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〜〜(*リフテンベルグ)われわれが存在すると思っているものは、実際に存在しているのか?という問題は、たとえば青い塗料は本当に青いのか?という問いと同様、愚劣な問いである。
われわれはこの問題の輪の外に出ることはできない。私はただ対象は私の外にある、なぜなら私はそのようにしか見ることができないから、と言うほかはない。しかし、その私の外にあるものがどんな仕組みになっているかはわからない。
それについては、われわれはなんとも言えないのである。 〜〜〜
この記述は、いつか訪れるであろうその時にこの記述が幾ばくかの力となり、助けと成る事を願い、此処に私達の世界で起こった異變について記したものである。
レニウェル・ラ・ド・クローク
○○○年○○月○○日
この日、突如異變が起きた、その異變とは…
何處からともなく異世界の住人が現れたのだ。
彼らは我々の世界ではあり得ない姿をした者達だった、この奇妙な來客に我が国の對處は実に的確であった、まずは彼らの隔離、それから彼らが何故現れたのか、その意志疎通の為色々な分野の學者を集めた。
私はそのなかの一人であった訳だが… この時私は、いや、私達はこの時確かに視たのだ、知ったのだ、氣付いてしまったのだ…
私達の知識の、世界の、小ささに…そして、私達科學者が如何に業の深い者かを改めて思い知った訳だが。
集められた私達の前に彼らのうち1人が進み出て、そして、私達の常識を打ち破ったのだ…
それは所謂、魔法であった、私達の歴史から否定された術であった…
だが、私達學者にとって、未知との遭遇程、心を掻き立てる物はない、それは私達の認識を否定する物であった、其れ故何人かの科學者は此れに焦りであり怒りを覺えていた。
それはそうであろう、私達の常識は彼らによって一瞬で打ち砕かれて終ったのだから… だが、私はそれ以上に興奮していた、此の瞬間に立ち会えた事を神に感謝した。そう私は、いや、私達は、世界が變わる瞬瞬間に居る!
そうだ!なんと素晴らしい瞬間か!
おっと、失礼を話がずれてしまった。
そう、幾人かの科學者は此れに怒りを露にして乱闘騒ぎになるところを取り押さえられた。
しかし彼らの気持ちも理解できる、だが私達と彼らの違いは、この、目の前で起きた現象への"興味"の方が勝っていたの、一言に尽きる。
そして、私を含め十何人かの科學者が残った訳だが、困難と思われた言語に寄る意志疎通は、彼らの友好的行動によって、ある程度理解し合えるものと成った。
そこで、彼らが現れた事柄に就いても明らかになった、此れは余りにも衝撃的な事実である。
まず、彼らの世界が消失したという事であり彼らにはその危機を回避する術があったのだ。
我々は異世界の住人と交流を交わし、彼等がこちらの世界に迣為に行使した術を學為に必死だった。一番の懸念であった言語についての問題は集められた學者達と彼等の友好的な振る舞いによって日常生活についての言語位であれば会話することも可能な程に進み我々の目的とも謂える、彼等の行使する技術を取り入れ、何時か訪れるとも知れない世界の消失という、危機に対しての手段として、我々も彼等の使う魔法について教授して貰う事と成ったのだ。
魔法とは、生物がもっている世界に及ぼすことの出来る力や、空間に、大気に漂うものなのだ、と、そして彼等は云う
そして、魔法とは、認識することなのだと認識し、力にそっと流れを造る。相手の背中を押すような感覺だとそう云う
人が無意識のうちに神を信じるのと同じように、我々もその力を認識することが大事なのだろう。行使するためには、その目的を持たない力に方向性をもたせる様な物だろうが、なればこそ、自然と行使する事の出来る術は人によって異なる事になるだろう。
だが、それではもし、この世界でも彼等の世界で起きたであろう異變が起きた時の解決には不十分な筈だ。私達の最終目標として、世界の消失の謎。そして、消失を豫見した上で我々はより多くの選擇を選ぶ為に我々の取るべき行いは實に多樣である。
將來と謂う不變として確實に存在していたものは今はもう無いのである。
今、世界は著しく變わろうとしている。變わらなければ我々の先は無くなるのだ。我々は經驗を積み上げ、総ての者の關係を強くし、新たなものの發見、多岐にわたる頭腦は何かに凝り固まるのではなく、機點をきかせ應用させるといった事柄こそが眞に價値あるものとして、眞實必要になることだろう。
~~~~ 「…… このような記述が在るように、今ある私達の世界は皆さんが知っている通り他の世界との交流によって成り立っています。」
教壇に立つ教師が映像を介して説明を続けているが、はっきり言って誰も聞いてはいない、今更幼稚園児ですら知っている様な事に誰が耳を貸すであろうか。欠伸をしながら肩まで伸びたくせっ毛の自分の髪をかき回す。
退屈していると丁度良くクラスで回っていたメモ紙が自分の席に届いた。
内容は……
「都市伝説の謎‼徹底解明!
放課後来れる人は旧校舎に集合!
挑戦する都市伝説は、この町で消息を絶った科学者
"レニウェル・ラ・ド・クローク"の隠された書物‼
詳しくは現地で 」
である。思わず笑って仕舞いそうになったが、それはなんとか堪える。
なにせこれは、俺セルゲイツ・ラ・ベイトと他のメンバー達と計画したものだ。
事の発端はレニウェルについて調べていた時この都市伝説を知ったのと、彼とこの街が深い関わりがあることなど、調べていくにつれ、その書物の目星い場所まで割り出す事が出来た。
あとは、その場所を隈なく探すだけとなった、そして、今俺の手元にあるこの紙が行動の証だ。
逸る気持ちを抑え、教室の窓の方に目を向け、窓の外に見える此の世界を象徴する次元転送装置が繋がる“導の橋”が空高く聳え立っている。
共通称こそ"導の橋"であるが世界により呼ばれはそれぞれだ。例えば"アーク"や"エロスの橋"、"ミーメーシス"と云う様に繋がりのある世界でそれぞれ名称が異なる場合もある。それはこれらの世界文化の違いだけでなく、この塔が出来るまで多くの人々が異世界と繋がるとは思っては居なかったし、本格的に世界間での交流が行われるのは更に先の事であったため、世界間での共通認識こそあるものの名称の統一には至らなかった。
更にこれらの名称にも、思い思いにつけられた物なのだがこの世界の"導の橋"に関して言えば、"導の橋"は人間にとっての新しき道へと誘うもの、希望であった訳だ。ここで他の世界の名称も説明するのも良いのだが、そのためにはレニウェルと世界の歴史をそれぞれなぞる必要があるため此処では話さないが
その、今の世界の基盤を造り上げたと言える立役者こそが、何を隠そう“レニウェル”なのだ。俺達の世界で知らない者は誰もいないであろう、歴史を動かした人間…
次元転送装置の制作に携わり、それらの過程で、多くの種族、世界間の仲介、魔術の科学的解析……等々。彼の功績は数知れず。
そんなレニウェルが多くの世界に向けて送った本、歴史の授業でも重要とされるその本の最初の数ページが教壇の奥に映し出されている。だが、今回俺達が見つけ出そうとしているのは、この学校で真しやかに語り継がれる“レニウェル、もう一つの隠された本”その本には世界に送った本とは別の違った内容が書かれているとか、レニウェルが失踪する前に残された研究だとか、世界の真実が書かれているとか、
そんな噂ばかりが大きく広がっていた訳で、最初は少し調べて見る程度の気持ちだった。
だが、一度調べれば資料は山の様に残っている…
大量の資料を前にして俺の好奇心はもう、噂なんてどうでもよくなり大量の資料を読み漁り続けていた。
粗方読み終え、何点か気になる点が残り、また資料を探す、そんな事をしていたら終には蛇が出た訳で、棚ぼたの様な感は否めないが、せっかくだから最後まで探して見なければどうにもならないだろう、と言う事で今にいたるのだ。