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ミッション19 女幹部のおつかい・・・?


「おつかい?」


「うむ。おつかいだ。」


悪の組織アンビリバブルの秘密基地、その執務室と呼べる場所で俺はブレーバーから頼まれごとをされていた。


「実はこの秘密基地に用意していた食材の一部が無くなりかけていてな、君にはそれを補充してきてほしいのだ。」


「食材って、そこは次の作戦とかに使う機材とかじゃないのか・・・・・・」


ブレーバーの言うおつかいの内容がまさかの食材調達だったことに、「えぇ・・・」と呆れた声を零す。


「機材などは我が作れてしまうからな。その機材を作る為の材料も近場にすぐに調達できる場所があるから、わざわざ買いに行く必要がないのだ。それよりも、現在最優先で必要なものは食材である。食べるものがなければ飢え死にすることは間違いないからな。」


「言っていることはマトモなんだけど、悪の組織としてはどうなんだ、それ・・・・・・」


ブレーバーの話を聞いて、「はぁっ・・・」と思わずため息を吐く。

相変わらずこのアンビリバブルという組織はやる事成す事悪の組織っぽくないなぁと思い、そしてそこでふと一つの疑問が浮かんできた。


「そういえば俺達がいつも食べているお弁当とかって、どうやって調達しているんだ?外に買い物に出かけている様子なんて見たことないけど。」


「うむ?そういえば、君には言っていなかったか?」


俺の問いを聞いたブレーバーは「おや?」と言うように首を傾げた。


「我が株取引事業を行っていることを君は知っているだろう?実はその中に我が組織と企業提携をしている悪の組織があってな、彼等に代理での買い物と配達を行ってもらっているのだよ。もちろんその時の代金はしっかりと経費で払っているぞ。」


「悪の組織なのに・・・!?」


まさかの企業提携という言葉に驚く。

というか、ウチって他の悪の組織と関わりがあったのか・・・?


「確かブレーバーって、ヒーローもだけど、他の悪の組織にもケンカを売っていたよな。それなのに、他の組織に頼むことが出来たのか?」


「ああ、それならば問題ない。我が暴れたのはヨーロッパ圏でのことだからな。あそこの連中には心底嫌われているというか恐れられている状態でそもそも話すら出来ないのだが、そこ以外であれば普通に話をすることが出来るし、協力関係を築くことは可能だ。」


俺の問いに問題ないと言うように親指を立てるブレーバー。


「それにさっき言った買い物を代理で行っている悪の組織は、我ら以外の悪の組織の買い物も代理で行っている、謂わば買い物代行サービス事業を展開しているのだ。」


「まさかのサービス業!?」


「ちなみに評判は結構良いのだぞ。食材は新鮮なものを、マニア向けの物も注文すれば用意して届けてくれるからな。しかも十回利用した際には地方の特産品を一品付けてくれたりする。」


「サービス精神旺盛だな!?悪の組織としていいのかそれ・・・!?」


「我が情報屋から聞いた話だと全国展開しているそうで、日本国内であればどこであろうと一日で注文品を届けることが出来るのだそうだぞ?支払われる給料もそこそこ良いらしくて、他の組織から転職する者も結構いるという話も聞いたことがあるぞ。」


「待って、お願いだから待って・・・!?ツッコミ所が多すぎてツッコミが追い付かないから・・・!?」


それは本当に悪の組織なのか・・・!?最早普通の代行サービス業だと思うのだが・・・!?

だがそんな組織があるのであれば、わざわざ俺にお遣いなんてさせる必要など無い筈なのだが。

そう疑問に思ったことをブレーバーに問いかけると、彼は腕を組んで悩むような唸り声を出す。


「うむ。本来ならばその方が早いのだが、実は目的のものがある店は、その組織の者では近寄ること自体が危険すぎて難しいのだ。」


ブレーバーはそういうと、懐から一枚のチラシを取り出した。

俺はそのチラシを受け取り、内容を確認する。


「ええっと、何々。『和菓子屋母黒堂からチョコ抹茶団子が新発売!抹茶を混ぜ込んだお団子に苦みのあるチョコソースを掛けた甘味好きには堪らない一品!お求めの際は当店にお越し頂くか、ご連絡して頂いて郵送による発送にてお届けいたします!』・・・・・・って、買ってきてほしい食材ってお菓子かよ!?」


「うむ。母黒堂という老舗で最近になって新発売された和菓子でな、それが気になって、無性に食べたくなってな。」


「食材と言うんだから、そこは肉とか野菜とかじゃないのか・・・!?」


「そちらに関しては在庫はたっぷりあるから問題ない。」


「ああ、そう。・・・・・・で、これのどこが問題なんだ?」


調達する食材がまさかのお菓子という事に肩透かしを感じつつ、手元のチラシをもう一度見る。

チラシの内容を見る限りは怪しい所はなく普通の和菓子屋に見えるのだが。

・・・いや、この新発売の代物もある意味凄い物だと思うが。


「いや、問題なのはそこではない。問題なのはその下。その店がある住所なのだよ。」


ブレーバーはチラシの一番下にある店の住所を指差す。


「・・・住所?ええっと、東京都中央区日本橋・・・・・・えっ・・・!?」


チラシに書かれている住所を見た俺は驚愕し、そして代行サービス業を行っている悪の組織が近寄ることが出来ない理由を理解した。


「東京都中央区って言ったら、ヒーロー連合協会の日本支部の本部がある場所じゃないか・・・!?」


ヒーロー連合協会。

それは数多存在する悪の組織と戦うヒーロー達を生み出し、そんな彼らに対して金銭的、技術的な面での支援や活動のサポートを行う組織のことである。

市民の中からヒーローの素質があるものを発掘し、この世界に存在する最新技術や隠された特殊能力を引き出し、ヒーローとして世に送り出す事が主な活動内容である。

それ以外にも新技術の開発や教育活動、活動しているヒーローに依頼して警察組織と連携しての治安活動を行うなどの公共活動も行っており、また世界中に存在する各企業や各国政府機関をスポンサーとしていて、その運営資金は潤沢と呼べるほど存在している話は有名である。

このヒーロー連合協会の各支部には幾人かの上位ランクヒーローが常駐し、支部の警護やその周囲の警邏なども行っており、彼等の手にかかれば小規模または弱小の悪の組織なんて片手間で捻り潰せてしまうだろう。

しかもその日本支部の本部ともなると最高ランクのヒーローがいる事は間違いない。

事実、二十年程前にヒーロー連合協会の日本支部本部が東京都に置かれることが決まった際に、東京都に隠れ潜んでいた全ての悪の組織が引き摺り出され、壊滅させられていた。

その後も壊滅させられた悪の組織の残党などが反撃の一斉決起を行ったこともあったのだが、まさに鎧袖一触とでも言うように、ヒーロー達の手によってあっという間に殲滅されてしまい、それによって東京都内での悪の組織の活動は実質不可能な状態となり、東京都内に巣食っていた悪の組織や野良怪人などはそこから姿を消した。

さらに副次的効果として隠れ潜んでいた犯罪者や違法な商売を行っていた所なども軒並み東京都内から撤退し、犯罪係数も激減。

以降東京都内では怪人や犯罪などによる被害はほぼ皆無の状況となったのである。


「そんな怪人にとってのに魔境へ俺に行けと言うのか、ブレーバー・・・・・・!?」


俺はブレーバーに向けて戦慄と恐怖が入り混じった視線を向けるが、ブレーバーはその通りだと頷くだけであった。


「うむ、そうなのだよ。最初は彼等に何とか出来ないかと頼んだのだが、自分達の身の危険があり過ぎるとのことで断られてしまったのだ。」


確かにその通りだろうよ・・・!その悪の組織も、行ったらまず間違いなくヒーローに襲われるということをが分かっているんだから・・・!?


「アンタはそんな場所に俺を行かせようとしているのか・・・!?以前の俺であればともかく、怪人になった俺には危険すぎるわ!」


憤慨しながらブレーバーに詰め寄る。

人間であった頃であれば身の危険を感じる事なく行けたであろう場所だが、怪人である今の自分が行けばヒーロー達が倒すべき敵として襲い掛かってくるのは間違いない。

だがそんな俺の切実な訴えに対して、ブレーバーは落ち着いた雰囲気を崩すことはなかった。


「いや、その点に関しては問題はない筈だ。確かに悪の組織アンビリバブルの幹部としてのディーアルナであればヒーロー達は襲い掛かってくるだろう。しかし、一般人としての渡辺光であればその可能性は一気に低くなる。」


「・・・・・・はっ?」


ブレーバーの説明が理解できずに困惑した声を出す。

渡辺光であれば襲われる可能性が低いとはどういう事だろうか?


「君は、ヒーロー達がどうして出現した怪人や怪物達の元に瞬時に辿りつけるのか知っているか?」


「え?・・・えっと、通報やニュースなどで知ってとか、あとはヒーロー連合協会からの連絡が来てとかじゃないのか?」


「その答えは半分当たりで半分外れだ。確かにそれも方法の一つだが、確実性がない。現場に到着したら既に怪人などがいなかったなどの可能性もあるだろう。」


ブレーバーの話を聞いて頷く。

彼の言う通り、確かに怪人などを発見後に連絡という工程を加えた場合、状況を知る為に話を聞くことで行動が一時遅れるというのは想像できる。

その結果として到着が遅くなる可能性もあり得る話だ。


「だからこそ、ヒーロー連合協会はその一工程を省くためにとあるシステムを作り出した。」


「とあるシステム?」


「うむ。『エマージェンシーレーダー』と『オーダーコール』と呼ばれるシステムだ。」


『エマージェンシーレーダー』とは怪人及び怪物の出現を感知する通信機器の事で、レーダー範囲内に出現した怪人の情報や出現場所などをヒーロー連合協会や警察機関などに迅速に伝えるものである。

現在地球上には数えきれないほどの怪人怪物という存在がいるのだが、そんな彼等は特殊なエネルギーや地場のようなものを体から常に発しており、『エマージェンシーレーダー』は怪人怪物から発せられるそれらを感知する機能を備えることで、迅速な発見が可能となっているのだという。


「怪人や怪物が発するエネルギーは一生物が持つにしては強大であり、また同様に発する磁場は常に複雑に歪んだ安定しないモノなのだ。そんな分かりやすいほどの特徴的なモノを怪人怪物が発しているというのが判明したのは、ヒーロー連合協会が発足されてからの事であり、比較的最近の話なのだ。」


また、最近では怪人怪物が保有するエネルギー量なんかも分かるようになってきたとのことで、それによって適切に対応できるヒーローを派遣することも容易になってきたのだとブレーバーは説明した。


「続いて『オーダーコール』についてだが、まあ簡単に行ってしまえばヒーローに迅速に繋がる自動連絡網だと思ってくれればいい。」


「説明が雑だな・・・」


「それは認めるが、アレは言ってしまえば『エマージェンシーレーダー』の機能の延長線上のものだからな。」


『オーダーコール』とは『エマージェンシーレーダー』が感知し、怪人怪物のエネルギー量を計測した際に推測できる脅威度を判定し、近くにいる対応出来るであろうヒーローに自動的に情報を送るシステムなのだという。

そして『オーダーコール』によって情報を得たヒーローが現場へ急行する際にも、対象の元へ迅速に迎えるようにナビゲートする機能も搭載しているそうだ。


「これにより、現在のヒーロー達は怪人怪物のいる場所へ迷うこともすれ違う事もなく辿り着くことが出来、また対応するヒーローの実力が伴わないなどと言う事態が起こることもなくなったのだ。」


ブレーバーの説明を聞いて、昔から不思議に思っていたヒーロー達がどうしてすぐに現場に到着することが出来るのかという疑問が解決した。

なんとも便利なシステムがあったものである。


「そのシステムについては理解したけど、それがどうして、俺が大丈夫なんて話になるんだ?」


だがそれは、怪人となってしまった自分にとっては朗報ではなく悪報と呼べるモノであった。

つまりそれは、自身が街中に出た途端にヒーロー達が駆け付けるということに他ならないからだ。


「うむ。その理由の根拠だが、それは『エマージェンシーレーダー』の欠陥に起因している。」


「欠陥・・・?さっきまで優秀なシステムっぽく説明していたのに、欠陥なんてあるの?」


これまでの説明の中で欠陥らしい内容など無かったように思えるのだが?


「それがあるのだよ。『エマージェンシーレーダー』についての説明を思い返して見ればわかるぞ。」


フフン!とドヤ顔を(仮面で隠れて見えないので雰囲気的に)するブレーバー。


「『エマージェンシーレーダー』が怪人怪物の出現を感知出来るのは、彼らが発する強大なエネルギーと複雑に歪んだ磁場が発生した時。ならばそれが発生しなかったらどうなる?」


「・・・・・・怪人だと認識されない?」


「その通り!」


俺の答えに、良くできましたと拍手をするブレーバー。


「『エマージェンシーレーダー』にインプットされている怪人怪物についてのデータは、多少の誤差はあれどそれだけだ。どちらもない、もしくはどちらかしか感知されなかった場合には、その存在をシステムが認識しない。しかも、その致命的な欠陥にヒーロー連合協会はまったく気付いていないのだ。」


「滑稽な話だろう?」と、ブレーバーは含み笑いをしながらヒーロー連合協会のことをバカにしている様には言う。


「つまり、怪人としての特徴であるその二つの要因を何とかすれば、居場所がバレることないということなんだな。・・・というか、それが分かっていて俺におつかいを頼むということは、そのレーダーを誤魔化す物を用意しているんだろう?」


「そんな物は無い!」


「無いのかよ!?」


なにか秘策となるアイテムでもあるのかと思っていたら、まさかの無し発言に肩を落とす。


「そもそも君にそんな物は必要ないのだ。」


「・・・・・・え?」


だがそれは、続いて聞こえてきたブレーバーの話によって元に戻った。


「そもそもどうして現在世に出ている怪人怪物がその二つの要因を発生させているのかと言うと、簡単に言ってしまえば、しっかりとした調整が成されていないことによる、内包しているエネルギーの漏れが原因なのだ」


「エネルギーの漏れ?」


ブレーバーの説明にどういうことなのかと思わず首を傾げる。


「アンドロイドやサイボーグといった機械系のモノを除いた怪人怪物は、保有量に大小の差はあれど、皆『K(怪化)エネルギー』と言うものを保有している。」


「・・・なんか、唐突に胡散臭い話が出てきたな。」


一体なんだその安直そうな名前のエネルギーは。


「まあ、聞け。『Kエネルギー』というのは、生命体が怪人怪物と呼ばれる存在に変化、または進化する際に必要となるエネルギーのことで、これがなければ『怪人化』という現象は起こり得ない。そしてこのエネルギーは自然界には存在しないエネルギーなのだ。」


「自然界に存在しない?」


「うむ。『Kエネルギー』とは生命体が持つ怒りや嫉妬と言った負の感情から生成されるエネルギーでな、怪人化もしくは怪物化と言うのは、その『Kエネルギー』が一定量に達した際に肉体が変質する現象の事なのだ。」


ブレーバーは自身の掌を俺に見せると、そこにモヤモヤとした薄黄色い煙のようなものを発し始めた。


「我が今君に見せているこれも『Kエネルギー』だ。我のこれは薄黄色の色合いをしているが、これはしっかりとした調整を行っているからだ。何の調整もしていない普通の怪人が放つ『Kエネルギー』はドス黒い紫色をしている。」


『Kエネルギー』はしっかりと調整されていれば、その色合いはどんどん薄くなり、白い色に近づいていく。

また、エネルギー出力も格段に高くなり、エネルギー効率や燃費なども同等に良くなるらしい。

逆に調整がされていない程『Kエネルギー』は濃い色合いとなり、やはりエネルギー効率も相当に悪くなるのだそうだ。


「怪人が発している高エネルギーというのは、『Kエネルギー』が上手く体に収まりきれなくて漏れ出たものであり、磁場の乱れも、その漏れ出たエネルギーが周囲の空間を歪ませてしまったことから起こる副次的な結果なのだよ。」


ブレーバーはそこまで話すと掌に出していた『Kエネルギー』を体内へと引っ込めた。


「君の体はバイオニズム液によって肉体構成を一から作り直し、その調整もしっかりと行っているからエネルギーが漏れるなんてことはまずない。つまり、ヒーロー連合協会が各地に設置してある『エマージェンシーレーダー』に捕捉されることも無いと言っていい。・・・これが、君が彼の地へと向かっても大丈夫な理由だ。」


理解したかな?と首を軽く傾げながら聞いてくるブレーバーに、なるほどと頷いて返す。

だが、そこで新たな疑問が出て来た。


「・・・・・・でもそれって、別にわざわざ俺が代わりに行かなくてもいいんじゃないか?さっきのブレーバーのエネルギーの色を見る限り、ブレーバーもしっかりとした調整がされているんだろう?」


「俺が気付かれないのであれば、ブレーバーだって気付かれないはずだ。」と目の前にいるブレーバーに問い掛ける。

だが、ブレーバーはその問いに対して「無理だ」と返事を返した。


「我の場合は()()が既に割れている。監視カメラによる特定や一般観衆からの連絡がされた場合には、すぐにヒーロー達がやって来るだろう。」


ブレーバーはそう言いながら仮面に覆われた自身の顔を指差した。


「・・・・・・ちなみに聞くけど、その人相って今の仮面被っている姿の事を差しているのか?」


「うむ。」


「・・・・・・その仮面の下の素顔って、向こうにバレていたりは・・・?」


「していないな。というか、こちらでは誰にも見せたことはないな。」


「・・・だったら、その仮面を脱いで行けば問題ないんじゃ・・・・・・・・・」


「これは悪の組織のボスとしての正装!これを脱ぐなんてとんでもない!これを脱ぐ時は、世界征服を成した時か、敗北した時だけだ!」


カッコよさ気にバサリとマントを翻して言うブレーバー。


「つまり、自分が買い物に行く気はないと・・・?」


「うむ!」


無駄に胸を張って返事をするブレーバーの姿を見て、俺は頭痛が痛いというように片手で頭を押さえながらため息を吐く。


「・・・・・・はぁ、分かりました。おつかいに行ってきますよ。」


「君ならそう言ってくれると思っていたよ。では、これを受け取ってくれたまえ。」


仕方がないとため息を吐いておつかいに行くことを了承すると、その俺の姿を見たブレーバーが、懐から中身が入って膨らんだ大きなビニール袋を取り出した。


「おつかいに必要な道具がこの袋の中に入っているから、出かける前に確認してくれ。」


ブレーバーからビニール袋を受け取って中身を確認すると、袋の中には真新しそうな財布と女性物の服が数着入っていた。


「出先で怪しまれないように外出用の服も用意したから、行くときはそれを来て行ってくれ。」


「・・・・・・分かったけど、この女物の服ってブレーバーが選んだのか?」


もしかしてブレーバーの趣味が入ったものがあったりしてと思いながらジト目でブレーバーのことを見上げると、ブレーバーは慌てて両手を振って否定した。


「いやいやいや!勘違いしてくれるな!袋の中の物は情報屋に頼んで用意してもらったものだ!・・・・・・さすがに、男の我が女性用の服を用意するのは難しいのでな。」


ブレーバーの言い分を聞いて納得する。

確かに男性が女性物の衣服を用意するのは抵抗を感じるのは何もおかしい事ではない。

・・・というか、今でこそ女性へと変化した自身の体に慣れた俺だって、男であった頃は女性服の店を見てどこか気恥ずかしさを感じていた筈なのだ。

・・・・・・まあ、今では女性服を見てもそんな感情なんて感じなくなってきたのであるが。

それどころか、可愛い服や綺麗な服を見ると着てみたいという感情の方が強く出ることが多くなってきた。

これが俗にいう精神が肉体に引き摺られてきたという事なのだろう。

それを自覚する度、元男の身としては妙な空しさと物悲しさが胸の中を通り過ぎて、思わず死んだ魚のような目になってしまうのだが。


「・・・ん、んん!ともかく、今回の任務もといおつかいを頼んだぞ、ディーアルナよ。・・・財布とその中身に関しては、目的の物を買った後はそのまま君に報酬として渡すから受け取ってくれ。」


「了解しました、ボス。これより準備してからおつかいに行ってきます。」


ブレーバーが咳払いをしてその場に漂う微妙な空気を変え、命令を下す。

俺はその命令内容に苦笑しながら敬礼をして返す。


「・・・・・・ついでにどこか寄り道して好きな物を買っていいからな。今まで好きな物を買えなかった分、思いっきり使っていいからな。我慢しなくていいからな。」


「え、ええと・・・了解しました。」


もっとも、最後ら辺はいつも通りと言うべきか、ウチの組織の芸風うというべきか、キチンと場が締まりはしなかったが。






ミッション19の投稿です。次話は間を置いて15日に投稿します。

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