ミッション24 女幹部とヒーローと・・・!?
互いの自己紹介を終えた後、俺は御城輝幸という男性の案内によって目的地へと向かっていた。
その道中、御城にどうして自分が迷っていたのかの理由を語った。
携帯端末のアプリにあるマップ機能が突然おかしくなったことを話すと、御城さんは「あ~・・・。」と何か訳を知っているような表情になった。
「そっか・・・。それで迷子になっていたんだな。地元でもなく、通い慣れている訳でもないなら、それじゃあ無理もない。」
御城さんが教えてくれたことだが、俺があの場所で迷子になっている時に、丁度近くで怪人とヒーローによる戦闘が行われていたのだそうだ。
俺の持つ携帯端末がおかしくなっていたのは、その怪人の能力が原因であったらしい。
なんでもその怪人の能力は電磁波を操る怪人であったらしく、それによって周辺一帯の磁場が大いに乱れ、俺の持つ物だけでなく他の電子機器も不調状態となっていたそうだ。
しかも、当時その怪人と戦っていたヒーローは本日ヒーロー連合協会に登録したばかりの新人ヒーローであり、これまた今回の戦いが初戦闘だったらしく、倒すまでにどうしても時間がかかっていたのだそうだ。
「とは言っても、登録してすぐの戦闘で怪人を倒すことが出来るのは、実を言えば相当に凄い事なんだよ。」
「そうなんですか?」
「ああ、そうだよ。なにせ怪人と言う存在は、その強さにピンからキリまであるけれど、それでもまず間違いなく一般人よりは強い。訓練した兵士よりも強いと言えばその強さが理解できるかな?ヒーローになるまでの経緯は人それぞれだけど、初戦闘で怪人を倒すなんてことは、そのヒーローに相当の才能がなければ不可能だと言ってもいい。」
「普通のヒーローは大抵が敗退か、もしくは引き分けで終わってしまうからね。」と語る御城さん。
その話しぶりからは、どうもヒーローという職種にとても詳しい様子であったが、一体彼はどのような仕事をしているのだろうか?この東京には出たくもない会議に出るために来たと彼は語っていたが。
「御城さんって、随分とヒーローの業界について詳しいですよね。まさか御城さんもヒーローだったり?」
「えっ!?・・・い、いやいやいや!俺がヒーローだなんて、そんな訳ないだろう!?これは・・・、その・・・、そう!俺はヒーロー連合協会の職員だからね!ある程度の事情に詳しいのさ!」
俺の問いに驚き、それからしどろもどろに慌てふためいてから、これだ!という理由を語る御城さん。
嘘だという事が思いっきりバレバレである。だがしかし、それを指摘するつもりは俺にはなかった。
彼に助けられたという恩義もあったからだというのも理由の一つではあったが、彼みたいな嘘を吐くのが下手なまっすぐな性格の人のことを俺が好んでいたからであった。
思えば死んだあの人もそんな性格であったなと、自身の父親とのエピソードを思い返す光。
そして記憶にある父親の姿と目の前の男性と重ね合わせ、妙にダブって見えた光景を見て思わず笑ってしまった。
「あははははははっ!・・・はぁ。嘘が下手ですね、御城さんって。まあ、そういう事にしておきますよ。詳しい話は聞きません。」
「あ、あははっ・・・・・・。ぜひ、そうしてくれると助かるよ。」
俺の言葉に誤魔化しきれなかったことを悟った御城さんは頬を引き攣らせながら苦笑した。
俺はそれを見て、余計に笑ってしまうのであった。
「あはははっ!あ~・・・、笑った笑った!・・・・・・そういえば話は変わるんですけど、御城さんはどうしてあんな所にいたんですか?」
「うん?何がだい?」
「だって会議の為に東京に来たんですよね?会議自体はもう終わっているから、こうして店まで案内してくれているんだと思いますけど、普通だったら仕事が終われば帰ったりしませんか?
ひとしきり笑った後、そういえばと言った感じで御城さんに質問する。
先程の会話から彼が地元が東京ではないヒーローであるという事は分かったのだが、その彼が会議が終わった後も地元に帰ろうとせずに東京の街中にいたことが、ちょっと不思議に思っていたのだ。
「ああ、そういう事か。まあ、個人的なことだから詳しい事は言えないんだけど、実は人を探していたんだよ。」
「人探しですか?その探している人って、東京に住んでいるんですか?」
「いいや、地元に住んでいる人物なんだが、ある日突然姿を消してしまったんだ。」
彼は、はぁっ・・・、とため息を吐く。
「警察に捜索願とかは?」
「もちろん出したよ。唯、それでも待っているだけってのは落ち着かなくてね。こうして仕事の合間に探しているんだ。その最中にあの変態に迫られていた君を見つけたのだから、人生と言うのは不思議なものだね。」
そう言って苦笑する御城さんの顔を見て、正義感の強い所はますます父親に似ているなと思いつつ、しかし一つの疑問が思考を過ぎった。
「それで、どうして東京でも人探しを?その人がいなくなったのは地元なんですよね?」
「その通りなんだが、実を言えば地元とその周辺は既に探し回った後でね。・・・・・・これは誰にも言わないでほしいんだけど、地元にいた闇企業とか裏組織とかは探すついでに全部潰して回った後なんだ。だけどそれでも見つけ出すことが出来なかったから、こうして他の所も探してみようと思ったんだよ。」
「ついでに後ろ暗い組織を見つけたら、そこにある資料とかを漁ろうと思って。」と語る御城の姿を見て、ゾワリとした悪寒が背筋を這い上がった。
さすがはヒーロー。そっち方面にはまったくもって容赦がない。
というか、人探しのついでに地元に巣食っていた組織を全て潰したというのは本当なのだろうか?
内容こそ普通の人にとってはさすがに冗談だろうと笑いそうなものであったが、世間話の間にサラリと零したことで、より信憑性が増しているように思えてならない。
「えっと・・・。探している人ってどんな人なんですか?もしかして恋人とか?見かけていたら答えられるかもしれませんよ?」
「いやいやいや!俺に恋人なんかいないよ!?・・・俺が探しているのは親友の子供なんだよ。」
これ以上背筋が凍りそうな話題は聞きたくないと思い、冷や汗を流しつつ、少しだけ話の方向性を逸らそうとして、ふざけて恋人を探しているのかと問うと、「違う違う!」と首を横に振った。
「そうなんですか?」
「ああ。まだ未成年だったから余計に心配しているんだよ。」
「親友とはいえ他所の子供の事を町中を探してまで心配するなんて、相当関わりがなければ出来ませんよ。御城さんはその子と仲が良かったんですか?」
「親友とは確かにそうだね。アイツと俺の関係は、謂わばライバル関係のような物だったから。仕事をしている時もどっちが凄いかで競っていたから。」
「なるほど。強敵と書いて友と読む関係だったと。」
俺が納得するようにふむふむと頷くと、それを横目で見ていた御城さんは苦笑する。
しかし、すぐにその表情を暗くしてしまった。
「まあ、親友とは結構交流がありはしたけど、実を言えばアイツの子供とはあまり接点がなかったりするんだよね。」
「へっ?そうなんですか?親友の方とは交流があったのに?」
「うん、まあね。仕事の関係で中々会う事が出来なくて、会えた時も真夜中の時間帯で、その子は既に眠っている状態だったりして、直接顔を見せたことはないんだ。それにあの子と最後に会ったのは七歳の時で、それ以降は全国を飛び回っていて全く会う機会がなかったんだよ。・・・・・・だからまあ、今月の初め頃に、久しぶりに会いに行こうとアイツの自宅へ向かい、そこで初めてあの子がいなくなっていた事を知って驚いたんだ。」
「あれからひと月近く経っているから、だいぶ落ち着いて来たけどね。」と、指でポリポリと頬を掻きながら苦笑する御城さん。
俺はそれを見て、内心で「嘘だな」と思う。
確かに表面上こそある程度落ち着いているように見せてはいるが、おそらくその内心は全く穏やかではないはずだ。
そもそも本当に落ち着いているのであれば、人を探すためとはいえ、幾つもの闇企業や裏組織を潰して回るなんてことを、それが出来るだけの能力を持っているとはいえ、事後処理などの事を考えれば普通はしない筈である。
しかも地元では見つからなかったという理由で、こうして地元以外の場所にまで探しに出てくるとなれば、その焦りの感情は出会ったばかりの俺にさえ感じ取れてしまえるものだ。
「本当に嘘が下手ですね。その子の事が心配だと顔に書いてますよ?」
「うっ!?・・・・・・そんなに分かりやすかい?」
「ええ。思わず心配になるほどに。」
「そ、そんなにかい・・・・・・?」
俺に図星を突かれたことが結構ショックだったのか、御城さんは「こんな年下の女の子にまで気付かれるなんて・・・・・・。」と俯いてしまう。
それを見て、本当に嘘も隠し事も下手な人なんだなぁと俺は苦笑を浮かべ、落ち込んでいる彼を励ますつもりで彼に笑い掛けた。
「きっと大丈夫ですよ。御城さん。その子の事を探し続けていれば、きっと見つけることが出来ますよ。」
「・・・・・・えっ?」
「御城さんが潰した組織には、貴方が探している子に関する情報はなかったんでしょう?」
「・・・あ、ああ。その通りだ。」
「ならばそれは、少なくともそこにその子はいなかった。もしくは関わりが無かったという事の証明になりませんか?」
御城さんは俺に顔を向け、その両目を丸くする。
「・・・・・・君は、何が言いたいんだい?」
「俺が言いたいことは簡単です。探している子がその組織とは何も関係が無かった事実を喜びましょうという事です。」
知っている人物が突然いなくなってしまえば心配になって心穏やかにはいられないのは当然の事だろう。
何かの事件に巻き込まれているかもしれないと思えばそれもより一層だろう。
「いなくなった理由については、今日話を聞いた俺には分かりません。ですがそんな俺でも、いくつかの予想は立てられます。引っ越したかもしれない。家出したのかもしれない。誘拐された可能性もあります。・・・それとも、もう死んでしまっているのかもしれない。」
俺のこのセリフは、当事者からすればとても不適切なものに感じられるかもしれない。とても受け入れられないものかもしれない。
「御城さんが潰した裏の組織と言ったものもその可能性の一つです。・・・でも、貴方はその可能性を潰した。実際にその組織へ突入し、調査して、見つけだそうとした。」
「だが、彼を見つけることは出来なかったんだぞ・・・。その手がかりすらだ・・・!それでどうして喜べと・・・・・・!?」
「だからこそです。」
「――――――ッ!?」
それでも今目の前で闇雲に、そして不毛なまでに愚っ直な行動をし続けているこの人の心に一石を投じることくらいは出来るだろう。
御城さんの目を真正面から見つめると、彼は何かに驚いたようにゴクリと息を飲んだ。
「情報がなかったという事は、貴方が潰した地元の組織はその子に手を出していないという事。それだけでも無数にある可能性の幾つかは潰れます。そうして一つずつ考えられる可能性を失くしていけば、最終的にはその子の元に辿りつけると思いませんか?」
御城さんは、あんぐりと口を開けた。
その表情は、まるでその考えはなかったと言いたげなものであった。
「ほら、そう考えてみたらホッとしませんか?」
俺はそんな御城さんの顔を見ながら、にっこりと笑うのであった。
御城輝幸は驚いていた。
彼はディーナと名乗る女性のことを、偶然事件に遭遇し、偶然自分に助けられた一般人という認識していた。
ヒーローである自身にとっては守るべき市民の一人である筈だった彼女。
しかしそんな一方的なレッテルは、彼女との話を続けていく内にどんどん剥がれ落ちて行った。
彼女の考え方は、言ってしまえば物事の捉え方を反対にしてみようといったモノ。
見つけられなかったことを悔しがるのではなく、事実を事実として受け止めろと言っているに等しい考え方。
そんな考え方は、友人知人や親兄弟が突然いなくなってしまったことを悲しむ人からすれば、まず受け入れることなど出来ないものであり、それどころか人によっては逆に怒り狂ってしまう者もいるだろう。
だが、御城からすればその考え方は、まさに青天の霹靂とも呼べるものであった。
探しても探しても見つけられないという現実。
もしかしたらどこぞの組織に攫われたのかもしれないと考え、その子供が住んでいた場所に秘密裏に潜んでいた全ての組織を見つけ出しての殲滅戦と、その組織が保有していた各種資料の確認。
それでも見つけられず、己の無力さに悲観する毎日。
人々からトップヒーローの一人と持て囃されておきながら、子供一人見つけることも救う事も出来ない事に、御城は自分で自分の事を蔑んでさえもいた。
華々しいヒーロー活動の裏ではそんな鬱屈した日々を送っていた御城。
しかしそれは、彼が今日初めて出会ったディーナと言う存在によって、空から光が差し込んで来たような気さえした。
ある意味で彼女によって救われたと言ってもいいだろう。
そしてそれ以上に御城は、彼女が自身に向ける表情を見て驚いていた。
真剣な、しかしどこか見ている人を安心させるようなそれ。
御城はそれをどこかで見た覚えがあった。
それほど昔の事ではなく、つい先月頃にも見た覚えがあるモノ。
そう。それは自身がライバルと認め、幾度も越えようとしていた親友のそれと同じ・・・・・・――――――
「いやいやいや違う違う違う!ありえないだろう、それは・・・!?」
ディーナと言う少女に既視感覚えた御城。
それは記憶にある自らの親友の姿と重なって行くように感じ、しかしそこまで考えて即座に彼女から顔を背けて己の考えを否定した。
「この子は女の子だぞ!アイツの子供は息子!男!断じてあの子なんかじゃない!!」
御城は両手で顔を抑えながら微妙に体を仰け反らせ、「ぬぉぉおおおーっ!?」と奇声を上げた。
御城の知る親友の子供の性別は男である。雄である。英語で表すのであればManである
確かに自身の記憶にあるあの子の顔立ちは中性的でとても可愛らしく思ってはいたが、その性別はきちんと親友本人にも確認済みなのである。
だからこそ!そう、だからこそ!!目の前の彼女が自分の探している人物の筈がないのだと、たとえどれだけ既視感があったとしても性別が違うのだから全くの別人なのだと、御城は必死になって自分に対して言い聞かせた。
「あ、あのぅ、大丈夫ですか?御城さん。」
そんな錯乱状態となってしまった自身に対し、戸惑いながらも声を掛けて来れたディーナと言う少女。
彼女が自身に向ける心配そうな表情が、再びデジャブ感を誘発させる。
それは以前のヒーロー活動の際に自身が怪我を負った時に親友が見せた表情と重な・・・・・・――――――
「フンッ!フンッ!フンッ!フンヌゥッ!?」
「み、御城さぁーーーんっ!?」
ガンガンガンガンッ!と勢いよくビルの壁に頭をぶつけて、さっきの思考を物理的に消去する。
先程親友の息子は女の子ではないと自分に言い聞かせたのに、もう舌の根も乾かぬうちに彼女がアイツの子供なんじゃないかと思ってしまう自分が嫌になってしまう。
なにより、彼女の微笑んだ顔心配そうに覗き込んでくる顔を見て、御城は自身の頬がポッと赤く染まったことを自覚し、それが先ほどの既視感と相まって、まるで己が親友にときめいていたのではないかという錯覚を感じてしまったのだ。
御城は「俺はノーマル、俺はノーマル。決してホモなんかじゃない・・・・・・!?」と、再び己に言い聞かせるようにして呟く。
もしかして自分は親友に恋をしていたのでは!?・・・なんてことは、例え勘違いであってもとても嫌だと感じた御城であった。
「ど、どうしていきなり頭を壁に叩き付け始めるんですか!?」
「・・・・・・お願い。訳は聞かないで。しばらく放っておいてください。お願いします。」
「え、えぇ~・・・?」
ビルに頭をぶつけていたことでそこからダクダクと血を流していた御城は、両目から心の汗を流しつつ、自分がそんな行動をする原因となった彼女に対して土下座をした。
良い年した大人が自身の目の前で土下座をやられる羽目になった彼女はというと、突然始まった御城の奇行に「どうしてこうなった・・・・・・!?」と盛大に頬を引き攣らせるのであった。
「着いたよ、ディーナさん。ここが『和菓子屋母黒堂』だよ。」
先程の御城輝幸による唐突な奇行が行われた後、光はしばらくして正気に戻った彼の案内にて、目的地である『和菓子屋母黒堂』という看板が掲げられた真新しそうな店へと到着した。
「へぇ・・・、結構きれいなお店ですね。老舗って聞いていたから古き良き建物を想像していたんですけど。」
「老舗であることは間違いないよ。あの店は最近建て替えたばかりみたいでね。おそらく君が頼まれた新商品と言うのも、その新築オープン記念の物じゃないかな?」
光のお店の感想に対し、頭に包帯を巻いた御城が補足説明を行う。
ちなみに彼が頭に巻いている包帯は光がけがの治療の際に巻いたものであり、またその治療の際にちょっとエッチな状況が展開され、御城の奇行が再発したりもしたが、それはまた別の話である。
「なるほど・・・。あ、ここまで案内して頂いて、ありがとうございました!おかげで助かりました。」
「いえいえ、どういたしまして。それより、帰り道は大丈夫なのかい?来た時みたいに迷子になったりは・・・・・・。」
「いやいや、さすがに帰り道は大丈夫ですから。ちゃんと覚えていますよ!」
交通機関のある場所まで送ろうかと問いかける御城に対し、方向音痴ではないのだから大丈夫だと光は答える。
光の返事を聞いた御城は「そうかい?なら、いいんだけど。」と苦笑した。
「それじゃあ、俺はもう行きますね。本当にありがとうございました。」
「ああ、帰りの道中も気を付けるんだよ!」
御城に向かって手を振り、和菓子屋へと向かう光。
御城はその様子を微笑ましそうに見送った後、その反対方向へと歩きだし、元々の自身の目的であった人探しを再開する。
歩いていく最中、ディーナと名乗る彼女との会話を思い出し、思わず苦笑する御城。
町中を歩いて回っている最中に偶然出会った彼女の存在は、御城にとって一種の清涼剤のような役割を果たしており、今までの捜索作業で積りに積もっていた疲労が、幾分軽くなったように感じ、御城の心は多少なりとも安らぎを感じていた。
それはまるで親しい友人と会話しているような、どこか懐かしい気分であった。
その事を思い返し、一度立ち止まって彼女が向かった店の方向を振り返えり、その後に視線を前に戻す。
そしておもむろにポケットから一枚の写真を取り出した。
それは一人の男性が子供と一緒に砂場で遊んでいる写真であった。
「なんだかあの子の事を見ていて、お前の事を思い出してしまったよ。親友。」
御城は写真に写っている男性の姿を見ながらそんな言葉を零し、それから男性の横に写っていた子供へと視線を移す。
「それから、渡辺光君。君は今どこ行ったんだい?出来れば書置きくらいは残してほしかったな・・・。」
御城は写真に写っている五歳前後の黒髪黒目の少年の姿を見て目を細めながらため息を吐き、取り出していた写真をポケットに仕舞い込み、再び歩き出すのであった。
後日談。
「ただいま~・・・!」
「クククッ・・・!任務、ご苦労であったな。幹部ディーアルナよ・・・!」
「任務って・・・、ただのおつかいだろうに。まあ、いいや。はい、ご注文の品ですよ。」
「うむ!これが新装オープン記念の新作、『チョコ抹茶団子』か・・・!では、頂きま~す!あむっ・・・!・・・ブゥッハァァアーーーッ!?苦っ!にっがぁーっ!?ま、抹茶団子の柔らかい甘さが口に入った途端に感じられたと思ったら、次の瞬間には猛烈な苦味が口の中いっぱいに広がって・・・・・・!?何これ・・・?ねぇ、何コレェッ!?」
「まあ、そうなるわな・・・。この抹茶団子に掛かっているチョコソース、カカオ九十%で作られているって、売店のオバチャンが言ってたから。」
「なんですと・・・!?それもう甘味じゃないじゃん!別の何かじゃん!!誰だ!こんな最悪な組み合わせ考えたの!?」
「お店の社長さんだそうだよ。」
「まさかの社長考案・・・!?」
「なんでも、強烈な苦味があれば、その中にある甘さが際立つだろうという考えで作られたらしい。」
「甘味が際立つどころか完全に苦味に押し負けてるじゃん!グゥオォォォッ・・・!まだ口の中に苦味がぁ・・・・・・!?」
「売店のオバチャンも困っていたよ。せっかくの新作なのに全然売れないって。・・・というわけで、はいこれ。」
「・・・・・・えっ?・・・あの、ディーアルナさん。この箱の山は一体?」
「何って、ブレーバーが頼んだんじゃないか。二十箱分買ってくるようにって書いたメモを渡していただろ?オバチャンも助かったって言っていたよ。あまりの苦さに誰も買わなくなって不良在庫になりかけていたそうだから。」
「そう言えばそうだったー!?どうして安易に、新作ってことは美味しいんだろうな、って思ってしまったんだ我のバカーッ!」
「まあ、流石にそれを食べ続けるのはキツイだろうと思って、売店のオバチャンからこれに合いそうなおすすめも聞いて買ってきたから、食べる時に一緒に口にするといいよ。・・・それじゃあ、他にも買ってきたものがあるし、それの片付けに行ってくるから。それじゃ。」
「あっ、ちょっ、・・・・・・行ってしまった。うーむ・・・。取り敢えず、彼女が言っていたおすすめというのを見てみるか。えーと・・・、これかな?『極甘抹茶ラテ』とな?どれどれ一口・・・、ングッ・・・。アッバァァーーーッ!?あっまぁ!メッチャ甘ぁッ!?なんでこう両極端なの、あの店は!?・・・・・・・・・あっ、でも確かにこの団子に合うかも、これ。」




