表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/153

ミッション4 戦闘服を着てみた!?

2021年10月20日に文章の一部変更をしました。



「さて、悪の組織としての活動を本格的に始めるのは明日からなのだが、その前に君には戦闘用のコスチュームを用意したので、試着をして貰いたい」


「コスチュームかぁ。まあ、悪の組織の定番と言えば定番だな」


「うむ、お約束というやつだ。それでは、はいこれ」


「・・・・・・ん?ブレスレット?」


 懐に手を伸ばしたブレーバーは、そこから一つのブレスレットを取り出す。

 その見た目はとてもメカメカしいデザインであり、その大きさも幅五㎝、厚さ三㎝程とそこそこの分厚さがあった。


「これは『変身用ブレスレット』と言う物でな、これの機能の一つである『変身機能』を使えば、戦闘用コスチュームを瞬時に装着する事ができる。その他にも通信機器としての役割等も持っているから、基本的にはこれで組織間での連絡を行うことになる」


 はい、とブレスレットを渡してくるブレーバー。

 それを受け取った俺は、言われるがままに自身の右腕に装着する。


「・・・うぉっ!?」


 ブレスレットに腕を通した途端、プシュゥッ!という空気が抜ける音と共にブレスレットが収縮し、腕にピッタリとなる様に密着した。

 その後に右腕を軽く上下左右に振ってみたりしたが、結構ゴツイ見た目に反して全然重さを感じず、動きにも特に違和感を感じなかった。


「ゴツイ見た目だったから結構重いのかなと思ったけど、随分と軽いんだな」


「当然だ!日常生活でもそうだが、戦闘などの際でも支障がないようにと試行錯誤を繰り返した上で作った一品だからな!」


 ドヤ顔を―――仮面をしているから表情は分からないのだが雰囲気的に―――するブレーバー。

 そんな彼に俺は「へぇ・・・」と感心した声を返す。


「それで変身する時なのだが、設定してあるキーワードがあってな。特定の言葉を言い、動きをする必要がある」


「キーワード?」


 ブレーバーの言葉に首を傾げる。

 なんでも、パスワードロックが掛かっているらしく、音声入力と動作入力を行わないと変身出来ない仕様にしているらしい。しかも、声質と体質の掌紋認証も同時に行っているという。無駄に高性能な所が無駄に凄い。


「キーワードは、”バイオチェンジ!ディーアルナ”と言いながら、こう両手を左側に真っ直ぐ伸ばして、そこから払う様に右へ大きく動かし、最後に左手を胸に、右手を開きながら前に伸ばすのだ」


 変身する為のキーワードを教えてくるブレーバー。

 それを見て、聞いた俺は、気恥ずかしさを覚えながらも教わった通りにやる。


「バイオチェンジ!ディーアルナ!」


 両手を左側に真っ直ぐ伸ばし、そこから右へ払うようにして大きく動かし、左手を胸に、右手を開きながら前に伸ばして叫ぶ。

 その途端にブレスレットは紫色の光を放ち始め、球状となって俺の体を包み込んだ。


「うわっ!?」


 眩しさのあまり思わず目を瞑る。そして次に目を開けた時には、俺はブレーバーの言う戦闘服を着用していた。

 体にはピッタリとフィットした黒いハイレグレオタードを着ており、上下の隠すべき所には機械的なアーマーが取り付けられている。

 その上から裾丈の長いゴツく感じられる緑色の軍服を前開きにして羽織るように着ており、その軍服の所々には銀色の機械的なパーツが取り付けられ、腰にはベルトが巻かれていて、付属品としてなのか銃のようなものや棒状の物が納められたホルダーが付いている。

 更に両腕には肘までを覆う銀色に鈍く光る手袋を、両足には太腿までを覆う手袋と同じ材質のサイハイブーツを履いており、また頭頂部には少し膨らんだ形の黒い軍帽の様な物が被せられていて、加えて言えば、顔にも目元を覆う形のアイマスクがピッタリと張り付いていた。

 その格好は傍から見ると、何と言うか、とても際どいと言うべきか、どう見ても可笑しな格好の痴女にしか見えない物であった。


「・・・・・・って、何でだよ!?」


 自身の格好を確認した俺は思わずそうツッコミを入れながら自身の体を隠す様に両手を動かす。

 いや、マジで何この格好!?いくら俺が元男と言っても、流石にこれは恥ずかしすぎるんですけど!?


「イー、イイー」(良い仕事してますなぁ。細かい所まで作り込まれている)


「ふっ、分かるか戦闘員三号。素材もそうだが、デザイン性も組み合わせ方にちょっと拘ったのだ」


「イー・・・」(エロイですなぁ・・・)


「イイー、イーッ!」(アスリートのような体つきをしているから、淫靡なモノじゃなくて健康的なエロスが感じられるな!)


 尚、ブレーバー達は俺の服装についての感想を好き放題に言っていた。

 っていうか、直視しないでほしいんだけど!?恥ずかしいんだから!?


「ちょっ・・・!ブレーバー!何なんだよ、この戦闘用コスチュームは!?」


「ふっふっふっ・・・どうだ、素晴らしいだろう!それは我が昔作った女性用の戦闘用コスチュームでな。世界征服を行うことになった時に、女性の幹部とか戦闘員とかに着てもらおうと思って用意した物なのだよ。物理、エネルギーに関する耐性が高く、バリアも薄く展開しているから守りは万全!修復機能も完備で、一晩経てば新品同然に元通りになる至高の一品の一つだ!ちなみに君が着ているのはバージョンⅠで、他にもバージョンⅡやバージョンⅢもあるぞ!」


「そんなことは聞いてない!というか、欲望丸出しじゃねぇか!」


ドゲシッ!!


「グフォッ!?」


 自慢げに戦闘用コスチュームの説明をしていたブレーバーの土手っ腹に蹴りを叩き込む。

 正直自らの上司となった人物に対して行う様な所業ではないが、流石にこれは蹴られてもしょうがないと思う。

 そりゃあ、どんな衣装なのか聞かなかった俺も悪いと思うよ?けど、事前に教えなかったブレーバーも悪いと思う。

 というか早く別の服を着たい・・・!


「他の・・・他の服は何かないのか!?」


 もっとまともな服が欲しいと俺が訴えると、それに応えたのは蹴られた腹を押さえていたブレーバーであった。

 彼は軽く咳き込みつつ「え?いやなの?」という感じにちょっと首を傾げた後に「しょうがないなぁ」と言いたげな感じで何かのリモコンを操作した。


「む、むぅ・・・じゃあ、こういうのはどうだ?さっきも言ったバージョンⅡとバージョンⅢのやつだが」


 ピッ、とブレーバーがリモコンのボタンを押す。すると何処からともなく頭上からモニターが下りて来て、彼の言う他のバージョンの戦闘用コスチュームが映し出された。

 バージョンⅡの見た目は、一言でいうなら様々な機械的なパーツが所々に付いた全身タイツだ。特に背部にある推進機器―――形状から推察するにウイングスタビライザーとか、そういった感じのものだろうか?―――と、両手足に装着されているパーツに付いている緑色の球体が特徴的だ。

 そしてバージョンⅢの見た目だが、こちらは近未来的な軽装鎧の様な服装だ。肩及び太腿から先を露出した形の全身タイツの上から機械的なアーマーが取り付けられており、アーマーの各所にはブースターの様な物も付いていた。


「これ!こっちの方が良い!特にこの鎧的なのを着てるやつ!!」


 それを目にした俺は今着ているコスチュームよりもモニターに映っている方が良いと指を差す。特にバージョンⅢの方が、と。

 だが、それに対してブレーバーは何かを悩む様な声を漏らした。


「む・・・むむぅ。まぁ、別に変更するのは構わんのだが、安全性は保障できないぞ?」


「・・・ん?え?どういうこと?」


「この二つの戦闘用コスチュームは作ったはいいのだが色々と調整が不十分な所があってな。バージョンⅡの場合は推進機器パーツに使う推進剤をどれにするかまだ正式に決まっていないのだよ。一応候補は幾つか存在していて既に幾つか作った推進機器パーツにに組み込んではいるが、まだ実験すらしていないからぶっつけ本番で使用した場合、最悪自爆する」


「自爆!?」


「バージョンⅢの方も、アーマーの各所に取り付けられたブースターの耐熱性能や冷却機能に問題があって長時間の使用は難しい。無理に使えばブースターから発せられる熱に耐え切れず、自爆する」


「こっちも自爆すんの!?」


 自爆自爆言うブレーバーにそう思わずツッコミを入れた俺だったが、そこでふとある事に気付いた。


「・・・な、なあ。まさかとは思うけどさ。もしかして、今俺が着ている戦闘用コスチュームも自爆したりする可能性があったりするのか?」


そうブレーバーに質問すると、彼は首を横に振りながら「それに関しては大丈夫だ」と言った。


「今君が来ているバージョンⅠは一番オーソドックスでスタンダードなタイプな。付けている機能も防御機能と自動修復機能だけで然程複雑な物を組み込んではいないから、調整やら何やらは他二つのバージョンに比べれば容易なのだ」


 「故に、自爆する心配はしなくていい」と言うブレーバーの説明を聞いた俺はホッと安堵の息を零した。


「・・・って、ちょっと待て。つまり戦闘用コスチュームは今はこれしか無いってことなのか?」


「ま、まあ、そういう事になるな・・・」


 そう言いながら目線を逸らすブレーバー。その言葉を聞いた俺はガックリと肩を落とし、半泣きになって地面に座り込んだ。

 こんな恥ずかしい恰好で仕事をしなくてはならないなんて、新手の拷問か、悪行をこれから行うことに対する天罰なのだろうか。


「だ、だが、性能的にはかなりのモノなのだぞ!少なくとも戦闘員達が着用している戦闘服よりは遥かに高性能だから、そう落ち込むことはないぞ!」


「イーッ!?」(え、そうなの!?)


「イイッ、イーッイーッ」(お前は黙ってろ、一号。今ボスが彼女を慰めようとしているのだから)


「イー、イイイー、イー・・・」(というか、ボスのあれ、慰めになっていないと思うんだけど・・・)


 頑張って俺の事を慰めようとするブレーバーであったが、しかし言っている内容は見当違いの事ばかりで全然慰めにならないものであった。


「はぁ・・・もう。普通の服を着て行こうかな・・・」


 思わずそう呟いてしまった俺だったが、それを聞いたブレーバーが「それはいけない!」という感じに口を開いた。


「待て待て待て!?流石にそれを許すわけにはいかん!普通の服では戦闘に耐えられるだけの耐久性なんてないから、戦いになったらすぐに破れてボロ雑巾の様になってしまうぞ!?下手をすれば・・・というかしなくても、見えてはいけない所が見えてしまう事になるぞ!?最悪、公衆の面前で素っ裸になるかもしれん!君はそれでいいのか!?」


「うっ・・・!?」


 そう語るブレーバーに俺は思わずと言った風に呻きながら、内心ではつい「確かに・・・」と納得してしまっていた。


「うぅ・・・しょうがないかぁ・・・」


 もしそうなれば、色んな意味で外を出歩く事が難しくなるだろう。そう思った俺は、泣く泣くこの色々と際どい戦闘用コスチュームでやっていこうと、諦めたのであった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 思ったこと、際どい服の上に普通の服を着ればいいじゃない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ