プロローグ
プロローグということで、この話の視点は読み手の皆さんとゆう事を前提に書いてみました。会話文の空欄は、敢えて開けておりますので、ご容赦お願いします。
真っ暗な微睡みに落ちていたあなたの意識は次第にボンヤリとたゆたい、此の場所を見ている。
暗くも明るくもないその場所、曇りガラス越しに夜を見ているみたいな群青色と夜が折り重なった黒雲母
そこには観たこともない生き物が大小様々に行き交いそれらは輪郭だけを淡く照らし、意思を持たないように一定のスピードで通過していく。
それらをただ、眺めている、意識があるのかないのかはっきりとはせず、うすぼんやりとした感覚で、自身の存在すらあやふやな状態
すると、急に人の声が、あなたは首を巡らせそちらを見る。
―−やあ、こんにちは、此処にお客さんが現れるのはいつぶりだろうか、ははっ、いつぶりと云うのは語弊があるかもしれないね。此の場所で時間は一瞬にして何億光年とも云える―−
そう、騙り掛けてきた者は映る視界を縦横無尽に宙をくるくると回っている。
その男は片掛眼鏡を掛け、左半分の髪はキレイに頭を沿うように固められ、それとは対照的に右半分の髪は残バラであった。格好は昔の貴族か何かのように、ピシリとしたスーツの上に足下まで届きそうなマント、宙を漂う男の羽織っているそのマントもやはり重力を無視し裾をなびかせていた。
「 」
と、男に向かって喋ると相手の男は不思議そうな顔をする。
―−?私は別に飛んでいるわけではありませんよ?
あなたも自分の足下とを御覧。そもそも、此処に地面はありませんからね。
まあ、あなたが思う夢と謂うのはあながち間違えではないといえます―−
そこで、足下に目を向けると指摘通り足下に地面なんて存在しなかった。
「 」
―−そう答を焦らず、まぁ、私の話を聞いてみては?退屈しのぎにはもってこいですよ?
なんせ此処は世界の全てを見透す、掃き溜めなのだから
断られても話しますけど、時間も沢山あるだろうし、ね、―−
男はケラケラとなんとも愉しそうに話続けるその姿は正に道化師さながらに暗闇を宙ぶらりんに舞い漂い流れるように夜の闇の中へ吸い寄せられる。
―−では、私の居た世界の話をしましょう。
でも、先ず先に、想像して下さい。あなたは鏡合わせに映る場所に立っている。そうすると鏡の奥にも自分が見える…延々とだ、そしてじっと鏡の中の自分を見て
ふと思った事はないだろうか
“本当に此れは自分か?この中に偽物の自分が居るのではないか?本当に自分は此処に居るのか?なら、どれが本物か?”と、
私達の世界は多重世界が折り重なってできた世界だ、だが、それとは別に幾つもの平行世界が存在している、ゆうなれば影の残像の世界とでも言おうか、幾らそれらが本物と瓜二つでも、決して本物に成る筈はない。
だが、どうだろうそれは、可能性の天秤がどちらに傾くかで決まって仕舞う…
さあ、あなたも、どうぞ御覧になってみては如何かな私の居た世界で面白い見物が見えるかもしれない…世界が、どちらに傾くかを―−
話し続ける男はいつの間にか目の前まで迫っていた巨大な大樹を指し、導かれるままに大樹の前に立つ、その木はよく見ればこの夜の世界とは全く違う、どちらかといえばあなたがたのよく知る世界と似ている青い空が見え、だが違うのは遥空高くまで延びる一際高い柱の様なものが存在したこと、それから建物はあなたが知る高層ビル等はない
そんな景色を目の当たりにして、我に返ってみると背後からはあの道化師の様な男が今までの飄々とした声音とは違う憂いを漂わせ、此処ではなく、あなたなのか、それとも、自分自身か、過去か未来か、その声は誰にともなく大きすぎず小さすぎず空間に響き渡っていた。
―――(※パスカル)無限の空間における永遠の沈黙は、私を恐怖に落とし入れる。
無限の過去と無限の未来に挟まれた自分の一生の儚さを思うとき、私の占めている空間。
更には私の眼に見える限りの空間、私の知らない、そして私を知らない、測り知らない、測り知れないほど広い様々の空間にあっては、大海の一粟のごときその空間の微小さを思うとき、私は慄然となり、どうして私は今ここにいて、別のところにはいないのだろうか?一体誰の指図、誰の命令で、ちょうど今、ちょうどここにいることになったのか?
畢竟人生とは お客になって過ごした儚い一日の思い出のようなものである。 ―――
―――さあ、話し始めよう。この儚い世界の、虚しく、残酷な選択を―――