ミッション95 またもや乱入!謎の襲撃者・・・!?
「フウゥゥ・・・!流石にここまで徹底的にやったら、起き上がるなんてことはもうないだろう」
トドメの一撃である【虎王雷墜脚】を食らって上半身が倉庫の床下に埋まり、足を上に突き出して沈黙するロックパイソン。
それを見下ろしながら、俺は肺の中に残っていた空気をゆっくりと吐き出しつつそう呟いた。
「(いやもう本当にしつこかった・・・!叩いても殴っても蹴ってもすぐさま起き上がってくるし・・・!しかも襲い掛かってくる目的が俺の胸を触りたいからって、なんだよそれ・・・!?未だに自分でも触ったら変な感じになる時があるってのに、それを他人に触らせるとか、させるわけないだろうが・・・!!)」
まあ、内心では思いっきり悪態を吐いていたが。
「・・・・・・んで、だ」
「・・・ん?」
「なんで、なんだ・・・どうして君があの流派の、『十二戦神流』の技を使えるんだ・・・!?」
「み、御城さん・・・?」
ふとそこで、俺の下へ驚愕と動揺の感情が籠められたような声が掛けられた。
何だ?と思いつつ振り向けば、そこには信じられないと言いたげに呆然と佇む御城さんの姿があった。
「答えてくれ、ディーナさん。君はいったい何処でその技を覚えたんだ?いったい誰に習ったんだ?」
「え、えぇっと・・・?」
「ありえない・・・ありえないんだ。あの流派の技を、しかも複数の〝型〝のそれを四つも使えるだなんて・・・そんなこと、今の時代ではアイツ以外にできる筈がないんだ・・・!」
「み、御城さん?あの、ちょっ、御城さん・・・!?」
幽鬼の如くふらりふらりとしながら近づいてくる御城さん。
それに比例するように俺もまた一歩二歩と後退る。
というか、えっ?なんでいきなり豹変してんのこの人!?ちょっと怖いなんか怖い・・・!隠れているから分からないけど、あれ多分マスクの下は目がクワッてなってる絶対なってる・・・!!
「そ、その・・・誰に習ったのかと聞かれれば、俺の父さんから護身術として教わったとしか言えないんですけど・・・・・・!」
「・・・・・・お、父さんに?」
「は、はい」
「・・・・・・護身術として教わった?」
「はい」
ピタリ、と御城さんの足が止まる。それから何かを考える仕草をした後に頭を抱えながら叫び始めた。
「いや、いやいやいや・・・!君が教わったのは護身術として習うもんじゃないから!普通にある種の才能がないと習得困難な武術の流派だがら!」
「えっと、そうなんですか・・・?でも、父さんは俺に教えてくれた時に『はっはっはっ・・・!いいか?お前に教えている護身術は、コツさえ掴めれば子供のお前でも習得できるものなんだぞ?』って、言ってたんですけど・・・?」
「いやそれは君のお父さんの方がおかしい!君が教わっていたのはコツを掴めたくらいで習得できるモノじゃないから!むしろそのコツを掴むことすら難しいやつだから!?」
シャウトしながら、「いったい何者なんだ君のお父さんは!?」とツッコミを入れてくる御城さん。
そんな彼の姿を見て、話を聞いていた俺は、「そう言われると、確かに俺の父さんっていったい何者なんだろうか?」と、今更ながらにふと思った。
いや、自分の父親であるというのは間違いないと思っている。思っているのだがしかし、いざ振り返ってみると父さんは色々と秘密主義だったように思える。
特に仕事関係がそうだった。小さな頃から何度も「父さんは何のお仕事をしてるの?」と聞くも、「困っていたり、助けを求めたりしている人達を助ける仕事だよ」と言うだけで具体的にどんな仕事をしているのか明言することを避けていた。
まるで自分の仕事に俺を関わらせたくないかのように、それどころか興味すらも抱かせないように。住んでいたアパートにも仕事関係のモノを一切持ち込まない程の徹底ぶりだった。
・・・とは言え、一応知ることができる機会がなかったわけじゃない。父さんが亡くなった後、葬式などの手配をしてくれた弁護士の・・・確か『宝堂文三』さん、だったっけ?彼に聞けば、たぶん知ることができた筈なのだ。
・・・まあ、その事を聞く前に十億円の借金の話をされてしまい、頭が完全にそっちの対応をどうするかでいっぱいになってしまったので、結局聞けずじまいだったが。
「くっ・・・!色々とツッコミどころが多いが、それは一旦置いておこう。・・・ディーナさん、君には色々と聞きたい事が出来た。悪いが俺と一緒に来てもらいたい」
なんでそこまでして父さんは自分の仕事を俺に知られないようにしていたのか、と俺が首を捻っていると、御城さんがそう言いながら一歩足を踏み出してきた。
「えっと・・・それって、俺が怪人だと分かったからですか?」
「それもある。だけどそれ以上に、君に『十二戦神流』の技を教えた君の父親が何者なのかを知りたいんだ」
「・・・な、何故に?」
「『十二戦神流』は基本マイナーな武術の流派だ。元々は何処か遠い異国に存在していた武術だったそうだが、それが昔の日本に伝わり、当時の人間達が自分達の使いやすいようにと手を加えられたのがこの流派の始まりとされている。この流派で覚えられる技は一つ一つが強力だったり、色々な応用が効くんだが、その分習得する難易度は冗談みたいに高い。人によっては平気で二十年、三十年掛かる時もあるし、それぞれの〝型〝に存在する全ての技を習得する為にはそれなりの才能が必要だ」
「・・・・・・」
「それと、『十二戦神流』の〝型〝には人によって根本的な部分でどうしても合う合わないの場合がある。分かりやすく一言で言えば〝適性〝というやつだ。・・・どうしてそんなに詳しいのかと疑問に思う顔をしているね?なに、ここまで話を聞いていれば分かると思うけど、俺も習得しているんだよ『十二戦神流』を。その〝型〝の一つである〝鳳凰の型〝というものを・・・・・・」
御城さんはそう言うと、自身の胸の前に掌を上に向けた左手を出す。
直後、掌からブワッとエネルギーが噴き出し、そしてそれはすぐさま小さな竜巻へと変わった。
「こう言うのもなんだけど、一応俺はこの〝鳳凰の型〝を免許皆伝している。どうやらこの〝型〝に対する適性が異様な程高かったらしいんだ。・・・だけど、免許皆伝をしているからこそ俺は、君が複数の〝型〝の技を使えているというのが余計に信じられなかった」
御城さんは掌の上で踊るように回転する小さな竜巻を、ギュッと握り潰す。
「もちろん理由はある。先程も言ったように、俺は〝鳳凰の型〝に対する適性が異様な程高かった。・・・しかしその逆に他の〝型〝に対する適性はかなり低かったんだ。当時師事していた師範代達から、『技を習得するのは無理。諦めろ。』と言われるぐらいには。・・・そんな経験があるからこそ、複数の〝型〝の技を使えるようになるのがどれだけ難しいのかを知っていたからこそ、ありえないと思ったんだよ」
「・・・その、純粋な疑問なんですけど、その流派の人で全ての〝型〝の技を使えるようになった人とかっているんですか?」
「・・・いるにはいる。だけどその数は全部で三人だけ。それも歴代の中で、だ」
御城さんはそう言うと、人差し指、中指、薬指を三本立て、一本ずつ折っていった。
「・・・まず一人目は『十二戦神流』を立ち上げた初代。まあ、これは全ての〝型〝が使えないとそもそも立ち上げられないので当然とも言えるけど。・・・二人目は〝群鼠の型〝の七代目師範代。この人は本当に才能が溢れかえってる人で、十代前半の時点で全ての〝型〝の技を覚えたらしい。今でもあの人の才能を越えた人が現れたなんて話は聞いたことがない。・・・そして最後の三人目は、俺の親友にしてライバルだった男だ」
御城さんは三人目の人の事を語る時だけ顔を少し伏せた。
「アイツは俺程に〝型〝の適性が高くはなかった。全てが平均的だった。だが、持ち前の学習能力の高さであっという間に全ての技を覚え、極めてしまった。その様はさっき言った七代目師範代の再来とも言われていた」
その口ぶりはまるで友人として誇らしく、でもライバルとしては悔しいと思っているような、そんな感じだった。
・・・でも、なんで過去形?もしかして・・・・・・。
「あの、その話ぶりからするともしかして、その親友の人って・・・」
「ああ、死んだ。今から半年以上前の事だ」
そう答える御城さんの声音は悲しそうだった。マスクに隠れて見えないが、なんとなく悔いているような、そんな印象を受けた。
「―――だからこそ分からないんだ。君に『十二戦神流』を教えた父親がいったい何者なのかが。使った技を見る限り、最低でも四つの〝型〝を習得しているのは間違いない。だが、複数の〝型〝の技を使える男と言ったら数がかなり限られる。それも三つ以上ともなれば、初代と俺の親友だけしかいない。・・・だが、その二人はとっくに亡くなっているし、後者に関しては弟子も取ってはいなかった。・・・・・・つまり、俺が知っている『十二戦神流』の関係者の中に君の父親に該当する人物はいないんだよ、ディーナさん」
その後で御城さんは少し俯かせていた顔を上げた。
「・・・で、だ。そうなると俺は、流派の関係者として君の父親の事を調べなければならない。・・・『十二戦神流』についての説明を始めた辺りで、『俺達の流派の技は一つ一つが強力だったり、色々な応用が効く』と俺が言っていた事は覚えているだろうか?それが真っ当な事に使われているのなら何の問題もないんだが、悪事に使われようものならその被害は馬鹿にならないし、対抗するにしてもそれなりの実力者が必要となる」
「それ以外では簡単に蹴散らされてしまうからだ」と御城さんは言葉を付け足す。
「だからこそ、把握していない同門がいるというのは出来る限り避けなければならない。・・・・・・そういうわけでもう一度言おう、ディーナさん。その人物について君が知っている事を聞かせてもらいたい。全て、だ」
「・・・き、拒否権は?」
「あると思っているのかい?」
ギチッ、と拳を握り締めつつ力強く足を一歩前に踏み出す御城さん。体から立ち昇るように発せられるエネルギーの圧を見るに、どうやら臨戦態勢の状態になっているらしい。
俺はそれに押されるように後退りしつつ身構えた。
正直、これから起こる戦いからは逃げられないだろうと俺は感じていた。
明らかに練度が違う。イメージで例えるなら、御城さんは頑丈な作りの城壁に守られた巨大な西洋風の城。一方の俺はそこそこの坪面積のある日本家屋と言ったところだろうか。
規模で言えば圧倒的にあちらが上。つまりそれは実力の面でもそうだということ。
その事を理解した俺は嫌な汗が流れるのを感じた。
「(オイィィ!?なぁにが『コツさえ掴めれば子供のお前でも習得できるものなんだぞ?』だ、父さんのアホォォッ!!全ッ然話が違うじゃん!思いっきり何かしらの才能が必要なやつだったじゃん!!というか、本当にいったい何処でそんなの覚えて来たんだよ父さぁぁぁんっ!?!?)」
・・・まあ、内心では天国にいるであろう自分の父親へ向けて思いっきり文句を叫んでいたが。
ただし、視線だけはずっと御城さんへと向けていた。彼の動きを一挙一投足見逃さないように集中し、何時でもカウンターという名の反撃を繰り出せるようにする為だ。
俺が「マジで俺の父さん何者!?」と思いつつ右拳を後ろ腰に添えると、ほぼ同時に御城さんが俺の下へ来ようとして地面を蹴った。
―――その時だった。もう何度目かも分からない破砕音が倉庫内に響き渡ったのは。
スパイラル・ジェッターは自身の親友とその子供を助けることも、守ることも出来なかった事を今でも後悔していた。表には出してはいなかったが、内心では結構塞ぎ込んでもいたのだ。
だからこそ、そんな自分を言葉だけで救ってくれた、沈んでいた気持ちを掬い上げてくれた恩人とも言えるディーナという少女を何がなんでも守りたいと思っていた。親友とその子供には出来なかった事を今度こそ、とも。
故に彼女が怪人であったと知った時、スパイラル・ジェッターは心底絶望した気分を味わった。ブラックサンタの放つ光線に当たり、怪人にさせられたのだと思ったからだ。
まあ実際にはそうではなく、そもそも最初から、初めて出会った時からディーナという少女は怪人であったらしかったのだが。
それを聞いたスパイラル・ジェッターは思わずホッとして・・・しかしその後で「いやいやいや・・・!?」と内心で首を横に振った。
恩人がまさかの怪人だった。それはスパイラル・ジェッターにとってはあまりにも予想外の事実だった。
そしてそれ以上に彼女が『十二戦神流』を、しかも複数の〝型〝の技を使える事を知って心底驚愕した。
ディーナにも話した通り、『十二戦神流』はかなりマイナーな武術の流派だ。ただしそれは一般に知られていないというわけではなく、単純に各〝型〝に対する適正を持っている人物が少ないが為。
大体千人に一人の割合であり、しかも実際に修行してみなければ使えるかどうか分からないと来ており、育成にもかなりの時間を要するからだ。
それ故にと言うべきか、そこまで時間を掛けて育てた者が悪事をやらかすというのは、『十二戦神流』という流派にとってはかなり痛い。
というのも、実際過去に『十二戦神流』の技を悪事に使われていた事例があったからだ。
その時の被害は本当に酷いものだったらしいが、しかしそれは流派の者にのみ伝わっている内容であり、一般的な歴史書等には記されていない。その事に関する記録の一切が抹消されたからだ。
だが、その影響までは消せなかった。広まった悪評の煽りを受けて、当時の弟子や門下生の数が流派の存続が危ぶまれるレベルで一気に激減したのだ。
だからこそ『十二戦神流』の流派の者は、もう二度とそういう事が起こらないよう悪事を働く同門が出た時には率先して諌める、もしくは再起不能になるまで徹底的に叩き潰すようになったのだ。
「(だが俺としては、彼女にそういったことをしたくはない。怪人だったとはいえ、彼女が恩人であることには変わりないからだ)」
ディーナという少女が悪い人物ではないということは、これまで接してきた経験でよく分かっている。本音を言えば、このまま見逃してもいいとさえ思っていた。
だが、それと彼女の父親に関しては話が別だ。流派の者が誰も存在を把握していない、認知していない人物が流派の技を教えている。それは『十二戦神流』の者にとって絶対に看過できないことだからだ。
故に、スパイラル・ジェッターは苦渋の決断として、自身の目の前にいるディーナという少女を捕縛することを決めた。彼女の父親について話を聞くために。
「・・・ッ!」
出来ることならあまり傷付けることなく捕まえたい。そう考えたスパイラル・ジェッターは全身にエネルギーを巡らせ、一撃でディーナを行動不能にするべく踏み込もうとした。
―――その瞬間、スパイラル・ジェッターから見て左側の倉庫の壁が轟音を立てて吹き飛んだ。
ドカアアアァァァンッッ!!!
『・・・ッ!!』
「えっ!?」
「なにっ!?グゥッ!!?」
その際に発生した粉塵に紛れ、何者かがスパイラル・ジェッターに襲い掛かってきた。
超高速で振るわれる拳。その一撃をスパイラル・ジェッターはギリギリ掌で受け止めて防ぎ、グッと掴む。
「クソッ・・・!?いったい何者だ!」
『・・・ハァッ!』
「チィッ・・・!?」
襲って来た人物に何者かと問い掛けるスパイラル・ジェッターであったが、しかし件の襲撃者はそれを無視して追撃を掛けようとする。
空いている方の拳にエネルギーを集中し、振り被る襲撃者。
それを目にしたスパイラル・ジェッターは掴んでいる拳を引っ張り、相手の体勢を崩しつつ投げる。
投げられた襲撃者は慌てることなくクルリと体を回転させつつ体勢を整え、そして地面に着地するとすぐさま駆け出して両拳による連続攻撃を繰り出してきた。
「舐、めるなぁっ!!」
『・・・ッ!!』
それをスパイラル・ジェッターは避け、受け流し、弾く―――だけでなく、一瞬出来た隙にカウンターのハイキックを放つ。
『フッ・・・!』
「・・・ッ!?」
空気を切り裂くような鋭い蹴り。それを襲撃者は添えるように片手を当て、横に押し退けつつ超至近距離までスパイラル・ジェッターに接近し、彼の体にトンッ、と軽く右拳を当てた。
『フンッ!』
ドゴンッ!!!
「ガァッ・・・!?」
次の瞬間、襲撃者の右肘部分がパカッと開き、続いてゴウッ!と音が鳴る程の爆炎が噴き出た。
そしてそれを推進力に襲撃者は右拳を杭打ち機のようにスパイラル・ジェッターの土手っ腹へと打ち込んだ。
「グゥゥゥゥゥ・・・ッ!?」
その場に重低音が響く程の重い一撃。それを受けたスパイラル・ジェッターの体は、ズザザザザザッ・・・!!と足元を引き摺りながら吹き飛ぶ。
・・・だが、彼は腐っても序列上位のヒーロー。ただ攻められてばかりではいなかった。
「【風刃舞】・・・ッ!」
『・・・ッ!』
吹き飛ばされると同時に、置き土産だと言わんばかりに大量の風の刃を襲撃者の周囲に放っていたのだ。
「くっ・・・!?この技を防げるものなら防いでみろ・・・!行けぇ!!」
中心にいる襲撃者に向かって殺到する、三百六十度ほぼ全てに配置された風の刃。
触れれば鋼鉄さえ容易く切り裂くそれらは―――しかし襲撃者の体を傷付けることが出来なかった。
『ハアァァァッ・・・!ハァッッ!」
その全てを、襲撃者が全身から発したエネルギー波で防ぎ、掻き消したからだ。
言うなれば、一種の防御フィールド。それにぶつかった風の刃は甲高い音を立てながら砕け散った。
「―――隙を晒したな?」
『・・・ッ!』
攻撃を防ぎ切ると同時に霧散するエネルギー波。
―――その瞬間を狙ったスパイラル・ジェッターが襲撃者に急接近し、技を放った。
「【暴風烈拳】ッ!!」
『グゥッ・・・!?』
スパイラル・ジェッターは暴風の如く荒れ狂う風を纏った右腕を突き出し、襲撃者を殴り飛ばす。
だがそこでスパイラル・ジェッターは違和感を覚えた。
手応えが妙に軽かったのだ。まるで自分から飛んでいったような感じだ。
『・・・!』
「うわっ・・・!?」
その予想は正しかったらしい。襲撃者は空中で体勢を立て直すと、余裕ありげにスタッと降り立った。
丁度その位置はディーナの目の前であり、突如として現れた襲撃者が自身の傍に来たことに彼女は驚く様子を見せた。
同時に、周囲に立ち込めていた土煙が風に流されて晴れていく。そしてそれにより、今まで見え辛かった襲撃者の姿が鮮明に見えるようになってきた。
『カハァァァッ・・・・・・!』
そのフォルムは爬虫類―――より厳密に言えば恐竜のイメージが連想できるものであった。それもかなり禍々しい感じの。
色合いも黒を基調としていることも相まって余計にそんな印象を覚える。
「(コイツ・・・ホントになんだコイツは?怪人かもしくは怪物・・・いや、それにしては発せられるエネルギー波に淀みが感じられない。じゃあヒーロー・・・ってわけでもなさそうだよなぁ、あの姿を見る限りでは・・・・・・)」
襲撃者の姿を目にしたスパイラル・ジェッターは警戒を続けつつ、しかし内心では若干困惑していた。
その理由は、ディーナの前で佇む襲撃者からは怪人や怪物が放つ固有のエネルギー波が感じられなかったからだ。
基本的に怪人や怪物は怒りや嫉妬と言った負の感情から生成されるエネルギーを使って体を動かしている。そのエネルギーは副次的な効果として周囲の空間を歪ませ、その影響で周りの磁場も複雑に歪み、乱れて安定しなくなるという事象を引き起こす。
ディーナが怪人であると分かったのも、彼女の体からそのエネルギーが漏れ出ているのが感じられたからだ。
・・・まあ、スパイラル・ジェッターの知っているそれよりも澄んでいた感じだったので、最初は思わず首を傾げてしまったが。
だが、この襲撃者の体からはそのエネルギーが感じられなかった。ディーナのそれ以上に澄んでいる感覚を覚えたのだ。
色にして例えるなら無色透明。エネルギー波や圧は感じられるのだが非常に薄らしていて、そのせいで逆に底が見えなくなっている感じだ。
まさしく正体不明。今まで相対したことのない相手に、スパイラル・ジェッターは冷や汗を流した。
次回の投稿は5月13日の予定です




