服への道のり(1)
僕達が目を覚ますと辺りはすっかり明るくなっていた。
夕見さんと松崎さんに囲まれるように壁にもたれかかり、毛布でも掛けるかのようにハッピィを抱え眠っていたようだ。
ハッピィはすでに起きているらしく、眼を開いていた。
町からは離れているとはいえ、すぐそばで眠ってしまっていたことに驚く。
眠っている二人を起こし、移動することにした。
「とりあえず猿を倒したんだし、換金を頼みにいくか」
「そうね、やっと服を着られるのね」
「やった」
隠蔽を使い町の中に入り、ギルドに向かっていく途中町の人が複数集まり話をしていた。
商人がしばらく来ないそうなのでその話かと思ったのだが近づき話が聞こえてくるとどうも違うらしい。
「ねぇ聞きました? 昨晩、裸の男女が現れたんですって」
「あらやだ、物乞いかしらね」
「盗賊でもでたのかしら」
「北の町で追いはぎにでもあったのかのぅ」
「あそこは稼げるって言っても、奥のほうは治安も悪いからねぇ」
がやがや。
なんか裸の男女がどうこうって話してるな。
北の町にいったら追いはぎには気を付けないといけないな。
「いやでもハッピィちゃん連れていたぞ」
そう思い通り過ぎようとしたところで、おっさんが気になるワードを口にする。
「ふぇ」
「う?」
「結腹くん……もしかして」
思わず足を止めてしまい、それに気づいたおかみさんやら、町爺やらが近づいてくる。
後ろから夕見さんが腕を引き、逃げようと引っ張る。
松崎さんはそわそわして落ち着かない。
ハッピィは落ち着いてふわーっとしている。
「ハッピィちゃんや裸の男女と一緒に居たって聞いたんじゃが、なにか知っとるかの?」
北の町、盗賊、治安……はっ。
僕はひらめき松崎さんにごにょごにょと耳打ちする。
「あのあの、昨日冒険者の方とパーティを組ましてもらったのですが、盗賊の襲撃に遭ってしまって。
寝ている途中で侵されそうになったけれど何とか逃げ出してきたんです。
その時に私は足をけがしてしまって」
僕の伝えたことをたどたどしく口にする。
「ハッピィちゃん、パーティ組んだのかい?
野営は交代で見張りが常識だぞ?」
「そ、そうなんですか」
「あちゃーしらなかったかー」
「いつも1人でやってたもんなー、パーティは初めてのだったかい?」
「あのーそのー……はい。組んだ方々も初めてでして……」
「そうか……、その災難だったな」
「はい……」
「まぁ飯食えや、元気出るぞ」
おっさんが串焼きを渡し、ハッピィがかぶりつく。
まぁなんとかなったようだ。
夕見さんは頭に手をやり、ため息をついた。
解放された僕達はギルドにやってきていた。
もちろんサルを換金するためにだ。
アイテムボックスを使うのには隠蔽を解除しないといけないのだが、もう慣れたものでテーブルの下にもぐりこみ、取り出すのはお手の物となっていた。
しかし、今日は木箱やら書類やらが足元に置いてあり、隠れるスペースがなかったのである。
松崎さんが僕の腕を掴み、首を左右にふる。
昼頃のためクエストボード付近の人は少ないようだった。
とはいえ雑談スペースには多くの冒険者がいて、何かを話しているようだった。
アレを使う時が来たと伝え、天上へと向かってもらうことになった。
さらに人気の少ないクエストボードの並びが続く奥のくぼみに入り、ボードの陰から上りにかかってもらう。
「ちょっと結原くん……人が」
横の壁を半分ほど登ったところで、団体さんがやってきたと夕見さんが伝えにきたが、構わず上るようにジェスチャーをする。
横ではハッピィが僕の真似をしている。
僕と夕見さんが話すのを心配そうに松崎さんが見ている。
僕たちが進むのを見て松崎さんはゆっくりと天上から進んだ。
ギルドの大広間につくと一気に人が増えたように感じる。
話し声が絶えず聞こえ、雑談スペースからはみ出た人たちが、受付に並ぶ人ともめている様子がうかがえる。
僕たちは進むが、松崎さんは一向にやってこなかった。
奥のくぼみへと戻ると松崎さんが降りてくる。
「無理無理、人多すぎだよぉ」
「さすがにあれは無理よね」
「でも急がないと服が売り切れてしまうかもしれないよ」
「うぅぅぅ」
松崎さんは小刻みに震え、自身を包み込むかのようにうずくまる。
「まぁでももうちょっと人が少なくなってからにしようか」
そういうと松崎さんは笑顔でうんとうなづいた。
夕見さんも服を早く欲しいが、この人の多さでは強く言えずに一度引き返すことを承諾した。
仕事に慣れて久しぶりに書こうと思ったら、IDPW忘れたし、どんなだったか忘れたし、読み返して追加して、最新話書いてみたら全然文字数かけてなくてびっくり。
続け!




