導入
僕の名前は結原 英二。
ごく普通の高校2年生だ。
それなのにどうしてこうなった。
目を覚ますと草原だった。
風が落ちている草を運んでいくように突きぬける。
辺りを見回すと誰かが倒れていた。
4組の夕見 遥さんとクラスメートの松崎 めぐみさんだった。
4組の夕見 遥さんは学園1位の人気を誇る、かっこいい女性で男子にも女子にも人気がある。
やや男前な口調に、170センチ代の高身長でモデルのような体系だ。
髪は肘ほどまであって後ろはもっと長い。普段はそのままだが、部活中は髪を後ろでポニーテールにしている。
その普段のストレートと部活中の縛った髪の姿からみえるうなじに心奪われる女子が多いようだ。
弓道部は、夕見さん目当てで入部する女子が多いそうだ。
3年生がいなくなり弓道部の部長になったらしい。
たしか、生徒会も兼任していたんじゃなかったろうか。
疲労過多で倒れちゃうんじゃないかってくらいの努力家だ。
胸は……聞いちゃだめだ。
松崎 めぐみさんは学園2位の人気で絶大な男子への人気がある。
男子だけの人気ならぶっちぎりのNo.1だろう。
少し天然なかわいい系で胸が大きくて、制服の上からでも存在感はすさまじい。
身長は150センチ代だ。
彼女と会話しただけで嫉妬に狂った親衛隊に半殺しにされるという恐ろしい噂もある。
ちょっと抜けているところがあるので皆で見守っているという話だ。
しばらく彼女達に見とれて時が過ぎた。
女子の制服は、季節が夏なのでYシャツの下の服がわずかに透けて見える。
夕見さんは水色のしましまのタンクトップのような服が透けている。
松崎さんはピンクのブラジャーが透けて見えていた。
下着は、ん? めくらないよ?
風が吹いて捲れちゃったらしょうがないけどね。
でも、一向におきる気配がない。
ここはどこなんだろうか。
僕がいた青森の地形でこんな場所はなかったと思うが……。
まさか、ここがあの埼玉なのか。
アキバとかいう魔族が住まう恐ろしい土地があり、その他は荒れ果てた土地で荒野だとか。
そうか、埼玉は魔界だったのか。
あははは、ってそんなわけあるかい。
ここは草原で荒野でもないし、魔族もいないじゃないか。
いや、ここにはいないというだけでどこかにいるのかもしれないが。
……異世界、なんだろうか。
最近の異世界はゲームの世界みたいにステータスが確認できるって聞いたことがある。
試してみよう。
「ステータスオープン!」
……本当に出たよ。
名前 結原 英二
種族 ひゅーまん♂
Lv 1
スキルポイント 30
スキル
魔力抑制
魔力適正『風、水、火』(エアーウインド、スモールウォータ、イグニション)
さすがにSTRやらINTなどは見えないがステータスが確認できた。
そうだ彼女達のも見てみよう。
「ステータスオープン!」
……あれ? みえない。
もしかして、他人のは見えないのだろうか。
とりあえず、このまま此処に居たんじゃいけないと思い、どこか安全そうな場所を探すことにした。
数歩ほど歩いて振り返る。
こんな場所に放っておくのはまずいのではないだろうか。
せめて遠くから見えない位置に移動してもらったほうがいい。
頬をつついてみるが反応はない。
仕方がないので僕が動かすことにする。
自分で動けないんだからしょうがないよね。
彼女達を木の陰に移動させて安全に寝られる場所を探しに出かける。
草原から草が無くなって土だけの道を歩きながら散策していると洞くつが見つかった。
中に何もいなければここにしようか。
中は暗く、光の入る途中までしかよくわからなかった。
暗闇で光る2つの光――なんてものはないから大丈夫だろう。
入口付近で適当に小枝と葉っぱを拾ってきて中に無造作に置いた。
魔法適正に火とあったからきっとできるはずだ。
燃えろ~燃えろ~。
数分唱えた後で、気がついた。
確か火の後ろにイグなんとかって書いてあったような。
ステータスを確認して唱える。
あ、イグニションか。
「イグニション!」
なにも、起こらない?
いや、微かに手が熱くなったような気がする。
葉っぱを手に取ってみる。
葉っぱを手で包みながらイグニションを唱え続けた。
何も起こらないのかな。
数分立ち、あきらめかけたころ、葉っぱから煙が上がってきた。
ん? 煙ってことは効果があったのか?
そのまま数分唱え続けていると表面が赤くなってきた。
あちちちち。
「熱っ」
あまりの熱さに落っことしてしまった。
せっかくついた火が……。
このままでは火をつけることができない。
どうしようかと考えて、スキルポイントがあったのを思い出す。
熱耐性とか、火耐性とか習得できないかな?
ステータスを眺めてあれこれ探していると、発見した。
火耐性 極小向上(30)
( )の中身は消費ポイントかな、良かった、ちょうど覚えられる。
≪ 火耐性を習得しました ≫
よし、もう一度だ。
葉っぱの表面が赤くなってきた。
熱いけれど我慢できない熱さじゃなくなっている。
これなら、いける!
「ふぅぅぅぅ」
ここぞとばかりに息を吹きかけると火が消えてしまった。
あぁぁぁぁ。
何度か繰り返した結果ようやく火がついた。
一番太い枝に火をつけてそれを持って奥まで確認に行く。
今まで見えていた部分より少し歩いただけで行き止まりだった。
何もいないことを確認して火が消えないように小枝を周りにおいて枝を置く。
葉っぱで囲って完成だ。
草原まで戻るとまだ目が覚めてないようだった。
他のクラスメートの姿は、ここまでの道では見かけなかった。
夕見さんを背中に抱えて洞くつまで運ぶ。
美しい青い髪が首にかかりくすぐったい。
歩いていると時々吐息が耳にかかり、変な感じだ。
どうしてこうなるのか。
うん、夕見さんのほうが背が高いんだ。
重、いや、なんでもないです。
はぁ、ふぅ。
洞くつに着き、壁にもたれ掛けさせた。
「待っててね、夕見さん、松崎さんを連れて戻ってくるから」
言い残して草原まで戻る。
途中、綺麗な夕焼けが見える。
急がないとな。
暗くなると危ないかもしれない。
草原に着いたが、やはりまだ目を覚ましていなかった。
松崎さんを背中に抱えると、二つの胸の膨らみが背中に当たってなんともいえない心地よさを感じる。
ぬくもりをやる気に変えて土の上を歩いていく。
洞くつまで運ぶとすっかり暗くなってしまった。
なんとか間に合ったな。
夕見さんの隣に松崎さんをもたれ掛けさせる。
火をつけるために拾って余った葉っぱを風邪を引かないように二人にかける。
葉っぱの大きさはかなりでかく、直径は60センチくらいだ。
それを横にして2枚づつかけてあげた。
再び彼女達のステータスの表示を試みる。
何度やってもうまくいかなかった。
原因はわからない。
自分も葉っぱを2枚かけて寝た。
――翌朝。
「ねぇ、ちょっと。 ねぇ。 おきなさい」
女性の声がしたような。
体を揺さぶられるような感覚がする。
むにゃむにゃ。
「ん~。あと5分」
「もう、寝ぼけてないで早くおきてちょうだい」
再び、体を揺さぶられる。
揺さぶられて葉っぱが体から落ちた。
なんだかやけに涼しいような気がする。
「ひゃっ」
なんだか悲鳴が聞こえたので目を開けてみる。
目をあけると夕見さんがこちらを覗き込んでおり、
後ろで松崎さんが両手を目に当てて、目をふさいだのが見えた。
すると、松崎さんの葉っぱがするりと地面に落ちた。
「っ……」
思わず声をあげそうになったが、必死にこらえた。
松崎さんは下半身裸だった、骨盤がゆがみのない曲線を描き、股の間は綺麗なωの形をしていた。
どうして何もきてない、いや、はいてないんだ。
両手で目をおさえているためどうなってるのか分からないようだ。
これは気がつかなかったことにしたほうがいいな。
あまり凝視すると疑われる、すぐさま夕見さんに目を合わせた。
夕見さんは下を見ないようにこちらを見ていた。
正座に片手で葉っぱを使って体を隠しながらもう片方の手で揺さぶっていたようだ。
なんだか表情が硬いような気がするけれどどうかしたのだろうか。
まさか、夕見さんも、いや、まさかね。
「おはよう」
上半身だけ起こし、気取られない様に目をさすりながら挨拶した。
「ええ、おはよう。 あなたは……確か同じ学校の結原君よね。
これ、どういうことか説明してもらえるかしら」
これとはいったいどういうことだろう。
なんとなく分かるが、分かりたくない、そういう気分だった。
が、そうもいかない。
観察を許可されたと思い再び松崎さんの股の間を凝視するついでにあたりも見渡した。
観察すると夕見さんも肩の部分が肌色だし、葉っぱの隙間からチラチラと肌色の部分が見える。
足元を見ると腰が見える、どう見てもスカートを穿いていない。
松崎さんは、っと。
あぁまだ、目をふさいでるよ。 いつ気がつくんだろうな。
そんなことを思って立ち上がり、その過程で自分の体が視界に入る。
なぜか裸だった。
いや、肩から上の首周りにYシャツの襟の部分だけある。
靴下と靴は履いていたよ?
でも、そんなのは着ているうちに入らない。
失敬、気が付いていないのは自分だったようだ。
彼女達も裸なのだろうか。
疑問に思って聞いている?
そりゃそうだろう、起きたら裸でした、じゃ、驚くのも無理はない。
まさか僕が脱がせたと思っているのではないだろうか。
とりあえず、出しっぱなしのあそこを葉っぱを拾って隠す。
夕見さんの堅い表情が少し和らいだような気がした。
……どういうことだ?
こっちが聞きたいくらいだ。
たしか寝る前は服を着ていたはずだ。
まさか、寝ぼけて脱いでしまったというのか。
僕は何ということを。
いや、ないない。
そんなアホなことが起こってたまるか。
しかも、中途半端に残ってるし。
いや、待て、落ち着け。
情報を整理しよう。
寝る前には服を来ていたのに朝起きたら裸になっていた。
誰かが入ってきた様子もない。
じゃぁやっぱり僕がー。
ってそうじゃないその線は忘れろ、考えるな。
寝る前に近くにあったものは……。
小枝、火、枝、葉っぱ、くらいだよなぁ。
ん? 葉っぱ?
もしかして……
今まで自分がいた場所のもう一枚の葉っぱをどかすと小さな虫が金属の留め金がついた細長い何かをかじっていた。
あれはベルトだ。
皮が堅いため食べるのに時間がかかっているようだった。
「あ……」
夕見さんもそれに気がついたのか、遅れて声が聞こえた。
「あ……」
危なかった。こいつを発見できなければ僕は彼女達を無理やり脱がしたことにされるところだった。
ふぅ~落ち着いて溜息をついた。
すると、松崎さんが手を目から放して目を開いた。
葉っぱは、松崎さんの肘で辛うじて支えられていたわけで、
目から手を放した後は気をつけの姿勢になっていたわけで。
危険はまだ去ってはいなかった。
やばい、あぁぁぁ。
ひらりと床に落ちる葉っぱ。
ぷるんと自己主張する大きなお胸。
制服の上からでは分からないきれいな肌が惜しげもなく披露されてゆく。
松崎さんは夕見さんが慌てて飛び出すのに、自分の状態を理解して顔を赤らめしゃがみこもうとしている。
「きゃぁぁ」
手を伸ばし、松崎さんを隠そうとする全裸の後ろ姿をみせる夕見さん。
引き締まったなかに女性らしさを思わせるほどよいヒップ。
風もないのに後ろ髪がなびいている。
やっぱり二人とも裸だったんだね。
結原はふるふると揺れる胸に目を奪われ、松崎さんがしゃがむ動作をスローモーションで感じ取っていた。
その数分後、事態を収拾し、
松崎さんにビンタされ、その時にまた葉っぱを落とし事態は悪化していった。
そして、半殺しに逢い僕の人生は幕を閉じた。
――END――
あ、終わりません。 続きますよ。 すいません。