逃走劇のあとにあるものB 6月10日
平野ユヒト、俺の両親を殺した張本人。
許せない相手。
庭先愛結、友人。平野ユヒトに恋してる。
野菊三羽人……
俺自身、
平野ユヒトに復讐したくてしょうがなかった。
それが叶う、最高の日。それが今日だった。
だが、
さっき龍から電話があった。
「平野ユヒトは、殺せない。永久に」
そう言われた。事情も言われた。平野ユヒトは殺すこと自体出来ない。
俺の両親は、実は化け物ということも言われた。
だから、ハンターとして職務を全うしたらしい。
でも、理論じゃ理屈じゃ……理解、出来ない。
ただひらすら、涙がこぼれる。
狂いそうだ、終わったのに。平野ユヒトは、職務を全うしたという事実があるのに。
どうすれば、どうすればいいんだ。
俺は1人、川辺を歩く。
「死にたい」
ため息をつく。
「あとちょっと!はい、タッチ」
「しかたない、10、9、8、7……」
楽しそうに小学生が鬼ごっこをしている。楽しそうだった。。そこに1人の小学生の男の子が俺のほうへ走ってきた。
「4、3、にぃ」
「……復讐するなら、 その本人以外にするっていう方法があるんだよ。例えば、その人の大事なものを壊すとかね。ほら、こんなに近くにいるのに」
「いーちぃ、いくよー!!」
逃げよう、と言いながら小学生は逃げた。
「……平野ユヒトの大事なもの」
それが本当に大事なものかはわからない。しかし、どうでもいいものではないはず。
少なくとも、それは。
今の俺にとっては、どうでもいいものだった。




