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外伝ミッション1ー3 迫り来る恐怖・・・!?


一階の調査を終え、玄関ホールにあった階段を使って二階へと上る。

階段は一段一段足を置く度に、ギシギシと嫌な音を響かせる。

階段の脇に備え付けられている手すりも、元は優美な装飾が施されていたと思われるが、長い年月でその表面は剥げたり、腐り落ちたりなどしていた。

階段を上り切ると、正面に女性の絵が描かれた大きな額縁が飾られていた。

本来なら正面玄関ホールから見えるものだったのだろうと思われるが、俺達が入った当初から洋館の中は薄暗く、近くに来るまでそれがあることに気付けなかったようだ。


「イ~、イイー・・・。」(ひぇ~、大きな絵だなぁ・・・。)


「イーイイー。イイイーイー。」(大きさ的には人二人分くらいはあるな。飾られている絵は表面がだいぶ劣化して色褪せているようだが。)


「それでも描かれている女性が相当な美人なのは分かるな。」


そう話しながら額縁に飾られている絵を見上げる。

戦闘員二号の言う通り、絵に使用されている塗料は経年劣化のせいか色褪せていた。しかしそれが絵に描かれた女性の姿を霞ませることはなかった。

腰まである長い白髪と赤い瞳、目元は柔らかく目尻を下げ、口元は優しそうな笑みを浮かべている。体にはその体型にフィットした形の所謂マーメイドドレスと思われる赤いドレスを身に纏った西洋人風の顔立ちの女性がそこには描かれていた。


「イイー、イー・・・。イイイー・・・。」(ディーアルナ様の言う通り、相当な美人さんだねぇ・・・。こんな綺麗な人が昔にはいたんだねぇ・・・。)


「そうだな・・・。」


「・・・・・・イッ、イイッ・・・!?」(・・・・・・って、こんな所で絵を見入っている暇は俺達にはないだろう・・・!?)


描かれている女性の姿を見て、見惚れる俺達であったが、そんな中で一番最初に正気を取り戻した戦闘員二号が声を上げる。

戦闘員二号の声を聞いた俺と戦闘員三号は「はっ・・・!?」と正気に戻った。


「そうだった・・・!こんな所で足止め食っている暇ないんだった・・・!」


「イーイー・・・!イイー・・・。」(やばいやばい・・・!思わず見入っちゃった・・・。)


正気に戻った俺達は顔を見合わせてどう行動するのかを話し合う。


「それで、洋館の奥に行く方法だが、右か左か、どっちの方向へ行く?」


「イイイー、イイー。イーイー。」(左にある扉が図書室に出るという事は、さっきの図書室の調査の際に確認済みだ。ここは右側にある部屋を見て周ろう。)


戦闘員二号の提案を聞いた俺と戦闘員三号は頷き、行動を開始した。






◆ ~二階客間その一(正面玄関から見て二階右奥の扉)~


「この部屋も客間、か・・・?物が何もないな・・・?」


「イーイイー。」(一階の客間みたいにあったベッドやタンスもないね。)


「イーイーイー。」(おそらくどこかに持ち出されたんじゃないか?)


「・・・・・・そういえば、瓦礫や木材で塞がっていた一階の廊下に、何故かベッドやタンスがあったけど、もしかしてこの部屋にあった物か・・・?」


「・・・・・・イー。イイッ、イーイイイー?」(・・・・・・そうかもしれないな。おそらくどこかに運ぼうとして、二階の床が壊れた事で一階に落ちてしまったんじゃないか?)


「・・・イー、イイーイー?」(・・・だとしたら、一体だれが運ぼうとしたんだろう?)


◆ ~二階客間その二(正面玄関から見て二階手前右の部屋)~


「イイー。イーイー?」(ここにもベッドとタンスがないね。ここにあったのも運んで行ったのかな?)


「イイー、イーイーイー、イイイー、イー、イイッ・・・?」(一階の両方の廊下が塞がれていたことを考えると、おそらく片方の通路からベッドやタンスなどの家財を運ぼうとして床を踏み抜いて落ちてしまい、仕方がなくこの部屋から持ち出した家財を反対の道から持っていこうとして、そこでも床を踏み抜いて落ちてしまった、と言った所じゃないか・・・?)


「状況証拠ではあるけど、さっきの部屋とこの部屋、それから一階の二つの廊下が塞がれている事を考えると、その通りなんじゃないかと思えて来るな。まあ、ここで立ち止まっていても仕方がないから、次へ行こう。」


◆ ~二階廊下(玄関から見て右上)~


「・・・・・・見事に大きな穴が空いているな。二m位か?」


「イイッ、イー。イーイー、イイッイー。」(抜け落ちた床の断面を見る限り、どうやら内部の板が腐って空洞化しているみたい。僕等ならこれくらいの距離を飛び越える事は可能だけど、向こうに着地した瞬間にその衝撃でさらに床が崩れ落ちると思うよ。)


「そうか・・・。下手に衝撃を与えるのはまずいし、どうしよう・・・。」


「・・・イッ、イイッ。イイイー、イーイイー。」(・・・二人とも、こっちを見てくれ。洋館から突き出たように作られているテラスだが、どうやらここを経由すれば向こう側に行けそうだぞ。)


「イッ!イイッ。イーイー。」(本当だ!こっち側と向こう側に扉がある。これなら無難に進めそうだね。)


「二人の言う通りだな。わざわざ飛び越えるよりも、こっちの方が安全だろう。」






床に穴の空いた二階の廊下を、近くにあった洋館から突き出すようにして作られていたテラスを経由して遠回りしながら進む。

テラスの出入口から再度廊下へと入った俺達の目の前には、ボロボロのレッドカーペットが敷かれた長い廊下が続いている様子が見えた。

目の前に見える廊下は午後二時というまだ日が高い時間帯の筈なのに薄暗い。どうやらこの廊下は洋館の構造的に日の光が入らない位置に当たるようで、その暗さゆえに廊下の最奥に扉があることは分かるのだが、その影形の判別が出来なかった。


「長い廊下だな・・・。これ、もしかしてまっすぐ行けば洋館の裏側に出られるんじゃないか?」


「イイッイー・・・。・・・・・・イッ?」(そうだったら、楽が出来て助かるんだがな・・・。・・・・・・ん?)


溜め息を吐く戦闘員二号だが、ふと視界の端に気になるものが見えたので、そちらへと顔を向ける。


「イッ、イー?・・・イッ?イイッ、イー?」(どうしたの、二号?・・・あれ?もしかしてこれって、この洋館の地図?)


戦闘員三号が二号の視線を追いかけると、そこには洋館の全体図が描かれた地図の様なものが壁に飾られていた。

どうやらこの洋館は大きな長方形の形をしているようで、その中心に正四角形の囲いが描かれているのが分かった。


「イイイーイイー。」(四角い形をしているという推測は当たっていたようだな。)


「イッ。イーイー、イイイーイー?」(みたいだね。洋館の構造を考えると、多分この中心の囲いがさっき見た中庭に当たるんじゃないかな?)


「・・・そうすると、今俺達がいるのは、この東側の渡り廊下の部分だろうな。」


戦闘員達の話を聞きつつ地図の内容を確認していた俺は、自分達の現在地と思われる場所を指差す。


「やっぱりこの廊下を真っ直ぐ進めば裏側――――――地図に表記されている北側に行けるみたいだな。」


「脱出経路の確保は、思ったよりも簡単に出来そうだ」と、安堵するような息をホッと吐く。

しかしそんな俺に対して戦闘員達は油断するなと忠告をしてくる。


「イイッ、イー。イイッ、イイイッ、イーイー。」(油断しない方がいいと思うぞ、ディーアルナ様。最初の一号を連れ去った骨の腕の件や、続いて現れたゾンビ共の件を考えると、また何かあってもおかしくないぞ。)


「イー。イイッ、イー・・・。」(そうだね。もしかしたら、今度は幽霊が出たりして・・・。)


「フラグを立てるような事言うのやめろ・・・!?考えないようにしていたのに・・・!」


戦闘員達の忠告を聞いた俺は、その光景をつい想像してしまい、顔色をゾッと青褪めさせるのであった。






渡り廊下の途中には二つの扉が存在しており、一応部屋の中を確認してみたのだが、目ぼしい物は何もなかった。


「うわぁっ!?び、ビックリしたぁ・・・!」


否、正確には部屋自体が無かったのだ。扉を開けてみたら床がなかったことに驚き、危うく足を踏み外してしまう前に入口の壁に捕まって落ちるのを防ぐ。


「イッイー・・・、イー。イイイッ。イー、イイー?」(うっわぁ・・・、凄いなぁ、これ。まるで巨大な何かに破壊されたような跡だね。一号を連れ去った、あの大きな骨の手がやったのかな?)


どうやら元々は何かの大部屋であったことが、開けた扉から確認できる周囲の痕跡から分かった。

しかし、戦闘員三号の言う通りの破壊のされ方であり、理由は不明だが一階と二階部分だけが抉られたようになくなっていた。

頭上にはおそらく三階部分の床板と思われる物が見え、所々に穴が開いているのも確認できた。


「イー・・・。イッ、イイイーイー・・・?」(むぅ・・・。しかし、なんだってこんな特定部分だけを綺麗に切り取ったかのようなことをしたんだ・・・?)


戦闘員二号の言葉に、「確かに」と頷く。こことは反対にある西側の渡り廊下の方は、こちらのような破壊された後はなく、しっかりと形のある一階から三階まで壁が並んで見えていたことから、その疑問が余計に浮かんできてしまう。


「とりあえず、先に進もう。このままここにいても分かる事なんてないし。」


「イー。」(それもそうだな。)


「イ~。」(了解~。)


俺達はこれ以上部屋がなくなったことを考えても仕方がないと思い、扉を閉めて探索を再開する。







渡り廊下を進んでいくことで、テラス付近からは確認できなかった最奥の扉が見えるようになった。

そこは地図に表記されていた洋館の北側へと出る扉であり、俺達はその扉の前へと到着したのだ。

先頭に立っていた俺は、ドアノブに手を掛けてゆっくりと扉を開ける。


「ここは・・・、玄関ホール?」


扉を開けた先には正面玄関ホールと似た形式の玄関ホールの光景が広がっていた。


「イーイイー、イイイーイー。」(どうやら北側の玄関ホールみたいだが、南側の正面玄関ホールよりも見た目は狭いようだな。)


「イイー、イーイー。イーイー?」(あっちは三階までの吹き抜け式だったけど、こちらは二階までみたい。多分この上には何かの部屋があるんじゃないかな?)


戦闘員達の声を聞いて頭上を確認すると、確かに天井の壁が見える。

俺達が今立っている廊下はホール内では出っ張るような形で作られたもののようで、カタカナのコの字のようになっていた。

廊下の端には一階へと降りる階段があり、どうやらそこで一階と二階を行き来するようになっているようだ。


「・・・イッ!イイッ、イー!」(・・・あっ!あそこを見てよ、二人とも!)


周囲を警戒しつつ状況確認を行っていると、突然戦闘員三号が玄関ホールの一階中心部を指差した。


「イッ!イイッ!」(あそこ!あそこに一号がいる!)


「え・・・?」


「イー・・・!?」(なんだと・・・!?)


戦闘員三号の言葉を聞いた俺と戦闘員二号は、驚いて彼が指を差す方向に視線を向ける。


「・・・・・・・・・」


そこには戦闘員三号の言う通り、フラフラと体を左右に揺らしながら立っている戦闘員一号の姿があった。


「イイイーーーッ!」(一号ーーーッ!)


「ちょっ!?三号・・・!」


「イッ!イイッイー・・・!イイイーイー・・・!」(おいっ!先走るな、三号・・・!まだ安全は確認されていない・・・!)


戦闘員一号を見つけた戦闘員三号は嬉しそうにしながら彼の元へと向かい、俺と戦闘員二号はそれを追う形で一階へと降りる。


「イーイー、イー!イイー!」(無事だったんだね、一号!どうして連絡をくれなかったのさ!)


『・・・ああ、すまない。心配を掛けたな、三号・・・。』


「イー!イイイー!」(本当だよ!無事なら無事って言ってくれなきゃ!)


『そうだな・・・。次からは、そうするさ・・・。』


戦闘員三号は戦闘員一号の元に辿りつくと、心配したのだと声を掛ける。

しかし、戦闘員一号は彼に振り向くことなく会話をする。


「イー・・・!イイーイー・・・!」(あのバカ・・・!話を聞けと言うのに・・・!)


「どうやら姿形は一号であるのは間違いないみたいだけど・・・、なんだろう。なにか、おかしいような・・・。」


その二人の会話を、階段を駆け下りながら聞いていた俺と戦闘員二号。だが、俺はそこで何か言葉に出来ない違和感を感じた。

戦闘員一号本人かどうか確認するためにブレスレットの識別機能を使うと、反応は確かに一号本人であることを示している。しかし、それが違和感を解消する理由になるかと言えば、漠然としながら違うと思えてしまう。


『それよりも、三号・・・。実はあっちで凄い物を見つけたんだ・・・。一緒に確認してくれないか・・・?』


「イッ?イイー?イー?」(凄い物?あっちは出入口用の扉だよね?何があるの?)


『ここからの脱出に使えそうな物さ・・・。結構大きいから、俺一人では運べなくてね・・・。手伝ってくれるか・・・?』


「イッ。イー!」(うん、分かったよ。一号!)


拭い去れない違和感に疑問を抱きつつも一階に到着した俺達は、戦闘員一号にどこかへ案内されようとしている戦闘員三号の姿を目にする。


「イイー!イーイー!イーイイー!」(止まれ、三号!ソイツについていこうとするな!ソイツは一号じゃない!)


俺と並走していた戦闘員二号は、戦闘員一号と共にどこかへ向かおうとしていた戦闘員三号を止めようと声を上げる。

ハッ!とした彼の様子から推察するに、どうやら俺と戦闘員三号には気付けない何かに気付いた様であった。


「イッ?イー、イイーイー。イイッ。イイイーイーイー・・・。」(えっ?もう、何言っているんだよ、二号。彼は一号だよ。識別反応にもしっかりと彼だと表しているし・・・。)


「イッ!イイイッ!」(バカ野郎!いい加減何かがおかしい事に気付け!)


戦闘員二号の引き留めようとする声。

それに対して「何を言っているんだろう」と首を傾げて(顔はマスクで見えないけど)不思議そうな顔をする戦闘員三号であったが、次に聞こえて来た戦闘員二号の言葉に驚愕した。


「イイッ!イイイッ、イー!イイイーイー!!」(思い出せ、三号!俺達戦闘員は、イー!と喋る事しか出来ない筈だろうが!!)


「――――――ッ!?」


戦闘員二号のその言葉を聞いた俺は、ようやく違和感の正体が分かって、ハッ!と目を見開いた。

それは戦闘員一号の発声であった。

彼等戦闘員は、彼等に取り付けられている音声機が中古の不良品である為、どれだけ喋ろうとしても「イー」という声しか出せない。

意思疎通こそテレパシーリンクという装置を使用することで可能だが、実際には言葉を話せるわけではない筈なのだ。

しかし、先程から聞こえて来ていた戦闘員一号と戦闘員三号の会話では、その「イー」という声が聞こえなかった。

それどころか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

だからこそ俺は無意識的にその部分に対して違和感を感じ、戦闘員二号も自身が「イー」としか喋れないからこそおかしい事に気付いたのだろう。


「イッ・・・?」(えっ・・・?)


おそらく戦闘員三号もまた、その違和感を感じていたのだろう。初めはその事を戦闘員二号から指摘されて疑問の声を上げていたが、そのすぐ後にハッと何かに気付いたような反応を見せる。


『・・・ああ、残念だ。』


だが、その事に俺達が気付くのは、どうやら一歩遅かったようであった。


『最後まで気付かなければ良かったのに・・・。』


戦闘員一号は戦闘員三号へと振り向くと、顔を俯かせながら目の前にいる戦闘員三号の両肩を掴んだ。


「イイー・・・?」(い、一号・・・?)


()()()が悪いのだぞ・・・。興味本意でこんなところに来たのだから・・・。』


ギリギリという音が聞こえそうな程、戦闘員三号の方を力強く掴む戦闘員一号。


()()()()が悪いんだぞ・・・。ここに来なければ、こんな恐ろしい目に遭わなくて済んだのに・・・。』


そして俯いていた顔が、バッ!と勢いよく持ち上がる。


『さあ君達も・・・、()()と同じになろうよ・・・!そしてこの館で・・・、面白可笑しく暮らそうよ・・・!』



戦闘員一号の電子的なアイマスクから赤い眼光が怪しく揺らめき、目元に当たる部分からは血涙のような赤い液体が流れ、そしてタイツによって隠されていた口元を露出させ、頬を引き攣らせるように三日月状の笑みを形作った。


「イィッ・・・!?」(ヒィッ・・・!?)


その恐ろしい形相を見た戦闘員三号は、悲鳴を上げながら戦闘員一号の元から離れようと体を動かそうとするのだが、しかしそれは彼の肩を掴む戦闘員一号の両手により阻止される。


『逃がさないよぉ・・・。君もこれから()()と同じにしてあげるからぁ・・・。』


「イ、イィィィッ!?イイイィッ!?イイッ!イイィッ!」(イ、嫌ァァッ!?だ、誰か助けてぇ!?二号ぉ!ディーアルナ様ぁ!)


戦闘員二号は自らに迫り来る恐怖に悲鳴を上げる。

当然俺達は彼を助けようとしたのだが、戦闘員一号の姿をした何者かはそれを許すことはしなかった。


『おっと、折角の獲物を取り上げられては困る。貴様等にはコイツ等とダンスを踊って頂こう』


パチンッと奴が指を鳴らした瞬間、周囲の扉という扉から数多のゾンビ達が姿を現した。


「「「ヴァァァ~っ・・・!」」」


「「「カタカタカタッ!」」」


『『『ケケケケケケッ!』』』


ゾンビだけではなかった。その中には動く人形の骨一緒になって進行し、や半透明の薄ボンヤリした何かが宙を自在に飛び交っていた。


「イイッ!?イイー、イー・・・!」(おいおいおい!?洒落にならんぞ、これは・・・!)


「・・・・・・!?」


戦闘員二号は驚きの声を上げるが、しかし同時に、その両手にマシンガンという武器を構える。

冷や汗を流してこそいるものの、その行動から推察するに、頭の何処かでは既に予想していたのか、表面上はそんなに驚いているようには見えなかった。


「イー、イイー。イイイー?・・・・・・イッ?イーイイーイー・・・!?」(どうする、ディーアルナ様。この不利な状況をどう乗り切る?・・・・・・おい?一体どうした。何故返事をしない・・・!?)


「・・・・・・ッ!?」


しかし、俺は彼とは違った。

確かに俺も彼と同じようにこの様な状況になるのではないかと予想はしていた。

正面玄関でのゾンビ出現の一件以来、おそらく何処かで戦闘になるだろうと覚悟はしていた。

だが、()()はない。

()()だけはない。

アレが出現することだけは予想だにしていなかった。

否、心の中では不安という形ではあったが、出現の可能性そのものは感じていたのだろうと、自分のことながら思う。

それを想像する段階にまで持ってくるとなれば話は別であるが。


『ケケケッ?』


アレと目があったような気がして、ゾワゾワ!と背筋が恐怖に泡立つ。

己の体は無意識的にカタカタと震える。

唇をフルフルと震えさせながら、パクパクと口を開閉させるが、思うように声が出せない。

目は見開かれ、瞳はまるで乱視状態のようになって焦点すらまともに合わせられない。。


「・・・・・・!?!?」


もし他人が現在の場の状態と俺の視線を辿ることが出来れば、動けなくなってしまった理由がなんとなく分かるだろう。

その原因を一言で言ってしまうのであれば、俺ことアンビリバブル幹部ディーアルナという人間は、先程から頭上を飛び交っている半透明の薄ボンヤリした幽霊を連想させるモノ(オバケの類い)が大の苦手だという事である。





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