ハンター、疑惑 5月13日
あの夫婦は殺された。と、さっき電話で伝えられた。
私はその夫婦の家に行った。
ここ最近、ハンター同士の縄張り争いが劇化しているらしい。特にフリーのハンターとそれ以外のハンターが争い殺し合いをする。
同じ目的を持ったもののはずなのに、我々は殺し合うのだ。
そこのハンターではない息子1人が住んでいるが、彼はハンターではないから巻き込まれなかった。
……しかしベテランともいうべきハンターが殺されたとなっては自分も危ない。
どうすればいい?
考えないと、殺される。それがますます自分を追いたてる……怖い、怖い…
だが。敵が現れないかぎりこのまま生活するしかないのだろう。
明日もしかしたら、殺されるかもしれない。
自分が怯えているのは化け物ではないとなると、少しだけ笑える。
「龍?」
自分を呼ぶ声がした。現在午前2時、2人で夫婦を殺し逃げたという平野ユヒトについての情報を集めていたところだった。
「ん?」
同じハンターだがフリーのハンターである、三島菜汰だった。
もともと仲が良かっただが、奈汰がハンターだと知ってとても驚いた。
「震えてるけど、大丈夫?今日は寝る?私だけでもできるよ?」
「あ、いや。考え事をしてただけだよ。心配かけてごめん」
「ならいいけど、あのね。ここ見て」
奈汰は2枚の紙を見せた。それは、この街の地図だった。それぞれ、紫のマーカーと赤のマーカーでところどころ点がうってあった。
「平野ユヒトの出没場所、もう1枚は化け物の出没場所」
そして、奈汰は紙を合わせた。
「これ、見て。ピッタリ一致する。しかも、平野ユヒトは前触れなく突然現れる……例えばここ」
2つの点を指した。
「ここまで行くには、絶対この大通りを通る必要があるんだけど……平野ユヒトはそこを通らずに40分もかかる遠回りをしたの……10分で移動しているけど、ほとんど人間には無理よ。ハンターでも。これまだ、疑惑の域なんだけどね。もしかしたら、平野ユヒト自身が本当は――」
私はその言葉に衝撃を受けた。