逃げてばかりの人生です
作者の頭がパーンと逝きました。ゴメンナサイ。m(_ _)m
乙女ゲー転生を書けばいいのにどうしてこうなった?
でも、最後の方は少しまともに……(震え声
伏せ字の中は勝手に想像してください(汗)
まずい。どうしよう?
んなこと言ってる場合じゃねぇ!!!
「どーして逃げるんだよぉ」
うっせえ黙れ!!!
俺は全力で逃げていた。後ろから余裕ぶって追いかけてくるのは鬼畜野郎だ!!
外見は品行方正。眉目秀麗。文武両道。女ならよりどりみどり。いわゆる非の打ち所がないイケメンだ。
……だろうな! エ○ゲの主人公なんだからよぉ!! 良かったよ! キモオタの方じゃなくて。
じゃなくて。
俺はなぜかやりこんでいたエ○ゲなんてものにヒロインの一人として転生していた。あの鬼畜に捕まったら最後。毎日あれやこれやで**され、最後には……嫌だ。嫌すぎるぞ!!!
見てるだけならいいんだ。いいんだ。前世(?)ではお世話にたくさんなったし。
でも、なぜ俺に火の粉が降りかかるんだよ!! しかも、俺はこのヒロインがお気に入りだったんだよ。何が悲しくてヒロインにならなきゃなんねぇ!
思い出したのは、あの鬼畜と話していた時だ。
「俺の家においでよ」
「行くかぁボケェ!!!」
と殴っていた。こうなれば武器だ。武器しかねぇ。警察なんて無能なはず。能力があればゲームの世界なんて存在できねぇからな。
てか、俺足遅!! スペックとろすぎだろ。流石美少女。
「来るなぁ!!」
嫌だぁ!! ****なんて洒落になんねぇ!! ***,***とか言ってたまるかよ。むしろ俺が聞きてぇよ。死ぬ前なんて縁一つなかったからな。
「なんで? そんな可愛い顔で言われたら捕まえたくなるじゃない」
うわーん!! 本性表してやがる。目がコエーよ! 寄るな。近づくな!!
とか、思ってたら捕まりました。割とあっさり。ち。流石だ。運動神経万能野郎め。にたりと笑うそれに悪寒が走っていた。
「何をするのよ?」
「いい事……したくね?」
テメーの良い事は俺の絶望じゃねぇか。耳元で囁くな! こんちくしょう!!
助けてーー神様。
「したくない、あなたは嫌いだ」
俺は頑張ってやつを睨んでいたが、嬉しそうに笑うな! 変態。盛ってんじゃねぇぞ?
てか、尻に手。手。ここ、廊下だから! ろうか。今、人いねぇけど……。放課後だしな。うん。世界が空気読だ。
おのれ。
「やめて!」
私は身を捩って手を振り払った。が、私の背中にピタリと身体を引っ付けるととんと私の肩に首を置いた。
ひいいいいいい!!!!!
ちょっとしたホラーかよ! 身体のすべてが総毛立つわ!!
「ええ? 連れないなぁ。僕は君を好きなんだけど……」
だ、か、ら。囁くなって!! うわーん!! 終わった。俺の人生早くも終わった。前の人生だって完遂してねえのに。なんだよ。これ。嫌がらせか? 神様かなんかの。俺が何をしたんだ!?
取り敢えず、謝る。謝るからぁ。
そこまで考えて俺はあることを思い出していた。このゲームNTRあったよな。ヒロイン一人ひとりにそう言うのがいてこの鬼畜がそいつの面見てほくそ笑むって言うのが……そして俺もほくそ笑んだ記憶が。すまん!!
ともかく、俺の場合は……。
「金城!! 金城!!」
俺は力の限り叫んでいた。お嬢の俺には専属の送り迎えがある。今日もそれを待っててこんな事態になっているんだが……ともかくその運転手が金城だ。えっと名前は忘れた。
ゲームの中では結構相思相愛なんだか。俺達の間には当然何もねぇ。俺が思い出した限りきっとこれからも何もないが利用はさせてもらう。
俺の人生のために!!!
そう言えば奴はいつも帽子深く被ってるんで顔見たことないなぁ。
「金ーーもがぁ!!!」
当然口元を大きな手のひらで塞がれた。
「いけない娘だなぁ。違う男の名前を呼ぶなんて」
ぎゃーーー!!!! 何かに火がついた!!!! 目が、目が……。分かる。俺にはわかるぞ。こいつはアブねぇ。やる。絶対やるつもりだ!!
奴の後ろに鉄格子の部屋がうっすら見えるような気がする。
金城!! 遅い!!! そして苦しい!!!
お嬢様? なんだっけソレ。そんな感じで無我夢中で近くの柱にしがみつくとひたすら金城を待つ。奴なら見つけてくれる。そう信じながら。
ベリベリ柱から引き剥がされていると、さっと一人の影が現れた。黒いスーツの男。
相変わらず目深に帽子を被っているけど私を探し回っていたのか微かに息が荒れていた。
「お嬢様!!」
そりゃそうかも。待ち合わせ場所にいなかったんだから。俺を絶対連れて帰ってくるようにっていい使ってるはずだからな。
できなきゃ首だし。
慌てて駆け寄ってくる金城は私の姿を見て怪訝そうにしていた。
「お嬢様? これは?」
おせーよ。おせー!! っうか、いい加減離せやこのやろう!!
「ふふっ……少し鬼ごっこをしていただけですよ。お気になさらず」
何いい笑顔で言ってやがんだよ、こいつは。どう見ても拘束してるだろうが!
ほぼ涙目でブンブン首を降ってみる。つうか、ここで見捨てられたら俺の人生が終わるんだろうな。
頑張れ俺!
金城いい加減に助けろよ。不思議な光景を見て固まってんじゃねぇぞ! どう見てもおかしいだろう!?
「鬼ごっこ?」
「そ。俺達付き合うことになったんで、じゃれ合い? 少し遅れるけど車で待ってろよ」
クイッと偉そうに顎をシャクリ上げるけど、そんなわけねぇだろう? オイ。テメーは何者だよ? あ、そう言えば理事長の息子か。
……。だから何なんだよ。軽く頭痛を覚えるわ。
ちらりと金城は俺に目を向けた。
ちょ……まじか。おま……。
この期に及んで悩んでやがる……。素直なのはいいことだけど、ここまで行くとただの馬鹿だからな? お前。
「それじゃぁ〜」
「むがぁ!!!!」
ドナドナよろしく引っ張られて行く俺。
ああ。俺の人生。さようなら。こんにちは。モルモット生活……。
そして金城。
末代まで恨んでやる。
「楽しみだなぁ」
ははっ。お前は一族郎党呪い殺すけどな。
「って、そんなわけないでしょう?」
「……はぁ?」
何だと? ゴラァ! 品行方正。耽美な顔は醜悪に歪む。どなた様ですかねぇ。……愉快だわ。ほほほほ。なんか、愉快。
でも金城。ただの馬鹿じゃなくて良かった。
金城はつかつか俺のもとに歩くと細い俺の体をいとも簡単に取り返した。
落ち着く。マジ落ち着く。身の危険を感じないって素晴らしい!!
うわーん!!
「金城〜!!」
俺は金城に縋り付くように抱きついていた。だって、本気で怖かったんだよ。悪態ばかりついてたけど、俺だって今は女だ。怖いものは怖い!
あんな生活ビッチだって喜ばねぇよ!!!
「てめぇ、使用人の分際でなんのつもりだよ?」
もはやどこぞのヤンキーだよ。てめぇは。顎付き出してガン飛ばしてんじゃねぇぞ?
でも、金城はそれにめげることはない。もしかして、つよいの、か? こいつは。
見上げる金城の顔は相変わらずよく見えない。けれど整った顎と薄い唇はなんとなくイケメンを連想させた。
俺には、関係ないけど。
「? あなたの使用人になった覚えはないんですが。それに、私はお嬢様を無事に送り迎えすることが仕事でして……あなたに渡せば無事とは思えません」
「金城……」
「あなたは、お嬢様を好きなのですか? 失礼ながらーーそのようなものは見えませんがーーお嬢様も嫌がっているようですし、これ以上近づけば家の力全力を持ってしてもあなたを潰します」
「……お前のいう事を誰が信じるのか? たかが使用人だろ?」
「まぁ、そうですね?」
金城は軽くつぶやくと、目深にかぶっていた帽子を脱いで見せる。
……ええと、何この展開。美形だろうなとはなんとなく思ってた。いや、その方が良いかなって希望だったけどさ。
おいこら。規格外の美形じゃねぇ? むしろ後光が射してる気が……。なんだろ。ハーフっぽいんだよな。顔立ち。水色の双眸。それに反して黒い髪ってどういうことだ?
……。
いや、目を合わさないようにしよう。うん。クラクラする。
「婚約者ですけど、なにか?」
……。
……。
何言ってんだ? いやいやいや。そんな設定聞いてねえし、俺ら始まってもねえし。始まらねえし。
どした?
「金城?」
「マジで?」
ここで、嘘とも言えない。目の前の男よりはマシなので俺はよくわからないままコクコクと頷いてみせた。にこっと満面の笑みなのは金城のみ。おいこら。と言いたくなる。
しばらく顔を曇らせた奴は思いっきりため息を吐き出した。
「……わかった。別の方法を考えよう。それまで愉しめばいい」
別の方法。って、まて、こら。まだ諦めてないんかい。いや、もうあいつ殺したほうがよくねえか?
突っ込むのが怖いのでつっこまねぇけど。
去っていく姿を見送りながら俺は金城を見た。うわぁ。キラキラだなぁ。
「ええと? ありがとう?」
「すいません。出過ぎた真似を」
あ、嘘だったのね。よかった、のかな?
金城は帽子を俺の頭から取ると再び目深に被った。
「なんで帽子を被るの? カッコいいのに」
「……そうですか? 私は自分の顔が嫌いでして……お嬢様は好きですか?」
……。
……。
どう答えればいい? 好きといえばなんとなく誤解を生みそうで……嫌いといえばなんか精神にダメージを与えそうだ。
話題を振るんじゃなかった。っか、イケメンのくせに顔が嫌いなんてどんだけ贅沢なんだよ!
前世? の俺なんてーー以下略
「ええと、あの。そうだね……かっこいいのはいいことだと思うよ。私はーー好きかも」
ほぼやけくそ気味に言ってみる。なんとなく先が見えた気がしたけど。
……。
……あ、うん。そうだよねぇ。帽子を取るよね。
眩しいよ。キラキラ、キラキラ。どこの王子だよ? 見たくねえ。頬も軽く朱に染まってるけど……男のそんな姿見ても萌えない……。
むしろ泣きたい。
「ーーお嬢様は私がお嬢様をお慕いしているのは知ってましたか」
設定上は。設定上はね。何度も言うけど設定上は相思相愛の筈だよな。分かってても、そんな事を言われるとぽっと頬が染まるのはなんでだよ。ドキドキするし。
仕組まれてる。それをすごく感じるんだが。
流されるな。頑張れ俺。ーーもしかしたらここから本番かもしれないし。あの主人公のやる気がアップするかもだし。
絶対嫌!
NTR反対!!
「き、金城?」
「できればーー」
俺はその声を遮るようにパンッと手のひらを合わせ、踵を返す。可愛そうだが、このまま流されそうな俺の方が嫌だ。
「……そろそろ帰らないとお母様が心配するわーー金城」
「はぁ」
ちらりと振り返れば肩を落としたイケメンの姿。女なら誰もが群がりそうな哀愁が……そしてさすがの俺もぐらりとする。
このくらいはいいのかな。ふと思いついた考えを俺は深く考えることもなく金城のそばによるとその頬にキスを落としていた。
「……?」
ぱちぱち大きな目が不思議そうに瞬く。まるで子供のように俺を見つめている。
「……ありがとうございましたってことで。さ、行きましょうか?」
もし、いつか。があるならさ。俺が俺でなくて、このくだらない世界が、作られた世界から抜けられたら……そういうことだってあるかもしれない。
金城いいやつだし、イケメンだし。
……ああ。女だったらいいのに。そうしたら悩まないですんだのにさ。
馬鹿なことを考えながら、歩いていると金城は俺の手をつなぎ留めた。真っ直ぐな、見透かすような視線。それが俺の心を捉えた気がした。
「いつか、振り向いてくれますか?」
俺は軽く笑って窓から見える空を見上げる。
「ふふっ。いつかね」
いつか。その言葉が本当になる日はきっと無い。
そう、思っていた。




