を得られたもんだワン。解説のプラスマンさん。そこの所は実際どうなのかワン?』
『可能性としてはあり得なくはないと思いますよ。似たような事例が過去に確認されていますから。・・・まあ、ウナギマスク選手の様なやり方でというのは、私も初めて知りましたが』
そんな風に、実況席ではそこにいた面々による考察が語られてはいたが、しかしその話に耳を傾ける余裕は驚いていたアルミィにはなかった。
「お返しだ。そぉれぇ!【サイドトライセップス】!」
「うにゃっ!?」
ウナギマスクは手に持っていたボールを脇に挟むと、ポージングを取りながら圧力を掛け、アルミィが地面に着地する瞬間を狙って発射した。
まさか着地の瞬間を狙われるとは、と驚いたアルミィであったが、持ち前の柔らかい体と超が付くほどの反射神経によって体を反らして回避。華麗とは言えなかったが、それでも掠ることなく躱してみせた。
「あっぶな!?」
「ちぃっ・・・!躱されたか・・・!」
「隙あり、だ!」
「ヌウゥ・・・!?」
自身が撃ち出したボールが躱された事に悔しそうな声を出したウナギマスク。だがそんな声は、次の瞬間には、驚きのそれへと変わった。
なぜならそれは、彼の視界の端で自身に向かって飛んで来るボールの姿が目に入ったからだ。
それはディーアルナが反撃の為に投げた球であった。
先程アルミィが躱し、地面やバリアに当たってバウンドしていたボールをキャッチした彼女は、ウナギマスクがアルミィに視線を集中しているのを見て隙と判断したのだ。
「しまッ・・・!?」
飛んで来るボールを視界に納めつつも、気付くのが遅れた為に、その動きもまた遅れたウナギマスク。
キャッチも回避も難しいと判断した彼は、せめてガードだけでもしようと腕をクロスさせて、
「させん!―――トウッ!」
「なっ!?」
しかしそれよりも前に、彼の前に飛び出したワニのマスクを被ったマッスルがボールをキャッチして見せた。
「おお!助かったぞ、アリゲーターマスク!」
「油断するなよ、ウナギマスク!まだまだ勝負は始まったばかりなんだからな!」
コートの上に着地したアリゲーターマスクは振り向きながら、ウナギマスクへとそんな注意喚起の様な言葉を掛ける。
「そして今度はこちらの番だ!―――行くぞ、ゴリラマスク!」
「応よ!」
仲間であるゴリラマスクへと声を掛けるアリゲーターマスク。
声を掛けられた側であるゴリラマスクは、それに応える様に返事を返すと、アリゲーターマスクの横に並んだ。
「はぁっ!」
アリゲーターマスクはバレーで言うトスの動きで、手に持っていたボールを上空へ向けて打ち上げる。
打ち上げられたボールは勢いよく上昇していき、コート全体を覆っているバリアの、その天井にぶつかり、勢いそのままに跳ね返る。
その動きを見て、バリアの反射を利用した頭上から強襲かと思ったディーアルナ達は、ボールに視線を向けつつ、何時でも回避できるように身構えた。
だがその瞬間、彼女達は落ちてくるボールの後ろで、片腕を振り上げているゴリラマスクの姿を目にした。
「食らえ、必殺ぅ!【マッスルミーティア】ァァァ!!」
「な、にぃ・・・!?」
何時の間にかボールを追って飛び上がっていたゴリラマスクは、技名を叫びつつ、振り上げたその腕で斜め上方向からボールを撃ち落とす。
反射の勢いと落下の勢い、そして打ち落としの勢いが加えられたボールは、まるで流星の如き速さでもってディーアルナ達へと襲い掛かった。
「イ、イィッ!?」(は、速ッ!?)
「イッ、イイイーッ!?」(回避を、ってもう間に合わない!?)
「に、にゃあっ!?」
とんでもない速さで落ちてくるボール。
その軌道は戦闘員達とアルミィがいる辺りに向かっており、それを見た三人は、慌てふためきながら回避しようとするのだが、しかしボールの弾速と到達するまでの距離を考えると、とても間に合いそうにない。
キャッチなんてのも論外だ。彼等彼女等では受け止めきれずに吹き飛ばされるのが関の山だろう。
「くそっ!遠い・・・!」
そして仲間内で唯一キャッチ出来る可能性がありそうなディーアルナはと言えば、三人の事を守ろうと走り出してこそいたが、彼女がいたその位置はコートの後ろ端であり、コートの中心近くにいる三人からは一番遠く、どう頑張っても間に合いそうになかった。
「クハハハハハッ!慌て、ふためけ、そして絶望しろ!これが、お前達を真の敗北へと誘う一球だ!とくと味わえぇいっ!!」
ディーアルナ達のそんな様子を、空中から見下ろしながら高笑いをするゴリラマスク。
一人は確実に当たり、上手い具合に行けばあと二人くらいは連鎖的にアウトに出来ると内心で思った彼はニンマリとした笑みを浮かべ、
「フンッ・・・!!」
バッシィィィンッ!!!
「なん・・・だとぉ・・・・・・!?」
アリゲーターマスクとのコンビで放った必殺の技を、山田が片手で受け止めた光景を目にして、涙がちょちょぎれそうになった。
『嘘ぉっ・・・!?』
そしてその光景を見ていた山田以外の全員―――チームメンバーであるディーアルナ達や対戦相手である牛丼マスク達、それから観客席にいる客達―――が驚きの声を上げた。
『お、驚きだワン・・・!これは本当に驚きだワン・・・!!山田選手が、あのマッスル達が放ったボールをキャッチしてみせた~~~!!』
『い、いやはや、一般人である筈の彼が、まさかあれを受け止められるとは・・・!しかも片手でなんて・・・!』
『いやいやいや・・・!普通に考えて、一般人があんな球取れるわけがないから・・・!不可能だから・・・!!』
それは実況席にいるデパワン君達もまた同様であったらしく、まさかの展開に、「え?ホントに人間?人間なの?」と言いたげに山田の事をメッチャガン見していた。
「お、オオオォォォッ・・・!!」
そんな周囲の驚きや動揺を他所に、雄叫びを上げる山田。
ギンッ!という擬音が聞こえそうな程の輝きを見せるその瞳が、未だにその身を空中に漂わせているゴリラマスクへと向けられ、
「ファァイトォォォ、一ぃっ発ぁぁぁつ!!」
ゴバッ!!
そして渾身の一球が投げられた。
「え・・・!?ちょ、ちょっと待っ・・・!」
バ、シィィンッ・・・!ドッ、ゴンッ!!
「―――ゲブラァァッ!?」
自身が狙われているという事には気付いていたゴリラマスクであったが、如何せん彼の体があったのは満足に身動きが取れない空中であり、回避なんて土台無理な話だ。
キャッチくらいは可能であり、実際にボールが目前にまで迫った際には何とか両手で掴んで見せた。が、足場の無い空中では踏ん張るなんて事は出来なかった為、彼の体はそのまま後ろへと吹き飛んで行き、ボールとバリアに挟まれるというオチが着いた。
「グフッ・・・!?な、なんて一撃だ・・・!怪人であり、鍛え抜かれた筋肉を持つこの俺が、たった一発でこの様とは・・・!一般人の筋肉、侮り、がたし・・・!―――ガクッ」
「ピピィー!ゴリラマスク選手、アウトォ!」
『ご、ゴリラマスクーーーッ!?』
一時サンドイッチ状態となったゴリラマスクは、バタリとコートの上に落ちると、その言葉を最後に気絶するのであった。
次回は6/30に投稿予定です。




