表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/155

ミッション41 VS木造の巨人・・・!!



『アハハハハハッ!良い!良いぞぉ!!ビームの威力はある程度想定はしていたけれど、予想以上だった!これなら例えどれだけ邪魔者が来ようとも簡単に蹴散すことが出来る!』


玉崎千鶴は木造の巨人と成った元『三幻亭』―――現『三幻亭ロボ』の肩で仁王立ちしながら高笑いをした。

何故彼女が三幻亭ロボなんてものを運用できているのか、その理由は彼女の過去が関係していた。

玉崎千鶴の生まれは大工の家系であり、彼女の父である『玉崎浩介(たまさきこうすけ)』は凄腕の大工として一部の界隈ではかなり有名な人物であった。

彼女もまたそんな父の影響を受けて大工を目指し、年を経るごとにその腕前をメキメキと伸ばしていた。

そんな時だ、彼の親子に悲劇がやって来たのは。

ある日、玉崎浩介がとある人物―――後にそれが西條睦月であることを知った―――から依頼を受けて一軒の別荘を建てた。その出来栄えは娘である玉崎千鶴が家族の贔屓目を無くしたとしても、素晴らしいと言う感想が出て来るものであった。

だが、建築を依頼をした西條睦月はその別荘を見て「何だこれは!?」と驚きと非難の声を上げた。

何でも外見そのものは要望通りであったのに、内装が当初彼が計画していた物とは違っていたのだそうだ。

玉崎千鶴は、何故父がそんなことをしたのか初めは分からなかったが、父の話を聞くうちに納得した。

どうやら西條睦月が用意した設計計画書が、どう考えても欠陥的部分が多過ぎる代物であったらしい。

下手をしたら完成すら出来ずに途中で全て崩壊してもおかしくないほどだったとのこと。

玉崎浩介はさすがに建築家としてこんな安全性が何もない建物を作る訳にはいかないと、依頼を受ける段階で西條睦月に建設計画書の作り直しを要請したのだそうだ。

しかし、西條睦月はそれに聞く耳を持たず「いいから作れ!」の一点張り。依頼を拒否しようにも彼は親交のあった企業からの紹介で来ており、無下に断ればその企業の顔に泥を塗りかねなかった。

そしてどうすればいいのかと考えた末に玉崎浩介は計画書の通りには作らない事を決断した。

それは建設を行う従業員の安全やこれから別荘を使用する依頼人の安全を考えての決断であった。

それから玉崎浩介は西條睦月が用意した設計計画書をもとに自ら図面を引いた。安全性と耐久性を基準に、構造上無理となる部分を排し、且つ依頼人が文句の言えないような物を作ろうと。

だが、西條睦月は激昂した。別荘の出来栄えの問題ではなく、彼の用意した設計計画書が使われなかったことが問題であったと。

それ以来、父玉崎浩介の下に仕事がやって来ることが無くなった。親交のあった企業からも手を引かれ、閑古鳥が鳴く事となった。

後に西條睦月が根回しをして、玉崎浩介の下に仕事が来なくなるように工作を行っていた事が判明したのだが、当時の玉崎浩介と玉崎千鶴にとっては知らぬことであり、結局親子は大工の職を廃業して路頭に迷う事となった。

そんな時である。親子が真柴伝助達に出会ったのは。

西條睦月という人物の行ってきた所業を知り、自分達がそんな人物のせいで路頭に迷う羽目になったことを知った親子二人は復讐心に駆られ、復讐の計画を練っていた真柴伝助達に協力することを決めたのであった。

親子が協力したのは建築関係であり、切り札となるべきモノを作る事であった。

真柴伝助達復讐者は怪人と成れることが出来る様になったものの、それでもその大半の戦闘力は敵となるであろうヒーロー達には及ばない。その為、ヒーロー達を蹴散らせる切り札となるべきものが必要となり、それが『三幻亭ロボ』であった。

元々の所有者であった女将の三幻寺豊子の許可をもらって魔改造を施すことで完成した作品。起動すれば並み程度の力しか持たないヒーローであれば、簡単に蹴散らせると確信できる代物であった。・・・が、そこで一つの問題が浮上してしまった。

三幻亭ロボを起動運用する為の動力炉が無かったのである。

切り札として完成したのに使えないのでは意味がない。

親子はどうすれば動かせるようになるのか頭を働かせ、そして一つの答えを導き出した。

「そうだ。俺達怪人が動力と成ればいいんじゃね?」と。

実際計算上では怪人の持つエネルギーを動力に用いれば、三幻亭ロボを動かすことは可能ではあった。しかし、同時に動力炉となった怪人の肉体は原型を保てず霧散してしまう事も発覚していた。

その為親子含めた仲間内でどうするかと話し合いをすることとなり、そこで、ある人物が自ら動力に成ると名乗りを上げた。

その人物とは、三幻亭ロボを作り上げた〝玉崎浩介〝であった。

何故彼が名乗りを上げたのかというと、その理由は玉崎浩介の体が三幻亭ロボが完成した時点で既にまともに動かせなくなるほどボロボロの状態であったからだ。

怪人が持つKエネルギー。それも”魂の怪人化”によって得た無尽蔵とも呼べる大量のエネルギーに、肉体そのものは人間のモノであった彼の体が耐え切れなかったのである。

それ故に、遠からず自分の体が動かせなくなることを予期していた玉崎浩介は、自らが動力炉と成ることを決意し、娘である玉崎千鶴含めた仲間達もその決意を尊重し、この出来事があってようやく三幻亭ロボが完成したのである。


『行くぞ、三幻亭ロボ!行くぞ、お父ちゃん!森に逃げ込んだ西條の糞野郎を見つけ出して、血祭りにしてやろうじゃないか!』


――――――ォォォォオオオオオオオオオオッ!!!


玉崎千鶴の声に呼応するかのように両腕を振り上げる三幻亭ロボ。

いっそ咆哮にも聞こえそうなほどの駆動音が高らかに鳴り、そして振り上げたその両腕を眼前に広がる森へと叩き込んだ。







ドドォォンッ!という轟音が鳴り響き、大量の土砂が舞う。

舞い上がった大量の土砂は空中に一時的に留まり、そこからゆっくりと放物線を描きながら地面に向けて落ちて行く。

その中で俺は、行動不能になっていた戦闘員二号と三号を両脇に抱え、一号を背中に背負いながら地面を駆けていた。

ちなみに、さすがに浴衣姿では走り辛かったので、既に怪人ディーアルナへと変身し、戦闘服を着用済みである。


「う、うぉぉぉおおおおおおおーーーっ!?!?」


背後から迫り来る大量の土砂の雨に埋もれては敵わないと、俺は全速力で走る。


「イイッ、イー・・・!」(す、すんません、ディーアルナ様・・・!)


「イイイーイー・・・!」(動けないこの身が恨めしい・・・!)


「イーイイー・・・!!」(役立たずでごめんなさい・・・!!)


「そんなこと、今はいいから!!」


俺に体を運ばれる中で意識を取り戻した戦闘員達は口々に謝って来る。

俺はそれに対し、謝らなくていいからと声を掛けた。


「イイッ・・・!イーイー、イイー・・・!?」(う、うう・・・!女の子に背負われるなんて、男としてのプライドが・・・!?)


「イーイー?イイー、イーイーイイイー?」(ディーアルナ様は元男だけどね?と言うか、それを言ったらサイボーグの僕達に性別なんてあるのかって話になるんだけど?)


「イーイイーイー?・・・イィッ!?」(そこは気持ちの持ちようと言う奴じゃないか?・・・って、前に落石がぁっ!?)


全速力で足を動かして駆けていると、目の前に全長二mはありそうな落石が落ちてきた。

落下軌道的に自分達のすぐ目の前に落ちてくることに焦る戦闘員達。だが、俺はそんな彼等の慌てる声を無視して空中へと跳び上がり、落石に向けて勢いを乗せた蹴りを叩き込んだ。


「せいやぁっ!!」


ドガンッ!


「イイー!?イーイイー!!」(蹴りの一発で落石粉砕!?ディーアルナ様スゲェ!!)


「イイイー!?」(その細足のどこにそんなゴリラパワーが!?)


「ゴリラパワー言うな!?」


地面に着地し、戦闘員達の罵倒にも聞こえそうな称賛に文句を言いつつ再び駆け出す。


「――――――ふぅ・・・、ここまで来れば大丈夫か?」


かなりの距離を走り、爆心地となった場所を見渡せる小高い山の頂上に辿り着いた俺は、戦闘員達を地面に下ろして一息吐く。

地面に下ろされた戦闘員達は、俺に運ばれている最中に動ける程度にまで回復できたようで、フラフラとしながらも立ち上がった。


「イーイーイイイー、イイーイーイー。」(舞い上がっていた土砂も全部地面に落ちたみたいだし、少なくとも生き埋めになる事は回避できたと思うぞ。)


「イー・・・、イーイー。イッ・・・」(だなぁ・・・、ここまで離れたら一安心だとは思う。だが・・・。)


「イー。イイッ、イー・・・・・・」(うん。問題は、アレだよねぇ・・・・・・。)


そう言いながら同じ方向を見る戦闘員達。

彼等の視界の先には、未だに元気に暴れ回っている三幻亭ロボの姿があった。

巨大な腕を振り回しては乱立する木々を薙ぎ倒し、吹き飛ばし、更には顔 (?)に当たると思われる部分から出る極太ビームによって荒地と成った大地を焼き尽くしていく。

その様は、まるでどこぞの世紀末の破壊神の様であった。


「イッ、イイッ?」(アレ、どうするよ?)


「イー・・・、イーイー。イイーイー、イーイー・・・!イイイーイー・・・!!」(うーむ・・・、あんなに暴れ回られると迂闊に近づけんな。あの巨体から繰り出される一撃も厄介だが、あのビームもかなりヤバい・・・!アレを食らったら一発で蒸発間違いないぞ・・・!!)


「アレはもう放っといて、帰ってしまうか?」


「イーイーイイー、イイイー?」(ディーアルナ様の意見には賛成だけど、それをする訳にはいかないと思いますよ?)


「イー。イイー、イー・・・。」(俺達の今回の任務。バイオクリスタルの調査、か・・・。)


「イーイー、イイー、イーイイイイー?」(忘れてはいなかったけど、アイツにああも暴れられていると、調査なんてさすがに出来ないぞ?)


「イーイーイー・・・。イイッ、イーイー、イイイー。」(それにバイオクリスタル事態も無事かどうか・・・。いくらバイオクリスタルがある程度頑丈ではあると言っても、あの熱量のエネルギーを食らえば、破壊されてしまう可能性は高い。)


「イイッ、イイイーイー。イー・・・。」(例え破壊されなくても、何かしらの影響を受けて別の何かに変質する可能性も高いけどね。そうなったら任務失敗になるんだろうなぁ・・・。)


「はぁ・・・」と溜息を吐く俺達。

簡単な調査任務だった筈が、どうしてこんなことになってしまったんだろうか?

そう思いながらガックリと肩を落としていると、不意に視界の端にとても強く輝く光が見えた。


キュピンッ!ズゥゥァァァアアアアアアアアッ!!!


「・・・うん?どわったぁ!?」


「「「イ゛ィーッ!?」」」(ギャァァアアアアーッ!?)


それが、三幻亭ロボの極太ビームだと気付いた俺と戦闘員達は、急ぎその場から転がるように飛び退いて回避した。


「あぶっ、あっぶなぁぁぁっ!?もう見境い無くなってんじゃないのか、アレ!?」


「イ、イイッ、イイイー!イッ、イイイッ、イーイイー!?」(も、最早、危機的状況と言っても過言じゃない!というか、アレを早く如何にかしないと、帰る途中でビームを食らいかねないぞ!?)


「イッ、イイイッ・・・!イー!」(こ、こうなったら仕方がない・・・!秘密兵器を使うよ!)


「・・・イッ?イイッ・・・?」(・・・へっ?秘密兵器・・・?)


戦闘員三号の秘密兵器という発言に、「なにそれ?」と首を傾げる俺達。

だが、戦闘員三号はそれを無視してブレスレットの電子ストレージを操作し、彼の言う秘密兵器とやらを取り出した。


「イッイイー!イイッ、イーイー、イイー。イーイイイー!」(じゃじゃーん!これこそ、僕とブレーバー様が考え、発明した秘密兵器。その名も『増幅バスター君マークⅢ』!)


戦闘員三号が取り出したそれは巨大なバズーカ砲であった。

砲身の長さは約一五〇cm。口径は二〇cm程。それが二門連なるようにくっついており、例えるなら二連装バズーカ砲と呼べる代物であった。


「イイッ、イイイーイーイー、イーイイーイーイー。」(この『増幅バスター君マークⅢ』は、怪人の持つKエネルギーを増幅する機能が取り付けられていて、その増幅されたKエネルギーを砲弾として発射する事が出来るんだ。)


「いつの間にそんなものを・・・。」


「イイイッ。イーイー、イイイッイー。イッイー!」(こんなこともあろうかと。ちょくちょく暇を見ては、ブレーバー様と論議しながら兵器開発を行っていたんだよ。この増幅バスター君マークⅢもその一つなんだ!)


「イイッ、イー?」(これがあれば、あのデカブツを如何にか出来るのか?)


「イーイー。イッ、イイイッ・・・・・・。」(その可能性があるってだけだね。実はこれ、まだ試作品の段階で試射もまだ行っていなかったり・・・・・・。)


「イッ。」(オイコラ。)


「イッ、イイー?イーイー、イイイー?」(ちなみに、マークⅠとマークⅡはどうなったんだ?マークⅢがあるってことは、それらも作っていたんだろう?)


「・・・・・・イッ、イイッ、イー!」(・・・・・・さて、それじゃあディーアルナ様、お願いします!)


「イッ、イーイー!」(いや、答えろよ!)


戦闘員一号と二号の追及を無視して、「はい!」と増幅バスター君マークⅢを渡してくる三号。

反射的に受け取りはしたものの、思わず何とも言えない顔になってしまう。

正直、戦闘員一号が言っていたように、俺もこれより前の試作品の事が気になるのだが、現在の危険な状況がそんなことを聞く暇を与えなかった。


キュピンッ!ズァァァアアアアアアーッ!!ズァァァアアアアアーーーッ!!


「ギャァァァアアアアアアアッ!?」


「イイイッ!?」(今再びの極太ビームッ!?)


「イイイーッ!?」(しかも今度は二連射ぁ!?)


「イイィィィッ!イーイイーッ!?」(イヤァァァッ!丸焼きになっちゃうぅ!?)


再び迫って来た極太ビーム、それも二連射を必死になって俺達は躱した。

威力も太さも先ほどの一撃よりも弱く細かった。おそらく連射性能を上げるためにそちらを犠牲にしたのだろう。

・・・って、今掠った!今チリって鳴ったぁぁっ!?


「ああもう・・・!この際しょうがない!コイツに掛ける!」


俺は増幅バスター君マークⅢを構え、その砲口を三幻亭ロボへと向けた。







『チッ・・・!西條の奴め、一体何処に隠れやがった!?これだけ暴れ回れば、死んでいても可笑しくない筈なのに!・・・クソッ!』


玉崎千鶴は三幻亭ロボの肩の上で悪態を吐く。

彼女が苛立っている理由は、彼女が自ら口にした通り、目標である西條睦月が見つからない事が原因であった。

辺り一面が焼け野原となって何もかもが無くなるくらいに暴れ回れば、気付かないうちに目標の人物を死なせていそうだと思うのだが、しかし玉崎千鶴はそれはないと確信を持っていた。

その根拠は〝玉崎千鶴自身〝と、〝父玉崎浩介を動力源として動いている三幻亭ロボ〝の存在であった。

”魂の怪人化”によって怪人となった彼等、彼女等は、怪人としては破格の、無尽蔵とも言えるエネルギーを保有してはいるが、しかしやはり無限の存在なんてモノはこの世には存在しない。

”魂の怪人化”とは、探偵ヒーローの向井秀一が話していた通り、本来は魂だけの存在が怪人化する現象の事を言い、悪霊や怨霊の類がこの現象を起こしやすいと言うのも、彼等は恨み、妬み、怒り、等といった強い負の感情を常に抱いているからだ。

無尽蔵のエネルギーというのも、魂の状態で抱いている思いや思考と言ったモノが負の感情のそれに凝り固まっていることで半永久的にKエネルギーが生成され、供給されているからである。

だが、この”魂の怪人化”で怪人と成った存在には、ある一つの共通する弱点が存在している。

それは彼等が抱いている負の感情の発生原因が取り除かれる事。

”魂の怪人化”とは己に課す一種の契約か、もしくは誓約に近いモノであり、復讐心や心残りといった原因が無くなるとKエネルギーは生成されなくなって、悪霊や怨霊達の”魂の怪人化”は維持できなくなる。そして最終的には普通の魂の状態に戻るか、もしくは成仏することになるのだ。

玉崎千鶴達の場合は西條睦月に対する恨みや憎しみ、復讐心などの気持ちを原因としてはいるが、”魂の怪人化”による怪人化は半ば真柴伝助に引き摺られた形でのもの。

なので復讐を達成するか、もしくは西條睦月が死ねば、自動的に彼女達の怪人化は解かれ、普通の人間に戻ることになる。

つまり逆説的に言えば、怪人化が解かれていないという事は、西條睦月もまだ生きていることを意味しているのである。


『・・・・・・ん?アレは、なんだ・・・?』


キョロキョロと西條睦月を探して視線をさ迷わせていた玉崎千鶴は、ふと自身の視界の端で小さな光が輝いているのが見えた。


『もしかして、西條の奴はあそこにいるのか?・・・お父ちゃん、方向転換!』


ここからそこそこの距離がある小高い山の頂上。そこに一粒の黄色い光が輝いているのを目にした玉崎千鶴は、三幻亭ロボに指示を出した。


『目標、あの小高い山の頂上!【目 (?)からビーム】、発射用意!』







「Kエネルギー充填率、五十%・・・、六十%・・・。」


『増幅バスター君マークⅢ』を肩に背負い、片手で砲身を支え、もう片方の手でトリガーを握り、地面に片膝を着きながら照準を三幻亭ロボへ向ける。

そして自身のKエネルギーを増幅バスター君マークⅢへと注ぎ込む。

付属しているチャージゲージはかなりの速度で上昇しており、ものの数秒で一気に半分近くにまで充填された。


「イッ、イイッ!イイイーイー!」(よし、充填効率は良好だ!これなら後十秒くらいでチャージが完了する!)


「・・・イッ?イッ。イイッ、イーイイー?」(・・・ん?おい。なんかあのデカブツ、またこっちを見ていないか?)


「イイッ!イイッ、イー!?」(思いっきりガン見してるよ!しかもまた極太ビームを撃つつもりだぞ、アレ!?)


増幅バスター君マークⅢのチャージが半ばを超えた辺りで、三幻亭ロボもまたこちらに顔を向けているのに気付いた。

その顔に当たる部分には光が収束し始めており、今すぐにでも俺達に向けて極太ビームを発射しそうであった。


「イイッ!イイイッ!?」(どうするよ!ねえ、どうするよ!?)


「イッ・・・!イーイイー・・・!」(くっ・・・!こうなったらバリアを展開して・・・!)


「イッ、イイッ!イーイーイイイー!」(無理だよ、二号!僕達の持つバリアではあの熱量のビームは防げない!)


「イイッ、イーイー!?イイイッ、イー!!」(じゃあ、どうすればいいんだ!?このままじゃ、全員お陀仏だぞ!!)


「イイイー・・・!?イイッ、イーイイー・・・!?」(ここから移動したらどうだ・・・!?今は攻撃を回避して、別の地点からブッ放せば・・・!)


チャージを一度中断しようと提案する一号。だが、そんな彼に対して俺は、申し訳なさそうな顔を見せる。


「ごめん。それ無理。コイツ、結構なジャジャ馬でさ・・・!エネルギーを半ばまで注いだ時点で、今すぐにでも暴発してしまいそうな状態なんだ・・・!そうならないように集中しているせいで、正直動けそうにない・・・!!」


「「イッ!?」」(マジでっ!?)


「イッ。イイッ、イーイーイイイー!・・・・・・イーイー?」(あ、しまった。そういえば、エネルギーの調節を行う機構を、増幅バスター君マークⅢに取り付けるのを忘れていたよ!・・・・・・ごめんね?)


「「イイィィーーーッ!?!?」」(マジでぇぇーーーっ!?!?)








『・・・エネルギー充填完了!』


小高い山の頂上でディーアルナ達が慌てふためいていた頃、その一方で彼女達に狙いを付けていた玉崎千鶴達の方は、今この瞬間にも三幻亭ロボのビームを放とうとしていた。


『それじゃあ行くよ、お父ちゃん。今度こそ、あの男の息の根を止めてやるんだ!【目 (?)からビーム】、発――――――』


ドゴォォォンッ!!――――――オオオォォォォッ・・・!


『――――――ッ!?なっ!い、一体何が・・・!?』


ビーム発射の指示を出そうとした瞬間、突如爆発音が鳴り響き、三幻亭ロボの姿勢が崩れた。

四つん這いの体勢となった三幻亭ロボの背部から大量の煙が上がっているのが見えた玉崎千鶴は、急ぎそちらを覗き込む。


『嘘だろう!?姿勢制御用の骨格フレームが破壊されただって・・・!?あそこは三幻亭ロボの体を支えられるように一際頑丈に作っていたのに・・・!』


上がっている煙が三幻亭ロボの背部真ん中。人間で言うと背骨に当たる部分から出ていることを知った玉崎千鶴は驚愕を顕わにする。


『損傷具合から爆発は内部じゃなくて外。でも、一体誰が・・・・・・?』


「その答えについては、こう答えてあげましょう。()()()()()()()、と。」


『・・・ッ!?』


人を小馬鹿にするような声を耳にした玉崎千鶴は、バッ!と顔を上げる。


『馬鹿な!?何故アンタが生きているんだい・・・!?』


「その反応・・・。どうやら僕が彼等に負けると思っていたようですね?ですが残念。僕はこうして生きていますよ。彼等を倒してね。」


彼女が見上げた視界のその先にいたのは、探偵ヒーローシルバリオンであった。

シルバリオンは背中のブースターを使って空中に浮遊しながら腕組みをしつつ、悠々と玉崎千鶴を見下ろしていた。


『くっ・・・!?・・・だったら、私達がアンタを倒してやるさ!お父ちゃん。戦闘モードB!』


――――――ォォォォオオオオオオンッ!ガシャガシャガシャガシャッ・・・!


玉崎千鶴の指示を受けてその巨体を別な形に変形させる三幻亭ロボ。

体の前面を地面に付け、両腕を回転変形させて背中側に、両足もまた回転変形させる。

そして完成した形はまるで、一つの体に四つの首を持つ蛇の姿をしていた。


『変形完了!多頭竜モード!所謂、固定砲台的な奴だけど、火力と言う点ではさっきの人型形態よりもかなりアップしているよ!』


「ほう・・・。それは素晴らしいですね。」


「はっ!今更驚いても遅いよ!さあ、ここをアンタの墓場にしてやるよ!お父ちゃん、目標あの銀色の奴!照準固定!【多頭多弾(だだだだ)焼却砲(しょうきゃくほう)】――――――!」


「・・・ですが、何か忘れていませんか?」


キランッ!ズォォォォオオオオオオオオオオーーーッ!!!


『――――――発、シャバァァアアアアアッ!?!?』


変形した三幻亭ロボがシルバリオンへと照準を固定し、今まさに砲撃を行おうとしたその瞬間、背後から途轍もなく巨大なエネルギー光線が放たれた。

その大きさは三幻亭ロボに匹敵する程であり、それは三幻亭ロボと玉崎千鶴の体勢を大きく崩すのであった。






次回投稿は10月5日を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ