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ミッション40 炎の復讐者達・・・!? 5



大小様々に輝く星空。

所々にいくつもの分厚い雲が浮かび、風に吹かれて流れていく。

そんな雲の隙間からまんまるとした綺麗な満月が顔を覗かせ、真っ暗な大地が月の光によって照らされる。

そしてその光は、今俺がいる旅館の浴場にも降り注がれ、突如として目の前に現れた巨大な黒い塊の正体を暴いていく。

黒々と輝く毛皮に覆われた体は丸々として、しかしどこか力強さを感じさせ、その四肢は四足歩行をする形をしており、モリモリとした強靭な筋肉がついていることが人目で分かった。

顔面は大きな鼻が前に突き出ていて、口元から上向きに伸びている鋭く尖った二本の牙が月の光を反射している。

その姿はまさに野性味溢れる猪。・・・ただし、その大きさは全長四m超えと、通常の個体と比べて異常な程大きい。普通ではあり得ないくらいの大きさである。


「ブフゥゥーーー・・・!」


「な、なんだ、コイツは・・・!」


俺は目の前の巨体を目にして思わず戦慄する。

だって、こんな馬鹿でかい猪がいるとか普通は思わないじゃん!というか、アレは猪と定義していいのだろうか?

巨大猪は浴場の中心部分で立ち止まり、舌をベロリと出しながら鼻息荒く呼吸をしている。

背中越しではあったが、その様子はまるで呼吸を整えている様にも見えた。


『イ、イィ・・・!イ、イイッ、イー・・・!』(う、うぅ・・・!ディ、ディーアルナ、様・・・!)


「ん?」


半ば呆然としながら猪の様子を注視していると、何処からか声が聞こえて来た。いや、声と言うよりは思念波と言うのが正しいだろう。

それが聞こえて来た方向である先程巨大猪がぶち壊して開いた仕切り板へと視線を向けると、そこには見知った人物達が地面に倒れ伏していた。


「戦闘員達!?なんでここに・・・!?確か別のポイントで調査をしていた筈じゃ・・・?」


『イ、イイー、イーイー・・・!イイイー・・・!』(じ、実は、調査中にあの巨大猪に襲われまして・・・!追いかけられている内にここまで・・・!)


俺のその問いに答えたのは、三人の中で唯一意識を保っていた戦闘員一号であった。

ダメージ具合は他の二号や三号よりも重そうではあったが、存外にタフなのか、幾らか回復してきているからなのか、気絶している二人よりもまだ元気そうに見えた。


「そ、そうか・・・。ダメージの具合はどうだ?結構ボロボロに見えるが、動けそうか?」


『イ、イイー・・・!イイッ、イーイイーイー・・・。』(い、今はちょっと無理そうです・・・!もうしばらくしたら、動ける程度には回復すると思いますけど・・・。)


プルプルと体を震わせながら答える戦闘員一号に、「そうか・・・。」と頷く。


「ブフゥーッ・・・!」


戦闘員一号からの状況報告を簡潔に聞き終えた時、一際大きく巨大猪が鼻息を吐く。

そしてゆっくりと振り返り、こちらへと赤く染まった鋭い視線を向けて来た。


「ひ、ひぃぃぃ~~~!?!?」


「ん!?って、オッサン・・・!?」


その時、突然後ろから野太い悲鳴とドタドタドタといった足音が聞こえて来た。

視線だけ振り向いて見ると、オッサンが涙をちょちょ切れさせながら駆け出した姿が見えた。


「うぉぉおおおっ・・・!死んで、死んで堪るものかぁぁああああっ!!」


『・・・イッ?イ゛ィィィッ・・・!?』(・・・え?うぼあぁぁぁっ・・・!?)


「い、一号ォォー!?」


オッサンはその太った体からは想像もできない速さで壊された仕切り板の向こう側へと駆けて行く。

その足の速さは思わず感嘆としてしまう程に速く、丁度進路上の地面に倒れ伏していた戦闘員一号を轢き飛ばしながら、気が付いた時には彼の姿は仕切り板の向こうに広がる森の中へと消えて行ってしまった。


『イ゛ィッ・・・!?』(グフッ・・・!?)


「ぶ、無事か、一号・・・!?」


『・・・イ、イイ、イー・・・!イッ、イーイイー・・・。イッ・・・イー・・・・・・イッ・・・!』(・・・い、今ので、ダメージが限界突破・・・!す、すみません、ディーアルナ様・・・。後は・・・お願いします・・・・・・ガクッ・・・!)


「ちょっ!マジか!?」


戦闘員一号はオッサンに轢かれた際にダメージ量が限界突破したらしく、地面に倒れ伏しながら気絶してしまった。

倒れ伏した戦闘員達を助けに行きたかった俺だったが、その行動は此方を睨みつけている巨大猪によって妨げられる。

どうやら巨大猪は目の前にいる俺の事をかなり警戒しているようで、鼻から荒い息を吐きだしながら俺の一挙一動を観察し、此方が不用意な行動を取ろうものなら即座に突撃をしてくる体勢を取っている。

ちなみに、先程走り去って行ったオッサンの事も目で追っていたようではあったのだが、取るに足らない相手だとでも判断したのか、すぐに視線を外していた。


「ブフゥー・・・!ブフゥー・・・!」


「くっ・・・!」


俺は怒涛の如く次から次へと発生する事態に半ばパニックになりながら、今後の対応を考える。

最優先にすべきは、戦闘員達を連れてこの場及びこの温泉旅館からの脱出。その障害となりそうな存在は目の前の巨大猪と、未だ温泉旅館内を徘徊しているであろう怪人達。

その内怪人達の場合は然程気にしなくていいと思われる。

何故ならば、彼等の目的は飽く迄オッサンこと西條睦月であり、それ以外にはさしたる執着を見せてはいないからだ。

なので、後は目の前にいる戦意ありまくりの巨大猪を如何にかすれば、ここから脱出することは容易となるだろう。

巨大猪の戦闘能力は未知数ではあるものの、その巨体から繰り出されるパワーは相当なものであることは予想出来る。


ズズゥゥゥンッ・・・・・・!!


「・・・ん?」


「・・・ッ?」


戦闘を行って倒すか、それとも不意を突いて逃走するか。巨大猪と睨み合いながらどう行動すべきか考えていると、突然足元が揺れた。

揺れが起こったのは一瞬で、その大きさは然程大きくなかった。

最初は地震かと思った俺だったが、そこから然程間を置かずに連続して揺れと地響きが鳴り始めた。


「・・・ッ!?」


「な、なんだこれっ!?一体何が・・・!」


「・・・ッ?―――ッ!?ブヒィィィーーーッ!」


連続して起こる揺れと地響きに俺が戸惑っていると、巨大猪は突然踵を返して走り出した。ここに入って来た時とは別の場所の仕切り板を破壊しながら。


「・・・へっ?あれ?・・・逃げた?何で・・・?」


俺は此方に背中を見せながら走り去って行く巨大猪を見て戸惑う。

突然走り出した事に驚いたという事もあったが、俺は巨大猪が走り出す直前に見せた反応の方が特に気になった。

巨大猪は俺の方を見て、――――――いいや、どちらかと言えば()()()()()()()だろうか?まるで驚きに目を見開くような仕草を一瞬見せていた。


「アイツ、一体何を見て驚いて・・・・・・・・・え゛っ!?」


巨大猪が一体何を見て驚いたのか、それを確かめるために後ろに振り向いた俺は、そこにあった光景に思わずあんぐりと口を開けてしまった。







少し時を巻き戻す。

ディーアルナ達が怪人と化した津川昌子と霧埼美緒の二人と対峙していた頃。別の場所では一つの戦いが決着を迎えようとしていた。


「【シルバースライサー・(かすみ)三段切り】・・・!」


ザシュッ!ザシュザシュッ!!


『・・・うっ・・・がはっ・・・!?そ、そんな・・・、三人掛かりで戦って、勝てないだなんて・・・!・・・・・・・・・うっ!?』


バタリッ・・・。


『グッ・・・!?ハッ、マジかよ、ありえねぇだろう・・・。探偵よぉ・・・。お前のその強さ、普通じゃねぇぞ・・・!最早、ヒーローの領域を、超えて・・・・・・!?』


バタリッ・・・。


探偵ヒーローシルバリオンが放った必殺技。その技を受けて全身を切り刻まれた三幻寺豊子と斉藤五郎は、

血反吐を吐き出しながら力尽き、地面へと崩れ落ちる。

倒れ伏した彼等の肉体は、少しして緑色の炎が一際激しく吹き出し始め、炎が消えた後には人の形をした影しか残ってはいなかった。


「・・・さて、これでチェックメイトですよ。真柴伝助さん。」


『グゥゥッ・・・!?』


二人の怪人の最後を横目で見ていたシルバリオンは、彼等の姿が消えた後にスッと目の前に視線を向ける。

そこには、荒い息を繰り返しながら片手片膝をついている怪人化した真柴伝助がいた。

全身が土と泥で汚れ、身に纏っているライダースーツが所々切り裂かれている様は、戦闘の壮絶さを物語っている。

ライダースーツから露出している頭蓋骨や両手足は相変わらず骨と化してはいたが、戦闘による疲弊の為か既にその身には緑色の炎は燃え盛っていなかった。


『ナ、何故ダ・・・。何故オ前ハ、俺達ノ邪魔ヲスル・・・!?オ前達(ヒーロー)ハ、悪ヲ倒ス存在ダロウ・・・!?復讐ノ為トハイエ、悪ヲ倒ソウトスル俺達ノ行為ヲ、ドウシテ妨ゲル・・・!』


シルバリオンに向けて声を荒げる真柴伝助。その声色は「何故?どうして?」という疑問と悲痛の思いに彩られていた。

だが、そんな彼の目の前に立ち、彼の事を見下ろしているシルバリオンからの返事は酷く冷静なモノであった。


「随分とおかしなことを言いますね?元ヒーロー連合協会の、それも上層部に近い位置にいた貴方なら知っている筈でしょう?僕達ヒーローの本来の役割は()()()()()()()()()()()という事を。」


『グゥゥッ・・・!ソ、ソレハ・・・!』


真柴伝助はシルバリオンのその言葉に、(こうべ)を垂れて二の句が告げなくなる。


「・・・まあ、とは言っても、貴方の気持ちが分からないわけではありません。実際に西條睦月がしてきたことは、最早見過ごすことは出来ないレベルです。彼には後で、それに見合った罰を与えねばなりません。ですが、だからと言って今彼に死なれてしまうのは、僕にとってはマイナスでしかない。」


頭を横に振り、どこか疲れた様な溜め息を吐く。

アーマーマスクで隠されて表情は分からないが、その雰囲気からおそらく(しか)め面をしているであろう。


「それに僕はヒーローとして、怪人となった貴方を、貴方達を見逃すわけにはいかない。()()()()()()()()()()()()()()()にも、ね・・・。」


シルバリオンは手に持っていた【シルバースライサー】をスッと音もなく動かし、真柴伝助の眼前へと突き付ける。


「最後になりますが、貴方に一つ聞きたいことがあります。貴方の首についている索条痕・・・、それは一体なんですか?貴方のソレは事件の初めから・・・、それもよく思い返してみれば事件が発生する前から存在していた。貴方はその索条痕を、何時、何処で付けたのですか?」


「それだけが、今回の事件で分からなかったんです。」と言うシルバリオン。

それを聞いた真柴伝助は「ハッ・・・!」と笑いながら息を吐く。


『コレカ・・・。コイツハ十年前ノ、()()()()()()()()()()()()()()()()サ・・・!』


「怪人と成る時?」


『アア、ソウダ。十年前ノ”バシュライト”ガ起コシタ事件ガ収マッタ後、事件ニ巻キ込マレテ死んだ妻ノ咲子ノ痕跡ヲ消ソウト、西條睦月ノ指示ヲ受ケタ奴ノ私兵ガ自宅ニ乗リ込ンデ来タ。コノ索条痕ハ、ソノ時俺ヲ始末シヨウトシタ奴等ノ一人ニヨッテ付ケラレタンダ・・・!』


「・・・なるほど、そこまで聞けばある程度予想出来ます。貴方はその時に怪人と成ったのですね?」


『ソノ通リダ・・・。首ヲ絞メラレ、死ニ()ク間際ニ俺ハ思ッタ。俺達ニコンナ非道ナ行イヲシタ西條睦月ノ事ヲ許スモノカト、例エ死ンダトシテモ必ズ復讐シテヤル、ト・・・。ソウ思ッタ瞬間、俺ハ気ガ付イタラ怪人ト成ッテ、周リノモノ全テヲ焼キ尽クシテイタ。』


真柴伝助は、地面についていた片手を地面の土を巻き込みながら握りしめ、体を震わせる。


『俺ハアノ男ガ許セナイ・・・!俺ダケデナク、妻ニマデ手ヲ出シヤガッタアノ糞野郎ノ事ヲ許セル筈ガ無イ・・・!!俺ハ、西條睦月ヲ殺ス!殺サネバナラナイ!!ダカラ、邪魔ヲスルナ、ヒィィーーロォォーー!!!』


俯かせていた体を勢いよく起き上がらせて立ち上がる真柴伝助。

その眼孔の奥には轟々と燃える緑色の炎が輝いていた。


『死ィィィネェェェーーー!!!』


地面についていた片手をシルバリオンに向かって振り上げる。

その骨の掌の中には、握り締める時に掴んでいた土くれが存在し、真柴伝助はそれを着火剤代わりにして骨の手に緑色の炎を噴出させ、その炎をシルバリオンに向けて放とうとした。


「無駄です。」


ザシュッ!


『グアァァァッ!?!?』


だがその動きは、彼の次に取るであろう行動を予測し、身構えていたシルバリオンの一撃によって止められた。


「貴方達の境遇は同情出来るし、可哀想だとも思いますが、だからと言って手心を加えるつもりはありません。”ヒーローとしての役割”を全うするのに優しさなんてものは必要ありません。むしろ邪魔です。本来なら、そんなものを胸に抱きながら戦うなんて甘いとしか言いようがない。」


『アッ・・・グゥッ・・・!?』


地面に倒れ伏した真柴伝助へと近づくシルバリオン。


「だけど、その気持ちを抱えながら、誰よりもヒーローとして活躍していた人物を僕は知っています。だからこそ、僕もその人に習って貴方にこう言いましょう。」


そしてシルバリオンは【シルバースライサー】を振り上げ、


「”後の事は全て僕に任せてください”、と。」


真柴伝助に振り下ろした。







シルバリオンは、地面に倒れて緑色の炎を全身から激しく噴き上げている()()()()()()()()()を視界に納めつつ、溜め息を一つ吐いた。


「はぁ・・・。これでようやく、一番の危険要素は如何にか出来たか・・・。後は、どこかに逃げて行った西條睦月を回収するだけだな。あの人の事だから、多分まだ死んではいないと思うけど。――――――おや?」


手に持っていた【シルバースライサー】を仕舞い、目的の人物を探そうとしたシルバリオン。

だが、彼が踵を返そうとした瞬間、突然地面から強い振動と地響きが聞こえ始めた。


「むっ・・・?これは一体・・・?どうやら音の発生源は『三幻亭』からの様ですが、何が起こって・・・・・・。」


震源地は分からないものの、地響きの発生源が『三幻亭』からであることに気付いたシルバリオンは、背を向けていた『三幻亭』に急ぎ振り向く。

そして、そこで見た光景に思わず絶句した。


「・・・・・・冗談でしょう?」


シルバリオンの視界の先にある温泉旅館『三幻亭』。その旅館が驚くべきことに、徐々に上へと浮き上がって行く光景がそこにはあった。

その動きは人が俯せの状態から立ち上がろうとしている様子に似ており、()()()()立ち上がったそれ(三幻亭)を見たシルバリオンは、まるで木造の巨人の様だと思うのであった。







ガシャコンッ、ガシャコンッ、ゴゴゴゴゴッ、ゴォオン、ゴォオン、


俺の目の前で『三幻亭』と呼ばれていた温泉旅館が、機械的な駆動音を立てながらその形を変えていく。

三幻亭という建物は、形としてはカタカナのコの字を描くように建っているのだが、そこから分離、変形、合体とでも呼べそうな動きをしていき、最終的には木造の巨人―――というか、巨大ロボ?―――とも言うべき存在へと至った。


「な、な、な、なにこれーーーっ!?!?」


巨人へと姿を変えてしまった三幻亭を見た俺は開いた口が塞がらなかった。

まさか温泉旅館が、こんなとんでもない物になるなんて想像もしていなかったからだ。

・・・というか、あの旅館の内部構造は本当に一体どうなっていたのだろうかと、思わず内心で首を傾げる。

旅館の中にいた時は普通の木造建築だと思っていたので、まさかあんな機能があるだなんて想像もしていなかった分余計にその疑問が強く出てくる。

あと、先程の巨大猪が突然逃げ出したのも、多分この三幻亭が変形していく様を見て、怖くなったからではないかと思われる。

おそらく野生の勘的なモノで危険性を感じた為、逃げるという選択をしたのだろう。今この時ばかりは、その野生の勘が少し羨ましく感じられるが。


―――ォォォオオオオオオオッ・・・!!


一体の巨人と成った三幻亭は全身から駆動音を響き渡らせており、それはまるで咆哮とも聞こえそうなモノであった。


『フハハハハハハッ!!どうだ!これが私と私の父が生涯を掛けて作った変形合体マシン、『三幻亭ロボ』だぁ!西條睦月め、覚悟しろぉ!絶対に、絶対にぃ!逃がしはしないぞぉーーー!!!』


ふとそこで、駆動音に混じりながら一人の女性の叫び声が聞こえて来た。

その声の主は木造の巨人――――――三幻亭ロボと成ったそれの左肩辺りに立っており、「アーハッハッハッハッ!」と高笑いをしていた。

俺はその人物が何者なのかを理解して驚きの声を上げた。


「嘘っ!?あれって、玉崎さん!?」


それはあの事件現場にて最初に死体 (のフリをしていた)となっていた真柴さんを発見した仲居さんの『玉崎千鶴』さんであった。

彼女の姿もまた、旅館にいた他の人達と同じように怪人化しており、体の各所から緑色の炎を噴出させている。

彼女は三幻亭ロボの肩の上でグルグルと腕を振り回しながら指示を出す。


『三幻亭ロボ、前進せよ!』


オォォォオオオ・・・!ドスン・・・!ドスン・・・!


玉崎千鶴からの指示。それを受けた三幻亭ロボはその巨大な両足を一歩ずつ前へと進ませる。

その動きはその巨体からは想像も出来ないほど滑らかで、まるで人間の取る動きと然程大差ないように思えた。


『いよぉーし!初運転ながら快調な滑り出しだねぇ!これなら思う存分に暴れられそうだ!』


「・・・って、動かすの初めてだったの!?」


嘘だろう!?と思う反面、初めてであの巨体をあそこまで動かせるなんて、どんな技術を使えば出来るのかと目を驚きに見開く。

だが、距離と高度的な問題で俺のツッコミが聞こえていないのか、玉崎千鶴は人差し指を立てながらビシッと腕を伸ばす。


『よっしゃ!次はアレを試すよぉ!目標、眼前の森!照準固定!必殺、【目 (?)からビーム】発射ぁぁっ!!』


ゴゴゴゴゴッ・・・!キュピンッ!ズオオオォォォォオオオッ!!!


「なぁぁぁあああああああーーーっ!?!?」


玉崎千鶴は自分達の眼前に広がっている森に向かって指を差しながら三幻亭ロボに指示を出す。

指示を受けた三幻亭ロボは、ゆっくりと森に頭部前面を向け、次の瞬間には目 (?)に当たると思われる大きな窓枠部分から極太のビームを発射した。

ビームは森の一角に着弾した後に盛大な爆発を引き起こした。

その爆風の余波で発生した衝撃波は凄まじく、着弾地点から大分離れていた筈の俺の体を軽く吹き飛ばすほどであった。






次回投稿は9月30日を予定しています。

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