ミッション90 兎頭マッチョメンVS変態VS婦警さん・・・!?
「―――うっそだろう、オイ・・・!?」
ピョン太郎と三人のヒーロー達による戦闘とその結末を目にした俺は、思わず呆然としながらそう呟いていた。
強い。ピョン太郎マジで強い。えっ、なにあれ。ヒーロー三人をまとめて相手して勝つなんて、明らかにそん所其処らの怪人なんか目じゃないくらいに強いんですけど・・・!?
「ふぅむ・・・あの怪人、理性がない様子から野良だとは思うが、あの強さはとてもそうとは思えん。有名な悪の組織の大幹部クラスの強さがあるぞ、アレは・・・」
俺と同じくピョン太郎達の戦闘を目にしていたレディースジェントルメンもまた感心する様にそう呟いていた。
彼にとってもピョン太郎のあの強さは予想外の部分があったのだろう。頬に一筋の汗を流しているのが見えた。
「しかし、アレが君の悩みの種かぁ・・・・・・うぅむむむ・・・!あれ程までの強さを持っているとは少々予想外だったが・・・・・・うむ。まあ、なんとかなるだろう」
その後で、うんと頷きながらそんな事を呟いていたが。
いや、なんとかなるてアンタ、戦えるの?戦えるのか?というか、勝てると思ってるのか、アレに?
「(確か、以前聞いた御城さんの話では、ヒーローや警察が来ると戦わずに即座に逃げ出すから、公式非公式問わず戦闘したという記録が存在しなくて、そのせいで強いのか弱いのか分かってないんだったっけか)」
目の前の変態に出会った時に聞いた話を思い出しながら俺は内心でそう呟く。
駆け付けたヒーローや警察から逃げてばかりだという話から戦闘能力は低いのかと思っていたのだが、しかしヒーロー三人と戦い、圧倒的と呼べる程の勝利を納めたピョン太郎の姿を見ておきながら未だに余裕そうな雰囲気を醸し出している様子から、「もしかして、実はコイツ強かったりするのか?」とも俺は思った。
ギュルリンッ!グポーンッ!!
「うひぃっ!?」
そうこうしている内に、自身が殴り飛ばしたり投げ飛ばしたりしたヒーロー達の姿を遠くを見る様な仕草で見ていたピョン太郎が、物凄い勢いで俺達の方へと顔の正面を向けて来た。ついでにその両目を赤く光らせながら。
それを目にした俺は、思わずビクゥッ!?と肩を竦ませた。
いや怖いアレ怖いめっちゃ怖い・・・!!チクショウ・・・!トラウマが・・・あの日のトラウマが蘇る・・・!!あとなんか訳の分からない危機感も感じる・・・!!
「―――ふっ・・・なあに、心配めされるな、お嬢さん。あのような輩、この私が華麗に成敗してご覧に見せましょう。一歩たりとも貴女には近づけさせませぬゆえ、どうか心安らかにお待ちいただきますよう」
そんな俺の姿を横目で見て、安心させようとでも思ったのだろう。レディースジェントルメンがそんな事を言ってきた。
右手の掌を左胸に当てながらゆっくりと頭を下げるその姿からは優雅さを感じられ、それを目にした俺はまるで何処かの昔話とか物語に出て来る様な礼儀正しい騎士の姿を幻視した。
「あっ、お礼はお嬢さんの今履いている下着で結構ですからね?」
・・・まあ、最後にそんな最低な言葉を付け加えてきたので、抱いていた空想はすぐさま木端微塵に砕け散ったが。
いや、ほんっとに最低だなコイツ。というか、お前みたいな変態野郎に誰が下着なんぞやるか、誰が!?
「では、行ってまいりますぞ!―――トウッ!」
下げていた頭を上げ、クルリと体の正面をピョン太郎へと向けたレディースジェントルメンはその掛け声とともにビルの屋上から跳んだ。その容姿に見合わぬ軽やかな動きで。
「フシュー・・・!」
天候戦隊サンライザーの三人との戦いに勝利し、ビルの屋上に着地した後にお星さまとなった彼等の姿を遠目に見ながら満足げな呼気を漏らしていたピョン太郎は、その少し後に「よし。邪魔者も片付いたし、さっさと自身の飼い主であるディーアルナの下へ行こう」という感じの事を内心で思い、クルリと体の向きを変えて、彼女がいるであろう場所へ向かおうとした。
「―――そこまでだよ、そこのマッチョメンな野良怪人君。此処から先は通行止めだ。あの可愛らしいお嬢さんを怯えさせる君をこれ以上進ませはしない」
だが、そこへ新たな乱入者―――レディースジェントルメンが現れた。
彼はピョン太郎の目の前に着地すると、某セーラー服を着た美少女戦士の主人公が取る様なポーズを―――具体的には、月に代わってお仕置きよ!みたいなポーズを取りながら、そんな言葉をピョン太郎に向けて言った。
「・・・・・・」
また邪魔者が現れた。目の前にいる頭に女性用下着を被り、黒の全身タイツに白いブーメランパンツを身に付けた変態の姿を目にしたピョン太郎はそう思うと、「ふぅ・・・」といった感じの溜め息を吐いた後に腰を落とし、両腕を大きく広げて身構えた。
「ウゥゥゥサァァァアアアッ・・・・・・!!!」
「ふむ・・・そんなにこの先へ行きたいのかね、君は?―――ならば!そんなに通りたいというのであれば!この私を倒し、その屍を越えてから行くがいい!!」
臨戦態勢となり、何処ぞの覇王が如き呼気を発するピョン太郎。
それに対してレディースジェントルメンは両腕を高く上げ、手首より先をクイッと曲げて、更に片足を腰の高さにまで上げる荒ぶる鷹のポーズの様な構えをバッ!と取る。
そのまま数秒の間、両者睨み合い―――そして戦いのゴングが鳴った。
「―――行くぞぉっ!!!」
「―――ウッサァァッ!!!」
動いたのはほぼ同時。その上で攻撃の先手を取ったのは、以外にもレディースジェントルメンであった。
「ホォアタタタタタタタ、ホアタァッ!!」
シュパパパパパパッ!
荒ぶる鷹のポーズの様な構えのまま飛ぶ様に前へ出たレディースジェントルメンは、途中で体勢を飛び蹴りのそれへと変えて、右足による連続蹴りを放つ。
「ウゥサササササササ、ウッサァッ!!」
ドパパパパパパパッ!
その攻撃を、理性がないとは思えないほど的確に躱し、捌き、受け流していくピョン太郎。
その合間に拳による反撃のラッシュ攻撃を放つが、それはダメージを与えることを目的としたモノではなく、飽く迄レディースジェントルメンの体勢を崩すことを目的としたモノ。要は自身が攻勢に出る為の布石だ。
「ヌゥゥンッ!」
シュパパパンッ!
そのピョン太郎の思惑をレディースジェントルメンは見抜いていたのだろう。自身に迫り来る拳を手刀や足刀でもって捌き、弾いて迎撃していく。勿論、反撃することも忘れずに。
「ウサウサウサァッ!」
ズババッ!ズババババッ!ドパンドパンドパンッ!!
だが、これで終わりではないとでも言いたげに、ピョン太郎は更なる攻撃を繰り出す。
戦闘スタイルを力任せに振るうそれから何処で覚えたのかボクシングのそれにがらりと変更し、ステップを踏みながら左拳によるジャブで牽制と迎撃を行いつつ、隙を見つけた瞬間に右拳による重いストレートの一撃を何度も放っていく。
「ホォォォアタァッ!!」
「ウサウッサァァッ!!」
お互いに締めとなる一撃を放ちつつすれ違い、通り過ぎる両者であったが、その後にすぐさま反転して再び攻撃をぶつけ合う。
片やレディースジェントルメンは、力士もかくやと思わせる両手の連続掌打攻撃―――別の言い方であれば、〝つっぱり〝―――を放ち、片やピョン太郎は高速横回転をしながらの連続回し蹴りを放つ。
更にはそこから、空気すら一瞬で切り裂き断ち切る鋭い抜き手と、岩盤すらも穿ち砕く掘削機の杭の如き頑強な拳を放つ両者であったが、しかしそれでもお互いに決定打が決まらず、何度目かの拳や蹴りのぶつけ合いが勃発。
それはまさしく、殴打殴打殴打殴打ッ!という表現が似合う光景であり、さながら某願いを叶える龍玉を集める冒険譚に出てくる超戦士達の戦いを―――あれほどのハイスピード戦闘ではないが―――彷彿とさせるものであった。
「くっ・・・!?シィッ!!」
「ウッサウサァッ!!」
このままでは埒が明かない。お互いにそう思ったのだろう。レディースジェントルメンとピョン太郎は衝撃で空気が振動する程の一撃をぶつけ合った後で、まるで示し合わせたかのように同時に大きく後退した。
「カハァァァッ・・・!」
「ウッサァァァッ・・・!」
それぞれ十分な距離を取った二人は、これで決めてみせると言わんばかりに大技を放つ準備を始める。
レディースジェントルメンは指を真っ直ぐに伸ばした左手を右手で覆うように軽く握り、右腰の横に添え、更に左半身を前にして足を前後に大きく開く。
その体勢を例えるなら、まるで居合いのそれ。精神を研ぎ澄まして刀に見立てた左手を今にも抜かんとする様は、見るものに余計にそう思わせる。
一方ピョン太郎はと言えば、握り込んだ右拳に左手を添えて、キュインキュインキュインッ・・・!!と紫色のエネルギーを溜める様子を見せていた。
集まっていくエネルギーは徐々にその輝きと色合いを大きく、濃くしていき、右拳を中心とした一m程の光球を形成。放たれることを今か今かと待っているかのように放電現象も発生していた。
それはまさに一触即発といった様相。音でも何でも切っ掛けとなるものがあれば、即座に激突するであろう緊迫した光景であった。
「(・・・いや、何この展開?)」
尚、その光景を別のビルの屋上から見ていた俺はめちゃくちゃ困惑していたが。
いやいやいや、マジでなんなのあの超絶バトル・・・!?もしかして怪人って、変態であればあるほど強いとか、そんな法則があったりするのか!?
・・・・・・あったら嫌だなぁ、そんな法則。
「・・・ん?」
と、そこで己の聴覚が何かしらの音を捉えた。
それは時間が経つにつれて大きくなり、ババババババッ・・・!という音を響かせ始める。
いったい何が?と思いつつ、音の発生源と思われる場所に視線を向けてみれば、ヘリコプターが一機、ビルとビルの間を器用に掻い潜りながらこちらに―――正確にはレディースジェントルメンとピョン太郎のいるビルへと近づいて来ていた。
「むっ・・・?」
「ウサッ・・・?」
二人も自分達の下へ近づいてくるヘリコプターの存在に気付いたのだろう。構えを解かず、視線だけをそちらへと向ける。
バババババッと音を響かせながら二人が居るビルの上空へと到着するヘリコプター。次の瞬間、機体横に取り付けられていた扉がガラッと開かれ、一人の人物が姿を現した。
「―――よう。ようやく見つけたぜぇ、おっさん」
「ぬぅっ!?き、君は・・・!!」
ヘリコプターの扉を開けて現れたのは年若い婦警―――つまりは女性警察官であった。
年齢はだいたい十代後半から二十代くらいだろうか。黄緑色のザンバラ髪にグレーの瞳が特徴的であり、また体の方も抜群にスタイルが良く、特に胸囲に関しては目算ではあるが平均を大きく上回っているものと思われる。
・・・ただ、一つだけ気になる事がある。そんな彼女の姿を目にしたレディースジェントルメンが何故か、ドビクゥッ!?とまるで恐ろしいモノでも見てしまったかのように肩を竦ませ、怯え始めたのだ。
ピョン太郎もそんな彼の様子を見て不思議に思ったのだろう。先程まで放とうとしていた技を止め、どうしたの?という感じに首を傾げていた。
「ど、どうして・・・どうして君が此処にいるんだ・・・!?」
「あん?どうしてって、そりゃあ怪人の反応を感知したからに決まってるだろう?しかも強力なエネルギーのぶつかり合いまであったとなっちゃ、一般市民を守る警察官として来るのが当然だろうが」
「ち、ちがう!私が聞きたいのはそういう事ではない!私は県を幾つか跨いだ先で君を撒いた筈だ!ダミー情報を撒いたり、姿形を似せた人形やロボットを囮に使ったり、逃亡先を隠蔽するなどして確実に!それなのに、どうして此処にいるのかね!?というか、どうやって私の居場所に当たりを付けたのかね!!?」
どうして自分が此処に、この地方都市にいるのだと分かったのだ!?と叫ぶレディースジェントルメン。
それに対する婦警さんの返答は、たった一言だけだった。
「乙女の勘」
「乙女の勘!?」
その一言を聞いて愕然とするレディースジェントルメン。
多分、彼の予想ではもっと理路整然とした納得できる方法でもって自身の居場所が特定されたのだと考えていたのだろう。
しかし、実際に彼の居場所を特定した方法は、婦警さんが言うところの『乙女の勘』。そんなまさかの答えに、レディースジェントルメンは「う、うそやろ・・・!?」と関西弁っぽい言い方をしながら驚きを露にしていた。
「え、ええい・・・!婦警、君はいったい何時まで、というか何処まで私を追いかけて来るつもりなのかね!?」
「はっ・・・!そんなの、今更言うまでもない事だろう?・・・まあ、アタシは優しいからわざわざ言ってやるんだけどさ」
レディースジェントルメンの問いに対して婦警さんはそう言うと、「んっ、んんっ・・・!」と咳払いをした後に片手を腰に当て、もう片方の腕をダラリと体の前に垂らしながら若干前屈みの体勢を取る。
「・・・アンタをこの手で捕まえるまで何処までも、だ。おっさん、このアタシから―――『東藤楓』から逃げられると思うなよ?」
胸元を強調させるような艶めかしいポーズを取りながら、ニィィッ・・・!といった笑みを浮かべる『東藤楓』と名乗った婦警さん。
その笑みを目にした俺は、思わずゾクリッと体を震えさせてしまった。
―――「笑みとは本来攻撃的なモノである」。
ふと、何時か何処かで聞いたそんな言葉を思い出してしまうくらいには、彼女が浮かべたそれからは獲物を前にした野生の獣の様な獰猛さが感じられたからだ。
特に彼女と真正面から対峙している二人はそれを強く感じ取ったのだろう。冷や汗を流しながらジリッ・・・と後退りしていた。
「む、むぅ・・・!マズイな・・・よりにもよって彼女が此処に来るだなんて想定外が過ぎる・・・!仕方がない、こうなったら一度退却するしか―――!」
「―――はっ!そう簡単に逃がすかよぉ!」
そんな二人の姿を―――特にレディースジェントルメンの姿を目にした婦警さんはそう言うと、前に傾けさせていた体を起こし、それから自身が乗っているヘリコプターの座席の奥に置いてあった物を、ガッ!と掴んだ。
「食らえやぁぁ!」
ガッ、ガチャッ!ズドガガガガガガッ!!
婦警さんが手に取ったのは四連式小型ガトリング砲であった。それも二挺。
それ等を両手に持って構えた婦警さんは、今にも逃げ出さんとしているレディースジェントルメンに向けて引き金を引き、毎分数百発の弾丸をブッ放した。
「ヌッ!?ヌゥゥオォォオオオッ!?!?」
自身に向かって飛んで来る弾丸の雨霰を、必死になって両足をアタフタと交互に上げ下げしたり、上半身大きく仰け反らせるなどして避けまくるレディースジェントルメン。
主に狙らわれているのが両手足であり、おそらく機動力を削ぐのが目的なのだろう。そのお陰でと言うか、クリーンヒットすることなく全弾回避することが出来ていたが、しかし余裕などはそうない様子であり、全身からダラダラと大量の冷や汗を流しているのが見て取れた。
「テメェもだ、マッスル兎ィ!千載一遇のチャンスを邪魔されちゃあ、堪ったもんじゃないからなぁ!ついでに死んどけや、オラァ!!」
ガチャッ!ズドガガガガガガッ!!
「ウッサァァアアアッ!?!?」
・・・ついでに、邪魔されては堪ったものではないという理由でピョン太郎にもブッ放す婦警さん。
多分、ピョン太郎としては邪魔する気は一切なかったとは思うのだが、彼女にとっては不確定要素は即刻排除しておきたかったのだろう。弾幕の圧こそレディースジェントルメンに放たれているそれに比べれば薄いが、しかしその分狙いが正確で、確実にピョン太郎のことを撃ち倒さんとする意思が感じられた。
当然、当たって堪るかと超高速反復横跳びをしたり、縦横無尽に走り回るピョン太郎であったが、しかし完全には避けきれなかったらしい。チュンチュンチュンッ!と毛先の部分に何度も弾丸が掠る度に「ば、バカな・・・!?」と驚いたように目を丸くさせていた。
「ヌゥオオッ!?ホッ!ハッ!ヨッ!ドオォッ!?こ、これはキツイ・・・!急いでこの場から離脱しなければ―――ムッ?足が、動かない・・・!?」
一方的に攻撃され続けている状況に堪えかねたのだろう。その場から離脱するために走り出そうとしたレディースジェントルメンであったが・・・しかし、そこで自分の左足が動かせない事に気付いた。
いったい何故?と彼が自身の足元へと視線を向けてみれば―――白くてモチモチネバネバとしたモノが、彼の左足とビルの屋上の床を繋ぎ止める様にくっついていた。
「と・・・トリモチィィッ!?」
それは暴徒鎮圧や怪人怪物の捕獲にも使われている『特殊捕獲用トリモチ』であった。
『特殊捕獲用トリモチ』とは、防犯や動物の捕獲等で使われているトリモチを強化発展させた代物だ。主な強化点としては、耐久性と粘着性が通常の物よりも十倍以上増しており、更に耐熱性や耐水性も加えて燃えにくく、水で流れ落ちにくくなるようになっている。
外すには専用の薬品を使わねばならない事もあってか使いどころが難しく、コレによる二次被害や三次被害が発生するリスクも考えると一般ではまず使われない代物でもあり、今回のように怪人怪物の捕獲もしくは足止めを目的としてしか基本使われていない。
またそのリスクから警察官関係者かヒーロー連合協会の職員くらいしか所持及び使用の許可が出されていなかったりもする。
仮にも怪人であるレディースジェントルメンが中々剥がす事が出来ないくらいの強力な粘着性なので、多分間違いない。
おそらく、先程から放っていた弾幕の中にトリモチ弾として混ぜていたのだろう。レディースジェントルメンもその事に気付いたらしく、「な、なんと用意周到で抜け目のない・・・!?」と驚愕を露にしていた。
「ウサッ!?ウッサ・・・!ウゥッサッ・・・!ウサァァアアーッ!!」
ちなみに、ピョン太郎も巻き添えで食らっていたらしい。片手片足に引っ付いたトリモチを外そうと力一杯引っ張っていた。
・・・まあ、ビヨンビヨーンと伸びるだけで外れる気配は全くなかったが。
「掛かったな・・・!よぉしっ!それじゃあ、コイツで決めてやるぜっ!!」
身動きが取れなくなったレディースジェントルメン達を見てチャンスだと思ったのだろう。婦警さんは両手に持っていた四連式小型ガトリング砲を手放して、再びヘリコプターの座席の奥に手を伸ばした。
「ヒーロー連合協会から性能試験の名目で掻っ払ってきた六連装式ミサイルランチャーだ!威力、弾速、追尾性を、従来の物のだいたい二~三倍にまで上げたっつう謳い文句のある代物だ!コイツの直撃を食らえば、いくらアンタでも行動不能になる筈だ。なぁ、おっさん?」
六つのミサイルが納められているミサイルランチャーを右肩の上に乗せ、ニヤリと笑いながら狙いをレディースジェントルメンへと定める婦警さん。
それを目にしたレディースジェントルメンは、トリモチを外そうと格闘しながら、ちょっと待って!?と彼女に掌を向けた。
「いや、ちょ、待て!待つんだ、婦警!仮にも君は警察官だろう!?その君がこんな町中でそんな物騒な物を撃ってはいけない!」
「あっはっはっはっ!大丈夫だぜ、おっさん。そんな心配をする必要はまったくない。なにせこの辺一帯は今、大量の怪人が出現したとかで避難指示が出されて民間人はひとっこひとりいなくなっちまってるからなぁ。今なら諸々の被害を、まとめてソイツ等のせいに出来ちまえる。・・・なら、わざわざ躊躇する必要なんてなくなるよなぁ?」
「君は本当に警察官か!?よくもまあ、そんな事を平然と言えるな・・・!その胸元に掲げている桜の代紋は飾りかね!?」
「はっ・・・!アタシが警察官やってんのはある目的の為だ。ソイツを達成するためなら、汚い事をやるのなんざ屁でもねぇ・・・!」
「こ、この不良警官ーーーッ!!?」
「はっはっはぁっ!言われ慣れとるわぁっ!―――ってな訳で発射ァッ!!」
カチッ、パシュパシュパシュパシュ・・・!ヒュゥゥゥ、チュドドドドーーーンッ!!!
「ぎ、ギャァァァアアアーーーッ!?!?」
そして一切の躊躇なく放たれる六連装式ミサイルランチャー。
発射されたミサイルはそれぞれ直線だったり緩やかなカーブを描きながら宙を飛び―――そしてレディースジェントルメンのいる場所に着弾し、爆発を起こした。
チュドーーーンッ!!
「ウサァァァアアアーーーッ!?!?」
これまたついでにピョン太郎をも巻き込んで。
「・・・って、ピョン太郎ォォォッ!?」
その光景を目にして思わず手を伸ばしてしまう俺。
それは彼の身を案じての反射的な行動であったが・・・しかし、何時までも感傷に浸っている暇は俺にはなかった。
ヒュゥゥゥ・・・!
「うぇっ!?」
放たれた六発のミサイルの内、流れ弾となった一発が俺のいるビルに向かって飛んで来ていたからだ。
「ちょっ、ちょっと待っ・・・!?う、うぅおぉぉおおおーーっ!?」
チュドーーーンッ!!
「うきゃあああぁぁぁーーーっ!?!?」
俺は迫り来るミサイルを回避しようとその場から駆け出した。
その結果、直撃こそ避けられはしたものの、しかし爆風までは躱し切ることができず、俺の体はそれに押されるようにビルの屋上から勢いよく吹き飛んでいくのであった。
次回投稿は3/3の予定です。




