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第二話 明神セレナ

「こんばんは。君を死神から護りにきたセレナだ。よろしくな。」

「………え?」

「………こんばんは。君を死神から護りにきたセレナだ。よろしくな。」

「はぁ?………」

「………」


沈黙が流れる。


「えーと……何の御用で?」

「だから死神から護りにきたと言っているだろう。君はバカか?」


え?

なんか怒られた上に罵倒されたよ?

俺が悪いの?俺が悪いの!?

死神とか言ってる方がバカじゃないの?

ねぇ!どうなのよ!?


……と言いたい所を我慢して訪ねる。


「すいません。急に現れて死神とか言われても困るんですが……」

「ん?ああ、そうか。こっちの人間は何も知らないんだったな。すまない。」

「いえ………」

「では説明しよう!琴平幸人!!」

「は、はい!」


急に名前を呼ばれてつい返事をしてしまった。

そうです。

俺の名前は琴平幸人です。


「君は死神に狙われている!!だからこの私、明神セレナが護りにきてやったのだ!!」


俺が心の中で勝手に自己紹介している内に、自称女神のセレナとやらが変な事を口走っていた。

しかもドヤ顔で。

なんだこいつは。

病院とか連れて行かなくて大丈夫だよな?

なんか心配になってきたぞ?


「いや、死神って。居るわけないでしょう。そんなの。」

「ん?私の言葉が信じられないとでも?」

「ええ。まあ。」

「むぅ………どうしても信じられないか?」

「まあ、証拠とかあるなら別ですけどね。それなりの。」

「ん?来たか。ちょうどいい。幸人!今から死神が来るからよーく見ておけ!!」


こいつは本当に何を言ってるんだ。

死神なんか居るわけないだろうに。

これって110番するべきかな?


そう思ってテーブルの上の携帯電話に手を伸ばしたその時だった。


『バリン!!』


とガラスの割れる音が響いて何かが入ってきた。

そいつはバイオ○ザードに出てくる犬の様なものだった。

しかしでかい。

普通の犬じゃ考えられないような大きさだ。


なぜ俺がこんな冷静に犬の分析をしていられたのか。

理由は全く動かず、おとなしいからだ。

いや、違う。


その犬は既に死んでいた。


ガラスを割って入ってくると同時に、俺の隣にいた自称女神が一瞬で首を切り落としたのだ。


俺の足下にはでかい犬の生首。

生首からは大量の血が溢れでている。

白く綺麗だったリビングの壁は反り血で真っ赤に染まっていた。

その光景は俺に女神と死神の存在を認めさせるには十分過ぎた。


そして俺は意識を失った。


目が覚めた時、俺は夢であることを願った。

しかしその願いは女神の笑顔によって呆気なく散った。


その後俺はこの現状の説明を求めた。

女神は説明するのが下手らしく、俺が理解するまで三時間ほど掛かった。

決して俺の理解力不足という訳ではない。

本当に女神は説明が下手だった。


まあ要約するとこんな所だろう。


・女神の名前はセレナ。光の神。

・俺を死神から護るために来た。

・さっきの犬はガルバスという。

・ガルバスは死神の手下の魔獣。


「……………ということだ。」

「なるほど。まぁ大体分かりました。ですがなぜ死神は俺を狙うんですか?」

「さあな。私はアイラル様に言われて来ただけだからな。」

「アイラル様とは?」

「創世神アイラル。私たち八大神の上に立つ絶対的存在だ。」

「八大神?」


ちょ、固有名詞多過ぎ。

頭こんがらがるわ。


「八大神とは炎神・水神・緑神・地神・風神・雷神・明神・滅神の八人の神の事だ。」

「そしてその頂点に立つのが創世神アイラルだと。」

「そうだ。」

「その中でなぜあなたが?」

「さあな。アイラル様の考えてる事は誰にも理解できんよ。まあこれでも八大神の中では四番目に強いから安心していいぞ。」

「はあ。」


それよりも凄く言いたい事がある。

そろそろ言ってもいいだろうか。

うん。

いいよな。


「それであのー……この血だらけの部屋を何とかして欲しいんですが。」


そう。

俺たちはこの血溜まりの中で会話をしていたのだ。

気持ち悪いったらありゃしない。

この人ならどうにか出来るのだろうか。

いや、どうにかしてもらわなきゃ困る。


「おお、そうだった。このくらいなら魔法でちょちょいのちょいだ。」

「魔法、ですか。」

「ああ。神は皆魔法を使える。」

「じゃあさっきガルバスを倒した時のやつも?」

「そうだ。さっきのは光を剣状に圧縮しただけだがな。私は明神だから光の魔法が得意なのだよ。」

「じゃあダンボールから出てきた原理は?」

「あれは転送魔方陣だ。」

「なるほど。」


こんな話をしてる内にリビングは元の真っ白な壁に戻っていた。


「幸人。」

「はい?」

「湯編みをしたいのだが。どこですればよい?」

「湯編み?ああ、お風呂ですか。それならそこの廊下を出た先です。」

「そうか。ありがとな。それと敬語は止めてくれ。堅苦しくてたまらん。普通にセレナと呼べ。」

「あ、分かりまし………分かったよ。」

「よし。では失礼。」


セレナはお風呂に向かった。

それにしても凄く疲れた。


神も死神も存在するなんてなぁ。

なんで俺は狙われてるのだろうか。

まあセレナがいれば安全かな。


ん?

あいつどこで暮らすんだ?

アパートでも借りるのか?

いや、神だから家の一軒でも簡単に建てられるんだろう。


するとバタバタとセレナの走ってくる音が聞こえた。


「幸人ー!!冷水が出ないぞー?」

「冷水?」


俺は振り返った。

そこには全裸のセレナがいた。

適度な肉付き、きゅっとしたくびれ、細い手足、そして綺麗な形の胸。

10人に聞いたら間違いなく全員が完璧なプロポーションだと言うだろう。


「な、なんだよその格好!?前隠せ!!」

「ん?なぜだ?ああ、地球では男の前で裸になるのは駄目だったな。すまん。」

「いいから早く隠せって!」


そう言って俺はタオルを投げた。

女神には恥じらいというのが無いらしい。

どうやら神には男がいないらしいからそれの影響かもしれないが。

まだ地球のこともよく分かってないようだし、後で必要最低限の事は教えておくとしよう。


「ところでなんで冷水?」

「ああ、女神の湯編みは冷水で行うんだ。」

「そうなんだ。」


あれか。

悪魔の霊を祓う為とか、そこらへんの理由だろう。

まあ詳しい理由は聞かない事にするか。


そうして俺は風呂の使い方を一通り教えた。


教えてる途中に石鹸で滑って、セレナの豊かな胸に顔からダイブしてしまった話は割愛するとしよう。


「気持ち良かったぞ。ところで私はどこで寝ればいい?」


ん?

今なんか変な言葉が聞こえたぞ?

どこで寝ればいいだと?

聞き間違いだよな?

そうであって欲しい。


「え?今なんて?」

「だから私はどこで寝ればいい?」


聞き間違いじゃなかった。


「いや、そこらへんに家でも建てればいいんじゃないか?」

「ははっ、そんな事できるわけないだろう。」


鼻で笑われた。

さも当然だと言わんばかりに。


「できないの?」

「そりゃあいくら神といっても、許可なく家を建てるなんて事はできんよ。」


神でも常識というのはあるらしい。

少し安心。


「だから幸人の家に泊まらせてもらう。」


前言撤回。

やっぱり常識ないな。


一つ屋根の下。

年頃の男女が同居なんて。

どっかのハーレム系ラノベじゃあるまいし。


「それに幸人を護るなら近くに居た方がいいだろう。」


まあそりゃそうか。

しかもよくよく考えればこの残念な女神と何かが起こるはずがないだろう。


だが、それでも。

これは認める訳にはいかない。

ここはきっぱり断っておこう。


「駄目だ。そんな事できるわけないだろ。」

「なぜだ?」

「そりゃあ俺が男でセレナは女だからだ。」

「それは駄目な事なのか?」

「ああ。」

「………そうか。ではそこらへんの人に頼むとしよう。」

「え?何言ってんだ?そこらへんの知らない人に頼むってことか?」

「ああ。」


いやいやそれこそ駄目だろう。

知らないおじさんに泊めてと頼む。

セレナは残念な奴だがこれでも綺麗な容姿だ。

そんな事したら確実に犯されるだろう。

マズイ。

これはマズイ。


………そんな事は阻止しなければ。


そして俺は言った。


「………はぁ。いいよ。ここで暮らせ。」

「いいのか?それじゃあよろしくな。幸人!」


こうして俺とセレナの同居生活が始まった。

〈プロフィール〉

氏名:琴平幸人

性別:男

容姿:黒髪。そこそこイケメン。

性格:真面目。律儀。

悩み:ダンボールから現れた女神が心配。

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