ミッション94 乱入!ヒーロー+α・・・!?
「オオオオオオオォォォーーーッ!!!」
「来た・・・!来たぞ・・・!雄叫びを上げつつ拳を振り上げながら動物園の飼育員の山田が来た・・・!!?」
「任せろ!仲間内で一番防御力が高い俺がアイツの攻撃を受け止める!その間にお前らはアイツを―――!」
「フンッ!」
ドッゴンッ!!
「―――やれブファァッ・・・!?」
「マイフレンドォォーーーッ!?俺達の中で一番固いマイフレンドが一撃で沈められたぁぁーーーッ!!?」
「うっそだろオイィィッ!?」
ギロンッ!
「・・・って、こっち向いたぁ!?」
「ヤバイ、来るぞ・・・!一ヶ所に固まっていたら一網打尽にされる!バラけろ!」
「お、おう!分かっ、たぁ!?」
「ウオオオオオオォォォーーーッ!!」
「ば、バカな!?速すぎゴホォォーーーッ!?」
ドッゴンッ!!
「親友ーーーッ!?今度は親友が強烈なボディブローを食らって吹き飛んだぁぁーーーッ!?!?」
「つうか何だあの威力!?俺等を一発KOしちまえる一撃を繰り出せるなんて、アイツ本当に人間か!?人間なのか!!?」
「・・・ってか、んなこと言ってる場合じゃねぇぞ!!今度はこっちを見てる・・・!首の骨をゴキゴキ鳴らしながらこっちを見てんぞ・・・!?」
「マッズゥ・・・!?早く距離を取っ・・・!?!?」
「フンヌラバァァーーーッ!!!」
『ギャアアアアァァァーーーッ!?こっち来たぁぁーーーッ!?』
駆け出した山田とウィップティーチャーの二人の内、一番最初にブルー兜達怪人に接敵したのは山田であった。
彼は固く握り締めた拳を振るって振るって振るいまくり、怪人達を次々にノックアウトさせていく。
その様はまさに、打つべし打つべし打つべし!!といった感じであり、その一撃一撃を受ける羽目になった怪人達は、「お前本当に人間か?人間なのか!?ふっざけんなよこんちくしょう!!?」と言わんばかりに涙目となっていた。
「オーホホホホホッ!!さあ行くわよ!覚悟しなさいこの誘拐犯共!【インパクトウィップ】!【スパイラルブレイク】!【スネークハイド】!【ラッシュウィップ】!!」
ビシバシッ!ビシバシッ!スパーンッ!スパーンッ!スパパパーンッ!
「アバァァーーーッ!?!?」
「痛ッ!?痛タタタタッ!!?」
「ウゴッ!?ダッ!?ちょ、待っ・・・!ブベベベベベッ!?!?」
一方のウィップティーチャーはと言えば、山田に一歩遅れる形で怪人達と戦闘を始めており、その手に持つ鞭を縦横無尽に振るいまくっていた。
縦に横に、時には螺旋や穂先が迂回する軌道を描きながら、彼女の鞭は的確に怪人達の体を打ちのめしていく。
また、それと平行して山田へのフォローも行っており、彼を背後から襲おうとしていた怪人の体に鞭を巻き付けるとすぐさま引っ張り上げ、地面に叩き付けた後で、まな板の上の鯛を料理するが如くメッタ打ちにするなどもしていた。
「チィッ・・・!?山田の相手だけでも厳しいというのに、それに加えてヒーローが参戦してくるとか不利なんてもんじゃないぞ!?クソッ、どうする・・・!?この最悪の状況をどうすれば覆せる・・・!!」
自分の仲間達が次々とやられ、ダウンしていく光景を目にする羽目になったブルー兜は、くそったれ!?と苦々しい感情が籠った声を漏らす。
同時に、頭の中では何か打開策がないかを考えていた。
「(まだ動ける連中全員で山田を集中攻撃・・・しても返り討ちにされるのがオチだし、当然あの女ヒーローに邪魔されるだろう。なら、当初の目的どおり子供達を人質に・・・したくても、あのなんか予想以上に強いお嬢さんが守っているせいで近づけないし。・・・・・・あれ?八方塞がりじゃね、これ??)」
考えて考えて・・・あ、この状況を打開するのは無理そう、と理解したブルー兜は思わず遠くを見やるように視線を虚空へ向けた。
「(・・・・・・いや・・・いいや、まだだ。こうなったらもう最後の手段だ。―――逃げる。それしかない・・・!!)」
そのすぐ後に首をブンブンと横に振って気を取り直したブルー兜は、己の思考を戦闘のそれからこの場から逃走する方へとシフトした。
「(もうこの状況からの逆転は難しい。なら、一度引いて再起を図るしかない。・・・業腹だが、もしもの時に備えて逃走手段を用意しておいたのが功をそうしたな)」
チッ、と舌打ちをしたブルー兜は踵を返し、倉庫の出入り口に向かって早足で進み始める。
「(チームの連中については・・・まあ、 全員は連れていけんな。今後も使えそうな奴等以外は、悪いが殿という名の囮になってもらおう)」
その最中にチームに所属している野良怪人達の事が頭を過り、彼等をどうするかと考えたブルー兜は―――然程悩むことなくドライにそう答えを出した。
ブルー兜にとって野良怪人である彼等は、元々は戦力として運用することを目的として集めた連中だった。それ故に、使いモノにならなかったり足枷になるようであれば切り捨てることに躊躇いはなく、その事に対する罪悪感等もまた微塵も覚えてはいなかった。
ドッッカアアアァァァンッ!!!
「ヌオッ!?」
そうして、そうと決まればとっとと連れていく奴を見繕わなければ、とブルー兜がキョロキョロと視線を周囲に向けた時だった。再び大きな破砕音が建物内に響き渡ったのは。
壊されたのはブルー兜が向かおうとしていた出入り口のようであり、今度は何が起こったんだ!?と粉塵が大量に舞うその場所に彼が視線を向ければ―――そこには巨大な人影が仁王立ちしていた。
「ウゥゥサァァァ・・・!!」
グポーンッ・・・!と赤く光る眼光を携えながら一歩前へと踏み出してくる巨大な人影。
その正体は少し前に婦警さんの放ったミサイルの爆発を食らって吹き飛んだ筈のピョン太郎だった。
宙に舞う粉塵の中を切るようにして現れた彼の体は所々が煤けていた。それはおそらくミサイルの爆発を食らったせいだろう
がしかし、それにしては彼の体には目立つような外傷が見られない。普通、ミサイルの直撃を受けようものなら怪人であっても大なり小なり負傷は免れない筈なのにだ。
その答えは怪人化した際に彼が獲得した能力にあった。
『自動完全再生能力』。
それは読んで字の如くと言うべきか。一言で説明するのであれば、怪我を負った直後に発動する驚異的な再生能力だ。
ちなみにどれくらい驚異的かと言うと、手足の欠損の再生は序の口。体内の臓器の大半を失っても即座に再生し、なんなら十分なエネルギーさえあれば細胞の一欠片からでも肉体を再生し、再構築することさえ出来てしまえる程だ。
まさに不死身の肉体と呼ぶに相応しいそれだが・・・しかし最後の例に関しては、ピョン太郎の保有できるエネルギー容量では到底賄いきれないレベルの大量のエネルギーを必要とするので、まず出来る事ではなかったりする。
・・・まあ、その能力があったからこそ〝体が多少煤けていても無傷である〝という状態になっているわけなのだが。
・・・しかし同時に、その能力を発動したが故にピョン太郎はそれ相応の代償を払う羽目になっていた。
「フゥゥゥゥゥ・・・!!」
ハッキリ言って、今現在のピョン太郎は活動する為に必要なエネルギーが尽きかけていた。
一見ピンピンしているように見えるが、その体に保有しているエネルギーの量は残り僅か。此処に来るまでに起こったサンライザーやレディースジェントルメンとの戦闘、更には東藤楓という婦警が放ったミサイルの爆撃によるダメージを回復する為ではあったが、それにより全力で動こうものなら保って数分が限界となってしまっていた。
それでもディーアルナを追いかける事を止めようとしないのは、野良怪人になったことによる本能の暴走によるものか、もしくは雄としての性か。
どちらにせよ、ピョン太郎には立ち止まるという選択肢は端っから持ち合わせていなかったのである。
「ウサッ!・・・・・・ウサァ?」
ザンッ、ザンッ、という足音を立てながら倉庫内を見回すピョン太郎。その中で自身の飼い主の姿を見つけた彼は一瞬喜びの声を上げ、しかしその後に「・・・おや?」という感じに首を傾げた。
何故かは分からないが、今現在この倉庫内では怪人とヒーローが戦っている状況となっていたからだ。
後から来たが故に詳しい事情を知らない彼は、どうしてこんな状況になっているのだろうと思い、考えて―――うん、コイツ等自分の飼い主を狙ってる連中だな?という結論を出した。
なにせ自分の飼い主は非常に魅力的な人物だ。怪人だろうがヒーローだろうが一般人だろうが、一度その魅力に引き込まれ、取り憑かれようものなら求めずにはいられなくなってもおかしくはない。
つまり此処にいる連中は、自分の飼い主を手中に納めてあんな事やこんな事や色々な規制に触れる事をしようとしている、ということなのだろう。
そう思い至ったピョン太郎は納得するように顎に手を当てながら頷いて―――「ふざけるなよ・・・!自分の飼い主にそんな事をして良いのは俺だけだ・・・!!」という感じに激怒した。
「ウゥゥゥサァァァアアアッ!!!」
「ッ!?!?」
何がどうしてそんな結論が出てしまったんだろうか?と思わなくもないがそれはさておき、怒りの雄叫びを上げたピョン太郎は丁度目の前にいた人物―――つまりはブルー兜に向かって、「なんばしよっとかこんにゃろめぇぇぇ!!!」と言わんばかりに飛び掛かった。
「ウサウサウサウサァァァッ!!!!」
「ぬ、ヌオオォォォッ!?!?」
両の拳による怒濤のラッシュラッシュラッシュ!!
エネルギー残量のことなど頭から抜け落ちているようなその動き、その攻めに、ブルー兜は困惑と驚愕の叫び声を上げながら防御する。
「(誰だコイツは!?何でいきなり攻撃してくるんだ!?というかコイツ、力強ッ!?こ、このままでは押し切られる・・・!!?)」
驚きつつもなんとか眼前で両腕を交差させてピョン太郎の攻撃を防ぐ事が出来たブルー兜であったが、しかし予想以上に重い攻撃に冷や汗を流す。
このままでは防御している腕が弾き飛ばされかねない。そう焦ったブルー兜は、ラッシュの合間に存在する息継ぎでもするような攻撃が緩む瞬間を狙って後ろへと下がる。
「ウゥゥッサァッ!!」
「な、にィッ・・・!?」
だがそうはさせじと、ピョン太郎もまた前に踏み出した。
「ウゥゥサウサウサウサウサァァァッ!!!」
「お、オノォォォレェェェッ!!?」
止まらない、終わらない拳の雨霰。その暴力の嵐から逃れることができなかったブルー兜は、苛立ちと怨嗟の籠った声を上げながら防戦一方という名の膠着状態に陥るのであった。
「・・・な、なんか、何時の間にかとんでもない事になってるな」
現在倉庫内で起こっている出来事。それをポツンと幼い兄弟の前に立ちつつ眺めていた俺は、思わずそう言葉を零した。
なんというか、激しい状況の変化についていけない。
援軍・・・と呼ぶべきかは怪しいが、少なくとも俺の後ろにいる兄妹を助けに来たのであろう二人組が怪人達と戦ってくれるのは正直ありがたいとは思う。思うがしかし、その暴れっぷりが滅茶苦茶ヤバイ。
最早アレは蹂躙と呼ぶべきだろう。時に拳で殴り飛ばされ、時に鞭でメッタ打ちにされて涙目となっている怪人達が、俺には憐れに思えてならない。
加えて、何処からともなく乱入してきたピョン太郎の暴れっぷりもヤバイ。
・・・いや、無事だったことは素直に喜ばしいとは思っているのだが、しかしブルー兜に向けて放たれる拳の圧というか、攻撃の密度が尋常じゃない。あんなのを直に食らったら、たぶん俺であれば昏倒するであろう事は間違いない。
・・・・・・それを、直撃を食らうことなく防ぐことができているブルー兜もまた同じくらいにヤバイが。
「・・・まあ、それはそれとして、これからどうするべきか」
ポツリ、と俺は小さく呟く。
今の俺・・・というか、後ろにいる兄妹も含めた俺達の状況は、注意を向けられていないというか、蚊帳の外に置かれているというか、まあそんな感じだ。
だからと言うか、これからどうすればいいのだろうかと、俺は内心で首を傾げていた。
本音を言えば逃げたくはある。元々俺は今回の件には全く関係のない第三者。つまりは偶然巻き込まれただけの部外者だ。必ずしも此処にいる必要はない。別にいなくなったとしても問題はない筈だ。
・・・がしかし、このまま知らん顔してこの二人の兄妹の下から離れるのはなんとなく後味が悪く感じられた。
成り行きとはいえ助けようと思い、実際にそう動いたのだ。であれば、最後まで面倒を見なければ無責任だと言えよう。
そう思った俺は、しょうがないなぁと言いたげな小さな溜め息を吐きながら二人を安全そうな場所へ誘導しようとした。
「―――ォォォ・・・ォォォオオオオッ・・・!!」
「ッ!?」
そんな時だった。自身から見て右側で何者が立ち上がる気配を感じたのは。
その何者かは、先程俺がブッ飛ばした筈のロックパイソンとか言う怪人であった。そいつは最初ゾンビのような声を出していたかと思うと、ギュルンッ、と勢いよく俺の方へと両手を伸ばしてきた。
くそっ、しまった!気付くのが遅れた・・・!回避は・・・ダメだ、間に合わない・・・!
「ぐぅっ!?」
「グハハハハハッ・・・ハァァァ・・・!よぉぉうやく捕まえたぜぇぇ、嬢ぉぉちゃぁぁん・・・!!」
手と手を合わせるようにガッと組み合う俺とロックパイソン。組み合った当初はパワーバランスは拮抗していたが、しかしその後は俺の両腕の方が徐々に後ろへと押され始めた。
くっそ、分かっちゃいたがやっぱり純粋なパワー勝負となるとこっちの方が分が悪い・・・!このままじゃ、押し切られる・・・!?
「グフフ・・・力じゃ圧倒的に俺に劣る嬢ちゃんじゃここからの逆転は不可能だぁ。さあぁ諦めて観念しなぁ。そうすりゃ優しぃぃく可愛がってやるぞぉぉ?」
「ふ、ざけん、なぁ・・・!!」
歯を食い縛ってなんとか押し返そうとするも、完全に押し倒されないように抵抗するのが精一杯。
だがそれも時間の問題だった。腕だけじゃなく上半身までもが押され、仰け反り始めたからだ。
保ってあと数分が限界。そう思った時だった。突然頭上から何か固いものを切り裂いた時に出るような、重たい切断音が響いてきたのは。
ガガガァァンッ!!!
「んなっ!?」
「何だ!?」
何事かと見上げれば、倉庫の天井が大きく切り裂かれて縦長の穴が空いていた。
加えてそこから何者かが飛び降りてくる様子が見てとれた。
「はあぁぁぁっ!セリャァアアアーーーッ!!」
「グブフゥゥッ!?!?」
降りてきた人物の姿は、鷹や鷲を模したデザインの、全体的に緑色で統一され、所々に白と黄色の配色が入った鎧を着た騎士とも呼べるものだった。
その人物は倉庫の天井から飛び降りた後に全身に風を纏い、その風を利用して俺達の直上へと位置調整を行うと、落下の勢いも加えた飛び蹴りでもってロックパイソンの顔面を強かに蹴り飛ばした。
「無事か、ディーナさん!」
「えっと・・・その声って、もしかして御城さん・・・?」
ロックパイソンを蹴り飛ばしたその人物は、スタッと着地するとクルリと体を回して俺に声を掛けてきた。
その声が自分の知っている人物の―――御城さんの声と同じだと気付いた俺は、驚愕に目を剥きながら思わず問い掛けるようにそう呟いた。
・・・というか、何で俺だって分かったんだろうか?確かブレーバーの話じゃ、変身中は認識阻害の効果がある筈なんだけど?
「・・・?何を言って・・・って、そうか、この姿じゃ分からないもんな。見せるのも初めてだし。―――ああ、その通り。俺は君の知っている御城輝幸だよ」
俺の呟きを耳にした鎧を着た人物こと御城さんは最初不思議そうに首を少し傾げ、直後に自身のヒーローとしての姿を今まで見せたことがなかったことに思い至ったのか、その通りだと頷いた。
「それはそうと、ディーナさん。君のその格好はいったい?それに、その体から感じられるエネルギー波は、まさか・・・」
その後で怪訝そうな視線を俺に向ける御城さん。
その反応はまるで、そんなまさか、とか信じられない、と言いたげなものだった。
「ディーナさん・・・君は、もしかして怪人、なのか・・・?」
「・・・ッ!」
その言葉に思わず息を飲む。
バレた。バレてしまった。今まで隠していた秘密が遂に。
片や、俺は悪の組織に所属する怪人。片や、御城さんはその悪の組織と戦うヒーロー。
本来なら互いに敵対し、戦い合う立場の間柄。それが今までなかったのは、俺の正体がバレていなかったからだ。
だがしかし、今後はそうもいかなくなるだろう。バレてしまった以上はこれまでみたいに戦うことなく穏やかに話をするなんて事はできなくなる。
何時かはこんな日が来るんじゃないかとは心の片隅では思っていた。・・・思っていたがしかし、だからって、なにもそれが今日じゃなくたって・・・!心の準備とか全然出来てないんですけど・・・!!?
「ああ、そんな・・・俺はまた間に合わなかった、守れなかったのか・・・!」
「・・・ん?」
騙された、裏切られたと思っているであろう御城さんの口からいったいどんな罵詈雑言が出てくるのかと戦々恐々していた俺だったが、そこで彼の様子がなんかおかしいことに気付いた。
「くっ、すまないディーナさん・・・!俺が駆けつけるのが遅かったばっかりに・・・!!
「えっと、御城さん・・・?」
「ちくしょう、何時もそうだ!何時も俺は駆けつけるべき大事な時に間に合わない!アイツの時も、あの子の時だって・・・!」
「あの~もしもし~?」
「くそっ・・・!今度こそは、今度こそはと思っていたのに・・・!なのに彼女を、ディーナさんを怪人にさせてしまうなんて・・・!!」
何故か急に謝りだす御城さん。その後も彼はまるで懺悔でもするかのように悪態を吐きながらブツブツと呟く。
・・・なんだろう。なんか予想していた反応と違う。絶対「よくも騙してくれたな!?」とか言いながら戦いを仕掛けて来るものだと思っていたのに。何故か自己嫌悪しているというか、自分で自分のことを責めている。まるで自分の殻の中に閉じ籠っているような感じだ。
何度か声を掛けてみるが、内側に意識を集中しているせいかこっちの声は聞こえていないらしく、また目の前で手を振ってみても反応がない。
―――なので俺は片手を振り上げ、御城さんの頭を引っ叩いた。
「聞けよ、人の話を」
スパンッ!
「ガフッ!?・・・え、え?」
良い音が鳴るくらいの勢いで頭を叩かれた事でようやく正気に戻ったのだろう。御城さんはビックリしたような視線を俺に向けた。
「御城さん、さっきからいったい何の話をしているんですか?」
「・・・え?そ、それはもちろん、ブラックサンタの光線銃に当たって怪人にさせられてしまう前に君を助けることができなかったことを嘆いて・・・・・・」
「いや、俺、そんなもんに当たってないんですけど」
「・・・え?当たって、ない?・・・・・・あれ?会話が成立してる?理性がある!?」
「今更ッ!?」
驚く御城さんに俺の方が驚く。
いや、本当に何なんだその反応?
「え?なんで、どうして?アイツの光線を浴びたら理性なんてない本能に忠実な野良怪人になる筈なのに・・・!」
「いやだから、さっきも言いましたけど当たってないんですって。そのブラックサンタっていう奴の光線には」
「え、えぇ?そ、それじゃ、どうしてディーナさんは怪人になっているんだ・・・?」
「・・・それを聞きますか?ここまで来たら答えなんて分かっているようなもんですけど。・・・うぅん、まあいいや。つまりですね、俺は最初から、御城さんと初めて出会った時から怪人だったんですよ」
「最初から・・・最初から!?」
物凄く驚く御城さん。その反応からマスクの下で瞠目している様が容易に想像できた。
「え、え!?ちょ、ちょっと待ってくれ・・・!俺達が初めて出会った時からってことは、あの日の時点で君はもう・・・!?」
「怪人でした。それも成って丁度一ヶ月が経った頃です」
「・・・マジか」
御城さんにとっては完全に予想外だったのだろう。まさに唖然呆然といった感じだ。
「・・・・・・はっ!待ってくれ。その時点で既に怪人に成っていたということは、もしや君はあの日、何かしらの悪事を働こうとしていたんじゃ・・・!?」
「いえ、あの時話した事情に嘘はないです。本当にお使いを頼まれて買い物に出掛けていただけです」
「えぇ・・・?」
御城さんの語るもしやに、俺は違う違うと手を横に振って否定する。
そんな俺の姿を見た御城さんは嘘は言っていないようだと察してくれたらしい。「・・・マジか・・・・・・マジかぁ」と長い溜め息を吐くかのように呟いていた。
「グググッ・・・・・・!俺を無視して話に花ァ咲かせてんじゃねぇぞゴラァァァーーーッ!!?」
「「ッ!?」」
と、そこで御城さんの蹴りでブッ飛ばされてダウンしていた筈のロックパイソンが体を起こした。
いや、本当にどんだけ頑丈なんだよコイツは・・・!総ダメージ量で言えば、其処らの怪人ならダース単位で戦闘不能になっている程なんだぞ!?
「クソクソクソッ!可愛い女の子と楽しくお喋りしやがって・・・!!羨ましいんだよどちくしょうがぁぁぁーーーっ!!!」
「キレるとこそこなの!?」
地面を力強く踏み締め、蹴って、俺達に向かって突進してくるロックパイソン。
おそらく頭に生えている角でこちらを串刺しにしようとしているのだろう。エネルギーが集中して紫色に光り、リーチが伸びているのがその証拠だ。
「リア充死すべし慈悲はねぇぇぇっ!!!」
ロックパイソンは叫びながら更に加速する。その瞬間速度は時速三◯◯km。新幹線の最高速度並みだ。
それに対処しようと御城さんが振り向こうとするが、それよりも先に俺が前へと出た。
真正面からぶつかるのは明らかに自分の方が不利だということは分かっていた。パワーと体格差でも負けているのにそこに超スピードまで加わったら、普通に考えて轢き飛ばされるのがオチだからだ。
だからこそ俺は、ロックパイソンを仕留める為にあえて真正面で彼を迎え撃った。
「【影狼】!」
「・・・ッ!?」
俺の体と突進してくるロックパイソンと衝突する―――その瞬間、俺の体は煙の様に掻き消えた。
・・・否、正確には俺の分身の体が、であったが。
【影狼】とは自分そっくりの影を作り出す技だ。主に敵の狙いを分散させる囮として使うことが多い技だが、今回はそれを自分の少し前に作り出し、実際の距離間を誤魔化す一種の目眩ましを目的として使用した。
そしてその影がロックパイソンとぶつかって霧散した瞬間、俺は一瞬の死角となった彼の頭上を飛び越え、その背後へと回り込む。
「そして【蛇糸】!」
「・・・なんっ!?」
その最中に【蛇糸】という両の掌の上でエネルギー状の太い紐を作り出す技を使い、それをロックパイソンの体の各所に巻き付ける。
「そんでもって、変則一本背負い!」
「ヌガッ!?」
ぶつかった瞬間に煙の様にかき消える俺の分身を見て、更には手応えがなかったことに困惑し、減速を始めるロックパイソン。
その瞬間、俺は両手に持つエネルギー状の太い紐を思いっきり引っ張る。
ピン、と伸びるエネルギー状の太い紐。それに伴い、ロックパイソンの体もまた後ろへと仰け反り、大地を踏み締める勢いも相まって、斜め後ろ上空へと飛び上がる。
「・・・かーらーのー、奥義【重兎閃襲陣】!!」
ドガガガガガガガガガガカガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!
「アガアアアアアアアアアアアーーーッッ!?!?」
投げ飛ばされ、宙を飛ぶロックパイソン。そのデカイ図体を追って俺も空中へ跳び上がり、エネルギーを集中し、黒く染まった左足による飛び蹴りを叩き込む。
だが、この技の―――【重兎閃襲陣】の攻撃はこれで終わりではない。
その後も俺はヒット&アウェイの要領でロックパイソンの体を蹴っては離れ、倉庫内の壁や床、天井裏を足場にして飛び上がり、かの怪人の体に再度飛び蹴りを叩き込むといったことを繰り返す。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!
蹴って蹴って蹴って蹴って蹴って蹴って蹴って蹴って蹴りまくる!!
「・・・グッ・・・ペッ・・・・・・!?!?」
俺に蹴られまくったことにより、ロックパイソンの体はどんどんとズタボロの状態になっていく。
そんな彼の姿を目にした俺は、情けや容赦といったものを―――掛けよう等と思うことは一切なく、更なる追撃を敢行することにした。
なにせ相手は怪人。それも俺の攻撃を散々食らっても平気で起き上がる、頭おかしいくらいに並外れた耐久力の持ち主だ。きっちりとトドメを差しておかなければたぶん、いや間違いなくまたもや立ち上がることだろう。
故に俺は最後の大技を放つ為の準備に入る。
「締めはコイツだぁ!奥義【虎王雷墜脚】!!」
宙を飛ぶロックパイソンの直上、倉庫の天井裏に移動した俺は、その天井裏を蹴って勢いよく、一直線にかの怪人の下へと飛んだ。
体を丸め、クルクルクルと縦に高速回転を行いながらロックパイソンに接近。あと少しでぶつかるという所で、バチバチと稲妻の様に迸るエネルギーを纏った右足を振り上げ、超強力な踵落としをロックパイソンに叩き込む。
「ゥゥゥオリャアアアアアアアアーーーッッ!!!」
ドッッッッッゴンッ!!!!
「ゴボファッ・・・!?!?」
そしてそのまま轟音と共に、ロックパイソンの体を真下にある倉庫の床へと思いっきり叩きつけた。
次回の投稿は5月6日の予定です




