意識のそと
いつにもまして不気味である。
季節は冬。
車なんて物は実に便利であるが、吹雪で夜で街灯もないという3つの条件がそろえばその不気味さはあっという間に作られるものだ。
そして無心、とまでは行かずとも安全運転のことだけを頭に入れておけば心配はいらない。
だが恐怖というものを知っていると、図らずしも脳みそが勝手に想像を膨らませてしまうのだ。
今、僕の後ろにはいない。
誰もいない。
恐怖心なんてのは何かで見た物であっても経験した物であってもインパクトに事書かないが故だと思う。
それ故に条件が当てはまる空間に居ると思いだしてしまうんだろう。
今の僕のように。
善人で居続けたはずなのに。
ただただ、理不尽な恐怖に怯えて、暖房をつけても寒さに震えてしまうのだ。
今、僕の後ろにはいない。
誰もいない。
ましてや吹雪という条件でのよそ見は危険である。
バックミラーで確認はしているが、そう言う意味での後方確認なんて当てになりゃしない。
いないはずなんだ。
理不尽な恐怖にかられるなんておかしいじゃんか。
普通に生きて来た一般人を陥れて何になるってんだ。
いないはずなんだ。
結局いない。
昨日にホラー系の映像でもみたからだろうか。
駐車場に車を止めてさっさと降りてさっさと部屋に入る。
今日も実に働いた。
何気ない一日であった。
雪の降り具合も吹雪が収まったようで風の音が静かだ。
窓を細く開けて外の様子を見てみる。
うっすらと雪は積もっていたが、明日晴れたり雨が降ったりすればあっという間に融けるぐらいの積り具合だ。
だが、僕はまた明日も雪で欲しいと思った。
気付かれないように、そしてなるべく早く窓を閉めて音を立てずに鍵をかけて布団へ潜り込む。
後ろにはいない。
確かにいなかった。
でも誰が想像しただろか。
車の天井部分に張り付いてる人を見つけてしまった。
言っても誰も信用してくれないだろうが、後々分かってくれると信じている。
僕はもう間に合いそうにないんだ。
普段の生活で意識した事の無い部分、ふっとした所を見てください。
意外と、ゾッとするものです。