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ミッション54 新たな任務!その名は・・・!?

皆様お久しぶりです。kudoです。何とか6月までに間に合わせる事が出来ました。

とりあえず、数話分を5日毎に投稿していきます。



初夏。

それは徐々に太陽から放たれてる熱が強くなってくる時期の事。

そんな季節のある日の事、とある街中のとあるデパートの屋上にて今回の話は始まる。

デパートの屋上中央付近にある大きなステージ。その前には大勢の子供達と、それに同伴しているのだろうお父さんお母さんがベンチに座っている姿があった。

彼等彼女等―――特に子供達はこれからステージで始まるイベントを待っているようで、ソワソワと待ちきれない様子を見せていた。

・・・まあその中には、高性能のカメラを手に持ち、別な意味でまだかまだかと待っている大きなお友達と呼ばれるカメ子とも呼ばれるような者達もいたのだが。


「お友達の皆さん、こんにちはぁ~!今日はこのステージに来てくれてありがとぉ~!これから本日のイベントを行いたいと思いま~す」


そうしている内に時間となったのか、ステージ横に取り付けられていた階段を上って一人の女性が姿を現した。


「このステージに来ている皆は分かっていると思うけど、今日は此処に皆が大好きなヒーローを呼んでいま~す!もうちょっとしたらここに来てくれる事になっているので、その時には順番に握手をしたり、サインを貰ったり、時には質問なんかもして、楽しんで行ってくださいね~!」


その女性は二十代前後の大学生くらいの若い見た目をしていて、その容姿も十人が十人美人と言う程に整っており、その印象を例えるとすれば大和撫子というモノが近いだろう。

まあ、その服装に関しては今回のステージに合わせてなのか、白い半そでのYシャツに、青いミニスカート

そしてシャツの上にノースリーブの青いジャケットを身に纏ったりと、まるでどこぞのチアガールの様な服装であり、また彼女のボン、キュッ、ボンという擬音が付きそうな豊満な肢体が内側から衣装を押し上げているのが分かり、見る者にとってはそれが余計に露出度を上げている要因にもなっているのではと感じられた。


「あっ、それと私の自己紹介がまだでしたね?私は今回のイベントの司会を務めるお姉さんです!気軽に司会のお姉さんって呼んでくださいね~!」


自ら司会のお姉さんと名乗ったその女性は、目の前にいる人達に向けて大きく手を振る。

そしてその動きに伴って彼女の持つ大きな胸も揺れた。

その瞬間を逃さないと言わんばかりに動く、ステンバ~イしていたカメ子軍団。

彼等は手に持っていたカメラ等の機器をスチャッ!と構えると、「うおぉぉぉ!!」と気合を入れて?大きく手を振る司会のお姉さんを姿を―――より正確には動きに合わせて揺れるお姉さんの胸をパシャシャシャシャッ!と撮っていた。

・・・欲望に忠実過ぎるだろう、お前等。

ついでに言えば、同じ男である子供達の付き添いで来ていたお父さん達もまた、『おぉ・・・!』と感嘆の声を溢しながらブルンブルンと揺れる司会のお姉さんの胸に視線が釘付けとなっていたのだが、それに気付いたお母さん達によって「お父さん?一体何処を見ているのかしら?」と詰問され、一部は「ご、誤解だ、誤解なんだよ、母さん・・・!?」「問答、無用!!」「ヒギィィィッ・・・!?」と子供には見えない位置取りで折檻が行われている所もあった。

会いたかったヒーローと会える事に「わーい!」や「やったー!」と純粋に喜んでいる子供達の姿を、少しは見習ってほしいものである。


「それでは、ステージに来てくれたお友達の皆!今から皆が会いたがっているヒーローに来てもらいたいと思いまーす!一緒に大きな声でヒーローの名前を呼んでくださいねー!」


尚、司会のお姉さんはそんな光景を無視して、イベントを進めようと子供達に声を掛ける。

・・・いや?どうやら無視している訳ではなく、何をしているのか本当に気付いていないらしい。

カメラを構えるカメ子達やお母さんに折檻されてるお父さん達の姿を見て、何をしているんだろうと言いたげに首を傾げている様子がそれを顕著に表していた。


「それじゃあ、行きますよー!せーの・・・!」


「―――クハハハハハッ!」


声掛けをし、息を合わせていざヒーローの名前を呼ぼうとした瞬間、ステージに高笑いが響いた。


「ヒーローを呼ぼうとしたところ失礼するぞ、一般市民の諸君!唐突だが、このステージは我々が占拠させてもらった!」


ステージ横の階段から駆けあがり、姿を現す怪しい集団。

その中の一人、肩まで掛かる程の長さがある白髪を持つ一人の女性が、司会のお姉さんを押し退けてステージ中央にダンッ!と足音を響かせながら立つ。


「あ、アナタ達は・・・!」


「我々の名は『アンビリバブル』!世界征服を企む悪の組織である!そして私は悪の組織『アンビリバブル』の女幹部『ディーアルナ』。これより貴様達の上官となる者だ!」


腰に手を当てながらディーアルナと名乗ったその女性の顔は、一見して美人だと分かるものであり、顔の上半分を覆う形のアイマスクによって隠されていたが、しかしその程度では彼女の美貌を隠すことは出来ていない。

また、身に付けている衣装も独特な物である事が伺える。

胸の下半分と下半身の部分に機械的なアーマーが取り付けられた、ピッタリとフィットするタイプの黒いハイレグレオタードを着て、腰には銃のようなものや棒状の物が納められたホルダーが付いたベルトが巻かれており、両手には鈍く光る銀色の手袋を、両足には太股までのタイツと手袋と同じ材質と思われるサイハイブーツを履き、更にその上に所々に銀色の機械的なパーツが取り付けられた、裾丈の長いゴツく感じられる緑色の軍服の様な上着を前開きにして羽織るように着ている。

それらに加えて頭に軍帽を被せてしまえば、まるで二次元にでも出てくるような女軍人の出来上がりだ。

さらに言えば、その衣装によって彼女の持つ豊満な肉体はより強調され、カッコ良さ以上にエロさが際立つモノとなっており、それを見た男が前屈みとなるのは必然と言えよう。

現に今、ディーアルナの姿を見た観客席にいる男達の大半は「うっ!?」と咄嗟に前屈み気味になり、カメ子集団は「ヒャッハー!」と先程の司会のお姉さんの時よりも一層興奮して、様々なアングルから彼女の姿を撮ろうと手に持つカメラをパシャパシャと鳴り響かせている。


「何の話だと思う者も当然いるだろうから、猿でも分かる様に教えてやろう!・・・まず我々の今回の目的だが、それは今此処にいる君達一般市民諸君を我々の秘密基地へと連れ帰り、怪人へと改造する事。―――謂わば戦力の増強だ!」


観客席のそんな様子を目にしたディーアルナはちょっとだけ頬を引き攣らせたが、すぐにキリッ!と表情を真剣なモノへと戻し、右手をバッ!と勢いよく横へと払った。

その動作はまさに堂に入っており、その服装と相まってまるで本物の軍人の様な印象を見る者に与えるモノであった。

ただし、同時に恥ずかしそうに頬を赤く染めてもいた為、凛々しさよりも可憐さといった印象の方が強く出ていたが。



「ど、どうしてそんな事を・・・!?」


そんな彼女に向けて司会のお姉さんが何が目的かと問い掛ける。


「・・・なに、その理由は簡単だ。今の我々は優秀な人材を欲していてな。此処へ来たのもその人材集めの一環で、彼等一般市民が集まっている姿が見えたから丁度良いと思ってな」


ディーアルナは司会のお姉さんへと視線を向けると、笑いを堪え切れないと言いたげな表情をしながら質問に応え、そしてその後に自身の背後にいる者達に命令を下した。


「という訳で、さっそく此処にいる者達を我等の秘密基地へと招待しよう。―――行け、鉄カマキリ!戦闘員達を率いて、彼等を連れ帰るのだ!」


「承知いたしました、ディーアルナ様!」


「イー!」


「イイー!」


「イイッイー!」


ディーアルナの命令を受けた鉄カマキリ―――一見すると人型のカマキリと言った印象を受ける姿であり、その容姿に違わず両手が鋭そうな(かま)となっている怪人―――は、戦闘員達―――全身を黒いタイツのようなスーツで覆い、銀色の胸当てと手袋、靴を履き、顔には全体を覆う電子的なアイマスクっぽいものを付け、それぞれの額に一、二、三という番号が描かれている者達―――と共にステージの下に降りると、笑い声を上げながら「誰を連れて行こうか~?」と観客席にいる人々の姿を吟味し始める。


「待てぇい!」


「むっ・・・!?」


「それ以上の狼藉をさせるつもりはないぞ、悪党共!―――とうっ!」


その時、掛け声と共にステージ裏の壁を飛び越えて一人の人物が姿を現した。

その姿は、肌にピッタリとするタイプの赤いスーツを身に纏い、”+”の形をした装飾が体の各所に付いていて、加えて頭の部分にも”+”という形のバイザーが付いたマスクを被っていた。


「数多の思いを力に変えて・・・、ヒーロー『プラスマン』、只今参上!」


ステージに着地した人物―――プラスマンは、ビシッ!とポーズを決めた後にディーアルナ達に向けて人差し指を向けた。


「お友達の皆、私が来たからにはもう大丈夫だ!今からこの悪党共を懲らしめて見せよう!」


「ふん!随分と生意気な口を叩くものだな、プラスマンよ!出来るモノならやってみるが良い!―――行け、怪人『鉄カマキリ』!戦闘員達と共に奴を倒すのだ!」


「承知いたしました、ディーアルナ様。―――行くぞぉ!」


「イー!」


「イイー!」


「イイッイー!」


ディーアルナの指示を受け、ステージの上に上がった鉄カマキリと戦闘員達は、プラスマンに向かって襲い掛かろうと駆け出した。


「食らぇいっ!ふんっ!はっ!」


「なんの!」


鉄カマキリの鎌攻撃。縦横連続に振るわれるそれを、プラスマンは華麗に避ける。


「イイー!」


「イイッ!イーイーイー!」


「イイッ!?イ、イーイー・・・?」


ドヒュゥゥゥゥゥンッ・・・!!


「どわぁぁぁっ!?」


続いて迫り来る戦闘員達による攻撃も華麗に回避する―――つもりであったプラスマンであったが、何処からともなく取り出したバズーカ砲から発射されたグローブの形をした弾を見て驚き、思わずイナバウワーをして回避した。

ちなみに驚いていたのはプラスマンだけでなく、戦闘員達の内の三という数字が額に書かれた戦闘員もまた驚いており、他の戦闘員達に「それっていいの・・・?」的なニュアンスの声を出していた。


「ちょっ!?なんだそれ!そんなのどっから出した!?」


「どっからって、こっからだな」


「イーイー!」


体勢を立て直したプラスマンは思わず素でツッコミを入れ、そんな彼の問いに「こんな風に」と取り出していたバズーカ砲を、二という数字が額に書かれた戦闘員が腰のベルトについていたパックの中に仕舞って見せる。

それを見たプラスマンは、思わず「いやどうなってんのそれぇ!?」と叫ぶのだが、しかし戦闘はまだ続いており、その瞬間を隙と見た一と言う数字が額に書かれた戦闘員が、彼の背後から襲い掛かった。


「イーッ!!」


「うおっ!?」


何処からともなく―――といっても、先程見た光景と同じ様に腰についているパックから―――槍を取り出した戦闘員は、それをプラスマンに向けて上から振り下ろす。

不意打ちと言っていいそれを寸前で気付いたプラスマンは、驚きつつも左腕を頭上に掲げて防御する。


「イイーッ!」


「イッイイー!」


「ちょっ、おぉぉっ・・・!?」


その動きに便乗して、他の戦闘員達も何処からともなく―――しつこいようだが、腰に付いているパックから―――槍を取り出すと、プラスマンに向けて振り下ろす。

視界の端でそれを目にしたプラスマンは、驚きの声を上げつつもう片方の腕も掲げて防御する。

だがその動作によってバランスを崩したのか、グラリと体を傾かせると床に片膝を着いた。


「よくやったぞ、戦闘員達よ!そのまま押さえているんだぞ!」


その様子を見た鉄カマキリは、その場で両腕の鎌を胸の前で横向きに重ねる様にして構えると、プラスマンに向けて切り払った。


「食らえ!必殺【真空斬】!」


鉄カマキリとプラスマンの距離は約数m。本来なら鎌の一撃なんて届かない距離だが、しかし鉄カマキリが両腕の鎌を横に切り払った瞬間、そこから紫色のエネルギーの刃が飛んだ。


「さあ!我が必殺の刃によって、存分に切り刻まれるが良い!!」


「くっ・・・!―――ぬぅえいっ!!」


『イイッ!?』


それを目にしたプラスマンは、このまま身動きできない状態で受けたらマズイと判断すると、力を込めて立ち上がりつつ、自身を押さえ込んでいた槍ごと戦闘員達の体を吹き飛ばす。

そして両腕を前に出すと、ボクシングで使われている様なブロックの構えを取った。


「【プラスシールド】!」


技名を叫んだ途端、彼の手首あたりについていた”+”の装飾が大きくなり、盾となってそして紫色のエネルギーの刃を防いだ。


「今度はこちらの番だ!【プラスブーメラン】!」


そしてそこから反撃とばかりに両腕を大きく振るい、鉄カマキリに向けて大きくなった”+”の装飾を発射した。


「グハァッ・・・!?」


それを受けた鉄カマキリは大きく体を仰け反り、後ろへと倒れる。

その後で起き上がろうとするのだが、その際に背後からプラスマンの下へ戻ろうとしていた【プラスブーメラン】と再度ぶつかり、その勢いに押されて俯せに倒れ込む。


「これでトドメだ!―――【プラァス、シュート】ォォ!!」


戻って来た”+”の装飾を手首に付け直したプラスマンは、装飾の大きさを元に戻す。

それからガチリと両腕の装飾を重ね合せると、時計回りに一回転して右腕を突き出した。

その瞬間、プラスマンの右腕から―――正確には”+”の装飾から―――光が放たれ、一筋のビームとなって鉄カマキリに降り注いだ。


「グアァァァッ!?ば、馬鹿なぁぁぁっ!?」


その一撃を受けた鉄カマキリは苦しそうに両腕を振り回し、最後にはドカァァァンッ!!と様々な色の爆発の中に消えて行った。


「くぅっ!?おのれ、プラスマンめぇ・・・!覚えていろ!次こそは必ず貴様を地面に這いつくばらせてみせるからなぁっ!!」


「イイー!」


「イイイー!」


「イーッ!?い、イイー・・・!」


鉄カマキリの姿が爆発の中に消えたのを目にしたディーアルナは、そう捨て台詞を言い残すと急ぎ踵を返し、ステージ横の階段を下りてステージ裏へと消えて行く。

それを追いかけて戦闘員達もそれぞれステージ裏へと消えていくのだが、その内の一人がすっ転んでステージの下に顔面着地して、その後痛そうに顔を押さえながらステージ裏に走り去る様子も見られていた。


「何度でも来るがいい!悪の組織『アンビリバブル』よ!そしてその幹部であるディーアルナよ!その度にこの俺、プラスマンがお前達の悪事を(くじ)こう!人々を守るヒーローの一人として!!」


ディーアルナ達がステージの裏へと姿を消したのを目にしたプラスマンは、身振り手振りを加えつつステージ中央に立つと、最後にカッコいいセリフを言いながら頭上へと腕を突き上げるポーズを決め、観客の―――正確には子供達の歓声を受けるのであった。








「プハァッ・・・!終ったぁ・・・!」


先程のステージでの出来事から幾らかの時間が経過した頃。俺―――悪の組織『アンビリバブル』の女幹部であるディーアルナこと渡辺光―――は、ステージ裏に建てられている衣装小屋兼休憩室の中で、パイプ椅子に座りつつ、紙コップに入った冷たいお茶を飲みながら一時の休息を取っていた。


「イイーイー、イイー。イッ、イーイー?イイー」(お疲れ様でした、ディーアルナ様。悪役、結構堂に入っていましたね?カッコ良かったですよ)


「イッ、イイッ?イイイーイーイイ?」(悪役、なのかアレは?俺には完全に女軍人のソレにしか見えなかったんだが?)


「イッ、イー、イイー。イーイイー、イイッ?」(まあ、恰好や言動を考えると、そう言った印象を受けるのは仕方ないのかもしれないね。でも、悪役としてのカッコ良さはあったんだし、良いんじゃないかな?)


そんな俺の目の前には、同じくパイプ椅子に座っている戦闘員達の姿があった。

彼等もまたお茶を飲んだり、お菓子を食べたり、銃器の手入れ(!?)をしたりと、思い思いの休憩を取っていた。


「言っとくけど、あれで結構恥ずかしかったんだからな?セリフを噛んだり忘れたりしないかとか、後はドジをふんだりしないかとかさぁ・・・」


しかも写真まで滅茶苦茶撮られていたし、恥ずかしいったらなかった。


「でもまさか、悪の組織の構成員である俺達がこんなイベントに―――()()()()()()()に参加する事になるとは思わなかったなぁ・・・」


俺はそう呟きながら、今回の仕事の内容を思い返していた。

今回俺達が受けた仕事は、とあるデパートの屋上で行われているヒーローショーに助っ人として参加する事であった。

なんでも、そのステージイベントを取り仕切っている人物と俺達が所属している悪の組織『アンビリバブル』のボスである『ブレバランド・アーユーカウス・レンテイシア』―――略してブレーバーは酒飲み仲間と言う名の友人関係であったらしく、俺が『アンビリバブル』に入るよりも前からブレーバーと戦闘員達はその人物の依頼を受けて助っ人に入っていたらしい。

そして今回もまたその助っ人の依頼が出されたのだが、どうも今回はその人物の事務所に所属している人員の約半数が病欠でダウンしてしまったのだそうだ。

このままでは今回のステージイベントであるヒーローショーを行えなくなると判断したその人物は、俺達にステージに参加する役者として出て欲しいと頼んで来たらしく、そしてブレーバーはそれを了承したのだそうだ。


「やあやあ、お疲れ様でしたね、皆さん!今日は助っ人に来てくれてどうもありがとう!」


「あっ、ナマハゲ丸さん!お疲れ様です!」


そうして、現在の状況に至るまでの回想を行っていた時、ガチャリという音が衣装小屋の扉の方から聞こえ、そちらへと視線を向けると、そこに一人の人物が姿を立っていた。

・・・いやまあ、人物と言いながら人ではないのだけれど。

その姿は大柄の体を三等身の形にした―――もしくはまとめた?―――ような体型をしており、それ以上に特徴的なのが、体よりも大きく見える顔で、その相貌は歯を剥き出しにした鬼の形相と言った表現が適切であり、端から見たら恐ろしく感じられるモノだ。

もし観客にいた子供達が彼の顔を見たりしたら、仰天して泣き出すことは間違いなく、またその容姿から、彼が人間でないことは言わずもがなであろう。

彼の名前は『ナマハゲ丸』さんと言い、今回俺が出演したステージイベントの運営を取り仕切っている人物―――と言うか、見て分かる通りの怪人である。

それで、どうして怪人である彼がステージイベントの運営をしているのかと言えば、それは彼の立場が関係していた。

まず始めに、ナマハゲ丸さんは確かに怪人ではあるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

いや、より正確に言うのであれば以前は所属していたが、今ではその所属先が無くなってしまったらしいのだ。

そんな彼がこの職に就いている理由は、ヒーロー協会及び日本政府が話し合って作った、とある政策による救済措置的なモノが関係していた。

その名も『怪人更生法』といい、組織に所属していない怪人を()()し、真っ当な良識ある存在として更生させるモノだ。

なぜこんな政策が作られたのかという理由についてだが、怪人と言う存在はその持っている力の特性や強さには個体差が存在し、一度暴れたりすれば物的被害及び人的被害は大なり小なり発生するからであり、しかも組織に所属していない野良怪人等と呼ばれる存在はその活動を衝動的に行う為、時として組織に所属している怪人よりも深刻な被害を(もたら)す事がある。

故に、そんな事態が起こらないように未然に防ぎ、社会にとって有益な存在に変える。それがこの『怪人更生法』という政策の目的だ。

・・・と、ここまでが建前であり、実際には怪人になりはしたものの、反社会的な活動をする意欲が無い者や、または見た目はともかく持っている力があまりにも弱すぎて最早一般人同然でしかない者、成りたくて怪人になったわけではない者等を保護して行く事がこの政策の本来の目的らしい。

それ以外にも、現在確認されているヒーロー達の中には元々悪の組織や秘密結社に所属していたが、紆余曲折あってヒーローへと転身している者達も存在しており、そんな彼等彼女等の立場を守る事にも一役買っているのだそうだ。

まあ、野良怪人の中には更生不可能と判断される者達もいる為、そういった者達に対しては情け容赦なくチュドンしているらしいが。

そしてナマハゲ丸さんもこの『怪人更生法』にて更生されたと認定され、一般人としての社会的地位を得た怪人であり、このステージイベントを運営する職に就いているのも、その政策にて受けた職業斡旋で進められたかららしい。


「いやあ、君達が来てくれて本当に助かったよ!なにせ、今月は体調を崩して休んじゃった人が多くてねぇ・・・。しかし、流石はブレーバーさんの所の構成員達だ!まさか、ああも見事に役柄を演じられるなんて!今回は代役として入ってもらったけど、今後もウチで働いて欲しいくらいだよ!」


ナマハゲ丸さんはそう言いながら、見る側にとっては恐ろしく感じられるその鬼のような形相をニンマリとさせる。


「あ、ありがとうございます・・・」


ナマハゲ丸さんの褒め言葉に、俺は頬をちょっと引き攣らせながらそう返す。

いや、褒められたこと関しては純粋に嬉しいと思っているのだが、しかし俺はそれを素直に喜ぶことが出来なかったのだ。

だってこの人の顔めっちゃ怖いし・・・!嬉しそうに笑っているのは分かるけれど、思わず悲鳴を上げそうになってしまったのだから相当だ。・・・実際には上げることなく、何とか内心で飲み込めたけど。

なにせ彼の顔は、名前の通りなまはげのそれだ。

なまはげとは、秋田県の年中行事にて行われる神の使いの扮装の事。

所謂伝統風習的なそれであり、異形の仮面と藁の衣装を身に着けるのだが、仮面に関しては様々なモノがあり、その中の一つに鬼のような物が存在し、ナマハゲ丸さんの顔はまさにそれだ。

見る者にとっては非常に恐ろしいと感じられるモノ。ただ、当の本人―――本怪人?―――は、見た目に反して困っている人を見かけたら手を差し伸べる本当に良い人ではあるのだ。

・・・まあ、差し伸べようとして相手に怖がられ、全力疾走されてしまう事も多いらしいが。


「姐さーん!」


「・・・ん?」


ナマハゲ丸さんや戦闘員達と話をしていると、不意に女性の声が聞こえて来た。

明るさを感じさせるその声の方向へと視線を向けてみれば、そこには俺と同じ『アンビリバブル』に所属している構成員であり、猫怪人の『アルミィ』が大きなビニール袋を片手に持ちながら衣装小屋の入口に立っていた。

このアルミィという怪人は、元々は誰かに飼われていた飼い猫だったのだが、色々あって悪の組織『アンビリバブル』のボスであるブレーバーに拾われ、これまた色々な経緯―――という名のブレーバーのうっかり―――を経て、怪人となった人物である。

その容姿は全体的に可愛いよりも美しいという印象が強く感じられるモノで、その相貌はツンと鼻が高く伸び、その上にある両目は勝気そうな印象を受ける少し吊り上った形をしていて、そこに納められたエメラルドグリーンの瞳はキレイな輝きを見せていた。

また、鼻から下にある唇は光を反射して輝いているかの様な血色のいいピンク色をしており、更にその下、首元に視線を向ければ、そこには〝ミィちゃん〝と刺繍が縫われたピンクの首輪がキラリと光っている。

続いて彼女の体へと視線を向けてみる。

その体型はスラッとしたしなやかさを感じさせるスレンダーなそれであり、またその肌色は赤褐色に近い色合いだ。

腹筋は薄すらと割れていて、見る者に活動的な女性という印象を覚えさせるモノであり、加えて黒と金の柄が交差したようなビキニという露出の多い服装がその印象をより強調させている。

そして更に特徴的だと言えるのが、彼女の頭の上にあるモノと肘膝から先の手足、そして腰から伸びているモノだ。

背中に流れる程の長さがある金髪。その前髪には黒いメッシュが入っていて、更に上へ目を向ければ、そこには髪と同じく毛先だけが黒く染まった金色の毛色の猫耳がピクピクと震えている。

手足に関してだが、その四肢は鍛え抜かれていると言えるくらいに発達しており、その肘膝から先は金と黒の縞模様の毛がフサフサと生えていて、手足の先は猫のそれを人間のモノに近づけたような形をしている。

腰から伸びているのは金と黒の縞模様の細長い猫の尻尾であり、それはアルミィの背後でユラユラと揺れ動いていた。


「姐さーん!差し入れの弁当を届けに来ましたよー!」


そんな、色々な意味で魅力的な容姿を持つ彼女が、俺達に向けて軽く手を振りながら衣装小屋の中へと入ってきた。

アルミィは手に持っているビニール袋を、一度衣装小屋内に置かれていたテーブルの上に置くと、その中に入っていた複数の弁当をテーブルの上に並べ置いていく。


「はい、姐さん!」


「ああ、ありがとう。アル―――」


そして、その内の一つを此方に手渡そうとしてきたので、俺はそれを受け取ろうとして、


『フハハハハッ!そぅらっ!デパートの食料品店で売っていた弁当だぞ!我が配下達よ、心して受け取るがいい!』


「―――ミィ、・・・って、誰だアンタっ!?」


唐突に現れ、テーブルの上に置かれていた弁当を次々に戦闘員達へと渡していくデフォルメされた犬の着ぐるみを着た人物に向けて、衝動的に誰何とツッコミを入れた。


『むっ?何を言っているのだ、ディーアルナよ。我だぞ我。お前のよく知る我だぞ?分からないのか?』


「いや、そんなオレオレ詐欺みたいな言い方されても分からないんだけど・・・・・・」


『むぅ・・・。ならば仕方がない。こうすれば分かるだろう』


犬の着ぐるみを着た人物はそう言うと、頭の部分を両手で持ち上げてカポッと外した。

着ぐるみの下に隠されていたのは、四つ目の付いた頭全体を覆う形のマスク。

それは、俺達が所属している組織のボスであるブレーバーが肌身離さず何時も身に付けているマスクであり、つまりこの犬の着ぐるみを着た人物の正体はブレーバーだったという事になる。


「って、ブレーバー!?アンタだったのか!?というか、何でそんな格好してんの!?」


シュールだった。唯ひたすらにシュールな光景であった。

何時ものブレーバーの格好―――というか仮面から下の服装は、体全体を肩パッドから垂れ下がっている黒マントで覆い隠しているというものであり、唯一その内側から出しているのは刺々しい手甲の様な物を付けた両腕だけという、まるで何処ぞの中二病患者が大喜びしそうな装いだった。

しかし、今の彼の装いは、首から上は何時も付けている仮面で、その反対の首から下はブカブカとした着膨(きぶく)れている様に見える犬の着ぐるみだ。

そんな物凄いギャップのある姿をみた俺は、笑えばいいのか、それとも呆れればいいのかと迷い、思わずヒクリと頬を引き釣らせた。

いや、マジで、悪の組織のボスがそんな格好をしちゃっていいのか・・・!?威厳とか全然感じられないんだけど・・・!?


「我がこの格好をしている理由か?それは勿論決まっている。―――これが今回の我の仕事だからだ!!」


胸を張って断言しやがったよこの人!?


「そもそも今回のこの依頼は、他の組織との交流を深める事と、同時に我と構成員達との連帯感を高める事を目的に受けたモノではあるが、それ以前に毎年恒例で受けていた仕事でもあってな、スタッフの病欠による人員不足といった事態が無かったとしても、元々受けるつもりだったのだ!」


「ええ、ええ、その事に関しましてはウチのオーナーもありがたがっていましたよ。何せブレーバー氏が扮装している犬の着ぐるみ―――『デパワン』君は、夏の時期限定でこのデパートに現れるマスコットとして子供から大人まで毎年大人気ですからね」


「ついでに言えば、我の活躍のおかげで集客にも影響を受けているらしく、この時期は収益的にもウハウハとなっているらしいぞ?」


「な、なるほど・・・?」


ブレーバーとナマハゲ丸さんの話を聞いていた俺は、なるほどと納得しようと頷いて、


「まあ仕事の後は、何時も皆で居酒屋に行って、朝まで飲み明かすなどもしていたがな!」


「えぇ・・・」


「・・・ああそうだ。そういえば最近この近くに、酒に合う旨い海鮮料理を出す店が出来たんですよ。今日の仕事が終わったら一緒に行きませんか?」


「ほう・・・!それは興味深いな。是非とも一緒に行かせてもらうとしよう!」


その後に続いたセリフを耳にしてガクッと肩を落とした。

さ、最後の最後でオチを付けやがったな、この呑兵衛共め・・・!


「ま、まあ、一応仕事だからという点には納得はした。・・・したけど、でも、どうしてブレーバーがそのデパワン君?の格好をわざわざするんだ?他の奴に任せてしまっても良いと思うんだけど?」


「例えば戦闘員達とかに」と、俺がセリフの最後で呟くと、それを耳にしたブレーバーは「うむ、もっともな疑問だな」と頷いた。


「我がわざわざこんな恰好をしているのは、単純に好きだからだな。謂わば趣味だ」


「趣味て・・・」


「様々な衣装(着ぐるみ)を着こみ、数多のパフォーマンスを披露して多くの人々を楽しませ、喜ばせ、そして大いに沸かせて、浮かべたその笑顔を見るのが、我にとっては何より嬉しく感じるのだよ・・・!」


「いやアンタ、世界征服を企む悪の組織のボスだろうが」


キラキラとした (?)視線を遠くに向けるブレーバーに対し、俺は思わずツッコミを入れた。

いやもうマジで、それでいいのか悪の組織のボス・・・!


「ふっ・・・!悪人が、人々を楽しませてはいけないという道理はないだろう?」


「いやまあ、それはそうだけどさ・・・。立場的には良いのかそれ?」


「違う、間違っているぞ、ディーアルナよ」


「えっ・・・?」


「今の我は、夏の時期限定でこのデパートに現れるマスコットキャラのデパワン君!多くの観客を喜ばせ、楽しませるエンターテイナーだ!断じて、世界征服を企む悪の組織のボスなどではない!」


「コイツ、自分で自分の立場を否定しやがった・・・!?」


「今の我が求める望みは唯一つ。それは、子供達の楽しそうな笑顔だ・・・!」


「いやそれ、アンタが言っちゃって良いセリフなの・・・!?」


「というわけで、我も本日の仕事を熟してくるとしよう!待っているのだぞ、子供達よ!今からこのデパワン君が、華麗でおもしろいエンターテイメントを披露して見せてくれようぞ!―――いざ、突貫!!」


「ちょっ、ブレーバー!?―――い、行っちゃったよ・・・・・・」


拳を握り込んだブレーバーはそう言うと、着ぐるみの頭を再びカポッと被り直し、「フハハハハハッ!」と高笑いを上げながら衣装小屋の出入口に向かって走り出す。

そんな彼に、待ってくれと言いたげに手を伸ばそうとした俺であったが、流石と言うべきか、なんというべきか、そうする前にブレーバーの姿は風の様に消えていた。


「というか、華麗でおもしろいエンターテイメントって・・・、一体何する気なんだアイツは?」


「イイッ。イーイー、イイイーイー?」(ディーアルナ様。その答えについては、実際にあれを見てみれば分かると思うぞ?)


「あれ?あれって・・・・・・え?」


ブレーバーが何をしようとしているのかと首を傾げていた俺であったが、そこに戦闘員二号が声を掛けて来た。

彼が開けっ放しとなっている衣装小屋の出入口―――正確にはその向こう側の景色―――を指差したので、俺はその助言に従って出入口へと向かう。

そしてその先の光景を目にして、思わず呆けた声を出してしまった。


『さあさあ、御立合い。今からこのデパワン君が皆に凄い芸を披露してあげるワン!』


衣装小屋から少し行った先にある小さな広場。ブレーバーはその場所で沢山の子供達やその家族に囲まれながらパフォーマンスを行っていた。


『ほいほいほいほい・・・!ワン!』


「うおー!スゲー!」


「一、二、三・・・七、八、九・・・!まだまだ増えるの・・・!?」


「僕知ってる!これ、ジャグリングって言うんでしょー!」


時には合計十五個の掌大のボールを使っての高速ジャグリングを行ったり、


『それそれそれそれ~・・・!ワン!』


「うおおおっ!スゲー!今度は傘を使っての皿回しだ!」


「な、なんて器用な奴なんだ・・・!?それぞれの手に持った開いた傘を片手で廻して、その上に縦に置いた皿を、しかも四枚も同時に転がすなんて、いったいどんだけだよ・・・!?」


時には和傘二本と計八枚の皿を使っての皿回しを行ったり、


『ほいほいほいほいっ・・・・!そしてフィニッシュのヘッドスピンだワン!』


「こ、今度はブレイクダンスまで・・・!?どんだけ多彩なんだよあの犬の着ぐるみを着た奴は・・・!しかも無駄にキレが良い・・・!?」


「いいぞ~!もっと見せてくれー!」


更には逆さまとなって頭を地面に付けた状態のまま高速回転するという事をするなど、多種多様なパフォーマンスを披露して、それを見ていた観客達を喜ばせ、楽しませていた。

・・・ってか、最後の語尾は何?


「おお~!見て見て姐さん!あれスッゴイよ!」


「イイーイーイー。イイッイー」(ボスってば相変わらず凄いよなぁ。キレもそうだけど、どんだけ引き出しがあるんだか)


「イッ、イイッ、イイイーイー。イー?」(ってか、前から思っていたんだが、よくあの着ぐるみを着ながらあんな激しい動きが出来るよな。暑くなったりしないのか?)


「イイーイーイー。イーイーイーイイッ、イイーイーイイー、イーイー」(ああ、それについては問題ないみたいだよ。何でもあの中身は最新鋭の機能が沢山詰まった高性能パワードスーツでもあるらしくって、当然空調機能も取り付けられているから暑さ寒さの調節は完璧だって、着ている本人が言ってたよ)


その光景を俺の後ろで見ていた仲間達はそれぞれの反応をしていた。

ブレーバーのパフォーマンスを見たアルミィは、興奮した様にピョンピョンと跳ねて彼を指を差し、

しかし彼女以外の者―――戦闘員達やついでに一緒にいたナマハゲ丸さんは感心してはいたものの、見慣れたモノだと言いたげに冷静であった。


「アルミィ以外はあんまり驚いていないんだな」


「イッ、イイッ、イイーイー」(まあな、何せ毎年恒例の事だし、何回も目にしていればその分驚きも冷めていくモノさ)


「そ、そうなんだ・・・」


戦闘員一号はそう言いながら、「へっ」と肩を竦めた。

それはまるで、見飽きたとでも言いたげな反応であり、それを見た俺は「あははっ・・・」と苦笑を浮かべるのであった。






次回は6/15に投稿予定です。

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