ミッション52 VS巨大イノシシ・・・!! 後編
「フゴォーーー・・・!フゴォーーー・・・!」
ディーアルナの攻撃によって吹き飛ばされた巨大イノシシ。
薙ぎ倒された木々を下敷きに横倒れになっていた彼の獣は、気絶していた状態から目を覚まし、自らの体を起き上がらせた。
「・・・ブヒッ」
辺りを見回し、自分が置かれている状況を――――――つまりは自身が何者かによって此処まで吹き飛ばされてという事を理解したイノシシ。
一鳴きした後、イノシシは自身が吹き飛んできた方向へと顔を向けて足を進め始める。
「ブヒッ・・・。ブヒブヒッ・・・」
イノシシはとてもとても憤慨していた。
誰の仕業か分からないがよくも己を吹き飛ばしてくれたな、と。
絶対倍以上にして返してくれる、と。
その誰かが何処にいるのかは既に分かっている。
己の体が吹き飛ぶ際にぶつかり、木々が薙ぎ倒されることによって出来上がった道。おそらくこの道の先にその誰かがいるのだろうと巨大イノシシは推測した。
薙ぎ倒されている無数の大木を踏み潰し、踏み砕きながら己が飛んできた方向へと一歩ずつ足を進める。
その速さは徐々に早くなり、そして十数歩目からは一気にトップスピードへと至る。
時速にして約一八〇km。自動車が出せる最大速度並み。しかも走行の邪魔になるであろう足元に散らばる木々を己の強固な頭で、強靭な足で吹き飛ばしている様を見れば、それは最早高速で移動する戦車と言っても過言ではないだろう。
それが今、ディーアルナ達の下へと物凄い勢いと気迫で向かっていくのであった。
ズドドドドドドドドッ・・・!!!
「ブモォォォッ・・・!ブッモォォォーーーッ・・・!!」
「――――――来たぞ!」
遥か遠く、無数の木々が薙ぎ倒されたことで出来た道の先から、今回の俺達の任務の目標である巨大イノシシが迫って来た。
その速度は凄まじく早く、後数分もしたらその巨体で俺達の体を轢き飛ばす事が出来てしまえるだろう。
だが、易々とやられるつもりはない。その為の作戦を俺達はしっかりと考えていた。
「頼んだぞ、アニマルレンジャー!」
「応!任せとけ!」
「俺達がしっかりと止めてやるからな!」
「私達の活躍をとくとご覧あれ!」
「アンタ達は、オラ達がちゃんと守ってやるだよ・・・!」
「俺達の活躍を見て、惚れてくれたっていいんだぜ?」
アニマルレンジャーという五人組のヒーロー。彼等は俺達の目の前に壁の様に立ち塞がり、迫り来る巨大イノシシの姿をまっすぐに見据えていた。
しかも、俺の頼んだぞという声を聞いてそれを声援とでも思ったのだろうか、妙な張り切り具合を見せていた。
というか、最後の惚れる云々は場を和ませるための冗談なのだろうか?
「いいから早く行きな!この変態共が!」
「なぬっ!?訂正を・・・!訂正を要求する・・・!」
そんなアニマルレンジャー達のおフザケに反応して怒鳴るアルミィ。だが彼女の口にした変態という言葉に、アニマルレンジャー達は全力で首を横に振って否定し出した。
「そうだ!俺達は変態じゃねぇ!」
「んだんだ。変態なのはブルーだけだ。オラ達はノーマルだよ」
「そう。俺達は女性に興味津々なだけの健全な男子なんだ!ブルーとは違う!」
「ちょっ!?まさかの総スカンPart2!?皆さんどうしてそんなに私をディスるのですか!?」
「どうしてって、なぁ?」
「ああ、そうだな」
「・・・・・・なんです?なんなんです?その妙な掛け合いは。言いたいことがあるのならハッキリ言ってくださいよ・・・!」
「だってブルーは、どうしようもないドM野郎だからな」
「正直、仲間である俺達でさえドン引くレベルの変態だからな」
「んだんだ」
「スマンなブルー。事実だから、さすがに擁護出来ん」
「グハッ・・・!?バッサリ言いやがったよ、コイツ等・・・!」
「シャークブルー以外は変態じゃねぇ!!」と声を揃えて否定するシャークブルーを除いた四人。
そこからコントのような掛け合いを始めたアニマルレンジャー達であったが、そこへアルミィの声が掛けられた。
「お前等・・・!」
「「「「「――――――あっ」」」」」
「何時までも駄弁ってないで・・・・・・とっと行きやがれ!このバカ野郎共ぉーーーっ!!」
ガンドカバキドコガゴンッ!
「「「「「い、行ってきまーす!!」」」」」
怒りの炎に身を包ませながら怒声を上げるアルミィ。
最終的にキレた彼女によって蹴り飛ばされたアニマルレンジャー達は、そのまま逃げるようにして巨大イノシシに向かって駆け出して行くのであった。
本当に恰好つかないなぁ、アイツ等・・・・・・。
「イー・・・。イイーイー・・・。イイッ、イーイー?」(ううん・・・。相変わらず欲望に忠実な奴等だな・・・。アイツ等、本当にヒーローなのか?)
「イイッ・・・。イーイイーイー、イーイー・・・」(確かに・・・。正規のヒーローになる為には幾つかの試験を合格しなくちゃならないんだが、よく合格出来たもんだな・・・。)
「イッ、イイッ。イイーイー。イッ・・・」(まあ、今その事については置いておこうよ。それよりもディーアルナ様。これを・・・)
「これは・・・?」
巨大イノシシに向けて走り去るアニマルレンジャー達を尻目に戦闘員三号は自身の電子ストレージからグローブの様なモノを取り出した。
グローブに生地はスベスベとした材質の物が使われている様で、人撫でするだけでもかなり触り心地が良い。
手の甲に当たる部分には指関節を阻害しないような形で分厚い装甲の様なモノが取り付けられており、見た目からして凄く固そうだ。
そして何より一番目を引くのがリング状の手首部分であり、そこと接続している黒いアームガードだ。アームガードの形は手の甲から手首と肘の半ばあたりまである長半円型。例えるなら卵の殻を半分にした形だろうか。重厚さを感じさせる一品だ。
「イイイーイー、イーイーイイーイーイイー。イーイーイイー」(これは『エネルギー変換君』と言って、ありとあらゆるエネルギー―――例えば熱とか電気とか―――をKエネルギーに変換、調整し、それを怪人やそれに類する物に供給するというアイテムです。ディーアルナ様はこれを使ってアルミィにKエネルギーを供給してください)
「えっと、供給って言われても、どうすればいいんだ?」
「イイイッ、イイーイー」(まずはグローブを嵌めて、それからグローブ越しにアルミィの体に接触してください)
戦闘員三号から『エネルギー変換君』を渡された俺は、彼の指示に従って行動する。
「・・・こうか?」
「うひゃひゃ・・・!擽ったいよ、姐さん・・・!」
「おっと、悪い」
『エネルギー変換君』を両手に身に着け、アルミィの体に触れる俺。
触れる場所はどこでもいいという事なので、一番触りやすそうな彼女の肩へと自分の両手を置いたのだが、触れた部分が首筋に近かったのか、アルミィは擽ったそうに肩を竦める。
「イイー?イーイーイイイー」(アルミィの体に接触しましたね?そしたら今度はそのグローブを経由してディーアルナ様のKエネルギーをアルミィに送ってください)
「ええっと・・・こう、か・・・?」
「コップに水を注ぐような感じで」と説明する戦闘員三号。それに対してちょっと首を傾げつつもそれに従ってグローブを経由して自身のKエネルギーをアルミィに送った。
「ひぅん・・・!?」
「うぇっ!?だ、大丈夫か、アルミィ・・・!」
そしてその瞬間、アルミィの背中がビクン!と跳ね、耳と尻尾がピン!と真っ直ぐに伸びた。
「だ、大丈夫ですよ、姐さん・・・!何か、エネルギーが送られた瞬間、こそばゆい感じがして・・・」
「そ、そうか・・・?」
俺の方へと振り向きつつ大丈夫だと言うアルミィ。
その頬は薄らと赤く染まっており、その額には薄らと汗が流れているのが見えていたが。
「と、ともかく大丈夫ならこのまま行くぞ!」
「は、はい・・・!来てください、姐さ――――――」
「ふんっ・・・!」
「んんぅぅぅ・・・!?!?」
再びKエネルギーの注入を開始した瞬間、アルミィは一気に目を見開き、顔を赤く染め上げながらビクンビクン!と体を震わせ、耳と尻尾が先程と同じようにピン!と伸びた。
・・・ほ、本当に大丈夫なのか、これ?
「イーイイー、イー。イーイー」「心配しなくても大丈夫ですよ、ディーアルナ様。アルミィの体に異常はない筈ですから」
「いや、でもさ・・・これを見てると、とてもそうとは・・・・・・」
「イイイー。イー・・・イイッ、イー?」(別に苦痛は感じてはいない筈ですよ。もし感じているとすれば・・・快感、じゃないですかね?)
「か、快感・・・?」
え・・・、何で?
「イイイーイー、イイー。イーイー」(怪人の保有しているKエネルギーは、その個体ごとにエネルギー圧や密度が異なります。例えるなら血液型の様なモノですね)
「血液型・・・。って、ちょっと待った。という事は・・・!」
「イイッ?イイッ、イーイー、イイイーイー」(気付きましたか?お察しの通り、血液型が合わなかった際に拒絶反応が起きる様に、とある怪人のKエネルギーを別の怪人にそのまま供給した場合も同様の事が起こります)
「供給された怪人からすれば、毒を入れられたようなモノですね」と言う戦闘員三号に、反射的に「ちょっ、おま・・・!?」と声を荒げそうになった。
というか、俺今現在進行形でKエネルギーをアルミィに送っているんですけどぉ!?
「イッ、イイーイーイー、イイイー」(まあ、それは何の処置もせずに供給した場合であって、今ディーアルナ様が行っている事は違うので安心してください)
「え・・・?」
だが、続いて語られた彼の説明を聞いて、思わず呆けた顔をしてしまった。
「イーイイー、イイッイー、イイー。イイイーイーイイー?」(今ディーアルナ様のKエネルギーは、『エネルギー変換君』を経由することによってアルミィの体に適したモノへと調整され、送られています。飲み物に例えるなら、栄養ドリンクとか精力剤の様なモノでしょうかね?)
「おそらく現在のアルミィの体は、それが与えられたことで嬉しい悲鳴を上げているのだと思われます」と言う戦闘員三号。
彼の言葉に「そういうモノなのか?」と内心で首を傾げつつ、アルミィの様子を伺う俺。
「~~~!~~~~~~!?」
「・・・・・・・・・」
お目々グルグル。顔だけでなく全身も真っ赤に染まったアルミィ。
両手で押さえられたその口元からは、おそらく戦闘員三号が言う嬉しい悲鳴とやらが出ようとしているのだと思われる、のだけれども・・・、なんかこう、俺の耳には嬌声染みたモノにしか聞こえないのだが・・・。そこら辺はどうなのだろうか?
「イッ、イイッ・・・。イーイーイイー、イー・・・」(さあ、そこまでは・・・。感じられる感覚は個人によって異なりますから、何とも・・・)
俺の問い掛けに肩を竦めつつ、分からないと首を傾げて見せる戦闘員三号。
そんな彼の様子に、思わず「えぇ・・・」という声が溢れるのであった。
走る。
走る、走る、走る。
ただ真っ直ぐに。ただひたすらに。眼前に伸びている”道”を突き進む巨大イノシシ。
遥か遠くに複数の人間達の姿が見えており、おそらくその人間達が自身の体を吹き飛ばした仕立て人だろうと直感した巨大イノシシは、地を駆ける足をさらに加速させる。
「ブッヒィィィーーーッ!!!」
自身が味わった痛みを、屈辱を万倍にして返してやると意気込む巨大イノシシ。だがそこで、巨大イノシシの頭上に影が落ちた。
「脇目も振らずに直進するのは大いに結構!ですが、他がおろそかになり過ぎですよ!」
巨大イノシシの頭上を飛ぶはアニマルレンジャーの一人であるシャークブルー。巨大イノシシが走るルートの、その脇にある木々の間から飛び出した彼は、両腕と両の指を真っ直ぐに伸ばして狙いを定める。
「食らいなさい!【ダブルシャークウォーター】!」
シャークブルーの両手の指の先から放たれる濁流の如き大量の水。それは巨大イノシシの顔面に勢いよく直撃した。
「ブモォウッ!?」
突如自身の顔に降り注がれた大量の水に驚き、思わず両目を瞑る巨大イノシシ。
視界が塞がれたことで前が見えなくなった巨大イノシシであったが、しかしその足は全くと言っていい程減速することは無かった。
どうして足が止まらないのか。その答えは巨大イノシシが持つ鋭い嗅覚にあった。
ぶつかり、転がり回った際に染みついた自らの体臭が匂う”道”。そしてその道の両端から感じられると”森の匂い”。
それさえ分かれば道に迷う事は無いし、真っ直ぐに進むことさえ問題ない。故にこそ、巨大イノシシは足を止める必要が無かったのだ。
「・・・まあ、そんなので止まると思ってはいなかったがな」
「だが、視界を潰されれば反応はワンテンポ遅れる。そこが俺達の狙いだ・・・!」
唐突に、全く別の匂いが巨大イノシシの鼻に感じられた。
その匂いの正体は、巨大イノシシの左右斜め前からから飛び掛かって来たイーグルイエローとウルフブラックであった。
「行くぞ!魔犬流剣術奥義!【四――――――」
「即席必殺!【イーグルカッター・膝カックン】!」
「――――――牙】!って、セリフ被ったぁ!?」
ズバンッ・・・!
「ブヒィッ・・・!?」
鞘から剣を抜き、一瞬の内に振り抜くウルフブラック。
腕から垂れ下がる翼を、軽やかに風に棚引かせるように翻すイーグルイエロー。
それぞれから放たれる斬撃は、巨大イノシシの肘や膝裏を的確に突き、斬り、まさしく会心の一撃と呼ぶに相応しいモノだった。
しかし、それでも巨大イノシシの分厚く固い毛皮を切り裂く事は出来なかった。彼等の刃は精々急かしく動くその足を止める程度だった。
だが、それこそが彼等の狙いであった。
「ブヒッ!?ブッヒャァァァアアアーーーッ!?!?」
走る為に動かしていた四本の足全てを同時に止められた巨大イノシシ。彼の体は瞬く間に前のめりとなり、そのまま前方宙返りを一回転。そこから上手く着地する事が出来れば問題なかったのだが、しかし巨大イノシシは驚きのあまり体が硬直しており、そんな事が出来る状態ではなかった。
顔面から地面に着地した巨大イノシシは、そこからさらに数回体を前転させながら地面をバウンドしていく。
「ブモモモモモモーーーッ!?」
最終的には、まるで坂道を転がり落ちて行く大玉の様にゴロゴロゴロと転がって行く巨大イノシシ。
その速度は走っていた時のそれよりも幾らか早いモノではあったのだが、しかし当人 (当イノシシ?)は転がり進む自身の体を制御する事が出来ていなかった。
彼の体は彼の意思とは別に、勢いに押されるまま、転がりながら”道”を進んでいく。
そして巨大イノシシは到着した。彼を待ち構えていた人物の下へと。
「来ただな。お前はオラがしっかりと止めて見せるだよ!【大地怒天】!」
巨大イノシシの進む〝道〝の先。そこにはバッファローグリーンが仁王立ちで待ち構えていた。
彼は両手を地面に埋め込むと、己の必殺技を放つ。
「ウォオオオオッ・・・!!」
そしてバッファローグリーンが力を入れる様に雄叫び上げた瞬間、彼の目の前、数m先の地面から横幅二m、高さ五m、厚さ二◯cmの石壁が盛り上がる様に姿を現した。
しかも出てきたのは一枚だけではなく、そこから約一m毎に同じ大きさの石壁が二枚現れた。
合計三枚の石壁。その一番先頭に巨大イノシシの体が勢いよく突っ込む。
ドゴォォンッ・・・!!!
「ブヒッ・・・!?」
そしてがぶつかった瞬間、一枚目の石壁は転がる巨大イノシシの体を
止めることが出来ず、意図も容易く粉砕される。
だがしかし、そうなる事などバッファローグリーンは始めから分かっていた。
何せ巨大イノシシの体はかなり硬い。それが転がる様は、さながら巨大な鉄球と言ってもおかしくはなく、そんな物が石壁に突っ込めば、壊れてしまうのは当然の摂理。
だからこそ、バッファローグリーンは石壁を複数枚用意したのだ。
ドゴォォンッ・・・!!
「ブヒャッ・・・!?」
二枚目の石壁と接触。砕かれる。
石壁二枚とぶつかった事で多少転がり進む速さは落ちている様ではあったが、未だその速度は時速一◯◯km以上と十分に勢いがある。
そして最後の三枚目。当然これも砕かれる。
ドゴォォンッ・・・!
「ブッヒィ・・・!?」
だがこの時、巨大イノシシの体勢もまた崩れた。
度重なる石壁との衝突。しかも勢いよくというそれに、巨大イノシシに軽い脳震盪が起こり、それによって、転がりながらでも奇跡的に保たれていた体幹バランスや平衡感覚が乱れが生じたからだ。
転がる速度も目に見えて遅くなっていき、擬音で例えるとすれば〝ゴロゴロゴロゴロ〝から〝ゴンロゴンロベシャッ。ゴンロベシャ〝という感じだ。
その状態でも時速三◯km程度の速度は保たれてはいた。が、そこまで勢いが落ちてしまえば、バッファローグリーンがその巨大を受け止める事が出来る。
「フンヌラバッ・・・!!」
「・・・ッ!?」
両腕を大きく広げ、すぐ目の前にまでやって来た巨大イノシシの体をガシッ!とバッファローグリーンは掴む。
それは五人のアニマルレンジャーの中で一番耐久性に優れている彼だからこそ出来る芸当であり、他の四人では逆に轢き飛ばされてしまっただろう。
「グヌヌッ・・・!どりゃぁっ!!」
とはいえ、受け止められるとは言っても、その勢いを完全に止めるだけの力はバッファローグリーンには無かった。
故に彼は、当初の作戦通りに巨大イノシシの体を、勢いを利用しながら思いっきり後ろへと投げ飛ばした。
ちなみに、投げる時の体勢はイナバウアーである。
「最後は俺の出番だ!」
上空二◯m。その高さまで投げ飛ばされた巨大イノシシの体は、その巨体が投げられた瞬間を目にし、同じ高さにまで跳び上がったライオンレッドによって受け止められた。
「ブヒッ!?ブヒブヒッ・・・!?」
「空中でいくら暴れようが無駄無駄無駄ぁっ!おとなしく、俺の必殺技を受けやがれぇぇ!」
「ブ、ブヒィィーーーッ!?」
その巨体を掴んだまま自身の体を軸とした縦回転を始めるライオンレッド。
その回転速度は自由落下をしながらどんどん勢いを増していく。
「ウオォォォッ!【ライオンダンクシュート】ォォ!!」
ズドォォォンッ!!!
「・・・ッ!?!?」
そして最後には巨大イノシシの体を勢いよく地面へと叩きつけた。
「ブッ・・・、ブヒッ、ブヒッ・・・!」
叩きつけられた衝撃でかなりのダメージ負った巨大イノシシ。しかし、その体はまだ己の意思で動かす事が出来る状態であった。
衝撃によって主にダメージを受けたのは内臓器官。手足に負った怪我は打撲程度であり、走ることに関しては多少の支障こそあるものの、行動する分には問題が無い状態だった。
地面に横倒れとなっている自身の体を起き上がらせようとする巨大イノシシ。
だがそこで、ライオンレッドの声が響いた。
「よし今だ!アニマルレンジャー全員集合!」
「「「「応!!」」」」
「・・・ッ!?」
その声が響いた瞬間、それぞれに散っていたライオンレッド以外のアニマルレンジャー達がその場所に姿を現し、次々に立ち上がろうとしていた巨大イノシシの四肢へと抱きついた。
「ブヒッ・・・!?」
「逃がしはしません!」
「ここで足止めを食らってもらうぜ!」
「どれだけ巨大で力が強くとも、関節を抑えられれば動けまい・・・!」
「結集したオラ達五人の力、を嘗めないでほしいだよ!」
「後は任せたぞ!お前等!」
巨大イノシシの顔面を掴み、押さえ込みながら顔だけ後ろへと振り向くライオンレッド。
その視線の先には、今にも必殺技を放たんとするアルミィとディーアルナの姿があった。
「任せろ!こっちは何時でも行けるぞ!」
ライオンレッドに後は任せると声を掛けられた俺は、大きな声で返事をする。
俺とアルミィはまだ『エネルギー変換君』を介して繋がっている状態ではあったが、声を掛けられた時には既に必殺技を放つ為に必要な分のエネルギーチャージは済んでいた。
「行くぞ、アルミィ!お前の力を見せてやれ!」
「・・・・・フフ、フフフフフフ・・・!」
「・・・ア、アルミィ?」
後は巨大イノシシに向けて必殺技を放つだけ。アルミィにそう指示を出した俺であったが、しかしそこで返された彼女の含み笑いを聞いて様子がおかしいという事に気付いた。
心配になった俺は、後ろから回り込むようにして恐る恐る彼女の顔を覗き込む。
「アハッ・・・アハハハハハッ!!任せておいて下さいよ、姐さん!姐さんの敵はアタシが全部、ぜーんぶブッ倒してあげますからぁぁ!!」
「ア、アルミィさん・・・!?」
アルミィの様子を見た俺は、思わず頬を引き攣らせながら絶句した。何せその表情が色々と逝っちゃっていると呼べるようなモノだったからだ。
敢えて例えるとするなら酔っ払っている状態が一番近いだろうか?
両目のグルグルはエネルギーを注入し始めた時よりもさらに加速し、全身の赤身は最初の時よりも幾らか引いたようではあるものの、未だ色濃く残っている状態だ。
その様はどこか退廃的な色気を感じさせ、同時に彼女が正気ではないという事も感じさせていた。
「行っくよぉ!【スーパーコネクトエレキケージ】発動!」
電子ストレージに収納していた『電磁檻スパーク君』を取り出したアルミィは、それを両手でガシッと掴み、大量の電気を送り込みながら巨大イノシシの頭上へと向けて投げた。
アルミィの手によって投げられた『電磁檻スパーク君』は、巨大イノシシの頭上に到達するまでの間にバチバチと雷電を走らせながら高速乱回転を開始。目標地点に到着した際には九つの正方形のキューブに分かれ、半円状となって巨大イノシシの周囲を囲み、それからキューブ同志が電撃の帯で繋がって行く。
完成したそれは、まるで巨大な網籠の様にも、檻の様にも見える形をしていた。
「ブヒィッ・・・!?」
自分達を囲む九つの黒いキューブ及び電撃の帯を目にした巨大イノシシは驚きの声を上げる。
だがしかし、驚きの声を上げたのは彼だけではなかった。
「・・・え、何これ?」
「ちょっ・・・!?タンマ!お願い待って・・・!!」
「まだ俺達がいるから・・・!避難していないから・・・!?」
「や、ヤバい雰囲気をビンビン感じるだぁ・・・!」
「おぉい・・・!味方ごと攻撃するつもりかなのかよぉ・・・!?」
「・・・味方ぁ?」
巨大イノシシの体を押さえ込んでいるアニマルレンジャー達。彼等もまた、自分達に迫ろうとしている危機を感じ取って困惑の声を上げていた。
が、それに対するアルミィの返答は辛辣なモノであった。
「お前等は元々アタシ等の敵!たった一回の共闘で味方面なんかするんじゃないよ!」
「「「「「そ、そんなぁ!?」」」」」
「それにアタシとしてはアンタ達がしようとしていることで許せない事がある。――――――それは、アンタ達が姐さんに卑猥な事を要求したことだぁ!」
「ひ、卑猥な事・・・?」
「忘れたとは言わせないよ・・・。姐さんにコスプレさせて楽しもうと言ったその言葉を・・・!」
「いや、あの・・・確かに言ったけど・・・!」
「そ、それって、そんなに卑猥な事か・・・?」
「お、俺達としては精々膝枕とか、料理をアーンとかしてもらおうくらいしか思ってたんだけど・・・!」
「だ、だべぇ・・・」
「お、おや、そうだったんですか、皆さん?私は、彼女に鞭とか蝋燭を持っていただいて、私の事をビシバシお仕置きして頂こうと思っていたのですが・・・・・・」
「バカッ!黙ってろ!この状況が分からないのか・・・!」
「今ここでお前の願望を語るとどうなるか、想像できるだろうが!」
「ふっ・・・、それもまた良しです・・・!」
「「「「ダメに決まっているだろうが!このドM野郎!」」」」
「フフ、フフフフ・・・!」と含み笑いを溢すシャークブルーへ、他の四人がツッコミを入れる。
なんという見事なツッコミ。・・・というか、シャークブルー。アンタどこまで自分の欲望に忠実なんだよ。他の四人がツッコミを入れる程だなんて相当だぞ・・・。
「ふざけんじゃないよ!姐さんはアンタ達の玩具なんかじゃない!姐さんは、アタシのモノだぁ!!」
「いや、何言ってんのアルミィ!?」
アニマルレンジャー達に対抗する様に唐突なシャウトをするアルミィ。
本当に何言ってるのこの娘!?
「姐さんの膝の上に寝転んで頭をヨシヨシと撫でてもらったり、顎の下やお腹とかを優しく撫でてもらったり、他にも手ずからご飯を食べさせてもらったり・・・!そんなことを仕事が終わったらご褒美としておねだりするつもりだったんだ・・・!」
「待って、アルミィ!それ以上誤解を生みそうな発言はストップだ!」
というか、帰ったらそんなことをお願いするつもりだったの!?お前そんなキャラだったっけぇ!?
「「「「「・・・・・・ゴクリッ」」」」」
「・・・って、お前等も勝手な想像で生唾呑み込んでんじゃねぇよ!」
エヘエヘと蕩けているような笑みを浮かべるアルミィと、彼女の発言からエロい妄想でもしたのか喉を鳴らすアニマルレンジャー達。
ちくしょう!なんだこのカオス!最早収拾がつかないんだけど!?
「それを邪魔するって言うんなら・・・。アタシから奪おうって言うのなら、容赦なんてしない。そのイノシシ諸共に、アタシの電撃で焼かれろやぁぁーーーっ!!!」
先程まで浮かべていた笑みを引っ込め、表情を怒りのそれへと変えたアルミィは、そう叫びながら両手を前へバッと伸ばし、両手の指を広げ、その掌に電流を発生させる。
そしてそれに連動する様に黒いキューブ同志を繋げている電撃の帯が一回り太くなった。
「はぁぁあああっ・・・!!必殺【大電熱地獄】ぅぅ!!!」
バチバチバチバチッ!!!
「ブヒイィィィーーーッ!?!?」
「「「「「ギャアアアァァァーーーッ!?!?」」」」」
アルミィが必殺技を発動した瞬間、キューブと電撃の帯で出来た囲いの内側で大出力の電流が縦横無尽に流れ、駆け巡っていき、そしてその電流を受ける事になった巨大イノシシ及びアニマルレンジャー達は盛大に感電していた。
「ちょっ・・・!こここれマジやばばばばっ・・・!?」
「体ががが、痺、痺れぇ・・・!?」
「ウボボボボボババババババッ・・・!?」
「・・・・・・!?」(ビクンビクンッ!)
「――――――あっ。そう言えばオラは電撃が効かなかっただ。焦ってすっかり忘れていただよ」
「「「「「お前だけずるいぞグリーン!?」」」」」
現在進行形で感電し、体をビクンビクンと痙攣させながら地面をのた打ち回るアニマルレンジャー達。ビッタンビッタンと跳ね回るその姿は、まるで陸に打ち上げられた魚の様であった。
ただし、バッファローグリーンだけは電気が効かない体質のおかげでノーダメージであるようだったが。
「ちぃっ!そう言えばあの牛野郎に電撃は聞かなかったんだっけ・・・!だが、この技の真骨頂はここからだ・・・!エネルギーを貰いますよ、姐さん!」
「えっ、ちょっ、アル、ミィィっ!?」
その言葉をアルミィが口にした途端、俺の体から彼女の体へと送られるKエネルギーの量がグンと増した。
・・・というか、これ送るっていうか吸われてる・・・!めっちゃエネルギーが吸われてるんですけどコレェ・・・!?
「ブヒッ・・・!?ブヒィィッ・・・!ブヒィィッ・・・!!」
「アバババッ・・・!?熱っ、あっつぅい!?」
「か、体が燃える様に熱くぅぅ!?」
「ギャアアアッ!?焼ける!?焼き鳥になっちまうぅぅ!?」
「う、うおぉぉぉっ・・・!?電撃は大丈夫でも、熱までは無理・・・!熱アツアッチィヤァ・・・!?」
「・・・・・・・・・」(チーン)
電撃と、そして電圧が増した事で副次的に発生した熱によって地面をのたうち回る巨大イノシシとアニマルレンジャー達。
その様相はまさしく阿鼻叫喚という言葉が出てきそうな光景であった。
というかよくダウンしないなコイツ等。巨大イノシシの方はともかく、アニマルレンジャー達も倒れないとか、どんだけ頑丈なんだ。・・・いやまあ、約一名昇天しかかっているけどさ。
「アハッ、アハハハハハッ!踊れ、踊れぇ!アハハハハハハッ!!」
「・・・・・・でも、今一番ヤバそうなのって、この娘だったりするんだよなぁ。だって明らかに正気じゃないし」
そんな彼等の姿を見て興奮が最高潮に達したのか、「キャッホーイ!」と両腕をブンブン振り回してピョンピョン跳ねているアルミィの姿。
それを見た俺は思わず「何なんこのカオス」と呟いてしまうのであった。




