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外伝ミッション1-6 それぞれの洋館探索・・・!?


時刻は夕方五時頃。太陽は地平線の向こうへと落ちて行き、ほのかに輝く月が頭を出そうとする時間帯。

情報屋が暮らしているとされる洋館の中にある、とある部屋。

部屋の隅には左右対称のように揃えられている本棚と衣装棚。

部屋の中心にはこれまた左右対称に並ぶ二つの色褪せてボロボロになったソファと間に置かれたテーブル。

そして部屋の奥には、昔は何かしらの書類仕事の為に使用されていたと思われる執務用の机が置かれていた。

その背後には五㎝ごとの網目状の筋が入ったニm近くありそうな大きな窓ガラスが存在し、そこから今にも沈みそうな太陽から届く夕日が部屋の中を照らし、掛けられたボロボロのカーテンの影もまた部屋の中に映し出されていた。

部屋の形式を見る限りでは、おそらく執務室か、もしくは応対室のような役割を持っていた部屋であることが分かる場所。

その部屋のとある場所からカタカタカタと何か金属質な物が細かくぶつかった際に鳴る音が聞こえていた。

音の出所はと言うと、部屋の中に存在する執務用の机の下からであり、そこにいた人物の着ていた服が机にぶつかることによって鳴っていた音であった。


「オバケ怖いオバケ怖いオバケ怖いオバケ怖い・・・・・・」


机の下にまるで隠れる様に入り込んでいたのは、悪の組織アンビリバブルの幹部ディーアルナであった。

普段は快活な様子を見せていた筈の彼女であったが、現在は顔色を蒼白にさせ、独り言をブツブツ言いながら体をガタガタと震えさせていた。

何かに怯えている様子を見せているその姿は、傍目から見てもまともな精神状態であるとは到底言えなかった。


「ううぅ・・・!こんな所、来るんじゃなかった・・・!?ブレーバーの奴、帰ったら覚えてろ・・・!!」


アイマスクの間から覗かせる赤い瞳を落ち着きなく震わせつつ、その目元に大粒の涙を滲ませながら、この洋館に行くように命令を下したブレーバーに恨み言を溢すディーアルナ。

そもそも、どうして彼女がこの部屋にいるのかと言うと、それは戦闘員二号と話していた時に出現した幽霊から逃げた時にまで時間を遡る。

あの後、幽霊が目の前に現れたことで錯乱状態となったディーアルナは悲鳴を上げながら洋館の中を逃げ回っていた。

廊下を走り、階段を駆け上がり、そして最終的にこの部屋の中に逃げ込んだ彼女は、丁度そこにあった自身が隠れられそうな机を見つけて潜り込んだのである。


「うぅ・・・、うぅぅうううっ・・・・・・!?」


尚、この状態となってから、かれこれ数十分の時間が経過していたのであるが、未だディーアルナが落ち着きを取り戻すことは出来ていなかった。







その頃、ディーアルナに置いて行かれた形となってしまった戦闘員二号はと言うと。


「・・・イッ、イーイー、イーイイー・・・!」(・・・ったく、一体何処に行ったんだ、ディーアルナ様は・・・!)


現在彼は、自らの上司であるディーアルナの捜索兼洋館の探索作業を行っていた。

実を言えばディーアルナが幽霊からの逃走を始めた時、当然戦闘員二号も彼女の後を追いかけようとしていた。

だが、ディーアルナの足の速さが恐怖心が振り切れたためなのか、脳のリミッターが外れでもしたかのように普段の倍以上早くなっており、戦闘員二号の足では全く追い付く事が出来なかったのであった。


「イー、イイイーイー、イッイー。イーイーイイー・・・・・・。」(しかし、色々とオーバースペック持ちなディーアルナ様が、まさかオバケが苦手だなんて思っていなかったな。その原因となった内容は色々とおかしかったが・・・・・・。)


ディーアルナが話していた過去話を思い出した戦闘員二号は溜め息を吐いた。

軍人の幽霊ってなんだ。しかもなんでそれとバトルことになってんだ。というか、それを修行と称して子供にやらせる彼女の母親も一体何考えてんだ。・・・・・・と、色々とツッコミ所満載な部分に対して内心でツッコミしまくる。


「・・・・・・イ?イー、イイッ・・・?」(・・・・・・ん?なんだ、この匂いは・・・?)


そうやって廊下を歩いていた戦闘員二号は、何かの匂いを感じて足を止めた。


「イッ・・・、イイー?」(こいつは・・・、アルコールの匂いか?)


スンスンと鼻を鳴らす戦闘員二号。

芳醇な果実の香りすら感じられるそれを嗅ぎ取った彼は、その正体を確かめるために匂いの元へと足を進めた。

ちなみにディーアルナを探さなくていいのかという疑問が出て来るとは思うのだが、「戦闘力も逃げ足もある彼女なら、何かあってもどうにか出来るだろう」とディーアルナの肉体スペックを知っていた戦闘員二号はもしもの事態が起こることはないだろうと思っていた。


「イイイー・・・。」(匂いはここから来ているみたいだな・・・。)


戦闘員二号はとある扉の前で立ち止まる。

現在彼がいるのは洋館の西側渡り廊下、位置的には正面玄関に近い場所。

そこにあったのは、見た目は頑丈そうな鉄の扉。厚さも十cmとかなり分厚く、並大抵の事では破壊できなさそうであった。

とはいえ、それは本来であればと言う言葉が前に付けられる。

扉にはしっかりと鍵がかけられている様なのだが、どうやら扉を固定する留め金が片方壊れてしまっているようで、力は必要だが押し込むことで容易に鉄の扉を開く事が出来た。


「イッ・・・!?イイッ・・・!イイイーイイー。イイッイー・・・!」(む、う・・・!?こいつは凄いな・・・!部屋の中いっぱいにアルコールの匂いが充満してやがる。特にあっちにあるタンスから強く匂って来るな・・・!)


部屋の中に入った戦闘員二号は、まるで熱気の様にムワッとするアルコールの匂いに思わず(むせ)た。

それから周囲を見渡して、部屋の中の左側にあるタンスから匂いが漂ってきていることに気付いた。

近づいて色々と調べてみると、戦闘員二号はタンスが横に動くことに気付いた。


「・・・・・・イッ?イイッ、イー。」(・・・・・・ん?こいつは、隠し通路か。)


タンスを横に動かしてみると、そこには通路のようなモノを見つけ、その先に下に降りる階段も発見した。

またタンスを動かした瞬間、通路の先から今までよりも倍以上に濃いアルコールの匂いが噴き出すように漂ってきたのを感じ、戦闘員二号は思わず鼻を押さえた。


「イイッ・・・!?イーイイー、イー・・・!」(なんっつぅー匂いだ・・・!?これだけ濃いと匂いだけで酔いそうだな、これは・・・!)


あまりにも濃いアルコールの匂いに、最初は階段を下りるか下りないか迷った戦闘員二号だが、この隠し通路の事も考えて、もしかしたら他にも仕掛けがあって、その中には脱出につながるものもあるかもしれないと考え、意を決して先へと進むことにした。

階段を下りて行く戦闘員二号。

だが、下りて行く最中に何かがおかしいと感じ始めた。


「イイイ・・・。イーイーイー、イイー・・・?」(段数的にもう一階には下りている筈・・・。それなのにまだ先があるってことは、この階段は地下に続いているのか・・・?)


そう疑問に思いながらも、足を止めない戦闘員二号。

まさか地下に行くことになるとは思ってはいなかったが、だからと言ってこの先に仕掛けが無いとは言い切れなかった事もあり、結局は進むことにした。


「・・・・・・イッ、イイー、イー・・・?」(・・・・・・こいつは、ワインセラー、か・・・?)


階段を降り切った先で戦闘員二号が見た光景は、幾つものワインが並べられ、収められていた木造の大型ワインセラーであった。

どうやら先程から漂って来ていたアルコールの匂いは、ここから漏れ出ていたモノだったらしい。


「イッ、イイイッ・・・。イー・・・、イイーイー・・・?」(しかし、なんでここにワインセラーが・・・。しかもこの綺麗さ・・・、埃の一つもないってことは誰かが管理しているという事か・・・?)


おそらく管理しているのは、洋館の主である情報屋かもしれないと戦闘員二号は思った。

それから彼は、アルコールの匂いに耐えながら部屋の中を隈なく調べてみたが、出口になりそうなものは見当たらず、また何かの仕掛けっぽいモノも見つけることが出来なかった。


「イッ・・・!イイー。イイッ、イーイーイイイー・・・・・・。」(くそっ・・・!当てが外れたか。仕方がない、一旦上に戻ってディーアルナ様と合流するか・・・・・・。)


溜め息を吐きつつ、自身が元来た道を歩いていく。

階段を上り切って最初の部屋に戻った戦闘員二号は、そこで己の体がユラリとふらつくのを感じた。


「イイッ・・・!?イイー・・・。イッイイー・・・?イイイッ、イーイー・・・・・・。」(おっと・・・!?むぅ、足元が覚束ない・・・。あの濃い酒気に中てられたか・・・?サイボーグである俺を匂いだけで酔わせるなんて、一体どんな酒なんだか・・・・・・。)


飲んで見たいような、飲みたくないような。そんな思いを抱えつつ、ギィィィッ・・・!と鉄の扉を開ける戦闘員二号。


「ヴァァァアアアッ・・・・・・!」


「カタカタカタカタ!」


『こぉんばぁんわぁ~・・・!』


そこには幽霊とゾンビとスケルトンの軍勢が・・・・・・!?








「イィィィイイイイーーーッ!?!?」


「ひぃっ・・・!?・・・・・・今の声って、戦闘員二号か・・・?」


机の下に隠れて体を震えさせていた俺は、突如聞こえて来た悲鳴に思わず声を上げた。

そして聞こえて来たその声が戦闘員二号のものであることに気付いて、思わず呟く。


「・・・そ、そういえば、逃げることに必死で、アイツの事忘れてた・・・・・・。」


そこでようやく正気に戻った俺は、体を震えさせつつも、ゆっくりと机の下から這い出た。

仲間を置いていくなんて何やっているんだと、自分に叱咤しながら何とか立ち上がり、それから及び腰の状態で部屋の扉まで移動する。


「な、なにもいないよな・・・!大丈夫だよな・・・!?」


それでもやっぱり例のアレ(幽霊)が怖かった俺は、勢いよく扉を開けることが出来ずに、そっと開けた扉の隙間から廊下を確認する。

視線を左右に向け、見える範囲に何もいないという事が分かった俺は、ゆっくりと扉を開けた。


「うぅっ・・・!?二号の奴、一体何処にいるんだろう・・・?」


すっかり日が落ちて真っ暗になり、月明かりだけが光源となっている廊下。

その中を両手で体を抱きしめながら俺は歩いていた。

俺が現在いるのは洋館三階の東渡り廊下であり、先程まで俺が隠れていた部屋はこの東渡り廊下にあった一室であった。

どうして俺がここにいたのかと言えば、正直言ってよく覚えていなかった。

戦闘員二号と話をしている際に幽霊が現れた時、俺の頭は逃げることでいっぱいになっていて、他の事を考える余裕などない状態であった。

がむしゃらに走り回って、おそらく本能的に隠れられそうな場所を探し回った結果、あの執務室のような部屋の中に隠れていたのだろうと思うが、逃げ回っていた時は正気ではなかったので状況から判断する自己分析であったが。

幸いと言っていいのか分からないが、これまで自分が通って来た道は覚えているので、少なくとも元の道を戻るのに迷う事はないだろう。

また、歩いている途中で気付いたのだが、どうやら俺が歩いているこの廊下の窓には木板が打ちつけられて塞がれていないのが確認できた。

先程から廊下を照らしている月明かりも、しっかりと嵌め込まれた窓ガラスから来ているようで、どうしてここだけ塞がれていないのか不思議だと、内心で首を傾げはしたが、「真っ暗闇よりはマシだな」と深く考えないようにした。


「確か、この扉の先にある階段を上って来たんだよな・・・。」


渡り廊下の先、方向的には正面玄関側にある扉を開け、その扉の向こうに下の階に降りるための階段を見つけた。

二階にあった地図でも確認していたが、どうやらこの洋館は複雑な構造で作られているらしく、屋敷の中からはこの階段からでしか三階への行き来が出来ない形になっている様であった。

階段を下りて行くと、再び扉を見つけたのでゆっくりと開けて行く。

扉の先にはテラスのような形の通路があり、テラスから下を覗いてみると正面玄関ホールが見渡せた。

俺から見てテラス右側にはもう一つ扉があり、自身の記憶が確かならその扉の先に二階に下りる階段があったはずであった。


「とりあえず、この扉を通って二階に戻ろう。戦闘員二号も洋館の調査を行いつつ俺の後を追いかけてきているかもしれないし・・・。」


戦闘員二号の性格と仕事人っぷりを思い出して呟く俺。

さっさと彼と合流しようと考えつつ二階へと行ける扉を開けた。


「「「ヴォォォオオオ~~~ッ・・・!」」」


――――――そこで、満員電車にでも乗っているかのように詰め込まれたゾンビ共の姿を見つけた。


「う、うぉぉぉおおおっ!?」


思わず驚いて後ろに大きく跳び下がる。

ゾンビ共は扉が開けられた瞬間、まるで雪崩のように飛び出して来て、俺を捕まえようと腕を伸ばしてきた。


「く、くそっ・・・!?」


バンッ!


「「「カタカタカタカタ・・・!!」」」


「嘘だろっ・・・!?」


舌打ちをしつつ、三階へと上る扉へと向かおうとした俺だったが、振り向いた瞬間にその扉が開かれて、中から大量のスケルトンが出て来た。


「ちぃっ・・・!?仕方がない・・・!」


左右から挟まれる形で追いつめられた俺は、伸ばされてきたゾンビとスケルトン達の腕に捕まる前に、舌打ちを一つしつつテラスの柵を蹴って正面玄関ホールへと飛び降りた。


「よっと・・・!どうやら、アイツ等は下りて来ないみたいだな・・・・・・。」


正面玄関ホールに飾られていた絵の前に着地した俺は、肩ごしに後ろを振り返り、ゾンビとスケルトン達の姿を見た。

奴等はテラスの上で押し合いへし合いの状態になってはいたが、こちら側へと降りようとはせず、只々ジッとある筈のない瞳をこちらに向けていた。


「しかし、これからどうするか・・・。戦闘員二号とは逸れたままだし、一号と三号も助けないといけないけど、そのためには確実にアレ(幽霊)と向かい合う羽目になるよなぁ・・・・・・」


はぁ・・・!と溜め気を吐き出しつつ、立ち上がって目の前へと視線を向ける。


『・・・・・・・・・』


「・・・・・・・・・え?」


そこで思わず呆けた声が出た。

驚くべきことに、いつの間に目の前に見覚えのある巨大な恐竜の骨の顔が姿を現していた。


『ギャァァァアアアアッ!』


それが正面玄関ホールに飾られていたティラノサウルスの白骨標本であるという事を理解した瞬間、それは骨の腕を振り上げて来た。


「うおっ・・・!?おおぉぉぉおおおーーーっ!?!?」


正直何が起こっているのかさっぱり分からなかったが、それでもその一撃を食らう訳にはいかないと回避する。

横にステップし、階段の手すりを蹴って跳び上がり、更に白骨標本の頭の上も蹴って大きく跳躍。正面玄関ホール一階へと着地した。


「こ、今度は一体何が起こっているって言うんだよ・・・!さすがにこれ以上はお腹いっぱいなんですけど・・・!?」


『オオォォォオオオオンッ・・・!!』


ティラノサウルスの白骨標本に振り返りつつ、思わずそう叫ぶ。

「もう本当に勘弁してほしい・・・!?」と、冷や汗を流しつつ内心でそう思う俺であった。




執筆再開!

『カオスゲート』の改訂版も投稿しているので、興味のある方は是非読んでくれるとうれしいです。

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