ミッション92 遭遇!野良怪人・・・!?
皆様お久しぶりです、kudoです。予定していた日数よりも早く新話が出来たので今日から投稿していきます。
「・・・・・・い、痛たたた・・・うぅ、酷い目にあった」
何処かの建物の中。俺は鈍い痛みを感じる後頭部を片手で撫でつつ体を起こしながらそう呟いた。
藤堂楓という婦警さんの撃ったミサイル、その流れ弾によって生じた爆発でビルの屋上から吹き飛ばされた俺は、どうやら近くにあった建物の中に窓を突き破って入ってしまったらしい。
周囲は俺が落下した際の衝撃で舞い上がったのか、埃などの粉塵が多分に漂っており、また照明も点いていないせいか若干暗く視界が悪い。
・・・というか、もしかしてこれ電気自体が通ってないんじゃないか?見える範囲の壁や床は罅割れていたり、剥げたりしているし・・・放置されて十数年くらい経過している様な、そんな感じだ。
「此処、もしかして倉庫か何かか?・・・天井の高さと空間の広さを見るに、どうも大型のそれっぽいけど。・・・にしても、所々ボロボロだなぁ」
そう呟きながら立ち上がった俺は、比較的視界が良好な場所へ移動しようとケホケホッと咳き込む口元を片手で押さえつつ、もう片方の手で周囲を舞う粉塵を散らし、掻き分けながら歩き出す。
「―――え?」
「―――はっ?」
そうして、ようやく粉塵の中を抜け出す事ができて一心地着けると思ったその時だった。開けた視界のその先で、十数人の怪人達が集まっていることに気付いたのは。
皆一様に驚きに見張った目をこちらに向けており、中にはあんぐりと開いた口が塞がらないという感じになっている者もいた。
俺自身もまた彼等に負けず劣らず目を驚きに見張っていた。まさかこんな所に怪人が大勢いるとは思ってもみなかったからだ。
「(・・・怪人?え、なんでこんな所に怪人が、それもこんなに沢山いるんだ?・・・・・・って、ん?)」
内心で、何コレ?という感じに思いっきり困惑していた俺だったが、そこでふと目の前の光景に違和感の様なものを感じた。
円形に集まっている怪人達の中心に小柄な人影が二つある様に見えたのだ。
「(なんだアレ?あの二つの人影も怪人か?・・・いや、それにしては形が歪に見えないな。怪人なら多少姿形に歪さがある筈だが・・・・・・)」
怪人の姿形というのは大なり小なり必ず歪さがあり、大抵は筋肉や骨格が変質変形してだとか、あるいは元となった生き物に由来してだとか、はたまた他の何かと融合や合体をしてだとかなど理由は様々だ。
人為的に作られたタイプであれば尚のこと歪さが顕著だ。何せ元々その体に無い物を改造する事で付け足すのだから。
逆に野良怪人などの自然発生するタイプは環境や条件次第では人型以外の何かになる事もある。俺の知っているのだと、某有名なRPGゲームに登場する、毒持ちの液体状の姿をしたスライムの様な見た目になった奴もいた。
ちなみに、俺の様な姿形に歪さが見られない完全な人型の怪人はかなり珍しいタイプらしい。それこそ、自分達の一族以外では始めて見るとブレーバーが言う程には。
だからこそ、こんな所に自分と同じ完全な人型タイプの怪人がいるとは早々思えなかった俺は、二つの小柄の人影の姿を良く見ようと目を凝らし―――そして目を見張った。
「(一般人・・・!?それも子供がなんでこんな所に・・・!?)」
二つの小柄の人影の正体は縄で縛られた男女の子供達であった。
二人の容姿はそれぞれ、男の子の方は年上のお姉さん方からはキャアキャア言われながら可愛がられてもおかしくないくらいの十二、三歳程の美少年。女の子の方はフワフワとした感じの見ている側の保護欲を掻き立てさせる十歳前後の美少女と、将来も期待できるが今の段階でも非常に整えられていると言えるものだ。
・・・・・・だがしかし、気のせいだろうか?なんかこの二人どっかで見た事ある気がするんだが。・・・デジャブか?
しかもその横に視線を向ければ、そこには両手の指をワキワキとさせながら涙目になっている子供達へと迫ろうとしている、パンクメイクを全身に施した半牛半人の怪人の姿が。
・・・・・・・・・・・・うん。
「―――【炎馬爆進脚】!!」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!!・・・ドグシャッ!!
「ブゲラハァッ!?」
「ろ、ロックパイソーーーンッ!?!?」
明らかに事案であるその光景を目にした俺は両足にエネルギーを集中し、足裏から炎の様にはためくエネルギーを噴射させながら物凄い勢いで前へと跳び、渾身の跳び膝蹴りを半牛半人の怪人の下顎に食らわせてかち上げた。
そしてそのまま流れる様に子供達を回収。両手で抱きかかえつつ、再び足裏から炎の様なエネルギーを噴射させて怪人達の囲いを跳び越した。
「ヒック、ヒック・・・!お、お姉さん、助けてくれてありがとぉぉ・・・!!」
「怖かった・・・!怖かったよぉぉ・・・!!」
「お、おう」
「(ヤバい。つい反射的に助けちゃったけど、これからどうしよう)」
怪人達からある程度離れた場所に着地した俺は、腕に抱きかかえていた子供達を下ろしつつ、その体を縛っていた縄を手に纏う様に形成したエネルギーの刃で切って解いてやる。
そしてその後で、おそらく沢山の怪人に囲まれていたのが相当に怖かったのだろう、涙目で見上げて来る子供達の姿を見た俺は、冷や汗を流しながらそう思った。
「あ、これ明らかに事案だ」と思った瞬間に思わず助けてしまったわけだが、これからどうするべきかまでは全然考えていなかったからだ。いや、本当に。
そもそも、俺自身もつい先程まで野良怪人化したピョン太郎に追い掛けられたり、そのピョン太郎と戦隊ヒーローや変態怪人が戦う光景を見させられたり、果ては婦警さんの放ったミサイルによって吹き飛ばされる等、色々とカオスな状況に陥っていたのだ。そこへ更なるカオスがブッ込まれたのだから、もう本当にどうすればいいんだ・・・!?と思ってしまうのも仕方がないことだろう。
子供達がこんな所にいる経緯は不明だが、状況を見る限りではおそらくあの怪人達によって誘拐されたとかだろう。しかもあの怪しい手付きを見る限り、たぶんこの子達に何か乱暴な事をしようとしていたものと思われる。
こういうシチュエーションをなんて言うんだっけ?確か、そう。エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!・・・だったっけか?前にバイト先の店長がなんかノリでそんなこと言ってた。どういう意味なのかは今でもよく分かんないけど。
・・・まあ、世間一般の怪人の認識は悪事を働く悪い奴というのなので、やろうとしていた事はあながち間違いではないと思うのだが。むしろウチみたいな悪の組織と名乗っているのにやっていることは全然悪っぽくない所の方が、世間一般の認識ではおかしいのかもしれないが。
「テメェ、このクソアマ!よくもまあ俺達の仲間に手ェ出してくれたなぁ!?覚悟はできてんだろうなぁ、あぁん!!?」
「うん?」
と、そんな事をつらつらと考えている時だった。俺の後ろから怒声が聞こえて来たのは。
どうやら先程膝で顎をかち上げた怪人の仲間達が憤慨してるらしい。よくもやりやがったな!?と言わんばかりにどいつもこいつも荒げた声を出していた。
「いやいや、俺が出したのは手じゃなくて足なんだけど・・・」
「んなもんどっちでもいいんだよ!攻撃してきたのには変わりねぇんだからよぉ!!」
「出したのは手じゃない手じゃない」と俺が手を横に振りながら答えると、怪人達の内の何人かが「同じ事だろうが!?揚げ足取んじゃねぇよ!!?」とツッコミを入れて来た。
「―――まあ、落ち着け、お前達。ここで騒いでも何も始まらんだろう」
「ッ!?ブルー兜さん!」
ふとそこで、目の前に集まっている怪人の集団の中からとある一人の人物―――頭部にカブトムシの様な大きくて立派な角を生やし、全身を青み掛かった光沢のある装甲に覆われた怪人が現れた。
『ブルー兜』と呼ばれたその怪人は集団の一番前に出ると、ゆっくりと、しかし力強さを感じられる動きで腕を組む。
「さて、そこのお嬢さん。その子供達をこちらに返してもらえないだろうか?その二人は我等『ブルーロックファイター』の目的の為に必要不可欠な者達でね。我々の手元からいなくなってしまうという状況は勘弁してもらいたいのだよ」
「アンタ等の目的の為に、だって?」
渋さが感じられる声音でもって理性的にそう話し掛けて来るブルー兜。
それに対して俺が訝しむ様な感じで問い返すと、彼は「うむ・・・!」という感じに頷く。
「そう、我等の目的。それは・・・・・・動物園の飼育員『山田』の打倒だ!!」
「・・・・・・・・・はぁ?」
ブルー兜の言う目的。それを聞いた俺は思わず疑問と困惑と呆れが混じった様な声を零してしまった。
動物園の飼育員の打倒って・・・え、そこは因縁のあるヒーローとかじゃなくて?あと、その名前、というか苗字、なんか聞き覚えがあるんだけど。
「えっと・・・・・・聞いてもいいだろうか。何でアンタ・・・いや、アンタ等か?はそいつの事を倒したいんだ?」
「ふっ・・・よくぞ聞いてくれた、お嬢さん。そう、あれは今から半月程前の事だった」
俺が質問するとその時の事を思い出してなのか、ブルー兜は若干遠くを見ながらそう語り始めた。
というか、え?ここで回想シーンに入るの?
「半月程前のある夜。我等は馴染みの居酒屋で好きなだけ酒を飲んだ後、酔いどれ気分で自分達のホームへと戻ろうとしていた。・・・その時だった。我等の前にあの男が、山田が現れたのは・・・!」
ブルー兜は顔を俯かせ、グッと片手で拳を握る。
「我等の前に現れた山田は雄叫びを上げながら殴り掛かって来た。その剛腕から繰り出される一撃は凄まじく、一般人よりも遥かに耐久力が高い筈の我々が一発二発食らっただけで軒並みノックアウトされてしまう程だった。・・・・・・そしてそれは、この私も例外ではなかった。他の者達よりも頑丈であった分、あの男と殴り合いをすることはできたが、十分と持たず敗北を喫し、地面とキスをする羽目になったのだ」
そう語るブルー兜はよっぽど悔しかったのだろう。握った拳をプルプルと震わせていた。
ついでに言えば、彼の後ろにいた怪人達もその時の事を思い出したのだろう。彼等もまた全員悔しそうな表情を浮かべていた。
そんな彼等に対して俺は、馴染みの居酒屋ってそんなに足蹴く通ってたのか?とか、アンタ等をノックアウトさせた山田って本当に動物園の飼育員だったのか?とか、色々とツッコミ所満載だったけど、あえてそこにツッコまずにある事を質問をした。
何故なら、話を聞いていくうちにその山田という動物園の飼育員が、自分の知っているあの筋骨隆々な肉体を持つ、お前本当に人間なのか?と思わず疑ってしまう様な人物と酷似している様に思えてならなかったからだ。
「えっと・・・あのさ、何か切っ掛けとかなかったのか?いくらその山田って奴がアンタ等全員を打ち倒すくらいに強かったとしても、何の理由もなしに殴り掛かって来るとは思えないんだけど・・・・・・」
「む・・・?切っ掛け、か?・・・・・・ふむ。もしかして、アレか?」
俺の問いに何か思い当たる節があったのか、ブルー兜は思わずといった風に呟く。
「あの男が現れる少し前に、仲間内の何人かが偶々路地裏にいた野良猫に遊びでちょっかいを出していたのだ。具体的には、飲み干した空のビール缶を誰が一番最初に猫に投げて当てられるか、といった感じだったが。・・・まあ、最終的にちょっかいを掛けていた連中の何人かは反撃とばかりに顔を滅茶苦茶に引っ掻かれていたが。・・・その後で、よくもやりやがったなと仲間の一人が猫の体を苛立ち混じりに蹴り飛ばしていたんだが・・・・・・・・・もしや、それか?」
多分それだ。
「ふむ、なるほど。あの男が殴り掛かって来た理由はそれか・・・・・・流石は動物園の飼育員、とでも言うべきか。―――まあ、だからといってリベンジを止めるつもりはないがな」
納得し、感心したように頷いたブルー兜は、しかしその後で「ハッ・・・!」という感じに言葉を吐き捨てた。
「話を戻そう。我々ブルーロックファイターの目的が山田という男の打倒だ、という話はしたと思うが、正直言って真正面から戦いを挑んだところでこちらが敗北してしまうのは目に見えている。―――であれば、勝つための策を弄するのは当然とは思わないかね?お嬢さん」
「・・・まさか」
「気付いたかね?理解できたかね?―――そう、人質だよ。あの男の血縁者、所謂兄弟であるその子供達を人質に取り、反撃できなくした後に、あの男の体を我々全員の気が済むまで徹底的にボコってボコッてボコりまくる。それこそが、我等『ブルーロックファイター』が立てた必勝の作戦よ!」
自信満々に胸を張りながらそう声を張り上げるブルー兜。
彼の後ろにいる怪人達も「リーダー凄い!あったま良い!」や「さっすがぁ!そこに痺れる憧れるぅ!」や「頭に生えている角は伊達じゃないんだな、リーダー!」といった感じに彼を称賛していた。・・・いや、なんか最後のは使い所が違う感じがするけど。
あと、なんか堂々と言ってはいるが、作戦そのものは卑怯と言うか、なんかせこい。
「に、兄ちゃんが・・・兄ちゃんがお前等なんかに負けるもんか!僕等の兄ちゃんはとっても強いんだぞ!」
「そうよ!私達の兄ちゃが負ける筈ないもん!アンタ達のことなんか逆にしばき倒しちゃうんだから!だから謝るんだったら今のうちよ!」
そんな風に盛り上がっている怪人達に対抗してか、俺が助けた子供達が声を上げる。
まあ、俺の背中に隠れながらだったし、声も震えていたので、背一杯の強がりの様だったが。
「ほう?言うじゃないか、ガキ共。さっきまで怖がって震えていたというのに、助けられた途端に元気になるとは。どうやら、まだ恐怖が足りなかったらしい。・・・・・・いいだろう。であれば、その希望を抱く心を、お前達を助けたそこのお嬢さんを念入りに潰してやることで、ポッキリと圧し折ってやろうではないか」
ブルー兜はそう言うと、パシュッという音と共に一部が開いた腕の装甲の隙間から飛び出した手斧の柄を握り、ブンッと勢いよく振り払った。
そして、いざ俺達に向けて突進してこようと身構えたその時、横合いから彼に声を掛ける者が現れた
「待ってくれ、ブルー兜。その役目、俺にやらせてくれないか?」
「ん?おお、ロックパイソンか。もう起き上がれるのか?結構いい所に入ったようだったからしばらく目を覚まさないものと思っていたが・・・」
「ああ、勢いは確かに凄かったが、案外受けたダメージはそれほどでもなくてな。今も多少痛みが残っている程度だ。このくらいなら戦闘行為も支障なく行える」
それは先程俺が膝で顎下をかち上げた半牛半人の怪人であった。
『ロックパイソン』と呼ばれたその怪人は顎を擦ってはいるが、しっかりと歩けている様子なので、本人の言う通り実際大したダメージになっていなかったのだろう。・・・・・・まあ、なんとなくそんな予感はしていたが。
というのも、あの時あの怪人に一撃を入れた瞬間、手応えが浅かったように感じられていたからだ。
おそらく、あの半牛半人の怪人は相当に体が頑丈なのだろう。でなければ、並の怪人であれば顎の骨を確実に粉砕していた筈の俺の技を食らっておいて多少痛みが残る程度で済む筈がない。
その事をブルー兜という怪人も察したらしく―――いや、あれはどちらかと言えば、そういえばコイツの体って頑丈だったんだっけ、みたいに思い出した感じだろうか?―――ひとつ頷いた後に、許可を出した。
「ふむ。そういうことであれば任せても良いだろう。お前も自身に一撃を見舞った相手にお返しをしたいだろうからな」
「おう。ありがとよ、ブルー兜。譲ってくれて感謝するぜ!―――さて、それじゃあこの俺とヤりあってもらおうじゃねぇか。なぁ、嬢ちゃん?」
「くっ・・・!?」
「「ヒッ・・・!?」」
ブルー兜から許可を貰ったロックパイソンは、嬉しそうにガンッと両拳をぶつけ合った後に足音を立てながら歩き出した。
「こ、怖くない、怖くなんかないぞ・・・!」
「兄ちゃ・・・兄ちゃ・・・!」
ズンズンと近づいてくるロックパイソンと、それに怯える子供達。そんな彼等の姿を目にした俺は、一瞬どうしようか迷った。
なにせ俺は元々彼等とは何の関係もない、偶々巻き込まれてしまっただけの部外者だ。そんな奴が下手に首を突っ込む必要なんて本来はないし、別に逃げたって構わない筈だ。
だけど・・・・・・。
「はぁ~~~・・・たくっ、もう!此処で見捨てたら後味が悪い!しょうがないから助けてやる。だから絶対に俺の後ろから出るんじゃないぞ!」
ウルウルと、今にも大泣きしそうな少年少女の姿を見た俺は、大きな溜め息を吐いた後に諦めた様に、覚悟を決めた様にそう言って、ザッと両手を左側に真っ直ぐ伸ばす変身の初動の構えを取った。
「ふん、その動き。やはりヒーローか、もしくは他所の組織の輩だったか!あの一撃の威力は普通の人間に出せるもんじゃなかったからなぁ。・・・だが、それならば尚の事好都合!なにせ、多少強く攻撃してもすぐに壊れる事はないということだからなぁ!」
ズン、と一際強く地面を踏み締めたロックパイソンは、そう言いながら前傾姿勢となり、口許をニヤリと歪ませる。
「では行くぞぉ!ウゥゥオオォォォーーーッ!!」
そして、ズガンッと力強く地面を蹴って俺達に向かって駆け出すロックパイソン。
それを真正面から見据えた俺は、慌てることなく左側に真っ直ぐ伸ばした両手を右へ払うように大きく動かし、左手を胸に、右手を開きながら前に伸ばして叫んだ。
「バイオチェンジ!ディーアルナ!」
その瞬間、右腕に装着していたブレスレットが紫色の光を放ち、球状となって俺の体を包み込んだ。
次回の投稿は4月22日の予定です。




