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ミッション38 炎の復讐者達・・・!? 3



「「――――――脱出!!」」


向井さんこと探偵ヒーローシルバリオンと怪人達の戦いの火蓋が切って落とされ、彼等の戦闘によって部屋が破壊される瞬間、俺とオッサンは全力疾走で部屋の中から脱出した。

ドカーン!という爆音と共に大量の粉塵が周囲に舞い、その中を突っ切るようにして俺達は廊下に出ると、そのまま旅館の玄関に向かって走り出した。


「危なかった・・・!?マジで危なかった・・・!!っていうか、なんでこんなことに巻き込まれてるんだ、俺は!?」


「それについては、全力で私も同意する!!」


「いや、オッサンは同意しちゃダメだろ!アンタが元凶なんだから!!・・・っていうか、オッサン足早ッ!?えっ、嘘、俺の足に追いつけてる!?」


「ふははははっ!これでも学生の頃は陸上に所属していたからね・・・!昔は『俊足の禿鷹(はげたか)』と呼ばれていたのだよ!」


「それ鳥じゃん!足関係ないじゃん!しかも何故に禿鷹!?」


「ふっ・・・、賭け事で相手の金を、尻の毛が毟り取れるまで奪っていたことからその名が名付けられたのさ・・・!」


「アンタ、学生の頃からしょうもない奴だったのかよ!?」


「だが・・・!さすがに・・・!寄る年波には勝てんな・・・!もう・・・!息が切れてきた・・・!!」


「体力切れ早ッ!?まだ三分も走ってないぞ!?――――――ッ!?」


俺と並走して廊下を走っていたオッサンは、次第に息が切れ始め、走る速度が目に見えて遅くなっていった。

「ゼヒュー・・・!ゼヒュー・・・!」と呼吸をしている様子から疲労困憊気味であることがすぐに分かった。

それを見た俺は思わず驚きの声を出したのだが、その瞬間廊下の先で緑色の光が揺らめいている事に気付いて立ち止まる。


「うっそだろ・・・!?」


「ヒ、ヒィッ・・・!?そ、そんな・・・!?」


そこには一目では数えきれないほどの怪人ーーー従業員だった人達ーーーが、群れとなってこちらへと迫って来ていた。

姿形は怪人化した斉藤五郎達と同じで、体には緑色の炎の模様が描かれたボディースーツを着て、頭からは緑色の炎を揺らめかせている。

そして彼等が見せている表情は完全に怒りのそれであり、その眼光は真っ赤に染まる程血走っていた。


『『『西條殺す・・・西條殺す・・・西條殺す・・・!』』』


「ヒ、ヒィィィィーーーッ!?!?」


「ちょっ!?これマジで洒落じゃすまないんだけど!?」


彼等が口ずさんでいる言葉を聞いたオッサンは頬に両手を当ててムンクの悲鳴のような表情になり、怪人の群れが大挙して来る光景を見た俺は頬を引き攣らせた。


『『『見つけた・・・見つけた・・・見つけた・・・ウォォォオオオオオーーーッ!!!』』』


彼等はオッサンの姿を視界に入れると、雄叫びを上げながらこちらへと駆け出した。


「ヒィィィッ!?来た!来たぁっ!?」


「この・・・!?」


悲鳴を上げるオッサンを尻目に、俺は丁度近くにあった四脚の小さな物置台を掴むと、怪人達に向かって投げた。

自分達に飛んで来るそれを目にした怪人達。その中でも一番先頭の怪人が邪魔だと言わんばかりに掌から緑色の炎を放射して燃やし尽くす。


「せいぃやっ!」


ゴッ!


「――――――ッ!?」


とはいえ、難なく迎撃されることは初めから分かっていた俺は、物置台とそれを燃やした緑色の炎を隠れ蓑に急接近。一番先頭の怪人に助走をつけたドロップキックをお見舞いした。

ドロップキックを食らった怪人の体は九の字に折れてすぐ後ろにいた他の怪人と衝突。先頭が押し戻されることで後続の怪人達は強制的に足を止められた。


「もう一丁ッ!」


ドカッ!!


『――――――ッ!―――ッ!?!?』


俺は体勢が崩れてたたらを踏んでいる怪人達へ更なる追撃を行う。

床に着地した後すぐに体勢を整え、立ち上がる勢いそのままに一歩踏み込んで、中国武術の八極拳、その技の一つである鉄山靠(てつざんこう)に似た体当たりをぶちかます。

それを受けた怪人達は完全に体勢を崩し、ドミノ倒しの様に床へと倒れ込んでいった。


『『『オ、ォォォオオオオッ・・・・・・!?!?』』』


床に倒れ込んだ怪人達は何とか起き上がろうとするのだが、その動きはてんでバラバラ。

一人の怪人が体を起こそうとするが、隣にいる怪人が身を捩ることでバランスを崩して倒れ込み、またそれとは別の怪人が折り重なっている怪人達の山から這い出ようとするが、体の一部が他の怪人の体と絡まっているようで、思うように抜け出せないでいた。


「よし!今のうちに逃げよう!」


「ま、待ってくれ!私を置いていかないでくれぇ!?」


通ろうとした道が怪人の群れで埋まってしまっている為、別の道から行こうと踵を返し、先程とは反対方向へと走る。

怪人達が倒れ込む光景を目にして呆然としていたオッサンは、走り出す俺に気付いて、「置いていかれて堪るかぁ・・・!?」と言わんばかりの必死さで、俺の後ろを追いかけて来た。


「いや、着いて来るなよオッサン!?アンタが着いてきたら、怪人達も追いかけて来るだろうが!!」


「ふざけるな!奴らの狙いは私なんだぞ!こんな所で一人になったら間違いなく死んでしまうわ!!」


「自業自得じゃん!めっちゃ自業自得じゃん、それ!!アンタの普段の行いが悪いからだろうが!!」


「何を言う!?この品行方正な私のどこに悪い所があると!?」


「それ本気で言ってんの!?」


互いに言い合いをしながらダダダダダッ!と廊下を走る俺とオッサン。

右へ左へ道を曲がったり、時には大広間を直通したり、更には通り道の途中で立ち塞がって襲い掛かって来る怪人達を躱し、殴り飛ばしたりしていく。


「よし!この廊下をまっすぐ行けば玄関に辿り着く!」


「よ、ようやく、脱出できるのか・・・!おや・・・?」


そしてようやく旅館の出口近くまで辿り着いた俺達は、一度立ち止まって呼吸を整える。

その最中、オッサンは何かに気付いたような声を出した。


「おお・・・!あの服装・・・!あそこにいるのは警察官ではないか!彼等に保護して貰えば助かるぞ!おおーい!」


オッサンは玄関口へと進みながら手を振る。

それを横目で見た俺は、一体誰に手を振っているのかと思い、オッサンの視線を追いかけた。

視線の先には旅館の玄関口があり、そこには警察官の制服を着た人物が複数人いて、どうやらオッサンは彼等に向かって手を振っている様であった。


「・・・って、バカ!?やめろ!手を振るな、オッサン!!」


「むっ?何を言っているのだ、君は?ははぁん・・・!さては、自分が置いていかれると思ったのだな?なに安心したまえ。ここまで私を案内してくれた礼に、君も一緒に連れて行ってあげようじゃないか!」


「違う!さっきの事をもう忘れたのか、オッサン!?」


「むっ・・・?」


「現場責任者だった斉藤警部は警察官じゃなくて怪人だったんだぞ!だったらその部下だった人たちも・・・!!」


”彼等も怪人化もしれない”。そう言いきろうとした時、玄関口にいた人物達は俺達がいる事に気付いたらしく、こちらへと駆け足で近寄って来た。

そして次の瞬間には全身が緑色の炎に包まれ、怪人の姿へと変貌した。


『『『オォォオオオオーーーッ・・・!!』』』


「ドヒィィィーーーッ!?!?」


ドオォーンッ!


「ブヒィィッ!?――――――グヘッ!?・・・ヒ、ヒィィィーーーッ!?!?」


怪人へと変貌した彼等の姿を見たオッサンは、情けない悲鳴を上げる。

オッサンが急いで方向転換して逃げようとした時、怪人達の中の一人が拳大ほどの一発の炎弾が発射。オッサンに直撃こそしなかったものの、床に着弾して爆発し、オッサンの体は爆風によって吹き飛ばされた。そして俺のすぐ傍で腹這いになって墜落したが、すぐに起き上がって逃げるために駆け出した。

その遁走劇は無様でこそありながら、しかしいっそ感嘆しそうになる程見事な逃げっぷりであった。


「よいっしょぉ!!」


『『『――――――オォッ!?』』』


そんなオッサンの様子を横目で見つつ、近くに置かれていた折り畳み式簡易テーブルを怪人達へと投げつけて足止めする。

簡易テーブルをその身に受け止めた怪人達は、まるでコントの様にそれを抱えながら揃って転倒したが、俺はそれを見届けることなくオッサンの後を追う。


「しかし、参ったな・・・。玄関が駄目なら別の所から脱出しないといけないけど、非常口や裏口へと続く道は他の怪人達で埋まっているし、怪人達をブッ飛ばす事が出来れば簡単に脱出できそうだけど、誰が見ているか分からない状況下でそれをするのはさすがに不味いし・・・・・・。」


現状一般人を装っている俺が怪人を倒したとして、それをもし誰かが見ていたとしたら「一体アイツは何者なんだ!?」という事になる。

少なくとも悪の組織に所属する怪人だとは気付かれないと思うが、ヒーロー連合協会の人間や組織だって動いている怪人達が入り乱れる中で下手なリスクを背負う事はやめた方が良いだろうと思う。

廊下を走りながら内心でそんなことを考えていると、視線の先で四つん這いとなっている人影が見えた。


「うっ・・・!ぐすっ・・・!?い、一体どうしてこんなことに・・・・・・!」


「・・・・・・あ、オッサンいた。」


その四つん這いとなっている人影はオッサンであったようで、彼はその体勢のまま涙をポロポロと流していた。


「・・・・・・・・・」


「無言で通り過ぎようとしないでぇ!?」


俺は敢えて無視して歩き去ろうとしたがそれを見逃すオッサンではなく、「絶対に逃がさない!」という気持ちが分かるほどの勢いで俺の片足に腕を回して縋りついて来た。


「ちょっ!?放せ、オッサン!何処触ってるんだ!っていうかそこに縋りつくな!見えるだろうが!?」


「逃がさん・・・!絶対に逃がさん・・・!!私を置いてけぼりにしないでくれぇっ!?」


下着が見えそうという羞恥心から片足に抱きついて来たオッサンを引き剥がそうとする俺と、一人になったら絶対死ぬからという危機感から放そうとしないオッサン。

最初は自分の身体能力であれば簡単に引き剥がせるだろうと思っていたのだが、想像以上に強いオッサンの力に思うように引き剥がせず、膠着(こうちゃく)状態となってしまった。

・・・・・・というかこのオッサン、本当に力が強いなオイ!?火事場の馬鹿力的な奴か!?


『『『オオォォォオオォォォ・・・・・・』』』


『『『オオォォォ・・・・・・!』』』


「げっ・・・!?」


「ヒィッ!?で、出たぁ!?」


そうこうしている内に、俺達を追って来ていた怪人達が廊下の前後から現れた。

その総数は数えるのも馬鹿らしくなる程で、全力戦闘が出来ない現状でこの数と戦うのは自殺行為でしかない。


「くそっ・・・!どこかに逃げ道は・・・・・・!」


周囲を見回して逃走経路を見つけようとした俺は、すぐ近くに「湯」という字が描かれた暖簾(のれん)が掛かっているのを目にする。


「あれは・・・!確かここの温泉は露天風呂だった筈・・・。あそこから外に出れば脱出できるかも!」


「な、なに!?今何と言ったかね!?脱出出来る方法があるのか!?」


「ああ!・・・という訳で、先に行っとけオッサン!」


「なに?待て、一体何を・・・ぬぅわぁぁぁああああああーーーっ!?!?」


俺は半身となってオッサンに掴まれている方の足を大きく後ろへと振り被り、暖簾(のれん)が掛かっている入口に向けて勢いよく蹴り出した。

当然俺の足に捕まっていたオッサンの体もその勢いに引っ張られ、悲鳴を上げながら飛んで行く。


「ギャフンッ!?ゴフッ!?ガフッ!?ォォォオオオオオッ!?!?」


蹴り出された勢いのままある程度滑空したオッサンは、その真ん丸に太った体で数回程バウンドし、床をゴロゴロと転がって温泉の脱衣所の中へと入って行った。

俺も転がって行くオッサンを追いかけて温泉の脱衣所の中へと入る。


「い、いきなり何をするんだっ!?思わず今日の夕飯を吐きそうになってしまったではないか!?」


「文句を言っている暇があったら走ったらどうだ、オッサン!」


「むぅっ・・・!?」


男湯の暖簾が掛かった方から顔を出したオッサンが文句を言って来るが、それを一喝して黙らせる。

オッサンの体を押しのけながら男湯の脱衣所を通るのは時間の無駄なので、女湯の脱衣所に向かう。

俺が女湯の方へ向かう様子を見たオッサンは、置いていかれては堪らんと慌てて俺の後を追いかける。


「よし・・・!それじゃあ、ここから・・・・・・ッ!?」


脱衣所を通り、温泉から立ち上る白い湯気に覆われた浴場へと足を踏み入れた俺。

だがそこで、二つの人影を目にして足を止める。


「お待ちしておりました。」


「おつかれー!ここまでよく頑張ったねえー!」


二つの人影の正体は、オッサンの秘書であった『津川昌子』さんと『霧埼美緒』さんであった。

彼女達はそれぞれ頭を下げたり、元気よく両手を振ったりしている。


「おおっ!?無事だったのかね、君達ぃ!」


俺の後に続いて浴場へとやって来たオッサンは、彼女達の姿を目にして「良かった、良かった・・・!」と喜び、安堵の表情となる。

先程の一件で逸れてしまった部下、もしくは愛人?と無事に合流できたのだからその喜びもひとしおだろう。


「あははー!()()()()無事だよー!」


「当然です。私達が()()()()で死ぬはずがありませんから。」


だが、そんなオッサンとは対照的に、彼女達からはあまり再開できたという喜びの感情が感じられない。

津川さんはニコニコといつも通りの笑顔を見せてはいたが、その身に纏っている空気はどこかうすら寒く、ジッと俺達の事を見ている霧埼さんの瞳は、冷徹といった印象を抱くほど冷え冷えとしていた。

そんな彼女達の様子を見て、彼女達の正体が何なのかを察した俺は「あっ、そういうこと・・・!」と声を漏らしたのだが、俺の後ろにいるオッサンは全く気付いていない様子で彼女達に声を掛ける。


「よし!ならばとっととこの旅館から逃げようではないか!君達には先導を頼むぞ!ここから無事に脱出出来た時には、上層部と交渉して君たちを昇進させてやろう!」


「申し訳ありませんが、西條睦月さん。私達が欲しいのはそんなものではありません。」


「そうだねー。私達はそんなことをするためにここで待っていた訳じゃないからねぇー。」


「・・・ぬぅ?」


自身の予想していたものとは違う彼女達の返事を聞いて訝しむオッサン。

この時点でようやく「あれ?なんかおかしいような?」と気付き始めたようではあったが、察しが悪すぎだろう。


「どうやらまだ気付いていないみたいだから教えちゃうけど、私達は別にアンタの味方じゃないよ?」


「どちらかと言えば、貴方の命を狙う側の人間です。」


「ぬふぅっ!?」


彼女達の話を聞いたオッサンは驚愕の声を出す。

・・・・・・というか、なんか気持ち悪い驚き方だな。


「おかしいとは思わなかったのですか?貴方を陥れようとした斉藤さん達の計画。アレはそもそも、貴方がこの『三幻亭』にいることが前提でした。」


「この旅館に行こうと誘ったのが私達だったってこと、忘れちゃったのかな?」


「フヒッ!?そ、そういえば・・・!?」


オッサンは彼女達の口にした内容に心得たりでもあったのか、顔面から冷や汗をダラダラと流す。


「そしてもう一つ。犯行時刻に貴方が部屋にいない状況を作り出したのも私達です。」


「だけど、そう都合よくあの時間帯に貴方が部屋の外に出るとは限らない。だから私達は一つの策を講じたんだよ。」


「さ、策、だと・・・?」


にんまりと笑う二人と、それとは対照的に更に冷や汗をドバドバ流すオッサン。


「ええ、そうです。夕食が届いた七時頃。私は貴方の食事にある薬を盛りました。それがこれです。」


霧埼美緒は胸元から細長い小さな袋を取り出した。


「これは利尿剤と言って、排尿を促す薬、つまりはオシッコが出やすくなる薬です。これを使って貴方がトイレに行きたくなるように仕向けました。」


「なん、だと・・・!?だ、だが、それだけでは私を部屋の外に出す事は出来ないだろう・・・!トイレは部屋の中にも・・・・・・待て。あの時は確か昌子君がトイレに籠っていた筈。・・・・・・ハッ!?まさか!?」


「察しの通り!アンタが部屋のトイレを使う事が出来ないようにする為にワザと籠っていたんだよ!」


「ブヒィィィイイイイイッ!?!?」


楽しそうに、嬉しそうに答え合わせをする津川昌子。そして豚のような驚きの悲鳴を上げるオッサン。

俺は彼女達の語った策に、思わず感心してしまった。


「なるほど・・・。ある意味見事な協力連携プレイと言うべきか。まさか警察に扮した元警察官達と、旅館経営者の女将さん達と、秘書の彼女達がグルだったなんて、さすがにそこまでは思い至らなかった。」


ついでに言えば、旅館にある共用トイレは西と東の二ヶ所あり、オッサン達の部屋は旅館の東トイレに近い位置にある。

となれば、トイレを探すオッサンが近くにある東トイレに向かうのは必然的と言っても差し支えないだろう。


「・・・っていうか、自分の秘書まで敵だったなんて、オッサン味方いなさすぎじゃね?」


「マジでオッサン総アウェイな状況だったんだな・・・!」と呆れた声が漏れる。

その呟きを聞き、そしてまさかの真実を知ったオッサンは、「オボボボボボボボッ!?!?」と頭を抱えながら悲鳴なのか泣いているのか分からない声を上げていたが。


「真実を。絶望を知った気分はどうですか?ですが、この程度ではまだ終わりませんよ?――――――この時を・・・、この時を首を長くして待っていたんです。あの日からずっと、ずっと・・・・・・!」


「本当に辛かったなぁ・・・。触りたくもない豚オヤジに媚びて媚びて媚びまくって・・・。好き勝手に体を触られるのも我慢して・・・。でも、ようやく私達の望みが叶う時が来た・・・!」


彼女達はそう言うと、ゆっくりと片手で自身の顔を覆い隠し、そして勢いよく真横へと振り抜いた。

その瞬間、彼女達の体から緑色の炎が噴き出し、全身を包み込み、そして弾けた。

そこにいたのは全身を緑色の炎の模様が描かれたボディースーツを身に纏い、それぞれの髪に緑色の炎を纏わせた怪人となった二人の姿であった。


『西條睦月・・・!私達がアンタに味合わされてきた苦しみと絶望を、今ここでまとめて返す!!』


『お覚悟を・・・。貴方が私達の大切な人達の命を奪ったように、貴方の命は私達が奪ってあげましょう・・・!!』


彼女達はその美しい顔立ちを憎しみの色に染め、殺伐とした殺気を全身から滾らせながら、緑色の炎を噴出させている掌をこちらに向けて来るのであった。






次回投稿は9月20日を予定しています。

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