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月界最強の姫は人間界に遊びに行く〜魔法学園で規格外扱いされるが隣の公爵子息にだけ勝てない件〜  作者: おもち
第一章

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第3話 学園生活一年目 ①



学園に入学して一ヶ月が経ち、私たちはすっかりと学園生活に慣れた。朝寝坊しそうになると、ミラかエリナが起こしに来てくれるし、髪も結ってくれる。逆にどちらかが寝坊しそうになると、私も起こしたり、朝の準備を手伝ったりする。


支度が終わると、朝は学園内にある食堂で朝ごはんを食べる。ビュフェ形式で食べたいものを好きな量だけ食べれるため、私はとても好きだ。


とくに人間界に来て、私はノクティベリーという甘い果実が好きになった。あれはみずみずしくて、とても甘くて、毎日でも食べたいくらいだ。だから私は毎朝ノクティベリーを食べている。


「セレナは本当にノクティベリーが好きね。確かに美味しいけど、飽きないの?」

「全然。でも、食べすぎると他のご飯食べられなくなるからって、お母さんに言われて朝だけにしてる」


初めてノクティベリーを食べたときに美味しすぎて、ほかのご飯が食べられなくなるほど食べたことがある。そのせいで、ノクティベリー食べすぎ禁止令が出されてしまったのだ。


「学園でも守っているなんて凄いわね。私なら誰の目もないのなら、好きなだけ食べちゃうわ」

「私もそうかも」


ミラの言葉にエリナは賛同するように頷く。2人はその日の気分で決めているらしく、私のように毎日これだけは食べるというものはないそうだ。まあ、この学園の料理はどれも美味しいから、どれでもいいと感じてしまうのかもしれない。


プレートに乗せた料理を食べ進めていると、ざわざわと食堂の入口付近が騒がしくなった。入学してから毎日のため、なんの騒ぎかは分かってはいるが、人が集まっていると思わず見てしまう。


「あっ、リオ君だ! きゃあっ、今日もかっこいい!!」


黄色い悲鳴をあげたのはミラだ。なんとミラ、学園に来た目的の一つである恋をするというものをこの一ヶ月で見事に達成していたのである。


相手はリオ・コラプスという隣のクラスの同じ平民の男子生徒だ。私たちのクラスに来ていたリオにミラは一目惚れをしたのだ。そこからリオにアピールしている。


「相変らず、ミラの恋する乙女は凄いね」

「本当にね。でも、私はコラプスがあの中に入っていける事実のほうが凄いと思うわ」

「それも言えてるね」


リオは確かにイケメンと言える外見をしているのかもしれない。《月界》では意識したことなどなかったが、こうして人と会ってみて、美的センスというものを身につけ始めていた。


そして、今リオが一緒にいる男子生徒2人。彼らはこの国の第2王子とその幼なじみの公爵子息だ。どちらも美しい見た目をしており、女子生徒が騒いでしまうのも仕方がないと思える。


その中にリオが友人枠として入っているのは凄いと思う。元々、学園では大して身分差というものはない。だから誰と友人関係になろうとも問題はないのだが、あの二人と一緒にいるリオは勇者に違いない。


思わず見つめてしまうが、見つめすぎるのも良くないかと思い、私は食べかけのご飯を食べるべく、視線を戻した。



* * *



午前の授業があと一コマで終わるが、次の授業で必要な教科書がロッカーの中に入っていることを思い出し、そういえばせっかくだしと、ロッカーに行くついでに廊下に張り出されているものを見に行った。


既に人集りができているが、上手く間を縫って張り出されているものの前に出る。張り出されているものとはこの前に行われた定期テスト結果だった。


学園に入って初めての定期テスト。いや、私にとっては全てが初めてで、いざ定期テストを受けてみて手応えというものがあったために、気になって結果を見に来たのだ。


「どれどれ」


クラスが複数ある分、一学年の人数も多い。ここに張り出されているのは上位50名以上。そこに入ってたらいいな、くらいだったため、特に気負うことなく私は下から順に名前を探してみる。


あわよくば、彼よりも上に名前があるといいなと思いながら見てみるが、中々見つけられない。そもそも50名以内に入っていないのかと思っていると、なんと上から2番目のところに自分の名前を見つけた。


けれど同時に、その上にある名前を見つけてしまって、私は少し落胆してしまった。


1位:ユリウス・セオドア・エルヴァレン

2位:セレナ・エルシア


また負けてしまった。


地団駄を踏みたいほどでは無いが、ここ最近のテストで地味に負けているので普通に悔しい思いではある。


《月の姫》としてのプライドとかではなく、純粋に負けて悔しいのだ。でも、悔しいと思いつつ、ちょっと楽しいと思っている自分もいる。


でもやっぱり悔しい気持ちもあるので、行きとは違って少し落ち込んだ私はロッカーから教科書を取り、教室へと戻る。すると、私の様子に気づいたミラとエリナがどうしたのかと話しかけてきた。


「んん〜、また負けた〜」


自分の席に座り、机に突っ伏して思わず唸る。席は一番後ろの窓側に近い席のため、この姿が誰かに見られることは少ないはずだ。


「でもセレナ、初めてのテストで2位じゃなかった? 十分すごいと思うけれど」

「私もそう思うわ。貴族の人たちを抜かして2位なんて凄いじゃない」


エリナに続き、ミラにまで慰められるが、唸りは止まらない。


「だってぇ、ずっと負けてるんだもん。1回くらい、勝ちたい〜!」

「まだ入学して一ヶ月じゃない。それに私たち平民と貴族の人たちとでは元の知識量が違うんだから仕方ないことではあるわよ。でもそんな中でセレナは2位なんだがら、十分誇っていいと思うけれど」


ミラはそう言うが、そんなの言い訳でしかないことは私が1番知っている。テスト範囲は授業で学んだところだ。それ以外はテストでは出されていない。勉強した分だけ、テストの結果に反映されるのだ。


「……やっぱり悔しい」


こういう感情を知ることができたのは嬉しいが、いい加減、この感情から抜け出したい。それに彼に負けたのはたしかに悔しいが、彼は努力の天才だと私は知っている。


だから私はこれ以上何かを言うのをやめた。次で頑張ればいいと思い直し、顔を横に背ける。


すると、頭に何かが乗せられた。


「全く、君はいつもそうだね。そんなに悔しがることないのに。そんなに考えすぎると、逆に馬鹿になってしまうよ」


ポンポンと頭を撫でられた。それに気づいた瞬間、私は勢いよく顔を上げた。目の前にいるミラとエリナはまたかと言う感じで自分の席に戻って行った。


「うわ、びっくりした。急に起き上がらないでよ」

「……もうっ、子ども扱いしないで!!」


もう何回目かも分からない。黒髪に赤い瞳をした彼。私がテストで負けて、その度にこうして頭を撫でられ、子ども扱いされるのは。


私の隣の席に座る件の食堂で騒ぎとなった3人のうちの一人。公爵子息で第2王子の幼なじみとて入学したユリウス・セオドア・エルヴァレン。


今回のテストの学年1位だ。


「私は子どもじゃない! 確かに負けて悔しいけど、そんな子どもみたいに慰められる年齢じゃないの!」


ぺしりと手を落とし、私は思わず立ち上がってエルヴァレンに抗議する。年齢でいえば、私は数千歳も上なのだ。子ども扱いされる言われはない。


けれど、私を《月の姫》だと知らない彼らは私の言葉は正しく通じない。


「そういうところが子どもみたいなんだけどね」

「子どもじゃない! テストだって、次はもっと勉強して頑張るから!」

「はいはい、頑張ってね」


なんだろう、この相手にされていない感は。でもこれ以上言い合っても意味がないと分かってはいるので、心の中でふぬぅ〜っと怒りながらも席に着く。


「お前たちはまた言い合いをしているのか」


どこか呆れたようにエルヴァレンの前の席に座った第二王子のレオン・アレクシス・ハスフェル殿下は私たちをそう見やる。


「違いますよ、殿下。この箱入り娘が馬鹿みたいに悔しがっているので、慰めていただけです」

「ばかって言った方がばかなの! ばか!」

「ユリウス、お前が構いすぎなんじゃないか? エルシアもそんなにムキになるな。遊ばれるぞ」


思わず言い返しそうになったが、それでは意味がないと必死に思い留まる。落ち着くんだ、《月界》ではこういうことがなくて耐性がないだけ。そのうちなんとかなる。



そもそも、こんなことになったのは隣の席がエルヴァレンだと知った日のことだ。


私は決められている席に座ると、既に隣にはエルヴァレンが座っていて、いきなり勝負しない? と話しかけられたのだ。意味がわからない私は首を傾げたが、彼はじゃんけんぽんと言ってパーを出してきた。私は何も考えずグーを出すと普通に負けた。


すると、彼は何事も無かったかのようにこう言ったのだ。


『僕の勝ちだね』


その瞬間、私はえ、なにこれ悔しいんだけど、と初めての感情を手に入れたのだ。そもそも、言い訳ではないが、じゃんけんなんて人間界に来て初めて知った遊びなのだ。じゃんけんは運であるとは知っているが、遊び歴の少ないもので唐突に負けたのは普通に悔しかった。


そこから、なぜか私とエルヴァレンは勝負みたいなものをする関係になったのだ。授業の合間合間のミニテストや授業で出題される問題など、どちらが多く正解できるか、どちらが早く解けるか、周りからすればなんだその勝負と思われるようなものばかりしてきた。


そしてこの前の今学期初めての定期テストでも今日確認して負けが確定したのだ。


なんでこんなことになっているんだろうと思わなくもないが、ここに来て一度も勝てずに勝負を終えるのは違う気がする。だからズルズルと一ヶ月近くもこんなことをしているのだ。


「エルシアはそんなにユリウスに勝ちたいのか?」

「……だって、負けたままって、なんだか悔しいですし」


レオン殿下にそう問われ、流石に私は敬語で答える。今の私は平民なのだから。


そう思っていると、エルヴァレンが肩を竦めて言ってきた。


「ほら、子どもみたいですよね」


その言葉に今度こそ私は口を開きそうになるも、タイミング良く鐘が鳴り、私は意識を変えるように前を向いた。



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