ミッション89 兎頭マッチョメンVS新たな戦隊ヒーロー・・・!? 後編
「フシュー・・・!フシュー・・・!」
天候戦隊サンライザーの攻撃―――といっても、サンハリケーンとサンライトニングの二人によるものだけだが―――を吹き飛ばしたピョン太郎は、荒い呼吸を繰り返しながら、グポーングポーン・・・!と瞳を赤く光らせていた。
当然、その肉体には大小様々な且つ多くの傷を負っていたがしかし、時間が経つにつれてそれ等はシュゥゥゥッ・・・!という音と煙を上げながら瞬く間に治っていった。
「ウッサァァ・・・・・・!!」
「はぁっ!?だ、ダメージを回復しただって!?」
「しかもあっという間にッス!どんだけ回復能力高いんスか、あの兎頭ッ!?」
負っていた全ての傷が完治したことを見せつけるようにギチギチと筋肉がしなる音を鳴らしながらポージングを取るピョン太郎。
それを見たサンハリケーンとサンライトニングは思わず、何その回復力!?とツッコミを入れた。なにせ、ピョン太郎の回復力は自分達が知っている怪人の自然治癒能力を明らかに越えていたからだ。
通常、怪人の自然治癒能力は人間の数倍はあると言われており、人間であれば全治数ヵ月は掛かるであろう大怪我も、怪人の場合は個体差はあるが、大抵一日か二日そこらで完治してしまう。ただし、体の怪我を治す際にインターバルというか、準備期間のようなものを必要としており、その掛かる時間は過去のデータから基本的に一日早くて数時間程とされていた。
だが、そんな怪人の中でもピョン太郎の自然治癒能力は異常だった。彼のインターバルはたったの数秒。これまで確認されていた怪人の自然治癒能力の中で最速のものであり、だからこそサンハリケーンとサンライトニングの二人は驚いていたのである。
「くっ・・・!?おそらくあの怪人は回復能力に特化したタイプなんだろう。過去にそういう怪人がいたという記録を見た覚えがある」
「ちょっ・・・!つまりそれって、どんなにダメージを与えてもすぐに回復するってことッスかぁ!?そんなの、どうやって倒せって言うんッスか!?」
「落ち着け、ライト。こういうタイプの奴の攻略法がないわけじゃない」
これじゃあ倒せない!?と焦る様子を見せるサンライトニング。・・・だが、それとは対照的にサンハリケーンは落ち着いていた。
「怪人が自身の自然治癒能力で怪我を治す際には体内エネルギーを相応に消費する。・・・つまり、そのエネルギーさえ尽きれば怪我を治す事はできなくなる」
「な、なるほど・・・!要は攻撃しまくって回復できないくらいに疲れさせれば良いって事ッスね!そういう事なら・・・!」
サンハリケーンの話を聞いたサンライトニングは、グッと軽く身を屈めるとピョン太郎に向かって走り出す。
「食らうッス!必殺のぉぉ、【ライトニングラッシュ】!」
そして迸る稲妻を纏った両の拳による連続攻撃を、技の名前に恥じない、まさに閃光の如き速さでもって繰り出した。
「コイツを躱せるものなら躱して―――!」
「ウサササササササッ!」
「―――って、ウソォーーーッ!?」
躱せるものなら躱してみろ。そう言おうとしたサンライトニングであったがしかし、その連続攻撃はピョン太郎が超高速反復横跳びをすることによって全て躱されてしまった。
腕組みしながらサンライトニングの攻撃を躱しまくっているピョン太郎の態度は、まるで「フッ、何処を見ている。それは俺の残像だ」とでも言っているかの様であった。
「下がれ、ライト!―――【ハリケーンブレイカー】!」
「・・・ッ!了解ッス!」
「ウサッ?」
指示を受け、ピョン太郎から離れるサンライトニング。そこへ入れ替わるように、ギュルギュルギュルッ!と高速回転する身の丈ほどの竜巻を右腕に纏ったサンハリケーンがピョン太郎へと肉薄する。
「合金すらも数秒で粉微塵にする竜巻のドリルだ!コイツで―――!」
グワシッ・・・!ギャリギャリギャリッ・・・!
「ウゥゥゥサァァァアアアッ・・・!!」
「―――ッ!?そんな、嘘だろう・・・!?」
このタイミング、この技なら確実に当たるだろう。そう確信を抱いていたサンハリケーンであったが、しかし自信あり気に放ったその一撃は、筋骨隆々としたピョン太郎の二本の剛腕によって掴まれ、受け止められてしまった。
ピョン太郎の両手は高速回転している竜巻のドリルを掴んでいることで傷つき、継続的にダメージを負い続けていたが、しかしそれは異常に高い彼の自然治癒能力によって傷ついた端からすぐに回復していくため、実質的に彼が負ったダメージは殆ど無いに等しい。
その光景を至近距離で目にしたサンハリケーンは瞠目しつつも、しかし前進することを止めはしなかった。
「ハァァァアアアッ・・・!!」
「ウゥゥサァァァアアアッ・・・!!」
攻撃を直撃させたくて前に進もうとするサンハリケーンと、そんなものを食らって堪るかと踏ん張るピョン太郎。
一進一退の二人の攻防。その天秤が最終的に傾いたのは、勿論ヒーローであるサンハリケーン―――ではなく、ピョン太郎であった。
「―――フンッ!」
グッシャッッッ!!!
「・・・ッ!?ば、バカな・・・!?僕の竜巻が・・・!!」
何故なら、サンハリケーンの右腕に纏っていた竜巻のドリルを、ピョン太郎が両腕に更に力を入れる事で握り潰したからだ。
これには流石のサンハリケーンも唖然とならざるを得ない。まさか自身の力によって生み出した竜巻のドリルを―――実質、実体がない物を握り潰されるとは思ってもいなかったからだ。
理解不能な現象に驚愕し、固まるサンハリケーン。
―――その隙をピョン太郎は見逃さなかった。
「ウゥゥサァッ!!」
ドギャッ!!
「ぐはぁっ!?」
ギュピーン!と目を光らせたピョン太郎はギュルンッと勢いよく体を回転させると、その回転の勢いを加えたハイキックをサンハリケーンに向けて放つ。
シュッパァァァン!と風を切る様な音を立てながら振るわれる一撃。それを受けたサンハリケーンは呻き声を上げながら吹き飛ばされ、屋上の床の上をゴロゴロと転がって行った。
「ハリちゃん!?」
サンハリケーンが蹴り飛ばされる様を見て、思わずそちらへと視線を向けるサンライトニング。それはかのヒーローの身を案じてなのだろうが・・・しかし、この状況でそれは悪手でしかなかった。
「ウサッ」
シュンッ・・・!
「・・・ッ!しまっ・・・!?」
「ウッサウサァッ!!」
ドッゴンッ!!
「あうっ!?」
サンライトニングの注意が逸れた瞬間を狙い、その背後に高速で移動するピョン太郎。
両足を開き、腰を落としてドッシリと身構えた彼は、体を捻ると同時に右腰に添えていた右拳を前に出し、サンライトニングに向けて正拳突きを放った。
ゴォオオオッ!と音を立てながら振るわれる一撃。それを受けたサンライトニングは一瞬体を九の時に曲げ、クルクルと回転しながらサンハリケーンが倒れている所に、ドシャリッと落ちた。
「ガハッ!?・・・つ、強い・・・!コイツ、本当に野良怪人なのか・・・!?」
「うぐぅぅっ・・・!明らかにウチ等の知っている野良怪人の強さじゃないッス・・・!どっかの悪の組織の幹部とか・・・間違いなくそんなレベルッスよ、アレ・・・!!」
ピョン太郎の攻撃を食らってビルの屋上の床に倒れ伏していた二人はすぐさま立ち上がろうとして、しかし予想以上にダメージが大きかったせいなのか、匍匐前進をするような体勢になるのが精一杯で起き上がることすら出来ないでいた。
「ウサウサウサウッサァァァッ・・・!!!」
「「・・・ッ!?」」
そこへ追撃とばかりに握り込んだ拳を振り上げながら迫り来るピョン太郎。
それを目にした二人は、やられるっ・・・!?と思い、反射的に目を瞑る。
その瞬間、ドンッ!!という音が鳴り響き―――
「「・・・・・・?」」
―――しかし、痛みを感じることはなかった。
そのことに、あれ?と疑問を覚えた二人が閉じていた瞼を恐る恐る開けてみれば―――そこには自分達の前で仁王立ちとなり、交差させた腕でピョン太郎の攻撃を防いだサンフラッシュの姿があった。
「―――よう。危ないところだったな、二人とも」
「せ、先輩・・・!?」
「り、リーダー・・・!?」
その光景を目にしたサンハリケーンとサンライトニングの二人は驚きに目を見張る。その内心では、何故?どうして自分達を庇って怪人の攻撃を受け止めたのか?という思いでいっぱいであった。
「せ、先輩!どうして・・・どうして・・・!」
「どうしてウチ等を庇ったんッスか、リーダー・・・!?」
思わず吐露するように叫ぶ二人。
二人のその叫びを耳にしたサンフラッシュは目線だけを肩越しに後ろへと向けながら答えた。
「あん?そんなの決まってるだろう。―――仲間だからだ。仲間がピンチになったら助けるのは、当たり前のことだろう?」
『――――――』
その言葉を耳にした二人は二の句が告げなくなり、思わず黙ってしまった。
何故ならその言葉は、あの日、あの時、あの場所で、彼が自分達の事を助けてくれた時に言った言葉と―――『どうして助けてくれたのかって?そんなの決まってるだろう。―――ヒーローだからだ。ヒーローが困っている人や、助けを求めている人を助けるのは、当たり前の事だろう?』という言葉と殆ど同じであったからだ。
サンフラッシュの後姿を見てその時の光景を脳裏に思い出した二人は、仮面の下で驚きに目を見開きながらも、「ああ、やっぱり。彼はあの時から何も変わってないんだな・・・」と安堵した様な、感動した様な思いを抱いていた。
「・・・んで、だ。よくも俺の仲間を痛めつけてくれたなぁ・・・!今度は俺が相手になってやる!―――行くぞッ!!」
サンハリケーンとサンライトニングの二人がそう感慨に耽っている間も状況は進展していく。
反撃に出ようとしたのだろう。交差させていた腕を勢いよく開いてピョン太郎の腕を弾き飛ばしたサンフラッシュは、右拳を力強く握り込むと足を前へ一歩進ませる。
「ハァァァアアアアアアーーーッ!!!」
そして、いざピョン太郎へと殴り掛からんとして―――
「ウサッ」
ガシッ。
「あっ」
「ウゥゥサウサウサウサウサウサウサウッサァァーーーッ!!」
ドドドドドガガガガガガッ!!ガッゴンッ!!!
「アバババババババババァァーーーッ!?!?」
「り、リィィィダァァァッ!?」
「先輩ィィィッ!?」
―――ガシリッ、とその拳が片手で受け止められ、更には空いていたもう片方の拳による怒濤のラッシュ攻撃によって全身タコ殴りにされてしまい、ラストはジャンピングアッパーによって空高く打ち上げられてしまった。
縦回転に横回転、更には捻り回転まで加えながら吹き飛ぶサンフラッシュ。その体は緩やかな放物線を描きながら、最終的にはお星さまになるくらいに遥か遠くへと飛んで行ってしまった。キラーン、と。
「ああ、そんな・・・先輩が、先輩がぁ・・・!?」
「ウサッ」
ガシッ。
「うぇっ!?」
サンフラッシュが飛んで行ってしまった方向を見ながら思わず呆然とするサンハリケーンとサンライトニング。
・・・だが、その状態は何時までも続かなかった。何故ならピョン太郎が、ガシッとサンハリケーンの体を片手で掴み上げたからだ。
「ちょっ・・・!?この兎頭、ハリちゃんを捕まえてどうするつもりッスか!放せ!放しやがれッス!」
「ウサッ」
ガシッ。
「・・・って、ウチもッスか!?」
「ライトッ・・・!?」
当然、それを目にした仲間であるサンライトニングは、サンハリケーンを放せと屋上の床に両肘を着いた俯せの体勢のまま叫ぶのだが、しかしそのサンライトニングもまたピョン太郎のもう片方の手によって掴み上げられてしまった。
いったいこの兎頭は何をするつもりなのか?掴み上げられた時にそう疑問に思った二人だったが、その答えは然程時間を掛けることなくすぐさま出された。
「ウゥゥサウサウサウサウサウサァァァ・・・!」
ギュルンギュルンギュルンギュルンッ!!!
「お、おおぉぉおおぉおおおっ・・・!?」
「め、目が回るッスゥ~~~!?」
それぞれ両手にサンハリケーンとサンライトニングを掴んだままその場で高速回転を始めるピョン太郎。片足爪先立ちの体勢で体を勢いよく回転させるその姿は、某バトル玩具を主題としたアニメの主人公の必殺技を彷彿とさせるモノであるが、しかしその動きに付き合わされる羽目になった二人には堪ったものでは無い。
片方はグルグルと目を回し、もう片方は胃の内容物が食道を通って逆流してくる感覚を覚えたのか、ウップと口元を押さえていた。
「ウサッ!ウゥゥッサァァァアアアーーーッ!!!」
バッ!ブゥゥオオオォォォンッ!!!
そして十分な勢いを得たと判断したのだろう。回転を維持したまま爪先立ちしている方の足で屋上の床を蹴って直上へと跳び上がったピョン太郎は両腕を揃え、更には腰の捻りすらもプラスして、両手に掴んでいる二人を勢いよく、思いっきりブン投げた。
「「う、うわあああぁぁぁーーーっ!?!?」」
ピョン太郎に投げ飛ばされ、勢いよく宙を飛ぶ二人の体。その飛んで行く先は先程サンフラッシュが飛んで行ってしまった方向と同じであり、そして二人もまた彼と同じようにお星さまとなるくらいに遥か遠くへと飛んで行ってしまうのであった。キラーン、と。
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