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外伝ミッション1ー10 任務終了と後日談・・・!



「・・・さて、幽霊爺のお仕置きも終わった所で、そろそろお嬢ちゃん達が何者なのか聞かせてもらおうやないか。」


あれから数十分後、縛られていた状態だった俺達は、縄を解かれて赤髪の美女の前で横一列になって正座していた。

横に視線を向ければ、戦闘員達は顔を俯かせながら恐怖に体を震わせており、マスクで隠れて見えないが、おそらくその顔色は真っ青になっていることだろう。

かく言う俺も、自身が彼らと同じような状態となっている事を自覚していた。


「なぁに、安心してええんやで。正直に話してくれたら、五体満足でお家に帰してあげるからなぁ。」


つまり正直に話さなかったら五体満足で帰すつもりはないと言うことですね!

チラリと視線を彼女の横に向ければ、そこには紙のようにペラペラとなった老人幽霊ことバスケットの姿が・・・!


「まず最初の質問やけど、お嬢ちゃん達が何処の誰なのか、教えて欲しいなぁ?」


色気たっぷりの流し目を向けられ、甘さを感じさせる猫なで声を耳にした俺は、涙目になりながらシュビッ!と敬礼して答えた。


「はっ!悪の組織アンビリバブルの構成員のディーアルナと戦闘員一号、二号、三号です!」


「アンビリバブル・・・?何処かで聞いたことのある名前やな・・・・・・。それで?一体何が目的でここに来たんや?」


「はっ!情報屋と呼ばれる人物の忘れ物を届けるためにやって来ました!」


「ウチの忘れ物やて・・・?」


俺達の目的を聞いた赤髪の美女は、訝しげに眉をしかめた。

その様子と、先程の〝ウチ〝という一人称から、もしやと思った俺は彼女に声を掛けた。


「あの、もしかして、貴女が情報屋でしょうか?」


「うん?何を言っているんや、お嬢ちゃん。ここに来ているという事は、ウチの事を調べたいうことやろ?ウチがこの洋館に住んでいる事は、大概には知られていないんやで。」


「えっと、いえ、その・・・、実は貴女がここに住んでいるという事は、俺達の上司からの情報でして・・・。何でも、貴女から直接聞いたことだと言っていましたから。」


ズンッ、と圧力すら感じられるプレッシャーと眼光鋭い視線が赤髪の美女から放たれる。

ソレを受けた俺は、まるで上から押し潰されそうな気分を味わっていた。


「ウチから直接・・・?一つ聞きたいんやけど、自分等の上司の名前はなんて言うんや?」


「えっ?えっと、ブレーバーと言いますけど・・・。」


「ブレーバー・・・!?なんや自分等、ブレちゃんとこの連中かいな!」


ブレーバーの名前を聞いた途端、赤髪の美女は放っていたプレッシャーを消し、その目も柔らかいモノへと変えて、まるで近所の親しいお姉さん的なノリを見せ始めた。


「もう、それならそうと、はよう言ってくれたら良かったのに・・・!」


「そ、その、すいません。チャイムを鳴らそうとしたんですけど、壊れていたのか鳴らなくて・・・。」


それから俺はこれまでの経緯を赤髪の美女に話した。

それを聞いた彼女は納得したように頷き、申し訳なさそうに後頭部に手を当てた。


「なるほどなぁ、そう言いことやったんか。いやぁ、どうやらウチの身内が原因の様で、本当に申し訳ない!バスケットの馬鹿はきっちり絞めとくさかい、堪忍したってや・・・?」


「いえ、こちらも不在だと知らずに入ったので・・・。」


「アハハハッ!」と笑う赤髪の美女を見て、誤解が解けたことに俺はホッとする。


「そう言えば自己紹介がまだやったな!ウチの名前は『ぺスタ・ジョレイヌ』。世界最高峰のネクロマンサーの一人にして、数多の情報を売り買いする情報屋。ウチの手に掛かれば、体にある黒子(ほくろ)の数まで正確に調べ尽くすなんてこともお茶の子さいさいやで!」


パチリとウインクをしながら自己紹介をした赤髪の美女こと『ぺスタ・ジョレイヌ』。


「ネクロマンサー、ですか・・・?」


彼女の口から出たネクロマンサーという言葉が気になった俺は、首を傾げながらネクロマンサーとは何かと問いかけた。


「ネクロマンサーとは、死霊や死者を使った何らかの術を行う者のことや。ほら、ゲームとかでもあるやろ?ゾンビとか幽霊とか操る奴。大体あんな感じや。壁に耳あり障子に目あり、とはよく言うけど、ウチが情報を仕入れる時は幽霊達を使っておってな、至るところから情報を集める事が可能なんやで!どや、すごいやろ?」


「・・・ごめんなさい。ゲームしたことないからあんまり知らないです。」


「マジか・・・!?今時の子にしては珍しいなぁ・・・!」


とはいえ、何となく理解は出来た。

その力を利用したからこそ、隠されていたり、一般には知り得ない情報を集めることが出来ているのだろう。


「まあ、ええか・・・。・・・んで、自己紹介を終えた所で、そろそろ仕事の話といこうやないか。ウチの忘れ物を届けに来た言うとったけど、ソレって一体何や?」


「あっ、はい。これがそうです。」


ぺスタの疑問に答えるように、ブレスレットの電子ストレージに仕舞っていたスーツバッグを取り出して彼女に渡す。


「これがウチの忘れ物・・・?このスーツバッグに見覚えはないけど、ブレちゃんの事だから多分重要なのは中身の方やね。どれどれ・・・・・・。こ、これは!?」


スーツバッグの中身を見たぺスタは最初は驚き、続いて満面の笑みを浮かべながらソレを取り出した。


「老舗の酒屋でさえ幻と呼ばれ扱われている伝説の酒、『神殺しMAX改』やないか!?しかもこれ、ウチが買って無くしたと思うとった奴や!」


ぺスタの手に握られたそれは、『神殺しMAX改』というラベルが貼られた一丁瓶であった。


「ブレちゃん、ウチが忘れてしまったもん預かっといてくれたんやなぁ!相変わらず格好良いことをさらりと行うお人やわぁ・・・!」


その一丁瓶を両腕で抱き込みながらと頬擦りするぺスタ。

スーツバッグの中身が何なのか知らなかった俺は、驚きの声を上げた。


「え、えぇ~・・・!?忘れ物がお酒って・・・、今までの俺達の苦労はこれを運ぶためだったのか・・・?」


思わずガックリとしてしまった俺だったが、そこで「いや、そうとも限らないぞ。」と戦闘員二号が声を掛けてきた。


「イイイッ、イーイーイイー、イイッ。」(『神殺しMAX改』と言えば、世界中に現存する全ての酒を超えた最高級品と呼ばれていながら、通常の市場には出回らない存在自体が眉唾物とされる酒だ。)


「イッ!イイッ!イーイイー、イーイーイー?」(あっ!それ、俺も知ってる!確か昔オークションで出された時には、一本一億円の値段が付けられたって伝説がある酒だよな?)


「一本一億円!?」


まさかの金額に思わずあんぐりと口を開けてしまう。

お酒一つに一億って、どんだけだ・・・!?


「イイッ。イー、イイー、イーイーイイイー・・・!」(それだけ稀少な酒ということだ。おそらく、酒好き共がこの酒の在処を知れば、死人が出る程の壮絶な奪い合いになることは間違いないだろう・・・!)


「いやいやいや!ただのお酒だろう!?そんな大袈裟な・・・・・・!?」


「イーイー、イイー。イッ、イイイー。」(それがそうとも言い切れないんだよ、ディーアルナ様。実際に過去、このお酒を巡って死人が出る事件が起こっているんだ。)


「・・・え゛っ!?」


「イイッ。イイー、イイイーイー、イーイー、イイッ!イー、イイイッ。」(三号の言う通りだ。今から四十年以上前の事だが、最初この『神殺しMAX改』は一般市場で取引される予定だったそうなんだが、そこでこの酒を試飲したとある何人かが、もっと飲ませろ!と突然暴れだす乱闘騒ぎが発生して、その時に幾人かが巻き込まれて帰らぬ人となった事件があったんだ。)


「イイー、イーイー。イイイッ、イー、イーイイーイー。」(その事件があって、一般に出すのは危険と判断されて通常販売は中止。それから少数限定生産を行うようになったそうだけど、中々世の中には出回る事がなくなって、今じゃその名前すら聞かれなくなって久しい伝説のお酒ということでマニアの間では有名になっているんだ。)


「・・・・・・え゛っ!?」


いや、マジでどんだけだよ『神殺しMAX改』・・・!?


「イッ、イイッ、イー・・・。」(しかし、まあ、よく手に入れられたなぁ・・・。)


「ふっふっふっ!そこはそれ。ウチの情報網と幽霊達を駆使して情報を集めて、製造元に直接交渉しに行ったんよ!そんで、そこの社長さんが欲しがっている情報を提供する代わりにこのお酒を頂いたっちゅう訳や!」


「今から飲むのが楽しみやなぁ!」と手元の酒をうっとりと見つめるペスタ。

それを見て、「こいつも話に出ていた酒好き連中の一人か・・・!?」と戦慄する俺であった。







「それじゃあ、俺達は帰りますね。」


「そうか。ほな、気を付けて帰るんやで。」


情報屋ことペスタ・ジョレイヌに忘れ物を届ける仕事を終えた俺達は、秘密基地へと帰ることにした。

もう結構遅い時間だし、基地でブレーバーも待っているだろうから。

時刻は夜の八時。

以前ブレーバーは、「一人ぼっちのご飯は寂しいんだ・・・!」とか言いながら涙目になったことがあったから、今頃お腹を空かせて待っているのではなかろうか?


「そうや!そう言えば一つ聞き忘れた事があったわ!ちょっとええか?アンタの名前はなんて言うんや?」


「・・・?名前って、名乗った筈ですけど?」


「ディーアルナって名前は怪人名やろ?本当の名前はなんて言うんや?情報屋として知っときたいんよ。」


「知的好奇心でな!」と朗らかに笑って見せるペスタに、答えるか答えないか迷う。

そこに戦闘員二号が俺に話し掛けて来た。


「イーイイーイー?イイッ、イイーイー。イーイー。」(別に答えても大丈夫だと思うぞ?情報屋って商売は、顧客との信頼関係で成り立つものだ。その信頼を裏切るような事はしないと思うぞ。)


「せやな。二号ちゃんの言う通りやで。ブレちゃんを裏切るようなことをウチはする気はないで。あの人とは長年の付き合いがある、飲み友達やさかいな!」


「アハハハハッ!」と笑うペスタ。

ちなみに「二号ちゃん!?」と、まさかの呼ばれ方で驚く戦闘員二号がいたりしたが、話が進まないので敢えてスルーさせてもらった。


「ほな教えてもらってもええやろうか?」


「・・・分かりました。」


ペスタからの再度の問いかけに俺は頷く。


「俺の本名は、渡辺光と言います。」


「――――――ッ!?渡辺、光、やて・・・!?」


俺の本名を教えると、何故か彼女は息を飲んで驚いた表情となった。


「あの、どうしたんですか?」


「・・・え?ああ、いやいや、なんでもあらへんで!知り合いに似たような名前の人がおってな、読み方が似とったから驚いたんよ!」


ヒラヒラと手を横に振りながら「なんでもない」と話すペスタに、「そうなんですか?」と返す。

ペスタの反応がなんとなく気になったので聞いてみようかと思ったのだが、ニコニコと笑いながら、しかし言い様の無いプレッシャーのようなものを彼女から感じて口を塞ぐ。

勘ではあったが、そこを追求しようものなら何かしらの酷い目に遭うような、そんな予感がしたからだ。


「そんじゃ、道中気ぃ付けてや~!」


「はい、それではまた!」


その後、俺達はペスタに向けて手を振りながら洋館を出た。

色々と大変な一日だったけど、同時に実りのある一日だった。

少なくとも幽霊相手に攻撃出来る様になったことは、昔に比べてだいぶ進歩したと言えるだろう。

最後は不意を突かれてしまったが、それでも成長できたことは間違いない。


「さてと、明日からも頑張ろう、っと!」


俺は情報屋の洋館を背に「う~ん!」と大きく伸びをするのであった。








「まさか、あの子供がブレちゃんの所にいるなんてな・・・。運命ってやつは不思議やなぁ・・・。」








後日談。


シュゥゥン!


「ただいま~!」


「「「」」」(ただいま帰りました~!)


「おお!ようやく帰ってきたか!何やら、えらく遅かったみたいだが・・・?」


「アハハッ・・・。まあ、色々とあってさ。」


「イッ、イイー・・・。イーイー、イーイー・・・・・・。」(本当に、色々とあったよな・・・。憑りつかれたり、探索したり・・・・・・。)


「イイイーイー・・・。」(まるでどこかのインディ〇ョーンズみたいだったよねぇ・・・。)


「イッ、イーイイー・・・・・・!」(もう、ああいった事は勘弁してほしいものだがな・・・・・・!)


「ふむ・・・。なんだかよく分からんが・・・。まあ、よかろう。それよりも早く、皆で夕飯を食べようではないか。」


「前にも言ったと思うけど、先に食べていても良かったのに・・・。」


「何を言うか!ボッチ飯程寂しく感じるモノはないのだぞ!特に我の様に、長らく人との関わりを絶っていた奴ならば尚更だ!」


「はいはい。それじゃあご飯の準備をするためにキッチンに行くから。」


「うむ!・・・・・・うむ?ディーアルナよ。君、背中に何を付けているのだ?」


「・・・背中?」


「うむ・・・。何やら半透明のものがくっついているようだが・・・?」


「半透明って、ま、まさか・・・・・・!?」


ギッ、ギギギギギギッ・・・・・・!


『オネエェチャァァン・・・!アソボウヨォォ~・・・!』


「・・・・・・・・・」


「それは何なのだ?先程から何かを呟いているようだが・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・?どうした、ディーアルナ?」


『オネェチャァン・・・?』


「・・・いっ、・・・・・・・・・」


「いっ?」


『イッ?』


「いぃぃやぁぁぁあああああーーーっ!?!?」


ダダダダダダダダダダダダダッ!!!


「ディ、ディーアルナ!?どこに行くのだ、ディーアルナァッ!?」


「うわぁぁぁあああああんっ!?!?」


「っていうか早ッ!めっちゃ早ッ!?も、もう豆粒位に見えるほど遠くにぃ・・・!?」


『ワーイ!マタオニゴッコダネ、オネエチャン!ソレジャア、マタワタシガオニニナルネ!マテマテ~~~!!』


「きぃぃぃやぁぁぁあああああーーーっ!?!?」







外伝ミッションはこれにて終了です。

次回からは途中で止まった続きを執筆して投稿していきます。

投稿するとしたら来月からになると思います。

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