ミッション35 山奥の温泉旅館殺人事件・・・!? 4
向井さんの指示により事件現場である真柴さんの部屋へと集められた俺達事件関係者。
部屋に入った俺達は、シートを被せられた真柴さんの遺体の乗ったテーブルを中心に円を描く様に並んで立つ。
俺の立っている位置は部屋の入口近くであり、左隣には斉藤警部と、彼に襟首を掴まれている西條のオッサン。右隣には自称探偵の向井さんが立ち、俺達の向かい側には遺体を発見した『三幻亭』の女将の三幻寺豊子さんと仲居さんの玉崎千鶴さん。そしてオッサンの秘書の津川昌子さんと霧埼美緒さんが並んで立っていた。
「・・・っで、探偵さんよぉ。部下から被害者である真柴伝助を殺した犯人が誰かわかったらしいという話を聞いたんだが、俺達を集めさせたのはその犯人が誰かを名指しする為なのか?」
部屋に集まって開口一番に口を開いたのは斉藤警部。
口元はへの字を描き、両目は「ふざけた御託を語る様ならテメェもしょっ引くぞ・・・!!」と言わんばかりの鋭い眼光を向井さんに向けている。
ちなみに彼に襟首を掴まれているオッサンはと言うと、ダバダバと涙と鼻水を大量に流しながら向井さんに向けて縋る様な視線を向けていた。
その視線は「自分は犯人ではないよ。本当だよ。信じてプリーズ・・・!!」と言外に訴えているように見え、――――――というか、実際に訴えようとして斉藤警部に首キュッされて黙らされていた。
「そう焦らないでください、斉藤警部。・・・それと、一つ訂正を。僕が分かったのは事件の真相であって犯人ではありません。」
「なに?お前は何を言ってやがるんだ?事件の真相が分かったのであれば、犯人も分かったという事だろうが。」
「それにつきましては、これから語る僕の推理を聞けば、おのずと分かる事だと思いますよ。」
眉根を寄せて、鷹の如き眼光をより鋭くさせる斉藤警部に対し、ほんわかとした笑顔を浮かべながら漂々と受け流す向井さん。
・・・・・・肝が据わってるなぁ、この人。
「・・・さて、それでは事件の真相を語らさせていただきます。まず、初めに言っておきますが、僕の推理では現在容疑者と見られている西條さんは、おそらく犯人ではないと僕は考えています。」
向井さんのその一言に、その場にいた俺も含めた全員がザワついた。
「おい、探偵。この西條が犯人じゃないとはどういう意味だ・・・!」
「どうもこうも、調査をしていく中で僕が手に入れた証拠品がそれを証明しているんですよ。」
向井さんはそう言うと、コホンと咳払いを一つした。
「事情聴取の際に話に出ていた真柴さんと西條さんが言い争いをしていた現場について、僕が見た離れ近くにある十字の廊下と、従業員の方が聞いていた東トイレの二か所が確認されておりましたが、実はここ以外にもう一か所言い争いをしていた場所があったんです。・・・・・・そうですよね。西條さん」
ついっ、と細めた目をオッサンに向ける向井さん。
彼の視線を向けられたオッサンは、一瞬体をビクッ!とさせるも、ゆっくりと答え始めた。
「あ、ああ・・・。その通りだ。東トイレで彼と言い争いをした後で私はそこから立ち去ったのだが、彼は私の後を追いかけて来たんだ。”話はまだ終わっていない”とね。」
「・・・そして、真柴さんは貴方を自分の部屋に連れ込もうとした。そうですよね?」
「えっ!?あ、ああ。その通りなんだが、どうして君がそれを・・・?」
「実は、丁度その場面を僕は見ていたんですよ。まあ、遠かったので話の内容までは聞き取れませんでしたが。」
「そ、そうだったのか・・・!・・・はっ!では、その後の事も君は見ていたんだね!?」
「ええ。真柴さんが貴方の浴衣の袖を掴んで、それを貴方が力づくで振り払った様子も、もちろん見ましたよ。」
「おお・・・!」
向井さんのその証言を聞いたオッサンは、瞳を輝かせながら嬉しそうな声を漏らす。
・・・・・・というか、そんな目撃証言があったのなら、どうして事情聴取の時に言わなかったのだろうか?
当然その疑問は他の人たちも抱いたようであり、斉藤警部が代表となるように前に出ながら向井さんに質問した。
「おい、こらっ・・・!そんな目撃証言があることをどうして黙っていやがった・・・!」
「すみません。事情聴取の後で思い出したもので・・・。」
「アハハッ・・・!」と朗らかに笑う向井さん。
そんな彼に対して「笑い事じゃねぇだろう!!」と怒鳴る斉藤警部であるが、向井さんは相も変わらず漂々とした態度を崩さない。
「まあまあ、落ち着いてください、斉藤警部。ともかく、僕はその時の二人の様子を見ていました。そして、その時間は丁度午後七時十分頃。少し前に近くにあった時計を見ていたので間違いないですよ。」
そう語りながら笑みを浮かべていた向井さんは、そこで急に表情をスッと真顔に変えた。
「つまり、その時間帯まで真柴さんは生きていたことになりますし、西條さんはその後自分の部屋に戻りました。という事は、西條さんが真柴さんの殺害を行う事は不可能という事です。」
ピッと指を一本立てながら自身の推理を語りつつ断言する向井さん。
だが、それに斉藤警部は納得できないのか声を荒げる。
「・・・ちょっと待てや、探偵!本当にそう言い切れるのか?その場を離れた後で、再び被害者の部屋に行って殺したとは考えないのか?」
「いいえ、それは難しいでしょう。何せ西條さんの部屋には彼の秘書である津川さんと霧埼さんがいます。もし彼が部屋から出ようものなら彼女達がその様子を目撃していますし、そう証言するはずですよ。」
「くっ・・・!おいっ!そこの秘書二人!コイツは部屋に戻ってきた後、再び外に出たか!?」
向井さんの反論に悔しそうな反応をした斉藤警部は、津川さんと霧埼さんに声を掛ける。
だが、その二人の返事は首を横に振るものであった。
「ううん。西條のおじ様は帰ってきた後は、部屋から出てはいないよ。」
「次に部屋を出たのは夕食後。私達と共にです。」
「うぐっ・・・!?な、なら動機はどうだ・・・!この西條以外、真柴を殺す動機を持った奴なんていないぞ!」
「・・・・・・確かに。真柴さんを殺す動機を持った人物なんて、関わりのあった西條さん以外にいないでしょう。――――――ですが、逆ならどうです?」
「逆、だと・・・?」
「ええ、そうです。逆ですよ。」
「ふふふっ・・・」と再びにこやかな笑顔に戻る向井さん。しかし薄らと開かれたその瞳は笑ってなどいなかった。
「真柴さんが西條さんを殺そうとする動機なら十分にあるじゃないですか。彼は西條さんのことをとっても恨んでいたんですから。」
「・・・だが、真柴の胸に包丁が突き刺さっているんだぞ。つまりコイツは、誰かの手によって殺されたという事じゃないのか。」
「もう一つの可能性が考えられるじゃないですか。――――――自分で刺したという可能性が。」
「・・・・・・っ!?」
その言葉を聞いた斉藤警部は一瞬黙り、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「な、何故そんなことをする必要がある・・・!そんなことをするくらいなら、コイツを殺す方が簡単だろう。」
「別の目的があったと考えてみたら、どうです?」
「・・・なんだと?」
「真柴さんの目的が西条さんの命を奪うという事ではなく、犯罪者にするという事であれば、ある意味筋が通るんですよ。そしてそう考えると、事件に関係する目撃証言もまた、怪しく思えてくるんですよね。」
向井さんはシートが被せられた真柴さんの遺体に目を向けながら言う。
「東トイレでの西條さんと真柴さんの言い争いの際、個室でそれを聞いていた従業員ですが、本当に偶然でしょうか?彼がトイレにいる時にそんなことが起こるなんて随分と都合がいいと思いませんか?」
「・・・・・・何が言いたいんだ、お前は」
「そうですね。敢えて言うのであれば、今回の事件何かしらの計画性があったのではないかと思いましてね。」
「はっ・・・!何をバカなこと・・・。そんな根拠のなさそうな話、一体だれが信じるんだ?」
「根拠ならありますよ。」
向井さんはそういうと自らの浴衣の袖から長さ五cm程の細長い棒のようなものを取り出した。
彼が取り出したそれについていたボタンを押すと、棒の先にホログラムモニターが展開され、その場に一つの写真のような映像が映し出された。
「これがその根拠ですよ。これは丁度事件前に行われていた西條さん達と真柴さんとの言い争いの現場です。」
それはあの離れ近くで行われていたオッサンたちと真柴さんとの言い争いの現場の映像であった。
・・・・・・というか、この人何時の間にこんなものを撮っていたんだ?
「そして、皆さんここを見てください。西條さん達の後ろの通路の奥。そこに人がいる様に見えませんか?」
「・・・あっ!」
向井さんが指差したそこを見た俺は驚きの声を上げた。
確かに向井さんの言う通り、通路の奥に誰かが顔を覗かせているのが見えた。
「この人物が何者なのか?映像を拡大してみたことで判明しましたよ。・・・ねぇ、三幻寺豊子さん?」
「・・・っ!?」
向井さんが携帯端末を操作して、顔を覗かせている人物のいる部分を拡大すると、そこに映し出されたのは何と、女将さんの顔であった。
「夕餉の準備を行っている筈の貴女がどうしてここにいたのか、その訳を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「そ、それは・・・・・・!?」
スッと細められた向井さんの視線を向けられた女将さんは、冷や汗を流しながら一歩分後ずさった。
「・・・・・・・・・」
「言えないと?・・・・・・ならば、僕が貴女の代わりに答えてあげましょうか。貴女と真柴さんは今回の事件の共犯者であると。」
「「きょ、共犯者!?」」
向井さんのその言葉を聞いた俺とオッサンは驚きに目を見張る。
「い、一体何を言っているんですか・・・!私はこの人の共犯者なんかじゃありません!真柴さんとは今日初めてお会いしたんですよ!」
女将さんは自分は無関係であると声を荒げる。
だが、彼女の言葉を聞いた向井さんは、そこで「おや?おかしいですねぇ?」と溢した。
「お、おかしいって、何がですか・・・!」
「真柴さんと会ったのは今日が初めてと貴女は言いましたが、そんなはずないんですよ。だって貴女と彼は少なからず何度も会っている筈なんですから」
「なっ・・・!?」
その断言に女将さんは絶句する。
向井さんはそんな彼女を無視しながら、傍に置いていた袋から彼が集めていた手鞠や写真を取り出していく。
「事情聴取の際に、僕が依頼を受けて『二枝咲子』さんという人物の行方を捜しにこの旅館に来たという話は覚えていますか?」
「確か、昔その人がここで暮らしていたから、その手がかりがあるかもしれないから、だっけ?」
俺が事情聴取の時の向井さんのセリフを思い出しながらそう声に出すと、彼は頷く。
「ええ、そうです。僕の依頼主である『二枝咲子』さんの友人が、以前本人から聞いたそうなんですよ。そして彼女がここに暮らしていたという証拠も見つけました。」
「これが証拠です。」と『二枝咲子』と名前が書かれていた手鞠を見せる向井さん。
だが、そこで待ったの声が彼に掛けられた。
「おい、ちょっと待て、探偵。何故今その話をする?お前が探している人物とこの事件は何も関係ないだろうが。」
そう言いながら向井さんに鋭い視線を向ける斉藤警部。
しかし何故か、その額や頬には幾つもの冷や汗が流れているのが見えた。
「いいえ、斉藤警部。関係は大有りです。この旅館に来る前の調査で分かったことですが、『二枝咲子』さんの”二枝”という苗字、実はこれ、旧姓なんですよ。」
そこで一度言葉を区切った向井さんはフッとした笑みを浮かべる。
「十年以上前に、彼女はとある男性と結婚して苗字が変わっているんですよ。――――――『真柴咲子』とね。」
「そ、それって・・・!?」
「そう。ここまでくれば誰しも察することが出来るでしょう。『真柴咲子』さんが『真柴伝助』さんの奥さんであるという事を。」
俺は開いた口が塞がらなかった。
まさかの関係性に驚くほかない。
・・・・・・っていうか、なんなのこの妙な繋がり・・・!いっそ不気味なくらいなんですけど!?
「そ、それと私が何の関係があると言うんですか!その咲子さんという人物は真柴さんの奥様と言うだけの事でしょう!?」
「・・・・・・まだ僕の話は終わっていませんよ、三幻寺豊子さん。この映像を見てください。これは依頼人から頂いた『真柴咲子』さんの顔写真です。」
向井さんは携帯端末を操作して一つの映像を映し出す。
それは二人の女性が写ったもの。背景からおそらくどこかの街中で撮られたモノと思われる。
「この二人の女性の内、右側にいる女性が『真柴咲子』さんです。・・・・・・そして、この写真を見てください。三幻寺豊子さんと一緒に映っているこの女性を。」
「――――――ッ!?」
「ああっ・・・!お、同じ顔・・・!?」
映像に映し出された女性と向井さんが手に持つ写真に写った女性。その顔は全く同じであり、同一人物としか思えないモノであった。
「この写真を見れば誰でも分かりますよね?真柴さんの妻『真柴咲子』さんと『三幻亭』の女将である彼女が親しい間柄であるという事を・・・。そうですよね、三幻寺豊子さん。――――――いいえ、本名『二枝豊子』さん?」
「――――――ッ!?な、何故その名前を・・・!」
その名前を耳にした女将さんは驚愕に目を見開きながら向井さんを凝視する。
「言ったでしょう?この旅館に来る前に色々と調べていたと。貴女の”三幻寺”という名、これは『三幻亭』の女将になる際に代々受け継がれている名前だそうですね。・・・そして丁度貴女で八代目だという事も調べはついているんですよ。」
「あ・・・う・・・!?」
「貴女と『真柴咲子』さんは実の母娘。そして真柴伝助さんは娘の夫。最早、無関係だと言い逃れは出来ませんよ?」
「――――――ッ!?!?」
顔色を青くさせて絶句する『二枝豊子』さん。
「おそらく事件の筋書きはこうでしょう。西條さんがこの旅館に到着後、タイミングを見て真柴伝助さんが西條さんに接触して口論を行い、周囲に自分達は複雑な関係性があるという雰囲気を匂わせる。そしてその後、真柴伝助さんが遺体となって発見されることで、殺人の容疑者として西條さんが挙げられる、と。・・・・・・そう考えると、この旅館に西條さんが来たのも偶然とは言えなくなりますね。もし彼が他の場所へ向かってしまったら、この計画は破綻してしまいますから。」
フム?と考え込む向井さん。
彼の横で彼の推理を聞いていた俺は、そこで「・・・あれ?」と疑問を覚えて首を傾げた。
「・・・あれ?ちょっと待って?そうなると、真柴さんは自殺したってことになるのか?」
「いいえ、自殺ではないでしょう。――――――そうですよね、斉藤警部?」
「・・・・・・・・・」
スッと斉藤警部に視線を向ける向井さん。
その視線を受けている斉藤警部は、両目を瞑り、無言を返す。
それはまるで、向井さんの質問が正解であることを示しているような反応であった。
「ずっと不思議に思っていたんですよ。包丁に刺さっていた部分は心臓のある左胸。別の要因で死んだとしても、死体となったばかりの遺体の心臓に包丁を突き刺せば、それなりの量の血は噴き出る筈。なのに、血は服に滲む程度だけ。」
「あれ?でも、それについてはタオルか何かで対応したからって、向井さん言ってましたよね?」
「ええ、言いました。ですが、その後の調査では出血を防いだと思われるタオルなどの物品を見つけることが出来なかったのですよ。」
「へっ?そうなんですか?」
「そうなんですよ。探しても探してもそれらしい物が見つからなくて、相当焦りましたよ。見つからなければ西條さんが犯人でない事を証明できませんでしたからね。」
そう話す向井さんだが、彼は本当に焦っていたのだろうかと、俺は内心で首を傾げた。
だって、この部屋に来る前に出会った時の彼の表情は落ち着いていて、その雰囲気もどこか漂々としていて、とてもそうは見えなかったからだ。
多分、俺以外の人がその時の彼の表情を見たとしても「実は内心では相当焦ってました!」と考えているとは思わないだろう。
それぐらいあの時出会った彼の態度は焦っている様子が見られなかった。
「・・・・・・まあ、これを見て、一つの仮説が浮かび上がったことで落ち着いたんですけどね。」
そんな風に考えていると、向井さんは袋から再び何かを取り出した。
それに見覚えがあった俺は思わず呟く。
「あれ?それは・・・。」
「ええ、そうです。貴女からもらった十年前の新聞ですよ。」
俺の呟きが聞こえたのか、向井さんはこちらに向かって頷きながら新聞を広げる。
「これは渡辺さんが先程偶然見つけた十年前の新聞ですが、注目してほしいのはこの部分。真柴伝助さんは自宅で起こった火災が原因で死亡したと、この記事には書かれています。ですが、そうなると一つの疑問が出てきます。」
「・・・それってつまり、死んだ筈の真柴伝助がこの旅館にいるということですよね。」
「ええ、まさしくその通りです。」
コクリと頷く向井さん。
「公には死亡したとされた人物が生きているという矛盾。であれば、考えられることは一つ。実は死んではいなかったという事。」
「記事には遺体は見つからなかったと書かれているから、生きていたという可能性はあった。だけど、それならどうして十年経った今になってこんな事を・・・?」
「それはーーーーーー」
「ーーーーーーそれについては、俺の口から話させてくれ。」
「えっ・・・?」
向井さんがどうしてこの事件が起こったのかを話そうとした時、何処からかしわがれた様な男性の声が聞こえてきた。
声が聞こえてきた方向は部屋の中心から。
思わず視線を向けると、そこには死んだ筈の真柴伝助が起き上がろうとしている所であった。
閑話:その頃の秘密基地
テクテクテクテク・・・・・・。
「さてと、任務に向かったディーアルナ達はまだ帰ってこないだろうし、今日は肴を摘まみながら酒でも飲むとするか。丁度旨い酒も手に入った事だしな。」
テクテクテクテク------ガラッ。
「確か、キッチンルームにディーアルナに頼んで買ってきてもらった旬野菜のサラダ (特別仕様)があったはず。彼女が言うには木製のボウルに入れて、テーブルに置いておいたと言っていたが、一体何処に・・・・・・ん?」
ポリポリポリッ。
「・・・何だこの音は?こっちから聞こえて・・・・・・おや?」
「・・・ッ!」
ポリポリポリッ。
「ピョン太郎?何故、ピョン太郎がこんな所に?というか、何か口元が動いているな。一体何を食べて・・・・・・って、それは旬野菜のサラダ (特別仕様)ではないか!?」
「・・・ッ!?」
ビクン!?シュタタタタタタタッ!
「ちょっ、ボウルを咥えながら逃げた!?というか、足早っ!?脱兎か?その名の通り脱兎の如くなのか!?・・・・・・だ、駄目だ、見失ってしまった・・・!」
ガクリ・・・。
「し、仕方がない・・・。アレは諦めよう・・・。だが、どうしてピョン太郎はキッチンルームにいたのだろうか?前回の事もあって、飼育部屋からは単独では抜け出せないようにしていた筈なのだが・・・?」
テクテクテクテク・・・・・・。
「まあその辺は、後でピョン太郎を捜索する時に監視カメラの映像を確認しておくとしよう。・・・それよりも今は酒の肴だな。食材倉庫の中にまだスモークチーズやベーコン等があった筈。」
テクテクテクテク------ガラッ。
「さて、明かりは・・・・・・うん?」
ガツガツガツ。
「これは、咀嚼音、か?一体何が・・・。とりあえず先に照明を点けるか。------ポチッとな。」
カチッ、パッ!
「ふむぐっ!?」
ガツガツガツ、ゴクンッ!
「ブ、ブレーバー様!?な、何で此処に・・・!?」
「・・・それはこちらのセリフなのだがな、アルミィよ。エネルギー切れになってからまだ半日も経っていないというのに、一体どうやってここまで・・・・・・?」
「そ、それは、そのぅ・・・、愛です!」
「愛!?」
「はい、そうです!姐さんを敬愛する気持ちがアタシに力を与えてくれたんです!」
「え、えぇ・・・?た、確かに怪人は感情をKエネルギーに変換することが出来るが、それは負の感情ならの話であって、愛だなんて正反対の感情は変換出来ない筈なんだが・・・。まあ、それは今は置いておくとして。それで、どうして食材倉庫で盗み食いをしていたんだ?」
「そ、その、食べ物で腹を満たせばエネルギーが回復すると思って・・・。」
「ふむ・・・。なるほど、なるほど・・・。確かに君達怪人は食物から得た栄養もエネルギーに変えることが出来るから、着眼点は悪くはない。よく気付いたな。」
「へへ・・・!」
「------なんて言うと思ったか!こっちに来なさい!お仕置きのお尻ペンペンをしてくれるわ・・・!!」
「やっべぇ・・・!?」
シュバッ!タタタタタタタタタタタッ・・・!
「あっ、逃げた!?コイツも足早っ!?って、しかもどさくさ紛れに食べ物も抱えて行きおった!な、なんという抜け目のない奴・・・!?」
テクテクテク・・・。
「やれやれ・・・、後で捕まえねばな。・・・それはそれとして、今は酒の肴を・・・・・・。」
キョロキョロ・・・。
「あれぇ・・・!?な、ない!無くなっとる!・・・おかしい。昨日確認した時点ではまだあった筈・・・、って、まさか・・・!あの時アルミィが抱えていた物の中に入って・・・!?」
ガクリッ・・・。
「い、一度ならず二度までも、部下とペットに食べ物を取られるとは・・・!?はぁ・・・、しょうがない。今回はチビチビと酒を飲むことにするとしよう・・・。」
テクテクテクテク・・・・・・、テクテクテクテク・・・・・・、ガラッ。
「さて、自分の部屋に戻ってきたことだし、早速例の酒を・・・・・・ぬぅ!?ば、馬鹿な・・・!酒が、我の酒がない!?な、何故・・・!?」
ピラッ・・・。
「むっ・・・!何だこの紙は?何か書いてあるみたいだが・・・?」
『ヤッホー、ブレちゃん!この前ツケておいた情報料の代金として、ここにあった酒をもらっていくでぇ。ウチに隠し事が出来ると思わんといてや♪ byぺスタ』
「ぺスタ・・・!お前もか・・・!?」
ガクリッ・・・・・・。
次回は8月30日に投稿予定です。




