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外伝ミッション1-7 VSティラノサウルス(白骨標本)・・・!?



『オォォオオオンッ・・・!オオォォォンッ・・・!!』


目の前で雄叫びを上げるティラノサウルスの白骨標本。

空気が振るえるような感覚が無いので、おそらく思念波のようなものを流しているのだろうと思われる。


「屋敷の中で最初にこいつを見つけた時点で薄々怪しいとは思っていたけど、まさかの当たりとか・・・!しかも、飾られていた時よりも大きくなってないかコイツ・・・!?」


見た感じでは、台座に飾られていた頃よりも三倍近い大きさになっているティラノサウルスの白骨標本――――――一々呼称するのが長くて面倒なのでボーンレックスと仮称することにする――――――を見ながらそう呟く。


『グゥォォオオオッ!』


「ちぃっ!?」


足を振り上げて踏みつぶそうとして来るボーンレックスの攻撃をステップして回避する。

体が大きい分動きもそれほど速くはないので避ける事は簡単だが、そう広くもない正面玄関ホールの中では逃げ場を確保するのも難しい。


「殴れる相手である分、幽霊よりはマシだが、このままじゃ・・・!?」


連続で振るわれる両手の爪攻撃をホール内を駆け回りつつ回避していく。

このままでは埒が明かないと思った俺はどこか広い所に移動するべきだと考え、そこで洋館の中央に中庭があることを思い出した。


「軽く見た感じだが、あそこなら広さは十分のはず・・・!」


『ガァァアアアッ!!』


「はぁぁっ!」


『ガアァッ・・・!?』


大口を開けて迫り来るボーンレックスの頭蓋骨を殴り飛ばし、中庭へ向かう為に移動を始める。

正面玄関から向かうのは難しいので、一度通ったことのある二階東渡り廊下を経由して向かう。


「あの廊下には、丁度抉られたようになくなっている部屋がある。あそこからなら、中庭に直接行ける筈・・・!」


俺の拳の一撃で体感バランスの崩れたボーンレックスの体を踏み台にし、二階通路の手すりを蹴って東廊下へと飛び込む。


『オォォオオオンッ・・・・・・!!』


「え・・・?嘘っ!?」


途中の大穴を壁蹴りの要領で飛び越えながら、東廊下へとやって来た俺。

その時、後ろからボーンレックスの鳴き声が聞こえたので振り向くと、驚くべきことにボーンレックスの頭蓋骨が俺の後を付いて来ていた。


「なっ・・・!?コイツ、あの巨体でどうやって・・・!?」


思わず驚きに目を見張っていた俺だが、そこで何か違和感があることに気付いた。


「胴体が無い・・・?まさか、頭だけ浮かせて追ってきているのか!?無駄に器用だな、おい!?」


違和感の正体が何なのか気付いて思わずツッコム。

そうこうしながら目的の扉の前に到着した俺は、扉に跳び蹴りをかまして蹴破った。


「やぁぁっ!」


俺の蹴りにて向こう側へと吹き飛ぶ扉。

そのまま俺は中庭へと飛び出て地面に着地。そこから再び走って中庭中央を目指す。


『オォォォッ・・・!』


当然俺を追っていたボーンレックスの頭蓋骨も中庭に飛び出して来た。ただし、飛び出してきたのはそれだけではなかったが。


『オオォォォオオオンッ・・・!オォォォンッ・・・!』


頭蓋骨が音にならない鳴き声を発した瞬間、洋館の屋根を飛び越えて分かれていた体のパーツが集合。

次々と組み合わされ、結合し、ボーンレックスの体が出来上がって行く。


『オォォオオオンッ!』


そして完成した体に頭蓋骨を合体させ、雄叫びを上げるボーンレックス。

俺はそれを見上げながら半身となって拳を構え、どんな攻撃にも対応できるよう周囲を警戒する。

・・・・・・ただ、気になっていることが一つあった。


『オオォォンッ・・・!』


「・・・・・・おい。そこの骨。」


『オォォォン・・・?』


「頭と尻尾が逆だが、それでいいのか?」


『オォンッ・・・!?』


そう。このボーンレックス、体をくみ上げたは良いのだが、何故か頭と尻尾が逆に付いていたのだ。

いくら設計ミスにしたって、それはないだろうと思う。

実際ボーンレックスは、俺が指摘した途端に「今初めて気付きました!?」とでも言いたげに驚き、いそいそと頭と尻尾を付け替えていた。


「なんだか、気分が削がれるなぁ・・・・・・。」


『オオォォォオオオンッ!』


まるで仕切り直しだと言いたげに雄叫びを上げるボーンレックスに溜息を吐きつつ再度拳を構え直す。

それから長い事睨み合い、空に登っている月が雲に隠れた瞬間、同時に動いた。


『オォォンッ!』


「せいっ・・・!」


ボーンレックスの左の爪攻撃に対し、アッパーカット気味に右拳を突き出して殴り弾き、お返しとばかりに頭蓋骨に向けて跳び蹴りをかますが、それをボーンレックスは開いた右手を壁の様にして防ぐ。


『グゥォオオオッ・・・!』


「このっ・・・!?」


こちらが着地する瞬間を狙って、ボーンレックスが体を回転させて長い骨の尻尾を振るう。

それを目にした俺は、クルリと体を回転させつつ体幹運動で落下速度を緩和させ、地面にではなくボーンレックスの尻尾の上に着地する。


「よっと・・・!はぁぁっ!!」


『グギャァァンッ・・・!?』


そしてそこから跳躍し、丁度こちらに戻って来たボーンレックスの頭蓋骨に向けて踵落としを食らわせる。


「もういっちょ・・・!【爆風拳】!」


さらに追撃として体を縦に回転させつつ両拳にエネルギーを集中。腕の表面で高速回転させつつ、ボーンレックスの頭蓋骨と胴体に向かって同時に振り抜く。

拳を振り抜いた直後、それぞれの拳の先にエネルギーが急速で移動して一瞬で球体を形成、その後間をおかずにボーンレックスの体に向かって爆音と共に指向性のある衝撃波が放たれた。


ドォォォオオオオオンッ!!


『グギャォォォオオオンッ!?!?』


ボーンレックスの体は衝撃波によってバラバラに吹き飛んだ。だが・・・・・・、


「くっ・・・!やっぱりバラバラにしただけじゃ倒せないか・・・!?」


吹き飛ばされ、辺り一面に散らばったボーンレックスの骨は、さほど間をおかずに集まりだし、再び骨の体を形成した。

中庭に移動するときに頭蓋骨だけで追いかけることが出来ていたことから予想はしていたが、しかし実際にそれを見て面倒臭いと舌打ちをする。


『オォォォオオオンッ・・・!・・・・・・むぅ、中々やるではないか、娘子よ・・・!』


「・・・喋った!?」


こうなったら粉になるまで砕くしかないかと思っていると、突如ボーンレックスから声が響いてきた。

・・・というか、喋れたのかお前!?


『動きも、力も、そして技も、常人のそれを遥かに超えておる・・・。とても普通の人間とは思えんなぁ・・・・・・。』


「はっ・・・、お褒めに預かり光栄ですと帰すべきかな・・・?」


内心の驚きを隠し、冷や汗を流しつつニヒルに笑い返して見せると、ボーンレックスは『クククッ・・・!』と笑い声を漏らす。


『クククッ・・・!随分と気の強い娘よ・・・!だが、素晴らしい!素晴らしいぞ、娘子よ!それでこそ、我の憑代とするに相応しい・・・!』


「憑代・・・?」


ボーンレックスの声を聞いた俺は、こいつは何を言っているんだと眉を寄せる。


『そうだ・・・!我は、我々は・・・!お主のような強い肉体を手に入れ、そして崇高なる野望を果たすのだ!』


「野望だと・・・!?一体何が目的なんだお前は・・・!」


頭蓋骨と尻尾を豪快にブルンブルンと振り回しながらそう叫ぶボーンレックス。

攻撃・・・と言うよりも、感情のまま暴れているだけに見えるその動きの余波を回避しつつ問いかける。


『我々は亡霊となって幾久しく、長らくこの地にて現世(うつしよ)を眺めて来た・・・。時代と世代の移り変わり。積み上げられ、発展してきた文明。その光景は、過去の存在たる我々にとって、とても眩しく見えたものよ・・・・・・。そして同時に羨望した!渇望した!我々もその場所へ行きたいと・・・!』


問いに答える様に昔語りを始めるボーンレックス。語っている内に気分が落ち着いて来たのか段々と動きは落ち着いていくのだが、しかしその声音(思念波?)に込められた感情は、言い様の無い切実さが感じられた。


『だが、肉体を持たない我々ではその場所に向かうことは出来ない・・・!我々がそこへ向かうには器となる肉体が必要なのだ。この者達のような、な・・・!』


ボーンレックスが左手の掌を上に向けると、そこから勢いよく青白い炎が現れ、その中から捕まったり、逸れたりしていた戦闘員達が姿を現した。

彼等はマスクに隠された両目をぼんやりと輝かせながら空中に浮かんでいた。


「一号、二号、三号・・・!?」


「無事か・・・!?」と声を掛けてみるが、しかし一切の返事が無い。

どうやら意識が無いらしい。


「くそっ・・・!俺の仲間をどうするつもりだ!?」


『知れた事。言った筈だぞ。我らの野望の為の器とするとな・・・。』


「ふざけるな!そんな事、させてたまるか!」


ビシッ!と指差し、すぐさま臨戦態勢になる。

一分一秒でも早く戦闘員達を救出しなくては・・・・・・!?


『生きが良いなぁ、娘子よ。その強靭な肉体に見合った強い精神は、我らの好みに値する。本当にお主は、我らの野望の器となるに相応しい。』


「・・・・・・というか、さっきからお前の言っている野望って一体何なんだよ!?」


『我らの野望を聞きたいのか・・・?』


ドスン!と一歩足を踏み出し、睨みつけてくるボーンレックス。

それに負けじと、こちらも鋭くした視線を返す。


『・・・・・・いいだろう。器となるお主には応えてやるのも慈悲の心と言う奴だろう。』


頭蓋骨の奥にほのかに輝く青白い炎を灯しながら己の野望を語ろうとするボーンレックス。


『よく聞け、娘子よ!我らの野望とは・・・!』


「野望とは・・・?」


俺はボーンレックスの口から語られるであろう野望の内容に集中し、若干前屈みになりながら緊張感から来る喉の渇きを潤す為にゴクリと唾を飲み込み、


『美味しい物巡りツアーを開催することである・・・!!』


何とも平和そうな内容のそれに、思わずズルベシャッ!とズッコケた。


「――――――な、ナニソレェェーッ!?それが野望なの・・・!?」


そしてすぐに体を起き上がってツッコミを入れた。「マジでそんな理由なのか!?」と。


『ムゥッ・・・!我々にとっては十分に野望たり得る大願なのだぞ・・・!我々が生きていた頃の時代では、今の世のように飽食と呼べるほどの様々な食べ物など存在しなかった。しかも、どれもこれも美味しそうで・・・、正直今を生きている者達には、羨ましさしか感じられぬ・・・!!』


「食いしん坊万歳か・・・!?・・・っていうか、本気でその為だけに俺達の体を憑代にするつもりだってのか・・・?」


『ウム。・・・なにせ、先に言った通り我々には肉体が無い。霊魂だけの存在である我らでは、モノを動かすことは出来ても食べ物を食すことは出来ん。これを生殺しと言わずに何と言う・・・!!』


どうやってか知らないが、頭蓋骨の眼孔からダバダバと大量の涙を流し始めるボーンレックス。

ついでに横を見ると戦闘員達も「オイオイオイッ・・・!」と号泣し出していた。

いや、よく見れば戦闘員達に重なるようにして半透明の存在が覆い被さっているのが分かった。

おそらく今の彼等は、ボーンレックスの言う奴等の肉体として使われているのだろうと思われる。


『ラーメン、寿司、カレー、スパゲッティ等のよく知られたものや、地方にある所謂B級グルメと呼ばれるもの。更には普通では食べられない高級食材を使った料理。どれもこれも旨そうで、涎がダバダバ出てきそうになる・・・!!』


言葉に出した料理の事を想像したのか、今度は目玉がないはずなのに目を輝かせながら、口元から出る筈のない涎をダバダバと溢すボーンレックスと幽霊達に憑依されている戦闘員達。


「それで他人の体を使おうとするって、かなり性質が悪いわ!」


『仕方が無かろう。我等は他の手段など知らんのだからな!』


「こいつ、開き直りやがった・・・!?」


流していた涙と涎を、ヒュッと引っ込ませながら漂々と言うボーンレックス。

俺はソイツの態度を見て、「ケロッと言いやがって・・・!」と拳を握りながら、ぐぬぬっ・・・!?と歯ぎしりする。


『・・・さて、我らが語るべきことはすべて語った。我らの野望を知った今のお主なら、次に取るべき行動は分かるであろう?』


「ちっ・・・!ああ、分かっているよ。アンタ等は俺達の体を力尽くで奪おうとしているってことはな・・・!だが、そう易々と奪えると思うなよ!逆にアンタ等をブッ飛ばして、仲間の戦闘員達を返してもらうぞ!!」


俺はそう吠えながら両の足でしっかりと地面を踏みしめ、拳を握る。

気合は十分、覚悟も完了。ならば残るは、眼前の敵をブッ飛ばす強い意志だけ!!

全身からエネルギーを沸き立たせながら、ボーンレックスにギンッ!と鋭い視線を向ける。


『ホホウ・・・!その歳でそれほどまでの覇気を纏えるとは、素直に驚きだな。だが・・・、どれほどの気迫と覚悟で挑もうとも、お主では我々に勝つこと等出来んぞ・・・!!』


上半身を起き上がらせながら二つの眼孔からカッ!とまばゆい光を迸らせるボーンレックス。

それから口を大きく開けて思念波による雄叫びを上げる。


『我々はお前達のこれまでの行動をずっと観察していた。そして、娘子よ。お主の弱点も既に調査済みだぁ・・・!!』


「弱点だと・・・?・・・・・・・・・ま、まさか!?」


ボーンレックスが言わんとしていることが何か気付いた俺は、サッと青褪める。


『集え!出でよ!我が同胞達よぉぉー!!!』


『オオォォォォオオオオオオンッ!!!』とボーンレックスが吼えた瞬間、中庭にいる俺達を囲むように次々と青白い人魂のような炎が出現し、それが消えた後には半透明の姿の例のアレ(幽霊)が姿を現した。


『さあ!何処まで抗う事が出来るのか、見せてもらおうか娘子よっ!!!』


ボーンレックスは俺に向かってそう言いながら、再び『オオォォォォオオオオオオオンッ!!』と雄たけびを上げるのであった。





次回投稿は7月16日予定です。

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