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ミッション27 大型猫科動物に遭遇しました・・・!?


テクテクテクと秘密基地の廊下を歩く。

先程食堂で戦闘員達と朝食を食べた後、俺は自室に戻って外へと出かける準備をしていた。

何故そんなことをしているのかと言うと、あれから三日待っても件のネコであるミィちゃんの飼い主からの連絡がなく、また秘密基地内に(何故か)少量ながら貯蔵されていたキャットフードなどの食べ物が無くなって来たこともあり、情報収集とミィちゃんの食べる者の買い出しの為に出かけるつもりであったからだ。

生き物なので食べ物が無いと生きていけないのは当たり前。だからって人間の食べ物を与えるのはまずい。ネコにとっては塩分が多すぎたり、そもそも体質的に合わなかったりで体調不良の原因になる。

以前の外出の際に来ていた衣服である黒いハイネックセーターに青みのあるパーカー、白いショートパンツと黒タイツに着替え、財布の入った買い物袋を手に持って部屋を出る。


「イッ、イー。イイッ?」(あ、ディーアルナ様。お出かけですか?)


「・・・三号か。その通りだよ。無くなってきたキャットフードとか、あとはピョン太郎も気に入りそうなおもちゃとかも買おうと思ってね。」


部屋を出て少し歩くと戦闘員三号に出会う。

三号は朝食を食べ終えた後は情報管理室にいたそうだ。

ミィちゃんの飼い主から連絡が来ることを待つためという理由もあったが、本題としては現在とある調査の為に出かけている戦闘員二号との定時連絡の為にいたのだと言う。


「調査の為と言っていたけど、何を調査するために出かけたんだ?ブレーバーに聞いても確証がないからと教えてもらえなかったんだけど。」


「イッ、イー。イイイッ・・・。イー、イーイー、イイー。イイイー。」(すいません、ディーアルナ様。その件についてはまだ教えるなと言われていまして・・・。というか、ボス自身も結構半信半疑の所があるらしくって、無かったら無かったで別に構わない。精々あったら儲け物程度だって言ってましたからね。)


「・・・そうは言っても、一週間も前から調べていることを気にするなと言うのは無理があると思うけど?」


「イイイイイッ・・・・・・。イー、イイー・・・。イイッ。イーイー。イイー、イーイイー。」(アハハハハッ・・・・・・。そこは、まあ・・・。でももうすぐ帰って来る筈ですよ。元々一週間と言う期限付きでの調査でしたから。今日の定時報告でも見つかっていない様ですから、多分明日にでも調査を終わらせて帰って来ますよ。)


そう言って笑う戦闘員三号に対して訝しげな表情を向ける。

何故ここまで幹部である自分に情報を秘匿するのか分からない。

何らかの理由があるという事は彼等の様子を見れば分かるのだが、その理由が何なのか判明していないので余計不思議に思う。






戦闘員三号は、ふむ?と首を少し傾げる仕草をするディーアルナを見つつ、音にならない息をそっと吐きつつ、彼女には聞こえない程度の声でボソリと呟く。


「・・・イーイー。イー。」(・・・危ない危ない。なんとか誤魔化せた。)


ディーアルナが気付くことはなかったが、彼女の様子を横目で見ていた彼は、内心で冷や汗を流しつつも、何とか話を誤魔化せたことに安堵していた。

この件に関して彼女に詳細な情報を語る訳にはいかないというのは、()()()()()()()()()()()()()()()()として既に決まっていたことであった。

何せ現在戦闘員二号が調査しているモノは、もしかしたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()となるかもしれず、あの一軒以来そっち方面が完全に苦手となってしまった彼女に、その事を告げるのは酷であるとブレーバーと戦闘員達が判断したためである。

その為、調査内容について気にしているディーアルナには申し訳なく思いつつも、ブレーバーからの命令という理由での黙秘を貫く戦闘員三号。

内心では、出来る事なら調査に出向いている戦闘員二号には、例のモノを見つけられないで欲しいと思いつつ、廊下の曲がり角を曲がろうとして、


「・・・・・・!?」


―――――――――――――――そして、その先にあった光景を見て絶句した。







「・・・?どうしたんだ、三号。なんで立ち止まって・・・・・・」


俺は急に立ち止まった戦闘員三号を見て、どうしたのかと思いつつ、彼の視線の先へと顔を向け、


「グルルルルルルルッ・・・!!」


「・・・・・・はっ?」


―――――――――視界に入ったその巨体に、自身もまた彼と同じように絶句してしまった。


「イイイィィッ・・・!?イッ!イイッ、イィーッ!?」(アイエェェッ・・・!?ナンデ!トラ、ナンデェッ!?)


「・・・い、一体何処から入り込んで・・・・・・?」


何とそこには、通路の真ん中に身の丈が人間の三倍ほどもある大きなトラが、デンッ!と座り込んでいたのである。

金色と黒の縞模様の体毛に、その体毛に隠されていても分かるほどの発達した筋肉。ピンと真上に立つようにして伸びる先の毛が黒い猫耳。その巨体の背後でフリフリと優雅に振られている細長い縞々の尻尾。むき出しとなっている口にはギラリと光る鋭く尖った牙が乱立しているのが分かり、その口元には人型の何かが咥えられて・・・・・・・・・!?


「・・・・・・ん?・・・って、あれ、もしかして一号!?」


「イッ・・・・・・・イッ!イイイーイー!?イイッ・・・!?」(へっ?・・・・・・本当だ!あの口元にぶら下がっているのって一号だ!?もうすでに一号がやられちゃっていたの・・・!?)


その人型が一体何なのか気付き、驚きの声を上げる。

それは先ほど食堂で別れた筈の戦闘員一号であった。

戦闘員一号の頭は見事にガブリ!とトラに咥えられ、首から下の体は力なくダラリと垂れ下がっていた。


「くそ・・・。一号よ。お前の仇は必ず俺達が――――――」


「・・・・・・イッ、イイー・・・・・・」(・・・・・・勝手に、殺さないでくれぇ・・・・・・)


「――――――って、生きてたのお前!?」


トラに襲われたことで既に死んだものと思い、仲間の危機に気づけなかったことを悔やみながら仇を討とうと決意しようとしていた俺は、現在進行形で食われている一号からのまさかの生存報告に驚く。


「イッ・・・、イイッ・・・イーイー・・・イイッ・・・イー・・・、イ・・・イイッ・・・。」(ちょっと・・・、体の骨格部分・・・をやられて動けな・・・いけど・・・、何とか・・・、生きてるよ・・・。)


一号は頭を咥えられながら頑張って声を出し、体をプルプルと震えさせながら生きていることをアピールしていた。


「・・・・・・一応聞くけど、どうしてそんな状態に?」


「イイイッ・・・、イーイイー・・・、イイー・・・。イッ・・・イイッ、イイイッ・・・?イッ、イー、イーイー・・・。」(動物達の部屋に向かう途中で・・・、開けっ放しになっていた部屋を覗いたら・・・、そこにいたコイツに襲われて・・・。と・・・、いうか、そろそろ助けて、欲しいんだけど・・・?なんか、ミシミシって嫌な音が、頭に響くんだけど・・・。)


危機的状況の中で、現状に至るまでの経緯を律儀に教えてくれた戦闘員一号。

だが、それによって自らが咥えている獲物が生きていることを知ったトラが、止めを差そうと思ったのか、その頭を潰そうと顎に力を込め始めた。

ミシミシミシという何かが軋む音からメリメリメリという音に変化していき、それから段々とメキメキメキという音が鳴り響いてくるようになってきた。


「イッ、イイッ・・・!イイィー・・・!?」(あ、頭が・・・!頭が潰されるぅ・・・!?)


「待ってろ!すぐに助けてやるから!」


「イッ!?イイッ!?イー、イイー・・・!?」(ちょっ!?ディーアルナ様!助けるって、どうやって・・・!?)


「まずはアイツを怯ませて、一号を離させる。以前にも森の中で大型猫科動物と対峙した時に似たような経験をしたことがあるからな・・・。その時の状況を多少グレードアップさせたようなもんだ・・・!」


「イイッ、イイイー・・・!?」(似たようなって、ディーアルナ様の過ごしてきた環境ってどうなってるの・・・!?)


自身の経験談を聞いた戦闘員三号が、その唐突な経験談のカミングアウトに対し、当時の状況を想像したのか「アンタなにやってんの・・・!?」と戦慄しつつ内心でツッコミを入れた。


「行くぞっ!」


何故か驚愕の視線を送ってくる戦闘員三号を無視しつつ、俺は今にも頭を潰されそうな戦闘員一号を救うべく、トラの元へと駆ける。


「グウゥゥゥ!」


トラは自らに近づいてくる俺に対し、本能的な脅威を感じ取ったのか、近づかせるものかと前足を振るってくる。

その勢いはとても早く、一秒もしないうちに振り切られ、その威力は鋼よりも遥かに固いはずの通路の床に罅が入れられるほど。

しかもそれが連続で、前足が複数あるように見えるほどの速度で振るわれており、さながら高速稼働するプレス機の様であった。


「・・・ッ!・・・フッ!・・・よっ!」


だが、そんな攻撃の嵐の中を紙一重で避けながらトラの元へと着実に接近する。

右へ左へ。後ろに一歩回避してから前に二歩進み。さらに前へ進もうとするフェイントをかけてから、クルリとターンを決めつつその懐へ。


「グゥアッ!?」


トラが気付いた時には、俺の姿は既にトラの顎の下辺りにあった。


「ここだ・・・!奥義、【窮鼠猫噛(きゅうそねこかみ)】!!」


トラの死角に潜り込んだ俺は、トラの喉元に手を伸ばし、その喉肉を鷲掴む。


「グゥエッ・・・!?」


喉を捕まれたことで気道を潰されたトラは、息苦しさと吐き気を感じて、反射的に咥えていた戦闘員一号を吐き出した。


「イッ、イイィーッ!!」(一号、確保ぉーっ!!)


空中に投げ出された戦闘員一号を、地面に落ちる前に三号が見事にキャッチ!そしてそのまま通路の影に退避する。


「上出来だ、三号!」


その様子を見た俺は、気遣う相手がいなくなったことで最早遠慮をする必要は無くなったと判断し、喉肉を掴む手に更に力を込め、全力で地面に向けて引いた。


「はぁあっ!!」


「グゥアンッ!?」


力ずくでその体を引き倒されたトラは、自身の肉体が地面に叩き付けられた衝撃に堪らず悲鳴を上げた。


「・・・ちぃッ!」


トラを引き倒すと同時に大きく後退した俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「イイッ、イーッ!イー?」(おお、凄いっ!今ので倒せたの?)


「いや、駄目だ。アイツの肉、弾力性と頑丈性が普通じゃない。今のも本当だったら引き倒すんじゃなくて、アイツの喉肉を引き千切っていたはずだったんだ。」


「イイッ!?」(あの技ってそんなに物騒なものだったの!?)


自身が先程魅せた技が、かなり殺意の高い技であった事を知った戦闘員三号は、「なんという見た目詐欺・・・!?」と戦慄しつつ驚く様子を見せた。

というか、見た目詐欺とはなんだ。何故そんなことを言われなければならないのだろうか。甚だ疑問である。


「グッ、グルルルルッ・・・!」


そんな言葉のやり取りを戦闘員三号としている間に体を起こすトラ。

トラはこちらに視線を向けると、唸り声を出しながら姿勢を低くし、体を地面に伏せつつ襲撃の構えを取り始める。

それはまるで俺の事を観察している様な視線であり、自身の一挙一動を目で追って、襲い掛かる隙を探しているように見えた。

起き上がってすぐに襲い掛かって来るものだと思っていたのだか、無暗矢鱈にそんなことしないトラを見て、予想以上の賢さがあると警戒する。

もし飛び掛かって来たのであれば、変則的一本背負いからの腹部への連続集中攻撃を食らわせたのに!と声には出さずに内心で舌打ちをする。

とはいえ、迂闊に近寄ることも難しい。現状トラが地面に伏せいているのだって、先ほどの戦いから、喉元を晒しているのは危険だと理解した上での行動だと思われる。

戦闘経験を瞬時に反映できる賢さを考えると、同じ技はあまり効かないモノと考えた方がいいだろう。

立地条件にしてもまた厳しい。現在自分達がいるのは基本一本道の通路であり、彼女達の目の前にいるトラの巨体はその通路を塞ぐほどの大きさ。通り抜けることも頭上を飛び越えるなんてことも不可能。

結局真正面から戦う他ない状況であった。


「・・・・・・このままこの場所で戦うのは不利だな。三号!戦う場所を移すぞ!俺が囮になるから、お前は一号を連れて退避しろ!」


「イー!イイイー!イーイーイイー。イイー!」(了解!一号を医務室に連れて行ったら手助けに行きますから!それと戦うのならシュミレーションルームが最適です。あそこなら十分な広さがありますよ!)


「了解。それじゃあ、カウント三で行くぞ。三、二、一、今!」


カウントの掛け声と同時に医務室へ向かって、戦闘員一号を抱えて走り出す三号。

そして自身もまた、目の前のトラの気を引くために一つの技を発動する。


「【蛇鞭空弾(じゃべんくうだん)】・・・!」


両掌にエネルギーを集中し、エネルギー弾としてトラに向かって放つ。

放たれたエネルギー弾は、まるで蛇のようであり細長い鞭にも見える形となって、左右対称的にそれぞれが大きな弧を描き、螺旋を描きながらトラへと迫る。


「グラァッ!!」


放たれたエネルギー弾がトラに当たる寸前、なんとトラはその巨体を前に向かって飛び込ませながら体を横回転させつつ、一瞬の間だけ体の大きさを一回り小さくしてみせた。

それにより、自らに迫り来るエネルギー弾を薄皮一枚で回避したトラに、俺は驚きの表情を浮かべる。


「そんな芸当が出来たのか、お前・・・!?だが、方法はともかく、お前が避けるのは予定通りだ!」


地面に着地し、その勢いのままさらに地面を蹴って接近してくるすトラ。

その様子を見つつ、真正面で待ち構えながら腕に嵌めていた変身ブレスレットに手を触れ、ホログラムモニターを呼び出して、項目の中の転移システムを選択する。


「ガァァアアアッ!!」


「悪いが、俺と一緒に来てもらうぞ。トラァッ!!」


通路を駆けていたトラが跳び上がるのと自身が転移システムを起動するのは同時であった。

俺とトラを中心に転移サークルが出現。俺達の体はサークル範囲内に捉えられる。


「グルゥッ・・・!?」


「一名様、ご案内ってね・・・!」


突然周囲に現れた転移サークルを目にしたトラは驚愕の声を出す。

俺はそんなトラの様子に笑みを浮かべ、そして次の瞬間には転移サークルは強烈な光を放ち、俺達の体を()()()()()()()()()()のであった。








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