現実 A 5月20日以降
夕日が教室に差し込む。僕は1人で教室にいた。
「帰るぞー」
友人の三羽人の声が聞こえる。
「あー、うん。今行く」
こんな日常がまだあった。まだ、あった……。
「でさ、そいつが本当に――」
三羽人の話を聞きながら、僕は帰る。夕日はさらに輝きをまして、眩しい。
「じゃあな」
交差点で僕らは別れた。早く家に帰ろうと思い、僕はいつも使うと近道を使った。
裏路地のせいか、夕日の光は届かない。カラスと声がどことなく聞こえる。
「ギュウルル」
そのとき、変な声が聞こえた。いや鳴き声だった。
「あ」
目の前には倒れた人がいた。1人じゃない、複数いる
そして、犬のような形の化け物。
「……何これ」
鋭い牙で、人を刺していた。真っ赤な、新鮮な血が飛び出る、ブチャ、ブチャ。ピチャァ
僕は本能的に逃げないと、と思った。
だが、足が動かない。
化け物がこちらをじっと見たその時、頭上から女の子の声がした。
「さぁて、問題です。化け物はあなたのほうを見ています。さて、このあとどうなるでしょうか?――正解はっ」
刀で化け物が切り裂かれた。
「………っ」
「ギュアァァァァ」
化け物はいなくなった。
「大丈夫?よくまぁ、無事だったね」
女の子はケラケラ笑う。そして、次の瞬間フッと女の子は消えた。
「何だったんだろう」
僕はただ、呆然と立ち尽くした
それはまだ、はじまりに過ぎなかった。
「……やっべぇ」
宿題を学校に忘れた。現在、夜10時。明日出さないと、もれなく単位がなくなる。仕方ない、学校に取りに行くことにしよう。
「制服に着替えよう」
うちの学校はまだセキュリティがあまく、たとえ夜中に学校に入ってもわからない。念のため制服に着替えば大丈夫だろう。
僕は制服に着替え、家を出た。夜のせいか、人通りは少なく特別な気分だ。
夜の街も楽しいだろうと想像しながら走る。
学校に到着すると、校庭のフェンスを乗り越え非常階段から校舎内に入る。あとは教室に入るだけだ。
その時、フッと何かが見えた。それは白い人の形をしてた。
「……気のせいか?」
僕は教室に入った。そこには透明なタコがいた。いつだか見た犬のような形の化け物に雰囲気が似てる。
「っ」
タコが僕に襲いかかろうとした。その瞬間
「パッシュッ」
タコは真っ二つになり、消えたのだ。
「大丈夫?」
あのときの女の子だった。女の子は刀をしまった。
「あぁ、うん」
彼女はまた消えかけた。僕はすかさず、
「今何が起こってるんですか?」
「ん?うん、気にすることはないんだよ?君が化け物に襲われただけだよ?あ、私は平野ユヒト。覚えておいてくれ」
そう言って彼女は消えた。
僕はそれ以来、彼女のことが気になってしょうがなかった……。だから、少しでも時間があるときは裏路地や人通りが少ない場所を歩いた。
だが、なかなか平野ユヒトは見つからなかった。僕はそれでも探し続けた。そして、とある日の早朝
「……平野?」
朝日が差し込んできたばかりの川辺に彼女が立っていた。彼女はYシャツに黒いスキニーをはいていた。そして、いつもの刀を持っていた。
「ん?あぁ、あのときの君かぁ」
平野は笑った。
「あの、いつも助けてくれてありがとう」
「あぁ?別に気にしなくていいよ?私の役目だし」
平野はその場に座った。僕も横に座る。
「僕が今まで見ていた化け物って何?」
「そうだねぇ……今の世の中では減ってしまった、霊的なものかな?私はそいつらを倒すハンターだから」
平野は刀を持って頭上に上げた。
「私でも誰でも晩ごはんは化け物の気配を察知するとすぐそこに行くからね……君はもしかしたら狙われやすい体質なのかも。でも、大丈夫。いつでも私が守るから」
そう言う彼女の顔はとても綺麗だった。