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視点A 5月31日
「昨日は楽しかったな、また行こうな」
「おう、そうだな」
放課後、帰宅途中三羽人とこの間カラオケに行った話をしていた。
「そういやさ、お前最近明るくなったな。――好きな人でもできた?」
からかうような口調で言った。僕はうなずいた。三羽人も最近明るくなった。
「誰?」
「いや、え。あ、僕こっちだから!」
僕は走る。
「教えてくれたっていいじゃんかよー」
「あ、え。まぁ、知らないと思うからいうけど。平野ユヒトって人」
どうして、僕はこんなこと言ったんだろ。この学校じゃないって言えばよかったのに……しかし、全てはもう遅かった。
「平野……、ユヒト……?」
「うん、じゃあなっ」
僕ははずかしくて走った。
「嘘だ、嘘だ……アイツが平野ユヒトの知り合いなんて知り合いなんて……」
その声は、僕には届かなかった。
「きいてみないとな」