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ミッション51 VS巨大イノシシ・・・!! 中編



「ブヒブヒブヒブヒィーーーッ!!」


「イイィィィーーーッ!?イイイイイィィィーーーッ!?」(ウオォォォーーーッ!?追って来る追って来る追って来るぅぅぅッ!?)


「イイイーイーーーッ!?」(何時まで追って来るんだあのイノシシはぁーーーッ!?)


「イイッ、イッ、イー・・・!?」(っていうか、もう、体力が・・・!?)


「が、頑張るんだよ、三号・・・!足を止めたら終わりだからね・・・!」


生い茂る森の中。傍目から見たら分かりにくい獣道を全速力で駆けるアルミィと戦闘員達。そして草木を掻き分けながら進む彼女達のその後ろには、鼻息の荒い巨大イノシシが道中にある木々を吹き飛ばし、薙ぎ倒しながら物凄い勢いで追いかけてくる。


「イッ!イイイィィ!?イーイーイー・・・!」(くっそ!あのイノシシ足速えぇぇ!?徐々に迫って来てやがるぞ・・・!)


「イイイッ・・・!イッ・・・!?イッ、イー。イイイー・・・!?」(このままじゃ追い付かれるのも時間の問題だな・・・!くそっ・・・!?なあ、三号。何かアイツを足止めする便利アイテムとかないのか・・・!?)


「イイイーイー・・・!イーイーイー!イイーイー・・・!イイイー!イイー・・・!」(そんなの言われる前からとっくに試しているよ・・・!トラバサミとか地雷とかバリアとか!でもそれら全部がアイツには効いてないんだよ・・・!それがどうしたぁ!って言う様に・・・!)


「イーイーイイー・・・!イイー・・・!」(つまり並み程度の威力の武器じゃ意味無いってことか・・・!どんだけ固いんだよアイツの毛皮は・・・!)


「イーイー、イイイーイーイイー・・・!イイー・・・!」(一応威力が高い奴もあるけど、大型だからこう逃げ回ってちゃ構えるどころか出す事自体出来ないよ・・・!せめて三分は準備する時間が欲しい・・・!)


「イッ、イイーイー、イーイーイイー・・・!」(なら、誰かが囮となってあのイノシシの注意を引いている間に、三号にはそいつを準備して貰おう・・・!)


「イッ・・・!イイッ、イー・・・!」(了解した・・・!それで、誰が囮をやるんだ・・・!)


「・・・・・・イッ、イー。イイー」(・・・・・・よし、一号。お前が行け)


「イッ、イイィ・・・!?」(ちょっ、俺ぇ・・・!?)


「イーイイー?イッ、イイイーイーイー?」(お前は動物大好きだろう?ほら、大好きな動物であるイノシシと(たわむ)れるチャンスだぞ?)


「イイ、イイ、イイ!イイイーイー!イーイーイー!・・・イッ、イイイッイー!?イーイー!」(いやいや待て待て!さすがにアレの相手は死ぬから!(たわむ)れる前に吹き飛ばされるから!・・・というか、こういう囮作戦とかは二号の方が得意だろう!?元凄腕傭兵の実力を見せてくれよ!)


「イッ。イーイーイイー。イイイーイー。イッ、イイッ。イーイイーイー?」(無理だな。俺の経験にあるのは兵士やテロリストとの戦いのみ。あんな野生動物の相手なんてしたことがない。だが、動物好きのお前の事だ。対処法の一つや二つくらいある筈だろう?)


「イイイッイー!?」(動物好きだからって何でも出来る訳じゃねぇ!?)


「オイコラ・・・!言い争いをしている場合じゃ、・・・って、前!前見ろ!」


囮になれという戦闘員二号の言葉に、一号は全力で首を横に振って拒否する。

その後も走りながら誰が囮になるかで言い争いをしていた戦闘員達であったが、その最中にアルミィの叫び声が響き、そちらへと彼等は意識を向けた。


「イッ・・・?イッ、イイィィィーーーッ!?」(前・・・?って、壁ぇぇぇーーーっ!?)


「イイイッ、イー・・・!?」(行き止まり、だと・・・!?)


突如目の前に現れた岩壁。それを見たアルミィと戦闘員達は自らの足を地面を擦りつつ急ブレーキを掛けて立ち止まった。

アルミィ達が辿り着いたその場所は、十m近くもあるコの字となっている崖に囲まれた場所であった。


「イイッ・・・!イーイーイイー・・・!」(くそっ・・・!右も左も崖で塞がってやがる・・・!)


「イッ、イイッ・・・!イイー、イー・・・!?」(ちょ、ヤバいって・・・!逃げ場が無いよ、これ・・・!?)


「唯一の逃げ場は後ろだけだけど・・・!――――――ッ!?来たよ!!」


「ブッヒャアァァァーーーッ!!」


「イイィィィーーーッ!?イイイッ、イイイッイィィーーーッ!?」(ギャアァァァーーーッ!?イノシシが、イノシシが迫って来るぅぅーーーっ!?)


唯一の逃げ場は後ろだけ。しかしその後ろからは巨大イノシシが勢いよく迫っていた。

前門の虎後門の狼ならぬ、前門の壁に後門のイノシシ。

このままでは岩壁とイノシシに挟まれてぺしゃんこになってしまう事が想像出来てしまったアルミィと戦闘員達は、全員が顔色を青くさせ、悲鳴を上げた。

最早万事休すかと思われたその瞬間、迫り来る巨大イノシシの横合いから物凄い勢いで何かが飛び出して来た。


「――――――俺の仲間をやらせるかぁ!【猪突猛進撃(ちょとつもうしんげき)】!!」


「ブヒャァッ!?」


その何かとは、アルミィ達の仲間であり、悪の組織アンビリバブルの女幹部ディーアルナであった。

彼女は巨大イノシシの横合いに飛び出した後、一度地面に着地してから跳ね上がり、巨大イノシシの横っ腹に向かって体当たりをした。

その軌道はまるでボクサーの放つボディーブローの様であり、抉り込むかのようなその一撃は巨大イノシシの体を吹き飛ばし、乱立する無数の木々を薙ぎ倒しながら、距離にして五km程向こうにまで転がしていった。


「悪い。待たせたな、お前等」


「あ、姐さん・・・!!」


「イッ、イイィィィ!?」(ディ、ディーアルナ様ぁぁぁ!?)


「イーイイー・・・!」(ディーアルナ様が助けに来てくれた・・・!)


「イィッ・・・!イイイッ、イーイー・・・!!」(ふぅ・・・!とりあえずだが、一時的に命の危機は去ったか・・・!!)


巨大イノシシを吹き飛ばした後に親指を立てて見せるディーアルナ。

それを見たアルミィと戦闘員達は、頼れる仲間の登場に歓喜と安堵の声を上げるのであった。









「ありがとうございます、姐さん!おかげで助かりました!」


「イイッ、イーイー。イイイッ・・・!」(ああ、本当にありがたいな。さっきまでマジで危機一髪だったし・・・!)


「イイイー・・・!」(危うくぺしゃんこになるところだったしね・・・!)


「イーイーイイー・・・!」(九死に一瞬を得るとはこの事だな・・・!)


「イイッ。イイーイーイー?」(いや二号。それを言うなら九死に一生を得るだからね?)


「イッ・・・?イイー?」(むっ・・・?そうだったか?)


「まあとりあえず、皆が無事な様で何よりだ」


アルミィ及び戦闘員達を助け合流した俺は、意外と元気な様子の彼女達の姿を見て安堵の息を吐き、その後に気合を入れる様にして右の拳を左の掌にスパァンと叩き付ける。


「さてと、それじゃあ皆の無事を確かめられた所で、さっさとあの巨大イノシシを仕留めるとしますか。――――――三号例の充電装置の準備を頼めるか?」


「イーイー、イイイーイーイー?」(構いませんけど、多分準備している間にあのイノシシが戻って来ると思いますよ?)


戦闘員三号が巨大イノシシに追いかけられる前に話していた”もしもの時の為の物”。俺はそれを用意する様に彼に言う。

俺の頼みを聞き、準備をすることに関しては問題ないと頷く戦闘員三号。しかしその最中に巨大イノシシが戻って来て、準備中の所を狙われることを危惧していた


「大丈夫だ。こっちには頼もしい助っ人がいるからな」


「イー?」(助っ人?)


「「「「「それは俺達の事さ!」」」」」


そんな不安そうにしている三号に、俺は助っ人がいるから大丈夫だと声を掛ける。

そしてその瞬間、五人分の掛け声が聞こえ、続いてその人数分の人影が俺達の前に飛び出して来た。


「「「「「――――――トゥッ!!」」」」」


その人影たちは地面へと綺麗に着地をした後、それぞれのポーズを取りながら名乗りを上げた。


「「「「「野獣戦隊アニマルレンジャー!ここに推・参!」」」」」


「イイイィィーーーッ!?イイイーイーーーッ!?」(アイエェェーーーッ!?アニマルレンジャーーーーッ!?)


「イッ、イイーイーイイー!?イーイーイー!?」(ちょっ、どういうことだよディーアルナ様!?コイツ等が助っ人って!?)


その人影の正体が敵対していた筈のアニマルレンジャーであることに気付いたアルミィや戦闘員達は驚きの声を上げながら詰め寄って来た。


「驚くのは分かるが、落ち着けって皆。あのイノシシを倒すために一時的に協力することになったんだよ。正直、今の俺達じゃアイツは倒せないからな」


「そう・・・。そして俺達だけでも勝てはしないだろう。なにせあのイノシシの厚い毛皮を貫けるだけの威力の武器を持っていないしな」


自分達では巨大イノシシを倒せないと言うライオンレッド。だが、それに対して戦闘員三号が、あれ?と首を傾げた。


「イッ?イイイッ、イイーイーイー?イイイッ?」(あれ?確かアニマルレンジャーって、アニマルバズーカという武器が無かったっけ?それじゃあ駄目なの?)


「ええ確かにありますよ。ただ、火力は十分あるのですが、アレから放たれるのは拡散性のある砲弾でしてね。貫通性が無いのです。なので毛皮の表面は焼けるでしょうが、その内側の肉にまでは・・・・・・」


「イッ・・・、イイイーイー。イッ、イイーイーイイー」(なるほど・・・、それがアンタ等の武器では倒せないという理由か。まあ、確かにバラバラの戦力で挑むよりも効率という点では利に適っているな)


俺とアニマルレンジャーはどうして協力することになったのかを説明をし、それを聞いた戦闘員達は納得する様子を見せた。

しかし、その中でアルミィだけは納得できないと言う様に荒げた声を出した。


「だからってコイツ等に助っ人を頼むなんて正気なんですか、姐さん!コイツ等は変態なんですよ!協力する対価に一体何を求めてくるか・・・!!」


絶対如何わしい事を要求してきますよ!と言うアルミィ。


「オイコラ。風評被害も(はなはだ)だしいぞ。如何わしい事なんてするわけないだろう!――――――精々コスチュームプレイをしてもらうだけだ!」


「十分如何わしいわぁっ!!」


それに対して反論を述べるライオンレッドだったが、全くもって説得力が無かった。

というか、語るに落ちるとはまさにこの事だろう。欲望まみれのそのセリフにアルミィのツッコミが入った。


「やっぱりコイツ等に頼るのは止めましょうよ、姐さん!このまんまじゃアタシ達、この変態共に(はずかし)しめられますよ!?」


「お前の言いたい事は分かる。よく分かるよ、アルミィ。でも、他に方法が無いんだ」


すがり付いて来るアルミィを優しく抱き留めつつ、しかし彼女に向けて首を横に振る俺。


「あのイノシシを倒せるだろうお前の必殺技を放つ為には充電が必要。だけど俺達だけじゃまともに相手なんて出来ないし、その時間を稼ぐ事は出来ない。逆にアニマルレンジャー達(アイツ等)はまともに相手をする事が出来るけど、イノシシを倒す決定打が無い。つまりどちらも戦力が足りない状況だ」


正直アルミィの抱いたであろう心配と気持ちは俺自身も当然の様に感じており、出来る事ならアニマルレンジャー達の手を借りたくは無いというのが本音だ。

しかし、それではあの巨大イノシシを倒す事なんて夢のまた夢だ。


「だから今だけは・・・、あのイノシシを倒すまでの間は共闘した方がお互いに都合が良いんだよ」


「それはそうでしょうけど・・・!でも・・・!?」


何故俺達が共闘するのかの説明をし、それを聞いたアルミィは理解はしている様だが、感情は納得出来ていない様であった。

いや?もしかしたら彼女は本能的な部分で危険を察知しているのかもしれない。貞操の危機という危険を。


「うぅぅぅ~~~・・・!?」


「はぁ・・・、しょうがない。耳を貸せ、アルミィ」


「・・・?」


俺の胸元に顔を埋めながら愚図るアルミィ。

そんな彼女の姿を目にした俺は溜め息を一つ溢した後、彼女にのみ聞こえる様に小声で話しかけた。


「なに、もしもの時は逃げればいい。目的さえ達成したら此処に留まる理由なんて俺達には無いからな」


「はっ・・・!?成る程・・・!」


「ついでにチャンスがあれば、イノシシと一緒にアニマルレンジャー達も倒してしまえば良いだろう。そうすれば対価を要求する余裕なんてアイツ等には無くなる」


「確かに・・・!?姐さんって、もしかして天才なのか・・・!?」


「いや、こんなの誰でも簡単に思い付けると思うんだけど・・・」


というか、悪の組織に所属する構成員としてはこういった思考をする方が正しいのではないかと思う。

むしろ何故思い付かないのかと言いそうになって、しかし上目遣いで此方に向けてくるアルミィのキラキラと輝かせるその瞳を見て思わず口をつぐんだ。

純粋さというか、信頼の厚さというか。そういったモノを感じてしまい、何となく思った事を言うのが(はばか)られたのだ。


「よーし!そうと決まればアタシに任しといてくれよ、姐さん!バッチリ決めてやるからさ!」


「ああ、うん。無理はしないようにな」


そう言いながら俺の元から離れると、「おっしゃー!やるぞー!」と気合いを入れるアルミィ。

そんな彼女に対して、俺は曖昧な返事しか返す事が出来なかった。






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