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ミッション48 猫怪人VS戦隊ヒーロー・・・!? 中編



「姉ちゃん。アンタ結構やるじゃねぇか」


ライオンレッドに続き、シャークブルーも倒れ伏した後、三番目に前に出てきたのはイーグルイエローであった。

彼は腕の下に広がる翼の様なモノをバサリと翻しながら歩みを進める。


「次の相手はこの俺だ。だが俺は馬鹿なレッドやアホなブルーとは一味違うぜ。それを今から実戦で見せてやるよ・・・!」


「一味違う、ねぇ・・・。――――――変態的な意味でか?」


「んなわけないだろう!俺はアイツ等のように性欲まっしぐらじゃねぇよ!」


首を傾げて問うアルミィに対して「違う違う!?」と否定するイーグルイエロー。首まで横に振ってまで否定するその様子に、一緒にされたくないという気持ちが感じられた。


「ふぅん・・・?そこまで言うなら見せて貰おうじゃないか。アンタの実力を、ね」


「ああ、思う存分に見せてやるさ・・・!――――――行くぞ!」


腕を大きく広げ、バサリと翼の様なモノを翻しながら、真正面からアルミィに突撃するイーグルイエロー。


「食らえ!【イーグルカッター】!」


ヒュゥオオォンッ!


そしてアルミィに急接近した後、彼女に向けて翼の様なモノを掠らせる様に振るっていく。


「・・・ッ!」


初めは何の動きだと思っていたアルミィであったが、翼の様なモノが振るわれた際に風を切るような音が聞こえ、それに対して本能が危機感と言う名の警鐘を鳴らす。

本能に従って反射的に体を反らすアルミィ。

そして翼の様なモノがアルミィの上半身があった場所を通過した瞬間、彼女の背後にあった大木がシュパッ!と上下に分か断れた。


「なっ・・・!?」


「ちっ、避けたか・・・!随分と勘の鋭い女だ、なっ!」


ヒュオンッ!ヒュゥオォンッ!


「ふっ!はっ・・・!」


初見の攻撃を躱された事に舌打ちを溢したイーグルイエローは、そこから更に続けて【イーグルカッター】を数度放つ。

だがその連続攻撃を宙返りやバク転、側転等をしつつ華麗に回避していくアルミィ。

またそれによって空振った【イーグルカッター】の余波が、次々に周囲の木々を間断していく。


「至近距離からの連続攻撃も躱してみせるのかよ・・・。とんでもない反応速度だな・・・!」


「褒めてくれてありがとう。お礼にアンタの技の正体を答えてやろうか?」


自慢の技が躱された事に驚愕し、声を震わせるイーグルイエロー。

そんな彼に対し、全ての攻撃を躱した後でシュタッと地面に着地したアルミィは、「その技を見抜いたぞ」と言いたげに笑みを浮かべながら朗々と語り始める。


「アンタの【イーグルカッター】って技。アレって風圧を刃として飛ばしてるんだろう?」


「まさか、初御披露目から見抜かれるとはな・・・。ああ、そうだ。この技はお前の言う通り、風圧を刃として飛ばす技だよ。」


アルミィの言葉に舌打ちを溢しつつ頷くイーグルイエロー。


「・・・しかし、よく分かったな。この技は実質風を飛ばしているだけだから目には見えねぇ筈なんだが?」


「その腕に付いている翼を翻す度に風切り音が聞こえて来ていたからな。大体そうじゃないかと思ったんだ」


「ちっ・・・!そうか、音か・・・!しまったな。正直そこまで気にしていなかったんだがな・・・・・・!」


技の概要が暴かれた原因が、技を出す時に発生する風切り音だったことを知り、悪態を吐くイーグルイエロー。その姿はなんだかとても悔しそうであった。


「だが、その対策を考えるのは後回しだ。そもそも今の技は、新必殺技を作る過程で出来た副産物・・・!今度こそ俺の新必殺技を見せてやる!――――――トオゥッ!」


先程まで悔しそうにしていたイーグルイエローは、勝負はこれからだと空中へ大きくジャンプ。そのまま腕に付いている翼を羽ばたかせ、雲の上まで飛んでいく。


「行くぞ。これが俺の新必殺技だぁぁっ!!」


「――――――ッ!!」


雲の上にまで辿り着いたイーグルイエローはそう叫ぶと、今度は地上にいるアルミィに向かって急降下ダイブを始める。

その速度は数秒も経たない内にマッハの域にまで到達。イーグルイエローは一瞬でアルミィの目の前に現れ、気が付けば瞬く間に彼女の後方数m先で膝を着いていた。


「【イーグルカッター瞬断閃】・・・!――――――手応え、あったぞ・・・!!」


イーグルイエローがそう宣言した時、アルミィは呻き声一つ上げる事無く、地面にバタリと倒れた。







「アルミィ・・・!?」


「イイイッ・・・!イッ、イーイイー・・・!?」(おいおいおい・・・!あれ、ヤバイんじゃないか・・・!?)


「イッイイー・・・!」(は、早く助けに行きましょう・・・!)


二人の戦闘を近くで見ていた俺達は、急いで地面に倒れたアルミィに駆け寄って行く。


「大丈夫か、アルミィ!おい、アルミィ・・・!?」


倒れ伏した彼女の肩を掴み、声を掛けながら体を揺する。


「・・・・・・ッ?あれ?」


「アルミィ・・・!良かった。無事だったんだな・・・!」


体を揺すった瞬間、アルミィはパチリと閉じていた(まぶた)を開き、不思議そうに首を傾げながら起き上がった。


「何処か痛い所はあるか?」


「いや、その・・・、何処も痛くないです、姐さん。・・・と言うか、何処も斬られてない・・・?」


アルミィは体を起き上がらせた後、自分の体をペタペタと触りながらそう呟いた。


「え・・・・・・?」


「そ、そんな馬鹿な・・・!?」


彼女の呟きを聞いた俺は、どういう事だ?と困惑する声を出し、イーグルイエローもまた、そんな筈はない!と叫んだ。


「確かに斬った・・・!確かに手応えを感じたんだ・・・!斬れていない筈がない!」


「・・・ちなみに一つ聞きたいんだが、お前は何処を狙っていたんだ?」


「そんなの勿論決まっている!彼女の身に付けているそのビキニだ!!」


「「・・・・・・・・・・・・はっ?」」


イーグルイエローが繰り返し斬ったと言うので、何処を狙って斬ったのかと問い掛けると、まさかの答えが返ってきた。


「ビ、ビキニ・・・?え、何でそっちを・・・?」


「何で、だと?そんなこと分かりきっているだろう!――――――ポロリを狙っていたからだ!!」


「「・・・・・・・・・・・・え゛っ」」


力強く断言するイーグルイエロー。

その答えを聞いた俺達は、驚きで思わずパカリと口が開いてしまった。


「えっ、じゃあ何?ポロリを見たいが為に、アルミィ本人じゃなくて、アルミィのビキニを狙ったと・・・?」


「さっきからそう言っているだろうが・・・!」


俺の思わず出てしまった呟きにイーグルイエローは頷く。


「俺は体を求めるレッドや、羞恥心に染まった姿を見たがるブルーとは違う!俺は女の体を(ちょく)で見たかった!(じか)で見たかった!だが、女性の服を強制的に脱がせようとするのはいけない事だ。それは犯罪者等に対しても当て嵌まる。しかし戦闘中の不慮の事故、不可抗力で脱げてしまったのであれば話は別だ!何せ事故だからな!ガン見しても問題ない!」


「問題大ありだ!やっぱりテメェもさっきの二人と同じ変態じゃねぇか!【キャットサンダー】!!」


「ギャアアアアアアァァァッーーー!?!?」


バチバチバチバチッ!!


熱弁している事で隙だらけとなったイーグルイエローに向けて【キャットサンダー】を放つアルミィ。

その時彼女が浮かべていた表情は、怒りと生理的嫌悪が混ざった感じのそれであった。


「グフッ・・・!?ちくしょう・・・!生オッパイが見たかった・・・・・・!――――――ガクッ・・・!」


バタリッ、と真っ黒焦げになって地面に倒れるイーグルイエロー。良い感じのロースト加減である。


「・・・しかし、どうしてアルミィのビキニは切れなかったんだ?あれだけの凄い一撃だ。普通なら切れるだろう」


「イイッ、イーイー」(それについては僕が答えるよ。ディーアルナ様)


黒焦げになって倒れ伏す変態の姿を横目で見つつ、どうしてビキニが切れなかったのかと疑問に思う俺。

そんな俺の疑問に答えたのは戦闘員三号であった。


「イーイーイー、イイイー。イーイイイー、イイーイーイー、イイイッイー。イーイイー、イーイー」(アルミィが身に付けているビキニは、幾つもの合金を糸状にして編み込んで作られている代物なんだ。主な材料は『超硬合金』、正式名称は『超硬質合金』とも呼ばれている金属炭化物の粉末を焼結して作られる合金や、『ゴムメタル』なんて呼ばれている金属でありながらゴムの様な性質を持つチタン合金とか。他にも色々な合金を織り込み、混ぜているから、生半可な攻撃じゃ傷一つ付かないんだよ)


「何その下手な防具よりも硬そうなビキニは?」


「というか、どうしてそんなものが秘密基地の衣裳部屋の中に?」と首を傾げる俺の前で、戦闘員三号は後頭部を片手で掻きながら目線を逸らした。


「イイー・・・。イーイー、イイイーイー・・・。イーイイッ、イイッイー、イイイー」(あははー・・・。実はアルミィさんが着ているあれって、以前ボスと一緒に怪人の衣装を作っている時にノリと勢いと衝動のままに作った奴の一つでして・・・。作った後で二人して、”うん、これはさすがに無いわぁ”と衣装棚の奥に放り込んでたモノなんですよ)


「性能は確かなんですけど、あまりにも露出があり過ぎたのでNGになってんです」と語った戦闘員三号。いやお前等、本当に一体何を作ってるんだよ・・・。


「――――――そ、そういう事か・・・。道理で、切れなかったわけだ・・・!」


「うおぅ!?気絶してなかったのか、お前・・・!?」


俺達が話をしていると、倒れ伏しながらも意識はあったのか、密かに話を聞いていたイーグルイエローが口を開いた。


「ふっ・・・!あの程度の攻撃等、俺にとっちゃ大したダメージには無りゃしねぇよ・・・!」


「・・・その割には体を動かせない様子だけど?」


「・・・・・・さ、流石に電撃に対する備えはしていなかったからな。ダメージは無いが、体が痺れて動けねぇんだ・・・!あそこで俺と同じようにぶっ倒れているブルーもそうだぜ」


「――――――その通り。私はまだまだ元気ですよ、お嬢さん方。」


イーグルイエローが顎を(しゃく)った先。そこで倒れていたシャークブルーが不敵な笑い声を出す。


「確かに、今の私達は体が痺れてしまって動けない状態ではあります。が、それもあと少しの辛抱。もう数分もすれば痺れなど取れて再び活動できるようになります。その時こそ、本当の全力でお相手して差し上げましょう!」


キリッ!としながら自分達はまだ戦えるのだと自信満々にそう語るシャークブルー。ただし、黒焦げ状態で地面に倒れながらであったため、何一つ格好良くは無かったが・・・。


「イッ。イイイー、――――――」(ふむ。そういう事なら、――――――)


「――――――イイッ、イー・・・!」(――――――今の内に、だな・・・!)


「むむ・・・?なんですか?何をしようとしているのですか、貴方達は・・・!?」


「お、おい・・・!手に持っているソイツはなんだ!一体俺達に何をしようと・・・・・・!?」


そんな中で、ザッと足音を立てながらシャークブルーとイーグルイエローの傍へと立つ戦闘員一号、二号。

彼等のその手には、そこそこの大きさの箱が乗せられていた。


「イイッ、イー・・・。イイイーイーイー。イイイッ。イッイイー、――――――」(何をするか、ね・・・。決まりきったことを聞いてくれるなよヒーロー。俺達は悪の組織の戦闘員。その俺達がこの状況でやる事といったら、――――――)


「――――――イッ、イイー。・・・イイッ、イッイー!」(――――――当然、ヒーローへの追撃でしょう。・・・という訳で、プレゼントをドーン!)


ヒーロー二人の目の前に手に持つ箱を置いた戦闘員達は、二人に箱の中身が見える様にパカリと蓋を開けた。


「ヒッ!?虫!虫ぃ!?イヤァァァアアア!?私、虫だけはダメなんですぅぅっ!?!?」


「グッハァァッ・・・!?おまっ、それ、魚じゃねぇかぁ・・・!?ヤメロォォ!俺は昔フグの毒に中って以来、魚全般は見るだけで駄目ナンダヨォォーーーッ!?」


シャークブルーの目の前に置かれた箱の中には大小様々な虫がウジャウジャと(うごめ)き、イーグルイエローの目の前に置かれた箱の中には数匹の魚が悠々と水の中を泳いでいた。


「イッ!イイッ、イーイー。イー、イイー」(ふっ!お前等ヒーローの弱点は、大体がリサーチ済みだ。こんな事もあろうかと、事前に用意していたんだ)


「イーイイー!イイーイィー・・・!イイッ、イイイッ・・・!」(ほーれほれ!お前等の大嫌いなモノだぜぇ・・・!存分にその目で見て、その耳で聞きやがれ・・・!)


「「ギャァァァアアアアッ!?!?」」


「「「む、惨い・・・!」」」


嫌々と首を横に振るシャークブルーとイーグルイエローに箱の中身をぶちまける戦闘員一号と二号。

仲間ではあるがそんな鬼畜な所業を行っている戦闘員達を見て、俺は思わずドン引きした。

ついでに言えば、まだ戦闘を行っていなかったウルフブラックとバッファローグリーンも俺の声に被る様に呻いており、自分達も負ければ似たような目に遭うのかと体を震わせていた。







「よ、よし・・・!な、何とかまた戻ってこれたぞ・・・!」


ちなみにその頃のライオンレッドはと言うと。

シャークブルーの放った【ダブルシャークウォーター】の余波で発生した濁流に流された後、なんとか再び戦闘地点近くにまで戻って来ていた。

とは言え、その全身はびしょ濡れの泥まみれとなっており、その見た目は薄汚れたピッチリスーツとマスクを被った怪しい人物にしか見えなかったが。


「こ、今度こそ皆のいる場所に戻って――――――」


『――――――【イーグルカッター】!』


ヒュオンッ!ヒュゥオォンッ!


「・・・・・・って、今の声はイエローの奴か・・・?イーグルカッターって、アイツの持つ技にそんなもんあったっけ?――――――というか、何だこの音?風切り音?」


流される前と同じように、再び岩で出来た段差をよじ登っていたライオンレッド。だがその時、彼の耳に風を鋭く切る様な音が響いて来た。


ヒュウゥゥゥンッ・・・!スパッ!スパパッ!


「なっ・・・!?木々が切り倒されて・・・!――――――っていうか、こっちに落ちて来たぁ!?」


そして次の瞬間には目の前にあった複数の大木がスパッ!と上下に分かたれ、その上半分がライオンレッドに向けて傾き落ちて来た。


「お、ぉぉぉおおおーーーっ!?」


ドドドドドドゴゴゴゴゴゴッ!!!


憐れ、ライオンレッドは幾つもの大木の下敷きとなってしまったのであった。


「お、重い・・・!重いぃぃーッ・・・!?」


とは言え、彼は死んでいなかった。無駄に頑丈な体とスーツの頑強性によって大したダメージは負っていなかったからだ

しかし、どうやら大木の重みで体を起き上がらせることが出来ないらしく、じたばたと両手を振り回す事は出来るものの、その体は進退窮まっている状態であった。


「コ、コンチクショーッ・・・!?」


その姿はまるで陸の上にいるウミガメ。体を動かせないライオンレッドは手足を振り回しつつ、悔しげな声を上げるのであった。







「まさか、あの三人がやられるなんて・・・・・・」


「レッドはともかく、パワーアップをしていた筈のブルーとイエローがやられたのは欲望に忠実過ぎたからだろうな・・・」


「油断とも言う」と呟くウルフブラックに思わず「えぇー・・・」となるバッファローグリーン。


「まあ、あのアルミィという猫耳女怪人の方もそこそこの実力があるからこそ、アイツ等を倒せたわけなんだが・・・・・・」


「それじゃあ、油断さえしなければオラ達は負けないという事だか?」


「その通りだが・・・」


「なら今度はオラが行ってくるべ。お師匠様に教わった技を、今こそ見せてやるだ・・・!」


フンスッ!と荒い鼻息を吐き出したバッファローグリーンはノッシノッシと前に歩き出した。


「今度はアンタが相手かい?」


「んだ。この戦いでオラの力を存分に味わうといいだよ・・・!――――――ただその前にアンタに言いたいことがあるだ」


「言いたいこと・・・?」


バッファローグリーンが近づいてくることに気付き、不敵な笑みを浮かべながら彼と向かい合うアルミィ。だが、そこでバッファローグリーンが口にした言いたいことがあるという言葉に首を傾げた。


「何をしたいのか知らないけど。言いたいことがあるなら言いな。その間は待ってやるよ」


「ではお言葉に甘えて。――――――この勝負、オラが勝ったら結婚を前提としたお付き合いをしてください!!」


「・・・・・・はぁ?」


アルミィに向けて角度九十度の綺麗なお辞儀をするバッファローグリーン。

それを見て、そして彼の言葉を聞いたアルミィは、思わず「何言ってんだコイツ?」と首を傾げた。

そして彼等の会話を外野として聞いていたディーアルナ達もまたバッファローグリーンの発言にびっくりしていた。


「イッ。イイイッ・・・!?」(やだ。なんてピュアな子・・・!?)


「イーイイー」(今時珍しいくらいの純朴さだな)


「イッ。・・・イー、イイーイーイー?」(だね。・・・というか、どうしてそんな人があんな変態共と一緒にいるんだろう?)


「「イッ」」(それな)


「というか、ヒーローが怪人と付き合って大丈夫なのか?」


「イイーイーイイイッ」(大丈夫じゃないですかね?過去に前例がないわけじゃないですし)


「えっ、そうなの?」


「イーイー、イイイーイーイー、イイッ。イイイッイー」(今も活躍しているヒーロー達の中には、敵対していた組織の幹部と現在進行形で付き合っている人もいますから、無い話じゃないですよ。お茶の間にニュースで放送されたこともありますし)


「マジで!?」


戦闘員達の話に、「お茶の間にまで!?」と驚きを顕わにするディーアルナ。

そんな彼女達を他所にバッファローグリーンとアルミィの会話は続く。


「オラだって男だ。レッド達の様に女性が大好きだ。でも、性欲に任せて女性を辱めようとする気は無いだよ」


お辞儀の体勢から頭を上げたバッファローグリーンはまっすぐアルミィの瞳を見た。


「だからこそ、真正面から堂々と、本気で、全力で、挑ませてもらうだよ・・・!」


「へぇ・・・!」


バッファローグリーンの力強い視線を感じたアルミィは感心したような声を漏らしながら頷いた。


「さっきまでの奴らと違って男気の感じられる奴だねぇ。いいよ。その提案に乗ってやろうじゃないか・・・!」


「ほ、本当だべか・・・!?」


「ちょっ・・・!?そんな安請け合いしちゃっていいの、アルミィ・・・!?」


「大丈夫。問題ないですよ、姐さん。要は勝てばいいんです、勝てば!」


スパァンッ!と掌に拳を叩き付けるアルミィ。

バッファローグリーンの方もまた彼女と向かい合いながらブンブンと振り回しながら気合を入れていた。


「ブッフゥ~!負けた後でやっぱり無しは聞かないだよ・・・!」


フンスッ!フンスッ!と荒い鼻息を吐き出しつつ片足で地面を蹴り擦るバッファローグリーン。


「行くぞぉぉ!!【バッファローラリアット】ォォォ!!」


「真正面からの突撃かい!言葉通りだけど、それはアタシとの戦いでは下策だよ・・・!【キャットサンダー】!」


勢いよく地面を蹴って駆け出したバッファローグリーンは、片腕を大きく広げ、その腕をアルミィにぶつけようと迫る。

だが、その動きはアルミィからしたら隙だらけにしか見えず、がら空きとなっている胴体に向けて電撃を纏わせた右腕を叩き付けた。


バチバチバチッ!


「へっ!これでコイツも終わ――――――」


「フンヌラバッ!」


バッファローグリーンの体に【キャットサンダー】が当たり、バチバチと感電したのを見て倒したと思ったアルミィ。

だがしかし、その後でバッファローグリーンが気合の掛け声と共に動きだし、大きく振り被った右腕をアルミィに叩き付けようと振り下ろしてきた。


「――――――どわぁ!?」


その攻撃をギリギリで回避したアルミィ。その後彼女は、急いでバッファローグリーンの下から距離を取った。


「な、なんで・・・!?確かに【キャットサンダー】が当たったはず・・・!?」


「・・・・・・確かにアンタのその技は強力だべ。対策を取ってなければ感電して動けなくなっちまう。でも、その技はオラには効かねぇ・・・。なぜなら、受けた電撃をそのまま地面に流しているからだべ!」


「は、はぁ!?」


腰に手を当て、胸を張りながらそう語るバッファローグリーンにアルミィは驚きの声を上げた。


「――――――【大地流電】。オラの体は昔お師匠様に鍛えて貰った事で電気が通り辛い体になっているだ。だから地面に接していれば、体の表面を通って勝手に電気が流れて行くだよ」


「なんだそのアタシにとって不利な能力は!?」


何とも都合のいいアルミィにとっての理不尽の出現。

それに対してアルミィが思わず叫んだのも無理もない事だろう。


「イイッ・・・。イイーイーイイー・・・!」(なるほど・・・。電気を大地に逃がす”アース”の特性が体に発現しているという事か・・・!)


「イッ、イイイッ、イーイイーイー・・・!?」(というか、人体でそれが出来る様になるなんて、いったいどんなことをすれば可能になるんだよ・・・!?)


「・・・・・・イッ、イイッ?イーイー、イイー?」(・・・・・・って、あれ?どうしたんですか、ディーアルナ様?)


「うーん・・・、いや、そのな?アイツのあの技、どっかで見た覚えがあるなぁと思って」


また彼女の後ろで見ていた戦闘員達もまた驚きの声を上げていた。

ディーアルナだけは何故かバッファローグリーンの使ったその技に首を傾げている様であったが・・・。

そんな彼等彼女等を他所に、バッファローグリーンとアルミィの戦いは再開する。


「つまり、オラに電撃は効かないという事だべ!――――――食らうべぇぇ!【大地怒天】!」


「いや、それ、唯デカい岩を投げてるだけ・・・!うぉぉ・・・!?」


ズンッと地面に両腕を減り込ませ、そして引き抜くと同時にその手に全長一m程ある岩を握っていたバッファローグリーンは、それをアルミィに向かって勢いよく投げた。

それに対してツッコミを入れつつも、回避するアルミィ。だが、次から次へと飛んで来る岩を避けるのが精いっぱいとなってしまい、反撃に転ずることが出来なかった。


「ってか、一体どこからそんだけの数の岩を取り出しているんだい!?」


「ブフゥ~・・・!これもお師匠様から教わった技だべ。地面の土とか砂、砂利などを掌に集めて圧縮し、岩を形作る技。それが【大地怒天】だべ!」


「つまりそれって、地面があれば無制限に球となる岩を作り出せるという事じゃないか・・・!?」


「いやいや、さすがに無制限ではないべ。圧縮にはエネルギーを使うから、オラの持っているエネルギーが尽きたらそれでお終いだべ。――――――だからその前に決着をつけるだよ!フンヌラバァッ!!」


遂には全長二十m程の巨大な岩を地面から取り出したバッファローグリーン。

そして彼は全身を使ってその巨大岩を持ち上げた。


「いやいや待て待てそれは流石に死ぬから!?」


「これが本当の【大地怒天】だぁぁっ!!」


「う、嘘ぉぉぉーーー!?」


「ア、アルミィィィーーーッ!?」


信じられないと言わんばかりに悲鳴を上げるアルミィ。彼女の危機を感じて手を伸ばすディーアルナ。

しかしその叫びも虚しく、バッファローグリーンの投げた巨大岩は彼女の下へと地響きを立てて落ちるのであった。






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