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服への道のり(2)

 僕たちは一度ギルドを出て、町をぶらぶらすることにした。

 だがそれは、換金を行わなければお金がなく、何も出来ないことを再認識するだけであった。


「お金がないから、ご飯も食べれないね。

 近くで魔物を狩りに行くって気分でもないしさ」

「そ、そうね。

 いつも隠れてる場所が埋まってるのと、人の多さが厄介だわ」


「うぅぅ、遥ちゃんごめんね」

「いいのよめぐみ」

 僕には誤ってくれないんだね、松崎さん。

 夕見さんが松崎さんの頭をなで、二人とも頬を少し赤くしているように見える。

 

 

 服屋の前を通ると、相変わらずたくさんの人でごった返していた。

 町人の声が聞こえてくる。

「こりゃぁ今日中に無くなっちまうかもしれねぇべ」

「だな、貯金叩いてでも買っとかないと」

「またいつ来てくれるか分からんしのぅ、フォッフォッフォ、ワシが来たからにはここの在庫はないと思え」

「おい爺さん、俺の分も残しておいてくれよ」


「ちょっと爺さんや、孫が来るからって買いすぎだよ。

 いったい何着買っていくのさ」

「ば、婆さん」


 もうなくなるのか、早いな。

「えぇぇ、うそでしょう? 来たばかりじゃない、頑張りましょうめぐみ」

「う、うん」

 夕見さんが松崎さんの手を引いてギルドへ向かう。

 婆さんに引きずられて行く爺さんをよそに、僕とハッピィは歩き出した。

 


 ギルドへ戻ってくるとやっぱり人が多い。

 むしろさっきより多くなっている感じがする。


 松崎さんと夕見さんが何やら話している。

 この人の多さだ、元気づけているのかもしれない。


 今はクエストボードのくぼみ付近にも人がそれなりにいるみたいだ。

 人気が無くなるまで待ってみる。


 僕がクエストボード付近でジェスチャーを行う。

 夕見さんは入口付近を見ているようだ。

 僕の位置からだと、入口からクエストボードに向かう人が見えていなかった。

 さすが夕見さんだ。


 夕見さんと僕がGOのジェスチャーをする。

 今だ。


 松崎さんの姿が半透明から、綺麗な色白の肌色に変化していく。

 そのまま壁にもたれかかると、まるで水泳のバタフライのように腕や足を動かして上へと移動していった。

 ぷるん、ぷるん。


 半分ほど登ると、若い男性が二人クエストボードを見ながら歩いてきた。

 松崎さんは慌てるように上り、手足の動きが早くなり、そして、天井に頭をぶつけた。

 あれは痛そうだ。


 若い男性達が後ろを向けば、たとえ上を向いていなくても見つかってしまうだろう。

 だが見つからなかったようだ。

 

 数秒の硬直の後、上りだした。

 若い男性達はクエストボードを言葉を交えて吟味しているようだ。

 

 やがて天井まで到達した。

 ぶら下がるおっぱい。

 髪と一緒に移動するたびになびいている。

 

 若い男性達の真上まで移動し立ち止まった。

 あちゃー、さらに増えているな。

 今、クエストボード付近には男女の冒険者風のグループがやってきているため戻ることもできない。


 おっぱいが大きく揺れると、松崎さんは進みだした。

 それを確認して僕たちは換金の列に並んだ。


 1時間ほど経ち、僕達の番になった。

 

 サイズが少し大きめだと、夕見さんが松崎さんの声を真似て伝える。

 すると奥に案内された。


 大広間とカウンターをつなぐ天上には突起があり、松崎さんは大きく体を反らせて進んでいる。

 落ちそうで心配だが、この体勢は。

 ゴクリ。


「それでは出してください」

「どうしました?」

 ギルド員がハッピィに問いかけ、ハッピィは首をかしげている。


 上を見ると松崎さんが困った顔をしている。

 目が合うと、手を動かして何かを伝えようとしている。

 

 ええと、天井をぺんぺんと触り、手をクロスさせる。

 次に脇に左手を当てて輪を作り、右手を輪の中に突っ込んで首を振っている。


 よくわからないや。

 それより、この位置だと大広間から丸見えのような気がするな。


 すると夕見さんが後ろに下がり、駆け出した。

 壁を蹴ってジャンプ、そしてさらに飛んだ。

 そのまま空中で肌色に変わって天上に貼りついた。

 へぇ、身体能力が高いとああいうこともできるのか。 


「どうしました? 早くしてください。 後がつかえています」

 焦らすギルド員。

 ハッピィは首をさっきとは反対側にかしげた。

 ちなみに翼の先端は自分の顎にあてている。

 

「冷やかしですか、はぁ。

 この人の多いときに、さぁ帰ってください」

 

 ハッピィとギルド員の後ろに猿の魔物が出てきた。

 上を見ると、夕見さんが松崎さんの腰を支えて天上に貼りついている。

 夕見さんの手がじりじりとすべり、松崎さんの胸へ。

「ひゃん」


 後ろから抱えるように支えた夕見さんの背中が天上から離れ、二人は地面へと落ちた。

 ガシャン。

「なんだ」

 振り向くギルド員。

「おぉ、これは」

「すぐに鑑定を始めます。 お待ちくださいね」

 

 どうなったのかキョロキョロしていると、後ろ肩をつつかれる。

 振り向くと、夕見さんと松崎さんが半透明で立っていた。

 うん、無事だったらしい。


「鑑定が済んだぞ、98銀だ。受け取れ」

 高いのか安いのかわからないが、これまでの中で一番高い値段だ。

 さっきのギルド員とは違う、貫禄のある親父が金を持ってきた。

 ハッピィの肉体をなめまわすように見ている。

 こいつ、変態だな。


 夕見さんと松崎さんの顔は高揚し、息づかいも荒くなっていた。

「お疲れ、休む?」

「いいわ、それより早くここから出たいわね」

「うん、熱い」


 金を受け取ると僕たちは服屋へ向かった。

 服屋はさっきより人は減ったみたいだ。

「やっと服が買えるわね。 長かったわ」

「うん、長かった」

「そうだね」


 ごった返す店内を進み、松崎さんが立ち止まる。

 夕見さんは深呼吸した後、前に進む。


 客に揉まれながら服の置かれている木の籠に手を伸ばし、服の種類も確認しないままカウンターへと持っていくのだった。



服を着せざる終えなかった……。

着ちゃったらこの子達、脱がないよね。

どうしよう。

手に取った服がエロ衣装だったことにしようかしら。

残りが1着だけで胸の大きさ的に、夕見さんしかきれずにってことにしようかしら。1着で夕見さんと松崎さんが譲り合って、結原がじゃぁ僕がで。

怒られてハッピィが着ることにしようか。

うむ、どうしよう。

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